| お好み記者独り言66 華のト〜キョ〜(2) 大きいことはイイことか! |
東京に来ての楽しみは、神田や浅草の下町の飲み屋で、毎晩一人しずかに杯を傾け、仕事の疲れを癒やすことだった。ところが、そんな居酒屋がなかなか見つからない。ガイドブックにも出てくる神田の老舗を訪ねたが、まずカウンターがない。みんな大きなテーブルを囲んで大人数でワイワイやっている。一人で来た者は、大きなテーブルで一人で飲んでる人の向かいに座らされる。どうにもバツが悪いやないの▼「ここカウンターないんですか」と聞くと、「前にも聞かれたんですけど、ありません」ときっぱり。「雑誌が書いちゃって」と迷惑そうな口ぶり。老舗というからにはそれがこの店のスタイルで仕方ないが、客に言われてカウンターを作ろうなんてこれっぽっちも思っちゃいない▼電気ブランで有名な浅草の老舗はどちらかというと大食堂。入り口で食券を買って入るが、最初に料理と酒を決めなければいけないのには当惑する。広いフロアにテーブルがずらりと並び、ビアホールのように騒々しい。一人しずかに、どころか、二人で差し向かいに座っても愛をささやくことなんてできっこない▼料理もデカい。とある中華料理屋。550円の野菜炒めを頼んだら、ラーメン丼にいっぱい詰めてひっくり返したような山盛りが出てきた。もやしたっぷり、というか、いくら食べてももやしばかり。いっしょに頼んだチャーハンの半チャンもそこそこのボリュームがあり300円。じゃあ普通のチャーハンはとメニューを見ると720円也。この焼き飯でそれはないやろ▼串カツ盛りは6串1000円で、焼き鳥も6品盛りで900円。おでん盛りは、おばけのようなはんぺんとちくわのふやけてデカくなったような「ちくわぶ」など7品で980円。「お客さん、多かったでしょ。今度から単品で 頼んでください」やって。要するに、料理は一人で食べることを前提にしていない。3品4品でいいから、せめて四、五百円にしてほしい、と思うのは大阪人がしみったれだからだろうか。いや、おいしいものをいろいろ、ゆっくりと適度に食べたいのが「食いだおれ」の神髄や▼さらになじめないのが、狭い地域に大食いを競わせる店が2軒もあることだ。ジャンボラーメン1杯(4人前)を30分でスープも残らず平らげたらタダで、2杯なら賞金1万円が付くお店。1皿5個のギョーザを女性30分で50個、男性1時間で100個食べたらタダという会館。店の壁には得意気な達成者の色紙が並んでいるが、あんたらなあ、ちゃんと味わったんかいな。食いもん粗末にしたらあかんで▼大勢で騒々しく飲むスタイルといい、量が多けりゃ客は喜ぶ、とでも思っているかのような料理といい、東京という大都会は、何でも大きいことに価値が見いだされるところなのだろうか。はたまた、企業がこぞって本社を構え、政党・政治家が野合を繰り返し巨大化しようとするのも、徒党を組むことで日本の中枢から離されまいとする防衛本能なのだろうか。私が一人しずかになれるのは、このワンルームマンションしかないのかも知れない。(門) |