[ 目 次 ]      月刊・お好み書き 2003年7月号


お好み記者独り言65
華のト〜キョ〜(1)風呂が熱い!

  東京に転勤してきて2カ月。お風呂とトイレが一緒のマンション生活への不安は5月号の「お好み後記」でも書いたが、すぐに近所に雰囲気のある銭湯を見つけ、お風呂は専らそっちを中心にしている。「つるの湯」という。玄関正面は唐破風の小屋根になっていて、屋根の下を鶴の彫り物が舞う。脱衣場は(造りは左右対称だから女湯もたぶん同じだろうが)、小さいけれども灯籠のある庭に面し、土塀の明かり取りは 松の枝の形をしている。「随分昔からやってるんですか」と番台のおばさんに聞けば、 「昭和2年と聞いています。もっと古いかも知れません」▼江戸の昔、湯屋と呼ばれ た銭湯の男湯には2階があって、入浴後そこで休息しながら談笑や囲碁将棋などを楽 しんだそうだ。そしてなんと、小窓などから女湯がのぞける設備のある所もあったと か。確かに天井は高く、脱衣場の2階部分相当のところはガラス戸になっていて、頭 上に座敷が広がっていてもおかしくない、そんな造りだ。のぞき窓こそないが、女湯 との仕切りは低く、180センチもあれば背伸びするだけで十分そう▼レトロな雰囲 気はいいのだが、どうしても納得行かないことが一つ。湯がめっちゃ熱いのだ。親切 に温度計が湯舟から延びていて、「適温」という範囲が赤く示されているがそれがな んと、42〜46度! 水でうめてる人はおらず、大概46度を指している。最近は熱いの にも少し慣れたが、それでも46度というお風呂にはなかなか入れたものではない。お かしいのが、みんな一心に体を洗っている。そこまで洗わなくても、と思うくらいゴ シゴシやっている。湯舟にゆっくりつかっている奴などいない▼この前、あまりに熱 い湯にのぼせ、ボイラー室に通じる引き戸をちょっと開けてすずんでいたら、「そこ 閉めてくれない」と叱られる始末。こいつら偉そうにすましてゴシゴシやってるけど、 熱い湯に入れるんかいな!と見ていたら、やっぱり奴らも熱いことは熱いらしい。何 人かを観察していたら、最初足をそろりとつけ、それから体を沈めて、大抵が20秒か ら30秒ですぐに上がってしまう。ええカッコすな! ぼくなんか100、数えれるね んど!▼脱衣場で「お湯、熱くないですか」とおじいさんに尋ねたら、「若い人は体 が熱いからうめちゃうんでしょ。年寄りは体が冷えてるから熱い方がいい」と熱いこ とは認めながらも苦にならない様子。なるほど、この遅めの時間、お年寄りが多いこ の銭湯ではこれでいいのかも。東京人はええカッコしいで見栄っ張りだから熱いお湯 にも平然としてるのだろうか…。そうか、分かった! 「火事と喧嘩は江戸の華」と いうやないか。火事や喧嘩があったら江戸っ子はすぐに飛んでいかなあかんから、お 風呂にゆっくりつかる習慣なんかないのかも…。初めての東京暮らしで、文化の違い をつくづく感じている。(門)

 


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