[ 目 次 ]      月刊・お好み書き 2002年9月号


週刊誌記者のコテコテ事件簿


●某月某日 週刊誌の記者をしていると、さまざまな人からいろいろな話が持ちこまれてくる。先日も高級乗用車ベンツを見てきた。排気量は5000CC。86年製造でクラス最高の560SEL。
 ここまで書けばなんのことはないが、このベンツの国籍は、なんと北朝鮮。しかも、持ち主はあの首領サマというから驚きである。製造から15年経過しているが、走行距離は1万キロ弱。北朝鮮でも行事以外はほとんど乗らず、そのうえメンテナンスも良いためか塗装など外見はほとんど新品状態だ。
 驚くのはガラスの暑さである。サイドガラスの暑さは約5センチ。リアウインドウもそれ以上の暑さだそうだ。ドアの中にも重い鋼鉄の鉄板が入っており、ドアの開け閉めも力がないと大変である。ピストルはおろか、手榴弾や機関銃の攻撃にも十分絶えられ、オプションとして非常サイレンの警報装置まで付いている。
 現在の所有者は在日北朝鮮籍の実業家。北から輸入されたのは間違いないが、残念ながら、金正日氏が乗っていた直接の証拠はない。 
 ただ、北朝鮮でこのクラスのベンツに乗れるのは、金親子か外国の要人だけだそうである。86年製造なら金日成が乗っていた可能性も高いということだが、真偽は不明だ。

●某月某日 大阪府東大阪市といえば、大阪でも典型的な中小企業の町。針金やボルトを作る従業員2、3人の零細企業もあれば、自動車や電化製品の金型工場、はてはNASAにロケットのパーツを輸出するような中堅企業が町中にゴロゴロしている。とにかく、この東大阪の中小企業が集まれば「作れないものはない」と豪語する社長サンも少なくない。
 その中小企業の町の一角にひときわ異彩を放っている建物がある。米国大統領が執務を行う、あのホワイトハウスである。
 いくら東大阪市が日本経済のカナメでも、むろん本物が東大阪に引っ越したわけではない。このホワイトハウスに模した本社を建造したのは装飾金物メーカーの「(株)ミカミ」。同社の三上雄太郎社長が83年、本社建物をホワイトハウスそっくりに建て替えてしまったのである。 サイズは実物の3分の2。どこから見ても本物だ。外見だけでなく、エントランスホールから大統領執務室までそっくりの作り。三上社長がひとりで設計し、1年で完成させた。「私は映画、とくにアメリカンドリームを謳う米国映画が好きなのです」と社長は語るが、いくら米国好きでも、なぜホワイトハウスなのか。ほかに自由の女神でもエンパイヤステートビルでもありそうなものだが、筆者の疑問に社長いわく、「そりゃあ米国の象徴といえば、ホワイトハウスでっしゃろ」。あえなく一喝されてしまった。
 83年11月、当時のレーガン大統領が来日した。三上社長は大統領の来日に合わせて1年前から新本社の完成を急いでいた。そして大統領に送った完成披露の招待状。大統領は警備と日程の都合で来られないものの、レーガン氏本人から「両国のためには大変喜ばしいこと」という好意的な感謝状が届き、代わって米国総領事がオープニングパーティーに出席した。この感謝状を契機にミカミでは、米国の歴代大統領の人形を社内に飾っている。これまでレーガン、ブッシュ、クリントンといった歴代大統領の人形が置かれていたが、米国総領事館に問い合わせて身長などのデータを取り寄せているため、体型はむろん顔もすべて本物そっくり。
 「社内で制作していますので費用はほとんどゼロ」だそうで、ホワイトハウスに似せた本社もコストゼロだそうな。もっとも、同じものを外注すれば約5億円はかかるらしい。
 本社をホワイトハウスそっくりに建て替えてしまったユニークな人物ということで、三上社長のもとには講演依頼が殺到している。「極端に売り上げが伸びたということはありませんが、当社の知名度は伸びました。講演依頼もそうですが、東大阪市ホワイトハウスと書くだけで郵便物も届くほどになりましたからね(笑)」(三上社長)。
 三上社長のこれからの夢は、自社のホワイトハウスにブッシュ大統領を招くことだそうである。「そのためにも案内状はせっせと送りますよ」と意気軒昂である。

(文・庄村有治)




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