[ 目 次 ]      月刊・お好み書き 2002年6月号


お好み記者独り言(61)

だってこれがオレなんだもん――


 橋口亮輔監督の映画「ハッシュ!」を見た。勝弘と直也のゲイカップルと、筋腫の原因を婦人科医に「俗にヤリダコとか言うな」とか言われてしまうような三十女朝子が主人公。勝弘の精子をもらって子どもを産もうと決心、二人と付き合うようになる朝子、勝弘に偏執狂的な思いを寄せる同僚の、足に障害を持った女性エミ、息子はいずれ胸を膨らませると思い込んでいる直也の母親、「家」を守るプレッシャーをしょい込んだ勝弘の義理の姉などが絡み、ゲイが主人公の映画という以上に、人間関係の諸相を見た思いがした

▼朝子の「計画」を聞いて「ゲイが家族や子どもなんて持てるわけない」と憤慨する直也に、「決めつけないでいいんじゃない?」と言う勝弘。エミの屈折した片思いも断ち切れず、「彼女だって前に進めないじゃない。はっきりしなよ!」と迫る直也に、「だってこれがオレなんだもん」と悩む勝弘。勝弘の一種優柔不断なこの優しさが、この映画にちりばめられたテーマを提供してくれることになる

▼「私こっちの足が短いの。人がどう見てるかとても気になる」と勝弘に告白したエミは、勝弘への思いが通じず「死んでやる!」と叫び、人との関わりをアキラメていたような朝子は、「子どもを産んでみたい」と思うことで、「生きてていいかな」と思えるようになる。橋口監督自身も学生時代、好きな男性に「気持ち悪い」と言われ、「一人で生きていくしかない」と絶望し、死の手前まで、井戸の底の底まで行ってふと、上のほうの光を見たという

▼勝弘と直也のゲイカップルと、精子さえ、しかもスポイドでもらえればいいと思っている朝子の関係があっさりしていて、さわやかささえ覚えた。ゲイがぶつかる「家族」や「家」「人間関係」の問題は、見事に世間一般のそれへと照射されていくが、自分は?とか現実は?とかいうのではなく、ああいう3人の生活も楽しいだろうなあって思わせてしまうような、いい作品だった。(門)

 


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