[ 目 次 ]      月刊・お好み書き 2002年6月号


「燃え」ても「燃せない」ゴミがある

横須賀市の4分別収集から知る「物」の行方

――「容器包装リサイクル法」施行から2年たって



コンテナ型になったゴミの山と作業するショベルカー
=横浜市の紙資源リサイクル事業所で

 私の住んでいる横須賀市では平成13年4月から、ごみの収集が4分別になりました。 「燃せるゴミ」「不燃ゴミ」「容器包装プラスチック」「缶・ビン・ペットボトル」の4種類で、スナック菓子の袋、納豆の入っている容器、たれ・からしの入っている小さなビニール製の袋までも、使い終わったら、洗って「容…プラ…」に出します。新聞、雑誌、古着、紙類などの資源回収も地域ごとにもちろんあります。地球環境のため、循環型都市をめざして、といいことずくめのようですが、お隣の横浜市では缶・ビン・ペットボトル以外はすべて「燃えるゴミ」として捨てて焼却している状況。ゴミ収集の改正以来「もうゴミのことを考えるのもイヤ」という若いお母さん達の声や「分別の仕方がどうも分かりにくい」というお年寄りの声も多く聞かれるのも事実。ゴミ処理の問題はこれからどう進んでいくのでしょう。みなさんの地域は何分別ですか。

(田中敦子)


  そもそも「容器包装プラスチック」(以下「容プラ」)という分別方法ができたのは、平成12年4月1日に施行された「容器包装に係わる分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」略して「容器包装リサイクル法」が施行されたことによる。お酒や化粧品の入っていたビン、飲料水の入っていたペットボトルも対象となるが、わかり にくいのはこの「容プラ」。お菓子の紙の箱をおおっているセロファンやポテトチップスの袋、スーパーのレジ袋、お惣菜の入っていたトレイ、そのトレイをおおっていた値段のついているラップすべてが、「容プラ」に分別される。

 

○ラップは「不燃」?「容プラ」?○

 私は最初法律のことは全然知らなかったので、「容器包装またはプラスチック」だと勝手に解釈していた。それで洗濯用洗剤に入っていたプラスチック製のスプーンやジュースのブリックパックについているストロー、プラスチック製のおもちゃ、バケツなども入るのかと思っていたが、「商品をおおうもの」ではないので、これらは「容プラ」ではなく「不燃物」が正しい。
 ラップを「容プラ」と思い込むのも注意が必要だ。買った魚や野菜、お惣菜をおおっていたラップはスーパーマーケットが商品の包装としてつけているので、「容プラ」だが、家庭で買ったラップはラップそのものを商品として買っているので、厳密にいうと「容プラ」ではない。夕食の残り物のお皿をラップでおおっても、捨てる時には「不燃物」となるわけだ。 もっとややこしいのが、クリーニングのビニール袋。クリーニングは商品ではなく、そのサービスの提供に伴う容器包装なので、クリーニングされた洋服が入っている袋はリサイクルできる素材であっても、「容プラ」扱いとならず「不燃物」。新しい洋服を買った場合のビニール袋はもちろん「容プラ」である。

 

○タバコ一箱買うと3分別○

 タバコを1箱買う。ピーッとシールを切る。手に残った透き通ったセロファンフィルム、これは、「容プラ」の袋へ。タバコを一服くゆらす。残った吸殻は火が消えたのを確かめてから、「燃せるゴミ」へ。そして20本吸い終わったら、紙の箱はリサイクルできるので資源回収される「その他の紙」へ。これが正しいタバコの吸い方である。
 法律で決められた「容器包装」に対しては企業、自治体がそれぞれ(割合は違うが)リサイクル事業に負担金を出す。したがって厳密な分類がなされるわけだが、どこまで市民に指導するのがいいかは行政としても難しいところ。施行されてまもない法律である。これから改正されていく可能性もあるだろう。

家庭から出るゴミ全体の60%が「容器包装」。歯磨きチューブ、洗剤、卵、ヨーグルト、スナック菓子の容器全てがリサイクルできる。
(リサイクルプラザに展示されている「容器包装プラスチック」の例。)

 

 

○「みんなちゃんとやってるの?」○

 始まって1年と少しの4分別。「こんなことできるかい」と誰もが一度ならず投げ出したくなるだろう。「シャンプーの容器もマヨネーズやケチャップの容器も使いおわったら洗って乾かして『容プラ』に出すなんて面倒。この洗った水はどうなるの。水という資源の節約にもなってないし、ましてや水を汚して排水するということは環境を汚染することにはならないの?」という疑問も頭をもたげる。納豆についていたからしの透き通った袋、1辺2センチもないこの正方形の小さな袋をクチュクチュ洗いながらむなしさを覚えるのも確かだ。

 カレールーの箱の裏にあった表示。
まもなく表示が義務づけられる

 

 平成13年、総事業費約90億円を投じて建設された横須賀市リサイクルプラザの主幹、竹内伸一さんは言う。「容器を洗うのは、お茶碗を洗う時に溜まっている水でちょこちょこっと洗っていただければいいです。汚染ですか。生活排水の一部と考えていただければいいんじゃないでしょうか」。一人住まいの若者や独居老人が今までゴミと考えていたものまで洗って出すというのは無理があるのではないか。汚れた容器をそのまま出してもリサイクルできにくい。それならいっそ洗わない場合は不燃物へという風にしたらどうかと聞いてみると、「いえ、容器包装プラスチックは洗って分別、そしてリサイクルへと考えてください。みなさんの意識が大切なんです」という答え。
 市民の意識…。この答えには説得力があった。ゴミ問題に意識が高い市民もいるが大半はそうではないかも知れない。しかしゴミの分別収集が始まって、どうしても私たちはゴミのことを考えざるを得ない365日を送っている。

横須賀市リサイクルプラザ建物外観。愛称は「愛」と「リサイクル」を合わせて「Aicle」。総事業費90億円をかけて作られた建物は全国でも最大規模で外観も立派。ここには「容器包装プラスチック」「ビン・缶・ペットボトル」「ダンボール」「牛乳パック」「その他の紙」がそれぞれのゴミ集積所から集められた後、運ばれてくる。その後、選別、圧縮、梱包して再生工場に搬出するのが役割。その様子は見学することができ、昨年度1年だけで3万人余りの人が訪れた。ほかに再生家具工房、情報コーナーがあり、常に公開されている。

 

 横須賀では平成12年度までは、現在「容プラ」として集めているものはすべて「不燃物」として埋め立てていた。横浜を始め全国の多くの自治体ではプラスチックも「燃える」として扱っていると聞くし、実際今の科学技術をもってすると、何を燃やしても、排ガス処理装置、精密なフィルターを通せばダイオキシンなど有害物質が出ないようにはできるらしい。横須賀の焼却施設も高度な設備は備えているのだが、昭和58年に焼却工場周辺の住民との話し合いにより、より安全な環境を確実にするためにプラスチック・ビニール類を焼却ゴミ全体の5%以内に抑えるという協定が結ばれた。
 それによってプラスチック、ビニールなども燃やそうと思えば、「燃える」わけであるが、横須賀ではこの協定のもと燃やさない。「燃えるゴミ」ではなく、燃やすことができる、つまり「燃せるゴミ」として収集している所以である。「燃えるゴミ」と「燃せるゴミ」は意味が大きく違うのだ。これも「アイクル」の竹内さんに教えてもらった。

ゴミ集積所のゴミ分別が表示されているパネル。始めが辺だと思った「燃せるゴミ」という言葉。「燃えるゴミ」とは意味が違ったのだった。

 

 「不燃物」はどこへ行くのか。以前は市内の山あいで埋め立てていたらしい。しかし市内の埋め立て予定地はとうの昔にいっぱいになり、現在は市内に最終処分場をもたない。業者に委託しているので市は直接明言しないが、秋田の方まで横須賀のゴミが運ばれているという噂もある。
 一口に埋め立てと言っても問題は多い。プラスチック類などを埋め立てると土地の汚染が始まり、将来私たちの飲み水の安全性にも問題が出てくると言われている。燃えるゴミを燃やした後の灰ですら、埋めると環境に悪影響を及ぼすとも言われている。

 

○ゴミは消えてなくならない○

 私たちは家庭からゴミを捨てた時点で「はいオシマイ」と思っているが、ゴミは消えてしまうわけではない。「不燃物」を圧縮して運搬しやすいように箱型にしている「減容固化施設」を見学に行ったが、家庭から捨てられたオモチャやぬいぐるみ、金属などがそのままの姿で集められ、四角い固まりにされている。カセットやビデオのテープがヒラヒラと固まりから飛び出て風に舞っていた。そして以前に埋められたという土地のところどころからは管が伸び、ガスが発生しているということを聞いた。不要になったものはゴミとして出した時に、私たちの手から離れ、目の前から無くなる。家の中はさっぱりきれいになったようだが、地球上から消えたわけではなく、私たちの環境に影響を与え続けていることを実感した。

「アイクル」で展示されているリサイクル品の数々。「紙パック6枚でトイレットペーパー1個にリサイクルされます」という文字が見える。帽子、ジャンパー、バッグはペットボトルからのリサイクル品。缶類−新しいアルミ缶、電気製品や自動車などのアルミ部品。建築資材など。ビン類−同色のガラスビン、断熱材、タイルやブロックの原料など。容器包装プラスチック−ガスや油、プラスチック製品や鉄を作る時に使われる材料など。紙類−再生紙としてティッシュ、ノート、雑誌など。消費者にまだ十分利用されているとは言えないのが現状。

 

 「容プラ」のゴミは集められて何にリサイクルされるのか。ペットボトルが繊維になってシャツやジャンパーなどの衣料品にまでなるのは有名だが、プラスチック容器もプランターなどのプラスチック製品になったり、鉄を精製する際の高炉還元剤として使われたりしている。横須賀の場合、日本鋼管川崎工場で高炉還元剤として使用されている。実際工場を見学する機会があったが、「まだまだ足りないくらい。もっと出してください」と担当者に言われ、煩雑なゴミ分別の苦労がふっとんだ気がした。

 

○「リサイクル品着たくなーい」○

 ゴミ減量の合言葉は3つのR。「Reuse 」( 再使用) 「Reduce」( 減量)「Recycle 」( リサイクル)であるが、リサイクル品を利用することも大切な環境への関与である。しかし、最近こんな経験をした。知り合いの中学生にペットボトルやお菓子の袋を正しく分別してリサイクルするとフリースになったりセーターになったりするんだよ、と言ったら感心するのではなく「ヤダー、そんなの着たくなーい」と一言で片づけられてしまったのだ。

 

○ゴミも時代とともに変化○

 お隣の横浜市へゴミを持っていけば分別せず何でも捨てられるので、横浜市と接している地域の住民がゴミを運んでいる事実はないかを尋ねてみる。「いやあ横浜からそのような苦情はまだ来てないですよ」とは市役所環境部部長の答え。横須賀市民はこの1年それぞれにゴミ分別について奮闘してきたということだろう。
 もちろん100%完全な分別というのは不可能である。ゴミも市民もそれこそ多様なのだ。収集されてきた分別ゴミには異物が少なからず混入している。それを取り除くのは人間の手しかない。「容プラ」、アルミ缶とスチール缶、ビンを大型磁石や風を当てることによって分けているリサイクルプラザでも最終作業では多くの人たちの手が使われている。どんなに市民の意識が向上してもこの手作業による異物除去がなくなることはないだろう。それでも平成13年度1年間で家庭ゴミは23%減ったという。焼却量は26%、埋め立て量は77%減少し、リサイクル量は7倍に増加という数字には驚く。 鹿児島県の自然あふれる島、屋久島でも最近ゴミが大きな問題になってきているという。その原因は何も増える観光客のせいなのではなく、島の住民のゴミの捨て方なのだそうだ。自然と共存してきた島民はゴミを家の前の土や海に返してきた。その以前通りのやり方で壊れたテレビを海へ捨て、プラスチック類を庭に埋めたりするという。
 時代が変わり、ゴミの内容も随分変わってきた。面倒くさいとばかり言っている呑気な場合でないのは事実。「ゲーム感覚で楽しんで分別をやってもらえば」と竹内さんは言う。ま、そう簡単にも行かないけど、手から離れたゴミの行く末は知っていたい。



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