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求人検索用のコンピュータで職探しに励む人たち
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| 失業者が増えている。総務省が発表した9月の完全失業率は5.3パーセントと、53年の調査開始以来、過去最悪の数字である。とくに最悪なのが大阪だ。景気の良い産業が特にあるわけでもなく、また経営基盤の脆弱な零細・中小企業が多いこともあり、倒産やリストラで職を失った人の数はかなりの数に上る。過去最悪の不況により、新卒者でも就職戦線はシビアなのに、リストラの憂き目にあった中高年の再就職は悲劇の一言に尽きる。筆者は実際にハローワーク(公共職業安定所)を訪れ、職探しに明け暮れる人たちの声を拾ってみた。
(取材/庄村有治)
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大阪市北区にある「うめだ職業情報センター」には、求人検索用のコンピュータが100台設置されている。筆者が平日月曜日の午後2時に訪れたときには、100台あるコンピュータはすでにフル稼働。約50人ほどが利用待ちで、廊下にまで人が溢れかえっていた。職を求める40代、50代の中高年はむろん多いが、20代前半とおぼしき若い人も多く見受けられるのが印象的だ。
筆者は受付で整理券をもらい、その20分後にやっと順番が回ってきた。試しにIT関連企業の求人状況を検索してみる。もっとも、条件として「大阪府内勤務を希望」、筆者の年である「年齢43才」と打ち込み検索してみるものの、求人件数はゼロ。他の業種も専門的な技能を持っていれば別だが、未経験者だと採用ゼロか給料が極端に安い場合がほとんどだった。
翌朝、午前10時のオープンと同時に入ってみるが、コンピュータはすぐにふさがってしまった。 |
★30社以上の会社訪問★
大阪府内にある繊維関係の卸売り会社に20年間勤務後、早期退職制度で会社を辞めた男性(48)に話を聞いた。 「ただでさえ不況業種の繊維ですが、ユニクロのような安売りショップが人気を集めることで、私が勤めていた会社も打撃を受けました。給与も横這いなら良いほうで、毎年下がっていくのが現状でした。退職金がもらえるうちにと早期退職制度を利用し、今年の始めに会社を辞めました。しかし、私の年齢になると再就職先はまったく見つかりません。前の会社では納品管理の仕事をやっていたのですが、その経験を活かせる会社はまだ見つかっていません。業種を問わず探していますが、あっても給与が極端に安く、とても今の生活を維持できるレベルの会社は見あたりません。たぶん30社以上は会社訪問しているでしょうね。失業手当も切れるので、なんとか年内には内定だけでももらいたいです」
一方、採用する側の言い分はどうなのか。ハローワークに高齢者OKの求人票を出している会社の人事担当者に、その本音を聞いてみた。
【市内の某ホテル】ここの募集年齢は63歳まで。仕事の内容はバーテンダーだ。
「今回の募集は急を要するということで、年齢の上限を上げました。経験者だという60代の方、が2、3人すでに応募されています。通常当ホテルが募集をかける場合、サービス関係の部署ですと、やはり20代、30代の方がメインとなります。今回の例のように特殊な技能があれば中高齢者の募集もありますが、普通は少ないのが現状です」
【T生命保険会社】この会社では集金人の募集を行っていた。 「求人票には書いていませんが、当社が欲しいのホントは女性なのです。男女雇用機会均等法があり、"女性のみ"と書けないので、求人票には男女の区別は書きませんでした。給与は14万円程度と安いのですが、それでも男性の方の応募も見受けられます。集金人以外でも営業担当を募集することもありますが、こちらもホントは女性が欲しいのです。50代の男性が応募されることがありますが、やんわりお断りしています」
【食品販売業】同社は全国の百貨店や量販店で食品の専門店を展開するベンチャー企業。今回は大阪と京都の店舗で青果物の仕入れ担当者を募集している。 「募集年齢を50歳までとしたので、40代、50代の方の応募が全体の4割も占めました。未経験者でも構いませんが、その場合は20代、30代といった若い方を採用したいのが本音です。中高齢者の方が応募されるとき、就職したいという熱意が伝わってくるのは事実なのですが、その場合でもやはり即戦力の経験者でないと厳しいのが現状ですね」
★部課長の肩書きは役に立たず★
これらの現状について、「ワークプラザうめだ」(梅田公共職業安定所)の担当者に話を聞いた。 「大阪の完全失業率6.6パーセントという数字からも分かるように、近畿の場合、とくに中高年の再雇用状況が厳しいのは事実です。有効求人倍率をみても、35才〜44才までが0.81倍なのに対して、45才〜54才では0.31倍、55才以上になると0.11倍という有様です。つまり、10人にひとりしか就職先はないのです(注/9月末現在の数字)。このような厳しい再雇用状況について、再就職先を探す40代、50代の人には『定職があった時と同じ条件での再就職先はありませんよ』
と、まずはアドバイスしています。それまで40万円の給与があった人が、再就職先として以前と同じ業種を選び、しかも同額の40万円ももらえるケースは非常に少ないでしょう。再就職できても(給与は)その半分がいいとこではないでしょうか。一度会社を辞めたのですから、給与等の条件は新入社員と同じです。しかも違う職業を選ぶとすると、一から仕事を覚えるわけですが、年齢がかさむと理解力ひとつとっても若い新入社員には負けてしまいます。なかには『私は前の会社で部長をやっていました。部長ができる再就職先はありませんか』と云ってくる人がいるのですが、部長や課長は役職であっても専門的な技能ではありません。中高年にとっての再就職は、よほどの技量や専門知識がない限り、難しいのが現状です」
★貯金を切り崩して生活★
筆者が次に訪れたのは、大阪市中央区にあるハローワーク大阪東。ここは府内で最大規模の職業安定所である。そのため求人検索用のパソコンも全部で115台が設置されている。筆者が訪問したのは週末金曜日の午後だが、少しでも条件の良い求人を探そうと数多くの人がパソコンの画面に見入っていた。ざっと見渡してみると、半数以上が40代、50代とおぼしき男性であった。次の職を探しているのか、背広姿のサラリーマンらしき人の姿も見える。
ここでも職探しの人に話を聞いてみた。まずは、東大阪市内で旋盤工の仕事に就いていたという40代後半の男性。 「ウチの工場、2ヶ月前に倒産したんですよ。親会社は大手の自動車会社なんですが、ウチはその曾孫受けみたいなもんですわ。不況で自動車も売れなくなったのか、コストダウンばかり強いられて、儲けは雀の涙ほど。その割に納期は厳しく、徹夜作業もありました。私は経営者ではないですが、資金繰りが厳しくなっても銀行は知らん顔するどころか、『追加担保出せ』とか『これ以上の手形割引は無理』と冷酷な仕打ちを受けたようで、結局倒産してしまいました。早速安定所を訪ねて同じ職種を探しています。求人数はそこそこあり面接も受けるのですが、なかなか決まりませんわ。経営者は30代くらいの経験者が欲しいようで、私くらいの年齢になると給料がかさむせいか、採用は難しいです。給料をぐっと下げれば就職出来ないこともありませんが、高校受験の息子がいるし、どうしようか迷っています。いまは失業保険と女房のパート代、貯金を切り崩して生活している有様です」。
もうひとりは、出版会社で編集者をやっていたという40才の男性の話。「10人ほどの小さな出版社でしたが不況で経営も思うようにいかず、今年8月、退職金が出るうちにと、思い切って退職しました。職安で求人を見る限り編集の経験が活かせる仕事は皆無ですね。あっても、受験書の訪問販売くらいなもんです」。「退職してから1ヶ月後に特許事務所に就職したのですが、労働時間が極端に長い割に未経験者だからと給料も10万円台と安く、1ヶ月で辞めました。いまは業種にこだわらず仕事を探していますが、他に専門的な技術がないためか、あっても軽作業か営業職しかありません。一度、月給40万円という食品販売の仕事があり面接を受けに行きましたが、ノルマが厳しそうでこちらから敬遠しました。あとで知人に聞くと、このご時世に月給40万、50万円と謳っている会社はいつも募集をかけているそうですよ。労働時間やノルマが厳しいため、人の入れ替わりが早いためだそうです。職安の紹介でもう10社以上は面接に行っていますが、すべて全滅。焦っても仕方ないのは分かっていますが、今後の家族の生活を考えるとやはり不安でたまりません」。
★関連会社行きを断ったが・・・★
ところで公共職業安定所には、課長以上の管理職を経験した人を対象にした人材銀行なるものがある。大阪市中央区にある大阪人材銀行もそのひとつ。筆者が訪ねたときは土曜日の午後とあって、広いフロアには10人程度の元管理職がいるだけ。だが、職員に聞くと平日は結構人で溢れているそうである。ここを訪れた50代の男性に話を聞いた。 「某都市銀行に勤めていましたが、支店勤務を最後に55才で辞めました。役職は次長でした。勤めていた銀行では55才を越えると関連会社に出されることが多いのですが、給料は銀行員時代の半分。それでも仕事があるだけマシなのでしょうが、金融一筋でやってきたのに慣れない職場でストレスがたまると、先輩に聞きました。それで銀行が勧める関連会社行きを断り、退職に踏み切った次第です。金融の知識を活かし、管理職というよりコンサルティング的な仕事が出来ないかと想像していましたが、職員さんの話を聞くと現実は厳しそうです。まだ登録したばかりで職探しはこれからですが、一流銀行員のプライドを捨て、一からやり直す気構えで頑張ろうと思っています」。
小泉内閣の掲げる「聖域なき構造改革」は、銀行の不良債権を処理し、外務省の不良官僚どもを一掃する代わりに、国民にも痛みを分け与えるものである。 だが、その構造改革もかけ声で終わりそうだが、国民への痛みだけは終わりそうにない。