| 日本時間の10月8日、ついにアメリカは、アフガニスタンにいるテロ組織に対する攻撃を始めました。その日はアメリカの暦で「コロンブスデー」。米軍基地内のオフィスはすべて休みでした。9月のテロ事件後とはまったく違い、一見何も変化が無く、平穏に見えた横須賀基地周辺。それとは対照的に、アフガニスタンからは悲惨な様子が次々に伝わってきます。誤爆によるNGO職員や、一般市民の被害。戦争は容赦なしに、悲劇を生んでいます。前回に続き、米軍基地に詳しい日本人女性二人のメール交換を紹介し、米軍攻撃後の様子を伝えます。
(田中敦子、編集部)
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| A子さん… |
横須賀米軍基地に勤めるアメリカ人の夫と横須賀に住む。
二人の息子はカリフォルニア州の大学に通う学生。 |
| B美さん… |
4年前まで基地に勤務。7才になる息子が一人。
横須賀生まれの横須賀育ち。夫は基地には全く関係のない仕事をしている日本人。 |
●A子→B美(9月26日)●
先日NYで催された追悼の集い、ニュースでご覧になったことと思います。沢山の人々の中に黄色いリボンをつけている人を見かけました。胸が締めつけれられそうでした。「まだ生きて帰ってくることを待っている」と訴えているんですね。湾岸戦争の時にベース内のハウジングを通ると多くの家々で黄色いリボンを結んでいましたよね。公園のサクラに木々にも黄色いリボンが結ばれていたのを覚えています。
24日(9月)付の朝日に(沖縄の基地の)フェンスの内側なんていう記事が載っていましたが、軍の中では一般的にいわれていることが今更ながらのように記事になっているところもあって、とりようによってはこんな書き方をしてドラマチックな記事になるのかと驚きました。遺言のことです。委任状だってそうですよね。軍に入った途端、または結婚する時には委任状や遺言のことを必ずやりなさいっていつも言っているはずでしたよね。結婚セミナーの時に、そのこと話したでショ? なんだか不思議な感じがしました。でも読んだ時には「わあ、そうなんだ」と思ったものの、よく考えてみると軍の中では日常茶飯事のことなのに…。
何年か前にアメリカ人の友人が、日本人の危機管理体制が余りにもいい加減で「これでは日本は自滅してしまうよ」と言っていたことを思いだしました。でも何かないと行動を起こさないのが常ですものね。サリン事件があったにもかかわらずそのことだけに対する危機管理。自分の所ではあまり関係ないかなぁ…程度の危機管理。予防への啓発。それを徹底する難しさ。日本の抱えている問題は大きいですね。B美さんの言われるように狂牛病が本当にいい例ですよね。
間もなく長男の21回目の誕生日が来ます。あと1年のうちに彼はアメリカ人か日本人の選択をしなければなりません。この状態が長引いて、もしベトナム戦争のように徴兵制度などが制定されるとなると(もちろんそんなことが絶対起こらないことを願っていますが)、長男にも次男にもアメリカ人として責任を果たさねばならないことになります。親としてはもちろん子供が無事で健康であることだけを願いますが、一時しのぎの為に日本の国籍を選択するようなことだけはやめなさいと言うつもりです。彼等がほんとうになりたい市民権を維持すべきですから。アメリカでの生活を続けてきて長男自身も、アメリカと日本の長所、短所がよく判りかけてきたみたいです。日本で日本人として暮らすことは彼にとって実に難しいと言うことは休学した時に思い知らされました。アメリカで暮らす分にはアメリカ人であろうと日本人であろうと難しさというのは余り変わりないと思います。日本の人種差別は、無意識のものですのでよけい手に負えないですね。
●B美→A子(10月6日)●
自然災害などで自衛隊は活躍するけど、一体、その任務ってなんなの? 学校で習いましたっけ?? 私は長井出身ですぐ近くに武山の駐屯地がありますが、同級生は誰一人少年工科学校に入学してません。どういう目的で自衛官になるんだろう?
あと、自衛隊員も入隊したら、遺書とか用意するのかしら? 日本は印鑑があるから法的な書類は奥さんが管理できますが。
「一国平和主義」とは的を良く射た表現です。経済、産業、食品などにおいて、日本だけでは成り立たない現在、他国と共存していかなくてはいけません。日本だけ安全で平和なんてありえません。米軍がいることで、確かに日本人が迷惑になる問題は多いです。沖縄の問題や環境、騒音、日本からの多すぎる金銭的援助など、私も怒りたくなることはいっぱいです。
でも、米軍からの恩恵もたくさん受けています。もし、日本が他国から攻撃されたら、米軍は必ず日本を守ってくれると信じてます。もちろん、アメリカは自国の国益を考えて日本に駐留してます。でも、まだ世界は不安要素がいっぱいの現在、米軍が全部撤退したら慌てふためくのは日本ではないでしょうか? 認識のズレですよね。米軍は日本を守ってあげているのにと言い、日本人は米軍がいるから迷惑を受けるし、テロなどの危険にもさらされる…と。地球がどこも平和になれば、米軍はさっさと喜んで引き揚げると思います。私も母として、自分の子供を戦争に行かせたくない、そして戦争で命を落としてほしくないと切実に思います。
最初、ワルモンはビンラディン氏だけかと思ってましたが、タリバーン政権のことを知るにつれてその思想が全く理解できません。イスラム教にも反した行動をとっているのに、当事者がいいように解釈しているだけではないですか! アフガニスタンの状態はこんなにもひどいとは…。愕然とさせられます。
戦争が二十数年以上続いているとはいえ、ひどすぎますね。こんな政権では国が発展するどころか、無政府状態で滅びてしまいます。戦争で人口も半分以下になったと新聞で読みました。女性の人権はないし、愛も希望もない生活。それでも、30代の女性の中には教師や医者の知識を持っている人がいるのだから、絶望ではないと思います。一般の市民が犠牲にならず、米軍や他国軍の犠牲者も出さず、悪者だけを捕らえるという好都合のシナリオは実現できないのでしょうか?
●A子→B美(10月14日)●
近ごろは、気持ちが鬱いでいます。空爆が始まっても特にベース内の変化は私には何も感じられません。でも夫や妻が、そして父や母がそれらに参加している家族はどんな思いでしょう。初めての子供の出産を控えた新妻、小学校に上がったばかりの子供を持った母親、子供の大学の進路を決めるのに夫の代わりに相談に乗ったり下調べをしたりしている母親…。テロ事件で命を失った方々の家族も含めて、それらの方々を思うと心が重く涙が出てきます。誰一人として、戦争がしたくてしている人はいないのです。ブッシュ大統領もその一人であることには間違いないのです。近頃ブッシュさんはやつれてきましたね。頬がこけてきましたし、Yシャツの首廻りも心無しかゆるめです。
ブッシュさんだけではなく、小泉さんも疲れが見えますよね。自衛隊派遣のことを始めとして山と積まれた問題の解決をしなくてはならない責任の重大さ。各国の首脳のためにも、よりよい判断が、行動が出来るようにいつも祈っています。
大橋巨泉との国会での質疑応答がありましたが、"Show the flag"の訳についてのことで、まるで大橋巨泉が英語に精通しているように(しているのでしょうが)話していましたが、夫にその意味を聞いてみました。彼が言うには、大橋巨泉のような意味のとり方をするなんて聞いたことがない。戦争の時に使う言葉ではないけれど、船が他国の港に着いたときにアイデンテティを示す時に"Show the flag"す。だから小泉さんの解釈の仕方におかしいところはないと思うけど…という意見でした。
TVではいろいろな人たちの意見が放送されますが、なんだかんだと言っていても所詮は他人事に過ぎないのです。朝、時計代わりにつけるTV放送で芸能ニュースをやっていました。そこに人気のある若い俳優が今回の空爆のことを質問され、薄笑いを浮かべながら彼の言ったことは「ブッシュさん、いい加減にして下さい」。ということで”彼も戦争に反対している”意見を持っているそうです。何と軽薄な、思いやりのひとかけらもない、聞かれたから一応カッコだけつけている人間だろうと驚きました。彼は、あの貿易センタービルで命を失った、ワシントンDCやペンシルバニア州で命を失った人々や家族のことを一度でも思いやったことがあるのでしょうか?
9・11 のことを考えるとただやたらに『戦争反対』などという言葉は出てくるはずがないと思うのは私だけでしょうか? もし自分の家族が、無謀運転をする車にひかれて命を失ったら、犯人を捕らえてそれなりの措置を取りたいと思わないのでしょうか?
確かに戦争は沢山の犠牲が伴います。それも罪のない人たちが…。でも今回のテロ事件で罪のない人たちが何千人と犠牲になっているのです。アメリカ人だけならアメリカだけの問題でしょうけれど…。
驚いたことに「日本には関係ない」と言ったある党の党首である政治家がいたそうですが、世界中六十数カ国の人々が犠牲になっているのです。私の友人の御主人が(日本人の御夫婦です)「戦争はいけないというならば、テロリストをそのまま見過ごして彼等のなすがままにさせるというのだろうか」ということを言われていました。私もそれを聞きたいです。戦争反対を唱える人たちは、テロリストを撲滅するよい対策でもあるのでしょうか?
私はここまで書いてきて、自分がまるで諸手を挙げて戦争賛成しているみたいですが、決してそうではないことを付け加えさせて下さい。B美さんもそうだと思うのですが、もし戦争をせずにテロリストを逮捕できる方法があるなら、それにこしたことがないと思いながら、この状況を是認しなければならないというのは苦しいことですね。9・11 以降も様々な所でテロ行為が勃発しています。罪を憎んで人を憎まずといわれますが、私はテロ行為への恐ろしさよりも、彼等に対する憎しみの方が強くなってきました。
日本は『平和ぼけ』をしていると耳にしました。『ぼけている』のではなく『知らない』のです。映画やTVのニュース、ビデオゲームを通してでしか、私たちの大半が戦争を知りません。老人大国の日本であっても、現役である国民の殆どは戦争体験がないですもの。アフガニスタンの子供達は平和を知ることなく今に至っています。その子供達が平和の素晴らしさを知らずにこのまま人生を終わることのないようにと強く願います。
"Show the flag" 東京湾に浮かぶ軍艦「はたかぜ」の船尾(左端)には旭日旗がはためいている
=横須賀ヴェルニー公園より