[ 目 次 ]      月刊・お好み書き 2001年9月号


アイデアで乗り切れ

風俗最前線

 小泉総理は人気に乗じて「聖域なき改革」を声高に叫んではいるが、不況は深刻の度を増すばかり。企業倒産が相次ぎ、失業率も5パーセントを越えてしまった。さて、不況の波は風俗業界にも及んでいる。いまやその王様といえばファッションヘルス。本番こそないが、うら若き乙女が男の自慰行為をお手伝い。参入する業者も数多いが、いつのまにか閉店の憂き目にあう店舗も数知れない。サバイバルのために知恵を絞り、「性域なき改革」に取り組む欲望産業の先端を取材してみた。(取材・写真/庄村有治)


風俗専門誌の編集者がいう。 「滋賀の雄琴や神戸の福原と違い、大阪にはソープランドがありませんので、風俗の中心はあくまでもヘルスです。ここ最近は風営法の改正で、女の子をホテルや自宅に宅配するデリバリーヘルス(以下デリヘル)も増えましたが、やはり人気があるのは店舗を構えたファッションヘルスでしょう。ただ不況もあって、新しい店ができても次回行くと消えていることも珍しくありません」

 「ここ最近、特に人気があるのは、やはり熟女系のヘルスでしょうか。不況で夫の会社が倒産し、住宅ローンを支払うために妻が稼ぎに出る、というパターンもよく見聞きします。いまは不況で買い手の方が強いですから、おのずとホステスの質も高くなっているようですね。とくに熟女系の場合、夫の代わりに妻が生活費を稼いだり借金を返済しようと必死ですから、自ずとサービスにも力が入るようです(笑)。それと、最近は女性に甘えたい男性が増えたことも熟女系ヘルスに人気が集まる一因でしょう。もちろん、10代、20代の若いホステスが集まるヘルスも人気がありますが、店側がサバイバルを考えるなら、料金体系、サービス内容、ホステスの質等、これらいずれかで他店との差を出さないと厳しいでしょう」


★マダムは高級志向?

「び・妻恋人」の
藤岡あやオーナー
 大阪の性風俗のメッカ、市内西中島。いまから10数年前、大阪からソープランドの灯が消えたあと、ワンルームマンションで女の子と遊べる「マントル」という風俗がこの地に出現した。いまでは、ファッションヘルスの看板がいたるところに見られる関西屈指の性風俗地帯だが、その西中島の中心、阪急西中島駅から徒歩1分の場所に「び・妻恋人(さいれんと)」という熟女系ヘルスがある。 この店のオーナーが藤岡あやさん(43)。同店には20代後半〜40代の人妻、熟女約10人が常時待機している。

 「特段、変わったプレイやサービスはありませんが、当店では気だての優しい熟女が勢揃いしています。もちろん、見た目もレベル以上。おかげで、ほとんどがリピータ客です」(藤岡さん)。

 不況にもかかわらず、藤岡さんの「び・妻恋人」で遊ぶ客は途切れることがない。まさに不況知らずの勢いだが、その秘密は果たしてどこにあるのか。 「私の店の経営哲学は、単なる射精産業ではない、ということに尽きます。つまり、客が横になって性欲を満たして終わり、といった風情のないものとは異なります。ウチの女の子がお客さまに接する態度は、恋人か旦那さまのようなそれ。惚れた男に接するように、女の子からは深い情を感じてもらえると思います。確かに、最近では10分2000円、3000円台といった安価なヘルスが数多く出店していますが、それこそ射精して終わり。お客が本心から満足しているかは疑問です」

熟女系ヘルスでは
こんなマダムがお相手を
 「また、安売り戦争に突入している牛丼屋と同じで、そのような安売りヘルスは客単価を下げた分、回転率を上げないと利益が出ない。必然的に周りの競合店も安売りに参戦するので、さらに値を下げないと客が来ない。女の子も数をこなさないと実入りが少ないから、自ずとサービスも悪くなる。その結果、リピータは減り客足も鈍る。こうなると、まさにデフレ・スパイラルで、行き着く先は赤字の果ての倒産。そのため、ウチはあえて逆手を取って高い価格を設定し、利益も十分出るようにしています。客層も30代から50代のオジさま族が中心で、客単価は2万円前後でしょうか。お客さまもゆっくりと時間を過ごせ、女の子もリラックス出来る分、サービスの低下は少ない。しかも女の子の収入も多くなるので、ますますヤル気が起こる。ヘルスの安売りは百害あって一益ありません」

 まさに量より質を重視する藤岡さんのヘルス戦略だが、むろん、新しいニーズを掘り起こそうと斬新な企画も忘れていない。

 姉妹店の「かく恋棒(れんぼう)」(大阪市天満)は20代の女の子が中心のファッションヘルス。このギャル系と熟女系のヘルスがまさに合体、若い女の子と熟れた人妻がお相手してくれる3P企画を特別に用意しているとか。名付けて「親子丼プラン」。 「値段は16000円からで、期間限定の9月から1ヶ月を考えています」とはオーナーの弁。まさに、秋の味覚にふさわしい美味しい企画。賞味期限があるので、お早めにということらしい。


★牛丼コースで生き残れ!

 「シティーエンジェルス」はデリヘルの店である。ただし、電話ボックスに置かれた怪しいチラシにコールし、独りわびしくホテルでひたすら女の子を待つデリヘルではない。同じデリヘルでもこの店は、大阪市内5カ所に店舗を構え、客はそこで直接女の子をセレクトできるシステムになっている。ちなみに同梅田店は、ニューハーフの専門店。大阪地裁のすぐ近くにあり、周囲は弁護士や司法書士事務所が軒を並べる法律村。ここだけ意表を衝いてお堅い場所にあるが、他の十三、京橋、ナンバ、京都の各4店舗は、いずれもラブホテル街の近くにある。

牛丼プランを考えた
尾山プランナー
 同店のプランナーである尾山一義さん(45)は言う。

 「このシステムの良い点は、客にとれば、好みの女の子が自分で選べることにあります。既存のデリヘルの場合、ホテルで長い時間待った挙げ句、好みのタイプと違う女の子が来ることがあるでしょう。キャンセルすれば時間の無駄だし、女の子も気分が良くない。当店の場合、客が店舗に直接出向くことで、写真ではなく女の子と直接会うことができます。気に入った女の子がいれば、その場でお持ち帰りが出来ます(笑)。また、女の子にとっても、どんな客が待ちかまえているか分からないホテルに行くより、一度店に来てもらった客のほうが安心な面もあるというわけです」。アイデアと防犯面の両方で他店との差別化を図ったというわけだ。

 尾山さんも安売りヘルスとは一線を画する戦略をとっている。「他店が60分1万円台の安売りを仕掛けてくる中、当店では60分2万2000円、90分3万3000円と、やや割高感があるのは事実です」。 その理由はこうだ。

 「ひとつには、女の子のヤル気を引き出す目的があります。通常、店と女の子の取り分はフィフティ・フィフティ。つまり折半なのですが、60分2万2000円だと、これだけでも1万円以上の実入りがあるわけです。しかも、女の子は1日1万1000円の会費を店に支払ってもらえれば、リピータ客が女の子に支払うお金は、すべて女の子の取り分となります。たとえば、1日に10人のリピータ客がついたとして、2万2000円(60分)×10人=22万円がすべて女の子の実入りとなります。これだと女の子はリピータ客を増やすために俄然ヤル気が出るし、健康面などの自己管理も出来るというわけです。彼女たちがサービス満点となる分、客も満足するということです」 「店の取り分は女の子一人につき1万1000円の儲けですが、女の子5人いれば5万5000円の儲けとなるし、初回客なら売り上げは折半ですから、店側も十分潤うというわけです」

シティーエンジェルスの
「よしの」ちゃん
 「その肝心のサービスですが、60分は〈牛丼コース〉、90分は〈天丼コース〉と呼び、女の子は実際にY屋やM屋の牛丼や天丼を買ってホテルへと向かい、客も腹ごしらえをしてから下半身も満たしてもらいます(笑)」 「計算では、1日に一店舗あたり20人も入ればペイできる仕組みになっています。ひとつは売上単価が高いこともありますが、人件費、固定費を下げる努力をしています。各店舗当たり、男性スタッフは3人。他のデリヘルですと、女の子をホテルへ送迎する車と運転手を用意していますが、当店の場合、マーケット調査から各店舗ともホテル街にほど近い場所を選びました。利便性のある場所を選んだ結果、女の子と客は徒歩数分でホテルへと行けるのです。そのため、車も運転手も用意していませんので、その分の固定費が浮いてきます。風俗だからといってドンブリ勘定になるのではなく、儲けを出すためには他の企業同様、考え抜いたアイデアと徹底的な経営計画が必要なのは言うまでもありません」

 さて、そのシティーエンジェルスのオープンは9月1日からだが、オープンを記念し、17日から21日の5日間(各店舗で1日ずつ)、先着200名を対象に目玉企画を執り行う。牛丼の安売り戦争にからめ、いまどきの安売り価格である280円ポッキリ(ただしホテル代は客持ち)で、60分2万2000円の牛丼コースを堪能してもらおうという斬新企画だ(〈牛丼コース〉のみ。ただし、牛丼は付かない)。「このサービスだけで2千万円以上の出費になりますが、広告宣伝費だと考えています」(尾山さん)。
 ホンモノの牛丼安売り戦争にはサラリーマンが昼時に群がったが、果たしてこの企画、片手に280円を握りしめ股間を膨らませたサラリーマンがまたしても参戦するのかは、定かではない。



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