[ 目 次 ]      月刊・お好み書き 2001年5月号


上海姑娘(クーニャン)がやってきた。(上)

日本語学科生も大阪弁は習わず?!

 4月の5日から12日までの一週間、中国の上海同済大学の学生が私の家にホームスティでやって来た。同大学と池田ホームスティ友の会の共同企画で今回は同済大学の学長を含め総勢23人の日本語学科の学生が池田市にホームスティにやって来たのだ。 (山脇 信成)
上海同済大学 1907年、上海に在住していたドイツ人医師により医学学校として創立、現在は医学をはじめ工学、建築学と理数系を得意とする学校。昨年に上海鉄道大学と合併した。(インターネットから)
池田ホームスティ友の会 1982年発足 主に大阪大学や大阪外国語大学に留学に来る学生たちのホストファミリーとして活躍。昨年も同済大学と合併するまでの上海鉄道大学の留学生たちをホストファミリーとして受け入れた経緯がある。


ふぁふぁ(中央)たち上海からの女子留学生らに
囲まれてご機嫌の筆者(右から3番目)


● なぜ、留学生がうちに… ●

 うちの母が月に一度、自宅で手作りボランティアの集いを行っており、そのメンバーの中にホームスティ友の会の会員さんがいて、その人に「今度は23人も来るし、山脇さんところは部屋が空いているからお願いします」と頼まれて母も私も最初は考えたのだが、「日本語ができるし、中国の人は宗教上食べられないものはないんだから、大丈夫!」ということで引き受けることになった。我が家には「日本語ができる」ということが口説きの決め台詞になったのだ。
 池田市の規模のように人口がわずか10万人の超赤字弱小自治体が一度に23人もの留学生のホストファミリーをすることは珍しいようだ。来日する一週間ほど前に打ち合わせがあり、母が商工会議所へ。打ち合わせ、というのは、23人をそれぞれどこの家庭が担当するか、部屋割りでなく、家庭割のこと。新米であるうちの母はベテランさんより早く選べる権利があったらしい。
 姓名・性別だけの名簿は事前に手渡されており、学生19人中何と16人が女性、と圧倒的に女の子が多かったのと、「女の子だったら私も話し相手になれそうだろうから…」という隣に住む義妹からのに声で女の子を担当することはわかっていた。


神戸の中華街を訪ねたふぁふぁたち
● 母が引いて来たふぁふぁ ●

 母が引いて来た(少し言葉が悪いかもしれない)のは、ふぁふぁ。という学生、そして、近所のOさんは、しょうしょう・えぃえぃ、というふたりの女子学生を担当することになった。実名を出してもいいのかもしれないが許可を取っていないこと、そして、書いても絶対に読めないだろうから平仮名で書いておく。
 母がふぁふぁを選んだ理由は、ひとりっ子政策の中国の中で家族構成の欄を見たら「姉」と書いてあったからだそうだ。
 一方、私は連日のようにスポーツ誌でイチローや新庄の活躍を見ていて直接にメジャーチームのサイトを見たくなったのと、「日本語ができるから大丈夫!」と言われて引き受けることにしたものの、「おはようございます。こんにちは。さようなら」と、その程度だったら、どうしよう! とはっきり言って心配だったので、英訳ソフトを買って来て、慌ててパソコンボランティアの中学生の子にそれを設定してもらっていた。


● お世話になります、お兄さん ●

 4月5日(木)夕方、母がついにふぁふぁを連れて帰って来た。
 「こんにちは、お世話になります。お兄さん」。少しリズム感が悪い日本語だが、その明るい笑顔から発せられる日本語を聞いた瞬間に私の不安はすっかりと消え去った。
 言語に障害がある私は最初から口だけの会話ではふぁふぁと話すことは難しいだろうと、簡単な自己紹介を書いて、念のためにそれを英訳ソフトで英文にしたものとどちらも手渡した。
 実は大阪弁はまったく英文にはならず、原文を何度も書きなおして、文法に沿った標準語の日本語を作るのにはずいぶん苦労した。 


● 初めての食事は天ぷら ●

 さぁ、ふぁふぁにとって初めての日本で食べる食事は「天ぷら」。何の打ち合わせもしていないのに偶然に近所のOさんところも同じメニューだ。聞いていたとおり、エビ、イカ、シイタケと何でも抵抗なく食べている。
 酒好きの私の友人、Mくんが久しぶりに呑みに来ておりふぁふぁに酒を薦めたのだが、中国の女性はあまり酒を呑む習慣がないらしい。簡単な日本語を使って少しずつふぁふぁとの会話が進んで行った。


● あかんってどういうこと? ●

 ふぁふぁの食事があまり進んでいないことを気付いた母が3歳の甥を呼んで耳打ち、「お姉ちゃんもっと食べなあかんでぇ」と普段から愛想がいい3歳児が異国からやって来たかわいいお姉ちゃんに声をかけた。
 少しだけ驚いた表情を見せながら「お母さん、あかんってどういうことですか」と、大阪弁がダメなのは英訳ソフトだけではなかったのだ。いくら日本語学科の学生でも大阪弁までは習わないわなぁ。
 「中国でも若い女性はダイエットするんです」とのこと。どうやら天ぷらがまずかったわけではないらしい。


● 飲酒に年齢制限なし? ●

 食事が終わって、私はノートを持ち出してふぁふぁと半分筆談を交えて話し始めた。まずそこにいた人の名前を書いて、それを中国語読みしてもらうことにした。
 山脇信成は「サンシェイシンチャァン」、公代は「ゴンダイ」、隆一は「ロンイ」、陽子は「ヤンスゥ」と読むそうだ。ちなみに酒好きのMくんこと、剛は「ガン」と読む。
 「中国ではお酒は何歳から呑んでもいいの?」と聞くのだがどうも話がかみ合わない。「男性は呑みます。しかし、女性は呑みません」と、こっちは(何歳になったら酒が呑めるの?)と聞いているのだが会話が止まってしまう。私がノートに、「年令、age、法律、law、規則、rule」といった文字を書いて行くのだが、どうしても通じない。
 「男の人なら何歳の人でもお酒を呑んでも処罰はされないのですか」という聞き方をした義妹の聞き方がいちばんよかったらしく、「そうです。隆ちゃんがお酒を呑んでも怒られませんよ」と、どうやら中国では飲酒に対する年令の規定はないらしい。
 法律という言葉は理解できていても、それがなぜ「酒」に結びつくのかがわからなかったようだ。それが「異文化」なんだろうなぁ。どうやら、酒を自分で造ることも自由 らしい。


● 一人っ子政策なのに次女 ●

ふぁふぁ、えいえい、しょうしょう、3人の上海娘が食卓を囲む
 それから母が今回なぜ、ふぁふぁを選んだのかを説明して中国のひとりっ子政策について聞いてみることにした。 「中国のひとりっ子政策は私が生まれた1980年からの施行です。あと、半年母の妊娠が遅ければ私は生まれて来なかったのだと思います」 う〜ん、なるほど…。これは私の推測だが法律というものはいくら国の権力が強い中国(ちょっと問題発言?)でも、立法と同時に施行する訳にはいかない。たぶん、今回来日した学生のふぁふぁの他の両親たちは立案の段階で自粛したのではないだろうか、やっぱり、施行後はふたり目のこどもを産むと政府から罰金が課せられるそうだ。少し私の記憶が曖昧なのだが確か2000元の罰金だそうだ。日本円にして、3万円程度。上海の大学出の初任給とほぼ同額。
 「3人目になるとどうなるの?」と聞きたい気持ちはあったが、まず、3人目は、あり得ない、と思ったので聞かないことにした。(つづく)




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