| もうすぐクリスマス。神戸の夜の街を彩るルミナリエやディズニーランドのファンタジックな飾りつけもいいけれど、今年は文楽はいかが? ミスマッチに思えるこのふたつが合体した「クリスマス文楽特別公演 ゴスペル・イン・文楽」が東京(12月18日安田生命ホール)
と大阪(12月20日近鉄劇場小ホール)で公開されます。その中で三味線に合わせて義太夫を語る豊竹英太夫(とよたけはなぶさだゆう)さん(53歳) に演目のひとつ「イエスの生誕と十字架」ができるまで、又公演までのいきさつなどについてうかがいました。(田中敦子) |
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| 聖地エルサレムで裃を着けて義太夫を謡う豊竹英大夫 |
「文楽は江戸時代の鎖国による300年の平和がもたらした日本の代表的な文化遺産の一つです。同じく江戸時代に栄えた浮世絵の色彩感覚をとってみてもゴッホが絶賛したほど水準の高いものなんです。ですから文楽の芸の完成度も相当高いもんなんですわ」。
文楽について熱っぽく語る豊竹英大夫さん、実は10月の半ばに横須賀の我が家に泊まってくださった。お互いに初対面だったのだが、共通の友人を介して、横須賀米軍基地のバイブルクラスに私がご招待し、200名近いアメリカ人、日本人婦人の前で義太夫を披露してもらったのだ。英大夫はクリスチャン。祖父は十代豊竹若大夫(人間国宝)だったが、若いころは大夫になるつもりはなく、小説家志望だったとか。それが大学受験に失敗した後、20歳の時に三世竹本春子大夫に入門し、その後竹本越路大夫の門下になったそうだ。
「朝御飯のおかずにならべてください」と手みやげにイワシの丸干しと薩摩黒豚の焼き豚を持ってわが家に来てくださった英大夫は気さくな大阪の芸人さんという感じ。(自宅は大阪府池田市。)夜遅くの到着だったが、今回が初の劇場一般公開となる「ゴスペル・イン・文楽」を企画するまでのことについて、またその後の反響について話してくださった。
「ほんまはこんな大変な企画したくなかったんですわ。いえ自分で言いだしたんやあらしません。去年の5月大阪のキリスト教短期大学(大阪阿倍野区)で初めてやった時に、評判がよかったんですが、その時に一緒にやった人形の桐竹紋寿(きりたけもんじゅ)という偉い方が突然数カ月前にこう言うてきたんですわ。『あれ良かったからもういっぺんやろ。今度はおれがイエスをやる』言うて。去年の時はそんなんやれるか言うて、若いもんにイエス役をやらせたんですよ。
それで企画を進め始めたんですが、不思議なことにちらしや会場のことなどトントンとことが運び出したんですわ。チケットの売れ行きも予想以上で東京も大阪もほぼ完売状態なんです。信じられません」。
賛美歌を義太夫にした「賛美義太夫」(人形なし)は、この7年間に全国の教会やニューヨークやハワイなどでも公演されてきた。作詩は私たちの共通の友人である丹羽孝さん(60歳)とともにし、(実は英語バージョンもある。)曲は伝統的な「二人三番叟(ににんさんばそう)」や「壺坂」の一節や義太夫に多い切腹の場面のものを使っている。
わが家でも朝御飯の時に、みそ汁をすすりながら、「イエスの十字架」のさびの部分をうなってくださったのだが、これがなかなか聞き応えがあり、想像以上に楽しい。目の前に実際の場面がせまってくるような臨場感がある。4歳の息子もそれ以来義太夫を真似するようになったほどだ。
ところで英大夫とキリスト教との本格的な出会いは、というと子供のころに通っていた日曜学校に高校時代にまた行きはじめたことから、だと言う。
「番長と言われていたA君に銭湯で偶然会ったんですわ。目を合わさんようにしてたのにみつかってしもた。そしたら突然彼が、びびっている私に『おい林(英大夫の本名は林雄治さん)、イエスキリストって知ってるか。三位一体って知ってるか』言うんです。僕はむかし日曜学校に言ってましたから、なんとか知ってること答えたら、『そんならお前もいっしょに教会来い』って言うんですな。彼はなんとクリスチャンになってたんですわ」。
「そこで連れて行ってもろた教会に同い年の女子高校生がいた。その子がめちゃめちゃきれいだったんです。彼女目当てに教会通うになりました」。その女子高校生が今の英大夫の 妻 真理子さんである。
彼はそれからの自分の事を「イチクリ(いちおうクリスチャン)だった」と言う。丹羽孝さんから私に送られてきたメールには「彼は今は改心していますが、以前は飲む・打つ・買うの悪の三位一体を実践していたツワモノです」と秘密情報が記されていた。家庭も崩壊寸前までいっていたとか。そんな頃、彼自身がC型肝炎にかかった。入院も2か月間し、舞台も休まなければならなかった。「もう絶望的な状況だったんですが、その時に一からやりなおそうと思ったんです。そして聖書を読みなおし始めた。それで自分の仕事である義太夫を通して神様に感謝できないかと思い始めたんです」。 これが「賛美義太夫」の始まりだ。
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1995年阪神大震災・仮設住宅
( 西宮市) でのボランティア文楽公演。
ホームページより。
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阪神大震災の時には仮設住宅でも公演した。翌年の1996年には被災地の淡路島の教会でも「賛美義太夫」を熱演。クリスチャンではない義太夫のファンの人達がたくさん聞いてくださり、喝采を受けた。
なんと12月18日にはCDも発売されるという。付属の推薦文はテレビでも活躍中の大阪出身のジャズ&ゴスペルシンガー綾戸千絵さん。ローマ法王にもこのCDを聞いてほしいとか。
問い合わせは、豊竹英大夫さん(TEL&FAX 0727−61−8538)まで。
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昭和22年大阪市生まれ。
高校時代は東京で過ごす。
東京都小石川高校卒業。
昭和42年竹本春子大夫に入門。
昭和44年春子大夫の死去により、人間国宝竹本越路大夫の門下となる。
この12月18日、20日に東京と大阪で「ゴスペル・イン・文楽」を上演する。
1年のうち330日位は早朝に教会で祈っているというクリスチャン。そのために家も引っ越しした。 |
| 写真は「C.work」11月号より |
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