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月刊・お好み書き 2000年9月号
石油のとれない中東の国。
国際協力の現場で
野の花の国ヨルダンから(上)
夏休みにJICAの研修で滞在中
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| 中東と聞いてまず思い出す国はどこでしょう?ヨルダンを一番に思い浮かべる人はないと思います。私はサウジアラビアやイスラエルを真っ先に思い浮かべました。それから、中東と聞いてまず思い出す産物は何でしょう?どの人も「石油!」と答えるに違いありませんが、ここヨルダンでは石油がまったく取れません。このように極東に住む日本人の私たちからは遠くて、あまり知られていない中東にある小国ヨルダンについて、人々の生活や文化などについて国際協力の現場から3回にわたってお伝えしたく思います。(津田加奈子・アンマンにて) |

アンマン市内の風景

最近、国内のいたるところにとても大きくかっこいい看板が立ち始めました。アラビア語で大きく「アル・オルドン」と書かれており、その横には看板によって違いますが、口ひげのおじさんや、にっこりわらった少年、美しい知的な女性などの顔写真がアップで写し出されて、オルドンの文字の下に「小さな国、大きなアイデア」という政府のキャッチフレーズがあります。
★北海道ほどの大きさ★
この看板に象徴されるようにここヨルダン(正式名称ヨルダン・ハシミテ王国、アラビア語ではオルドンと発音する)は日本の北海道ほどのとても小さな国でしかも国土の8割は砂漠や岩山や渓谷です。西はイスラエルと西岸地区と呼ばれるパレスチナ人の住む土地、東はイラク、北はシリア、南はサウジアラビアに囲まれています。全人口は約500万人。そして、先ほども述べましたがここヨルダンは産油国でないために、湾岸諸国に比べると経済をささえる資源や産業が乏しく、非常に小さな国であることがわかります。
そんな小さな国ですが、「大きなアイデア」で国づくりをしていこうと政府は国民全体に語りかけているのです。現在の政府の「大きなアイデア」のひとつが「外国からの援助」なのです。中東諸国内で経済的に弱いヨルダンですが、特に1994年のイスラエルとの和平条約後、政治的には非常に重要な要のような国として、日本をはじめ多くの先進国や国際機関が、中東和平の手段のひとつとしてヨルダンに援助を行っています。
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「小さな国、大きなアイデア」の看板。
アラビア文字と少年の大きな顔が見える。 |
★日本の援助団体JICAとは★
日本の援助機関JICA(国際協力事業団‥Japan International Cooperation Agency) は日本政府の特殊法人で簡単に説明すると開発途上国政府への援助、特に技術協力などを日本外務省から業務委託されている機関です。JICAは皆さんからの税金が予算となり日本政府の外交政策の一端も担っている事業を実施しているということで同じ国際協力でもNGO(非政府組織)とは大きく異なっています。
★貧しい人、苦しむ人のために
何が出来るかと悩んでいた★
私は2000年7月16日から9月25日の期間、ヨルダンの首都アンマンにあるJICAジョルダン事務所にて研修を受けることになりました。これは「インターンシップ制度」と呼ばれるJICAの研修制度で、日本全土で途上国の開発に関する研究をしている修士、博士課程の学生を対象に毎年募集されているものです。
幼い頃から「宣教師」になりたいとおもい、大学中はバックパッカーとしてアフリカを友人と旅したりしながら、「貧しい人、苦しんでいる人のために自分には何ができるのか? 何もできない」と悩みつつ、卒業後は企業でOLとして働いていました。この期間にさまざまな方に出会い、特に技術を持たない私でも国際協力の現場でなにかできる、というアドバイスをいただき、まずは、若いうちに勉強しなさいという勧めをいただいて今現在の大学院に今年から進学しました。
大学院においては保健医療分野の中でも特に、途上国で虐げられている女性のためになることがしたくて、また女性のエンパワメントは社会全体に大きなプラスの影響を与えるという事から、人口問題、母子保健、家族計画、AIDSなどの性感染症問題などをふくむ 「リプロダクティブヘルス(日本では、『性と生殖に関する健康』と訳される)分野」と「開発医療経済」について研究しているところです。
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「家族計画および女性と開発プロジェクトの一部。
クッキングクラスの様子★ |
★イスラムは一夫多妻★
2ヵ月半のJICA研修期間中にヨルダンにおける保健医療セクターの動向調査をすることになっています。首都アンマンはたくさんのものにあふれていてとても豊かに見えます。実際、他の途上国に比べて物乞いは少ないし、乳児死亡率も低く、感染症も少ないです。しかし、先日アンマンから車で3時間ほどの死海のそばの村に「家族計画および女性と開発のプロジェクト」の見学に行ったとき、都市と農村の格差が大きいことがわかりました。
そこで出会った14歳の時に嫁いできたという50歳のラヒールさんという農家のおばさんにお話を伺いました。「何人お子さんがいますか?」の問いの答えは「20人」。「えっ?」とびっくりしていると、自分ともう一人別の奥さんがいるらしく(イスラムは一夫多妻です)もうひとりの奥さんと足して20人になる、ということでした。でもつい2ヵ月前に10人目の子供を産んだところだと言っていて、わたしはまたもやびっくりしてしまいました。一人の女性が出産可能な年齢(リプロダクティブエイジ)は14歳から49歳とされていますが、このラヒールさんはまさしくこのリプロダクティブエイジのはじめから終わりまで、妊娠と出産を10回も繰り返し、10人目の子供に関してはリプロダクティブエイジを越えての妊娠出産ということになります。
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10人目の子供を50歳で出産した
ラヒールさん(左から2人目)と夫(左端)
筆者は右端 |
★重労働を担っている女性たち★
ラヒールさんはとても健康そうな女性でしたが、普通、このように経産回数が多いというのは母体にかなりの負担がかかり、女性の健康に大きく影響し、命にかかわることもあります。また高齢妊娠および出産は胎児にも大きな影響をおよぼす場合が多く、障害児や胎児の周産期死亡といった原因になります。また、ラヒールさんは「私が元気に農作業を手伝わないと夫がもう一人奥さんを連れてくることになるから、まだまだがんばらないと」と言っていました。
イスラム教が9割のヨルダンでは、子供が産めない女性や働けない女性は簡単に離婚されることもあります。都市部では1世帯に対する子供の数が3人から5人ぐらいになりつつありますが、まだまだ農村部では、ラヒールさんのように子沢山の上に重労働を担っている女性が多く、「家族計画や女性と開発プロジェクト」が実際に浸透するのに時間がかかりそうです。
来月はヨルダンの自然や人々の日常生活についてレポートします。お楽しみに!
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筆者/津田加奈子,神戸出身
1974年(昭和49年)9月28日生まれ
1997年 大阪外語大学アフリカ地域文化学科スワヒリ語専攻卒業後
大阪で3年間のOL生活を経て、
現在、横浜市立大学大学院医科学修士課程1年国際保健専攻。 |
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| 7月初旬ごろ、「みんな夏休みどこ行くの?」と私が通う教会で聞いていたところ、「ハワイ」「軽井沢」などの発言の中、津田さんは「ヨルダン」と答えてくれました。それも2か月間、JICAの研修で行くと聞き、すぐに執筆をお願いしたのです。元気のない若者ばかりが増えているように感じるこの頃、苦しんでいる人のために何かしたい、という彼女の話は私の心に爽やかな風を吹き込んでくれました。時差6時間の現地の彼女と毎日メールをやりとりして出来た紙面。ITの便利さも実感し、わくわくした夏休みでした。(敦) |
●野の花、実なる木、古代の薬ハーブ●
ヨルダンには四季があります。ただいま夏真っ盛り。夏の間は全く雨が降りません。首都アンマンは高度千メートルほどの所にあるため、気温は毎日30度を越えますが、日本とはまったく違いからっとしていて、気温50度を超える湾岸諸国からたくさんの人達が避暑にやってくるぐらいです。
このヨルダンの最も美しい季節は「春」だと聞きました。時折雪も積もるような寒い冬を越え、春には赤茶けた砂漠の荒野や山の岩肌には緑の青草をたたえ、小さな花をつけた野の花が町中をいっせいにカラフルに色づけるのだそうです。
聖書にはたくさんの野の花についての記載があります。例えばヨルダンの国の花は「黒ゆり」ですがゆりの花もいくども登場します。「野のゆりがどうして育つのかよくわきまえなさい。…今日あっても、明日は炉になげこまれる野の草さえ、神はこれほどに装ってくださるのですから、ましてあなた方に良くしてくださらないわけがありましょうか」(マタイ6章28〜30節)。これはイエス・キリストが聖書で「明日のための心配は無用です」ということを話した有名なたとえ話です。
また、聖書には、よく「実のなる木」の記載があります。その代表的なものが「ぶどう」「いちじく」「オリーブ」です。特にぶどうといちじくは今が旬です。市場に出かけても1キロあたり百円位で安く買えますが、今住んでいる家の庭にはぶどう棚があり、いちじくも食べても食べても無くならないほど実をたわわにつけて、そこからの果物が食卓に並びます。ここのぶどうは「マスカット」のように緑色をしたもので種がありますが、皮ごと食べることができ、とても甘いです。いちじくは日本で見るものと比べて大きさは半分ほど。でも味は日本で食べるのとほとんど変わらず、とてもおいしいのでついつい食べ過ぎてしまいます。
またからだにいいと言われるオリーブ油はアラブ料理には欠かせない物で、ヨルダンの人はふんだんに使います。しかし、油には変わりないわけですから、かなりのカロリー。どうりで太ったおじさん、おばさんの多いこと!
また、日本でもおなじみのハーブがここにもたくさんあります。ラベンダー、ローズマリー、レモングラス、アニス、カモミールなどは家庭のお庭で栽培されていますし、スーパーなどへ行くとキロ単位で値段がついていて、量り売りで買うこともできます。東洋の漢方と同じように、中東地域でも「腹痛にはミントティー(シャイ・マア・ナアナア)」「胃痛・吐き気にはセージティー(シャイ・マア・マラミーエ)」などという風に古代の人はハーブを疾病治療に使用していたということが考古学博物館では紹介されていました。
ハーブは現代のヨルダン人にも民間療法として広く知られています。私もこちらでは、友人がくれたラベンダーの束を部屋に置き、一日に一度は、カモミールティーを飲んで、ヨルダン人を訪問すると必ずミントを浮かべた紅茶をいただいているうちに、体の調子が整ってきたような気がします。
ぜひ、おためしあれ! |
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