[ 目 次 ] 月刊・お好み書き 2000年6月号
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点字版公式ガイドブック。
表紙には点図で太陽の塔が印刷されている
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万博と言えば、点字のガイドブックが発行されていて、私も大切に保管していた。「万博特集企画」が決まり、早速点字の本ばかりを入れてあるダンボール箱を開けて見たが見あたらない。これは大変と家捜しをしたが、どこにもない。どうやら2年ちょっと前の引っ越しのときにどこかへやってしまったようだ。地団駄を踏む思いがする。当時このガイドを製作した日本ライトハウス点字出版所(現・点字情報技術センター)にも、資料室に1冊だけ保存されているだけだった。貴重な1冊だ。
この点字のガイドブックの製作に直接携わった、お好み書き読者でもある、日本ライトハウス点字情報技術センターの疋田泰男さんに、学研都市線放出駅前の居酒屋で、点字のガイドブックを作ることになったいきさつや苦労話などを伺った。実はこの飲み屋、私がライトハウスでアルバイトをしていた20数年前、毎晩のように通った、青春の思い出がいっぱい詰まった懐かしい場所なのだ。
*60万円で1万部
疋田さんによると、ある団体から、万博協会へ視覚障害者用(点字)と聴覚障害者用のガイドブックを作るために、100万円の寄付があり、ライトハウスへ点字版の制作依頼があったという。点字版製作に使える予算は、そのうちの60万円。この60万円で1万部作らなければならない。それでなくても点字の出版物を作るのは費用がかかる。何よりも予算内で作らなければならないことが、まず最初に大きなネックになったという。
参考のために前回の開催地で作られた点字のガイドブックを見た疋田さんには、それがどうにも良い出来には思えなかった。「公式なガイドブックである以上、次回の開催地にも必ず引き継がれるだろう。恥ずかしいものを作るわけにはいかない」という責任感が沸々と涌いたという。
表紙には点図で「太陽の塔」が印刷してあり、巻末にはB5版見開きの会場案内図が付
いている。この会場図はサーモホームという機械で作られている。サーモホームというのは、いわゆる真空整形機で、凹凸のある原盤の上に特殊な紙を乗せて熱をかけながら原盤の下から吸い付けることによって凹凸が紙に移る、いわば点字用のコピー機みたいなものだ。1970年当時、このサーモホームは、東京の日本点字図書館と大阪のライトハウスに1台ずつあるだけでまだ珍しい貴重な機械だった。
機械そのものの値段も高いがコピー用の紙はアメリカから輸入しなければならず、1枚30円くらいかかるので、予算内には収まらない。そこで、国内で造られていて、サーモホームに使えて、値段が安い紙を探すことになった。凸版印刷の協力を得て、何枚もの紙をテストした結果、ようやく国産の紙が見つかり、凸版印刷が4色刷の活字を印刷してくれた。今でいう企業の社会貢献ということになるだろうか。
*点字・活字併記の触地図
ボール紙や竹ひご、糸などを原盤に張り付けて触地図を作りサーモホームにかけるのだが、印刷してある活字と点字がずれてはいけない。大変な作業だったようだが、点字と活字が併記されている触地図は、日本で初めて造られた、画期的なものだったらしい。
この地図もそうなのだが、パビリオンの案内は、全部載せるか、あるいは全く載せないか。載せる場合は、案内文は均等にしなければならなかった。触地図に全パビリオンを書き込むのは不可能なので省略してあるがパビリオンの案内は、点字で3行、仮名にすると90字で全パビリオンを紹介してある。100以上あるパビリオンの紹介を活字の公式ガイドブックから、点字で3行に縮めなければならない。また、映像を利用したパビリオンが多かったので、視覚障害者に理解できるように書き換えなければならない。これがまた、大変な作業だった。
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巻末に会場の触地図が
見開きで付けられた。
点字と活字の並記は
日本で初の試みだった
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*開幕日前日の納期
その上、1970年に入っても、出展館のキャンセルや新規申し込みが相次ぎ、その度に新たに案内文を追加したり、修正したり、削除したりという作業が繰り返され、開幕日前日の納期との戦いでもあったという。
こうして、作業に着手してから約1年をかけて「日本万国博覧会点字版公式ガイドマップ」が出来上がり、各入場ゲートと会場内に設置された身障者センターで、万博を訪れた視覚障害者に配布されたのである。
聴覚障害者用にもガイドブックが作られたと書いたが、会場内にテレビ電話が設置されていて、聴覚障害者がその電話を使って身障者センターに連絡すると、手話で質問に答えたり、道案内をしてくれたのだが、そのテレビ電話を設置してある場所などが掲載されていたという。また、会場内の案内所で車椅子を貸し出したり階段の横には必ずスロープを付けなければならないという決まりがあったりとあの時代としては、かなり身障者にも配慮されていたようだ。
今でこそ駅の券売機に点字表示があったり、電化製品や飲み物の缶に点字が表示されていたりと、点字も市民権を得たようだが、今から30年も前に、万博協会が公式に点字のガイドブックを作ったというのは、当時としては、時代を先取りした画期的なことだったように思う。(笑福亭伯鶴・S32年生)
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