12 名前: ( ´∀`)ノ7777 投稿日: 2002/06/19(水) 22:25

パチンコ板支援SS投下します。

全9レス。


13 名前: ( ´∀`)ノ7777 投稿日: 2002/06/19(水) 22:25

『ねえパパ、パチンコってそんなに面白い?』
俺の愛娘は、俺が行こうとするのを呼び止めるようにそう呼びかけた。
『ん? 面白いけどな。憐も大人になったら判るさ』
そして、こう答えた。
『んー、憐も早く大人になりたいー。パパと一緒にパチンコしたい〜』
それがこの子から聞いた、最後の言葉だった。

「・・・くそっ! 200回しても掠りもしないのかよ! 釘に何か細工してんじゃねぇ
のか!?」
やけくそになって、目の前の台をごつっっと手で叩く。
「お客さん、台を叩かないでくださいよ! 壊れたらどうするんですか!」
「・・・やかましい!」
俺の人生は荒れていた。我が子を失った日を境にして。
そんな事実があっても、俺は今だパチンコから足を洗うことが出来ない。好奇心旺盛だった
遙か昔、ビック・シューターに触れ、その魅力の虜になってもう15年。骨の髄までパチ
ンコに染まった人生を送ってきた。

「畜生・・・」
俺は痛む頬や体を押さえ、のっそりとパーラーの裏手にあったゴミ溜めから、のっそりと
這い出した。
数人の店員との大立振る舞いを演じたが、喧嘩が取り立て強い訳でもない俺ではやはり
勝てる通りはなく、ボコにされてこの様だ。
・・・判っているのだ。悪いのは俺の方だし。

誰かに糾弾されないとやっていられなかった。
心に重くのしかかったまま振り払え過去を、そしてそんな俺の生き様を、誰かに罵って
貰いたくて仕方なかった。

俺は、娘を殺してしまった。


14 名前: ( ´∀`)ノ7777 投稿日: 2002/06/19(水) 22:26

惨劇が俺を襲った、あの日。

子供の日という事で、娘に欲しいゲームソフトをねだられた。
家で待っているように言ったのだが、子供がどうしても付いていきたいとぐずって言う事
を聞かなかった。その日に限って妻は友人と外出していた事もあり、娘の面倒を任されて
いたので、家でほったらかしにしておくのも何だなと思い、一緒に車で出かけた。
そのゲームソフトが、たまたま行き付けのパーラーの景品として置いてある事をその日の
前日に知ったので、ものは試しにと1000円分だけを元手にしてチャレンジし、目的の
ソフトを手に入れられたらそれで良し、それでなくてもダメでも軍資金稼ぎに、負けたら
さっさとゲームショップに買いに行こうと思っていた。

長時間粘る気は更々なかったので、娘を車の中に待たせ、エンジンを掛けっぱなしにして
車をクーラーで冷やし、鍵を閉めた。娘には必ず後部座席でいるようにややきつめに言い
含めて置く。
これがそもそもの間違いだった。娘は連れてくるべきではなかった・・・。

その日に限って、信じられないくらい幸運の女神に愛されていた。
100円で確変が起き、速攻連チャンモードに入った。台を変えてもまた同じ。
面白いくらいに勝って勝って勝ちまくった。ゲームソフトを手に入れられる量の玉は軽く
出ているのだが、こんなに調子のいい機会はそうそうあるものではない。その後もまだ勝
ち続け、ドル箱は更に積み上がっていき・・・いつしか、ここに来ていた目的を忘れてし
まっていた・・・。
俺はその恐ろしいまでの調子の良さに、一生の運を使い切ろうとしているのではないかと
ふと思ったのだ。そして、それは現実のものとなった。

ふと我に返って時計を見ると、3時間も打ち続けている事に気付いた。娘の憐の様子が
急に不安になり、そこで打つのをやめ、目的のゲームソフトと、そのソフトが10本買え
る現金、後は煙草や妻へのちょっとしたお土産等でビニール袋を一杯にして、車に戻った。
初めは、子供は車内で寝ているものと思った。異変に気が付いたのはその直後だった。
何が原因かは、判らない。
ただ、エンジンが、止まっていた。

娘は、重度の脱水症状を起こしており、病院で息を引き取った。


15 名前: ( ´∀`)ノ7777 投稿日: 2002/06/19(水) 22:26

俺は、今住んでいるボロアパートへの道を辿る。
警察と刑務所に長い間ご厄介になって、その刑期が終えて自宅に戻ったとき、そこには
誰もいなかった。妻はもしかしたら帰ってきてくれるのでは、と淡い期待を寄せていたが、
流石に世の中、甘くはなかった。
まぁ当然だ、刑務所の中で離婚調停と慰謝料請求は済ませてあったのだから。

俺に残されたものはあるのか?
心の中からの返事は、否、であった。
ひたすら体を支配する、空虚。
よく心が壊れないものだと思う。


そんな無気力な日々が続き、近場のパーラーへ足を運ぼうと道を歩いていると。
「あの、道を教えて欲しいんだけど」
目の前にいた中学生くらいの子供に急に声を掛けられた。
無視しても良かったのだが、駅までの道順らしく、そんなに苦もなく教えられそうだった
ので、仕方なく教えてやる。しかし、違和感を感じる。うんうん、なるほどと大きな相づち
を打って聞いている少年。だが駅までの道、そんなにややこしかったか・・・?
体が一瞬緊張した事が、どうやら事態を好転させたらしい。
後ろのポケットに入れていた財布の感触が、ふっと無くなる。
・・・スリか!?
瞬発的に手を後方に伸ばすと、誰かの手の裾をぐっ、と握ることが出来た。
「くっ・・・離して!」
誰が離してやるもんか。逆にこっちに引き寄せて、首根っこを掴んでやる・・・。
と。その顔を見て。自分の目を疑った。
憐だった。いや、憐はこの世にいないが、もしそのまま成長していたらこんな感じになっ
ていただろう、その姿が目の前にあった。確認する必要はないのに、何故か口に付いて出た。
「憐・・・」
「誰だよそれ・・・えっ」
ところが、少女が俺の顔を見るなり、びくりと体を硬直させた。
見つめ合う2人の間に、妙な間が流れた。


16 名前: ( ´∀`)ノ7777 投稿日: 2002/06/19(水) 22:26

少女は、こっちは見ず、ただそっぽを向いていた。
俺に道を問うてきた奴とグルだったらしい、もう一人の少年はそそくさとどこかに逃げて
しまっている。
「で。本当、僕を警察に突き出さないって。しかもこんな所で俺におごってくれるなん
 て・・・変だよ」
と悪態を付いている割には凄く嬉しそうな顔をして目の前のナポリタンスパゲティを口に
運んでいる。
・・・もしかして、あまり良いものを食べてなかったのか?
そう思ってみると、少女の着ている服は所々黄ばんで薄汚れており、靴もかなりすり減っ
てボロボロだ。
「なぁ、何でお前俺の財布取ろうとした。遊ぶ金欲しさか?」
俺は少女に問う。
「・・・」
やはり答えない。まぁ、仕方ないだろうと思っていたが、
「・・・だって、そうしないとボスが飯食わせてくれないもん」
ぼそぼそ声で答える。
悪い事をしたときにうつむき加減でぼそぼそ言う所が、憐とそっくりだなぁ、
と詮無い事を思い出し・・・しまった、また目頭が熱くなってきた・・・。

「お前・・・ええと」
「優」
「優、はそのボスとかいう奴の所にいて楽しいか?」
は黙り込んで、楽しくなんてねぇよ、とまたぼそぼそと言う。
「いっつも殴られるし。仲間には馬鹿にされるし。でも、一人じゃ食っていけないもん」
それはそうだろう。見た目小学生くらいだろう、いや、待て。
「ボスってのは学校に行かせてくれねぇのか」
との俺の問いに、こくり、とひとつ頷く。
そうか、と答えて、俺も黙ってしまう。

・・・俺の心に背負わされた、黒い十字架が急に重くなった気がした。


17 名前: ( ´∀`)ノ7777 投稿日: 2002/06/19(水) 22:27

「・・・なぁ、優。良かったら、うちで暮らさないか?」
「あん?」
唐突にそんなことを言われたせいか、あんぐりと口を開けたままで硬直する優。フォーク
で掬ったスパゲティがぼたぼたとテーブルの上に落ちる。
その言葉はやはり衝撃的だったらしい。
さっきの言葉を言わしめたのは、こんなご時世に学校にも行けず、犯罪者の片棒を担がさ
れ続けている同情、そして中性的な容貌の優が憐に似ている事でどうしても他人事に思え
ないからなのだが、それは相手にとっては何の関係も無い事だ。
我ながら自分勝手な理由だと思う。
「・・・」
ことりと皿の上にフォークを投げ出して、しょんぼりとうつむく。
そう言ってしまってから、しまりの悪さに次に続く言葉が出てこない。
・・・その間を察した訳じゃ無かろうが、優がこう切り出した。
「あのさ。あんた・・・そっくりだね」
ポケットからごそごそと何かを取り出し、机の上に置く。
それはボロボロになり、所々折れ曲がっている写真だった。そこにはまだ今の姿よりも
一回り小さい優と、多分優の父だろう、優を肩車に乗せた男が写っている。
俺を驚愕させたのは、その写真に写っている男が、あまりに似ているからだった。
「似てるでしょ。僕の父さんだった」
そう言うと優はしょんぼりしてしまう。
優がだった、と過去形にしている所を見ると、何らかの理由で離れ離れになったのだろう。
今の境遇から考えると、多分悲しい別れ方をしたのだろうと思う。

しかし、全く不思議な出逢いだ。憐に似た少女、優と、佐竹とかいう優の父にそっくりな俺。
「優。お前が良いなら家にこい。こんな事続ける必要はねぇ」
「・・・でも、勝手に逃げ出せないよ。あそこの情報網ってすごいからすぐ捕まる・・・」
優は一瞬だけ期待するような顔をしたが、根元を括らなかった風船のようにまた元の
しぼんだ表情になってしまった。
・・・ここまで来たらもう後には引けなくなってきた。
「だったら、俺が話し付けてきてやろうか」
えっ、と優は小さな小さな、でも嬉しそうな声を上げた。


18 名前: ( ´∀`)ノ7777 投稿日: 2002/06/19(水) 22:27

俺の目の前に、「ボス」がいる。
長身で鍛えられた体躯、如何にも「俺、毎日プロテイン飲んでます」ってな感じの男だった。
「・・・で。優をあんたに下さい、ってか?
 まぁなあ、コイツ俺らの中では足手まといだし、使えねぇ奴はいらねぇ」
鼻をほじりながら、ボスは答える・・・驚いた。こいつ案外話の判る男じゃねぇか。
「・・・じゃあ、連れて帰って良いのか!?」
期待を込めてそう言うが、流石に甘かった。
「馬鹿言うなよ。だーれがただでって言ったよ。
 うーん、そうだな300万だ。明日までに300万ここへ耳揃えて持ってこい。
 そしたらこいつはお前の好きにしな」
優は期待の眼差しで俺を見る。
300万・・・俺にとっては出せるか出せないか・・・良く判らない。手持ち財産は今
100万ほど。もしローンを借りたとしてもどれだけ借りることが出来るだろう・・・。
「分割にはならねぇか?」
「阿呆。明日までにと俺は言ったぞ。それくらい出来ねぇのならとっとと帰れ」

とにかく、俺は打てる手を全て打つことにした。
今は優の苦境を何とかしてやりたい。ただ、それだけだった。
サラ金に100万。俺のダチに80万。日頃下げる事のない頭を地面に擦りつけ、ようや

集める事が出来た。
・・・あと20万。何とかして・・・そう、どこからか何とかして・・・。

「あと20万・・・どうするの?」
「どうするって言っても・・・どうもできねぇよ・・・」
2人の間に気まずい空気が流れる。
どうすればいい? どうすれば20万が手に入る・・・。
・・・・・。

頭を抱えてふらふらと歩み出す。
答えはどこに。どこにある・・・。


19 名前: ( ´∀`)ノ7777 投稿日: 2002/06/19(水) 22:27

気が付くと、俺は街の一角にある、墓地まで来ていた。リーリーリーと虫が鳴き、
さぁっと外界より少しひんやりした風が通り抜け、梢をざわざわと揺らす。
「こんな所に何しにきたの?」
「ここは・・・」
ここは、娘の憐が眠る場所だ。
一つの墓石の前に立ち、静かに手を合わせる。
「今まで黙っていたが、俺は不注意で娘を殺してしまっている。ここはその娘の墓だ。
 ・・・最近来てやらかったなぁ、憐、すまなかった・・・」
もう一度、手を合わせて、そして俺は優に向き直る。
「こんな俺だから、優をまともに育てていけるかどうかは判らねぇ。
 こっちから声を掛けておいて何だが・・・今ならあっちに戻る事も出来るぞ」
「冗談! 戻るなんて嫌。この子が死んだのは、あんたがわざと殺したんじゃ無いんだよね。
 だったら仕方ないじゃない」
あっさりとそう答える優も、手を合わせる。
「僕の父さん、自殺したんだ・・・」
優の父は多額の借金を残し命を絶った。そしてそのカタにあの男に連れて行かれた。
ぼそぼそと語りだしたそれは、優の心の傷痕であった。言い終えて、ポロポロと涙をこぼす。
「今まで、良く耐えたな」
頭をそっと撫でてやる。優が懐に飛び込んでくるのを、しっかりと、優しく受け止めた。

・・・俺は、優が泣きやむのを待って、歩き出した。行く先は、パチンコ屋。
博打に出るならば、競馬とか、株とか、宝くじとか本当ならもっと色々な選択肢があった
はずだ。だが、俺の取った選択肢は、パチンコだった。
元手を大幅に増やすのには全く向いていない。他の人が聞けば、その愚かしさに笑うだろう。
だが。最終的に決断させたのは。

『ねえパパ、パチンコってそんなに面白い?』

憐の声だった。


20 名前: ( ´∀`)ノ7777 投稿日: 2002/06/19(水) 22:28

「ねぇ、待ってようか」
「一緒に来い」
俺は即答する。置いてけぼりにする気はなかった。置いていってしまえば憐と同じく戻って
来ないような気がしたから。

残された時間、パーラーを梯子する2人。
釘を食い入るように見つめ、機種の大当たり頻度から、台に残されたたばこの吸い殻の量
まで、とにかく俺の持てる知識をフル稼働させて、
当たりそうな台をチェックする。

7番台ラッキースタートです!

5番台フィーバースタート!

15番台フィーバーおめでとうございます!

俺達は、周りが度肝を抜く程信じられない位のスピードで勝ちまくっていった。
それは当の俺ですら信じられなかった。こんな勝ち方は今までの中でも初めてだ。
そう、憐を失った、あの日よりも・・・。

玉のドル箱が積み重なり、皆がそれを唖然として見ている中。
俺は箱計算して、後一杯分で20万を突破する確信を得ていた。
だが・・・店内には蛍の光が流れ始めている。時間の猶予がない!
「くそっ、時間がねぇ!」
こんな時になって、リーチすら一向にこない。このままではっ・・・!
俺のハンドルを握る手を、誰かがそっと握りしめているのを感じた。
優か・・・と最初は思った。が・・・その手が薄ぼんやりしている事に、気付く。

『ねぇ、パチンコって面白いね』

俺に笑顔で話しかけてくる、その姿は・・・紛れもなく、憐だった。
「憐・・・済まなかった。本当にあの時は置いていって済まなかったっ・・・」
瞳から涙が溢れ、ジーンズの裾を濡らしてゆく。
だから、デジタルの777が並んだ事に、気が付くのが遅れてしまった。


21 名前: ( ´∀`)ノ7777 投稿日: 2002/06/19(水) 22:28

俺に残されたものはあるのか?
今の心の中からの返事は、可、であった。

俺は今、優と共に暮らしている。
でも俺には今優がいる。さっき、学校に笑顔で登校していったが、また色々と土産話を
聞かせてくれるだろう。

確かに相変わらずパチンコから離れられない生活を送っているし、
結構な借金を作ってしまった。
やる気の無かった就職口探しも始めた、どうやら良い所に入れそうだ・・・って、パーラー
の店員だけどな。

憐の位牌に手を合わせてから、俺は今日もパーラーへ行く。
また一緒にパチンコ打とうな、憐。

                                    【終わり】


22 名前: ( ´∀`)ノ7777 投稿日: 2002/06/19(水) 22:29

以上です。

時間無くて慌てて投下したら通番振るの忘れてしまった・・・( ´Д`;)