ミルフォードトラック・ガイドウォークの出発地となるクイーンズタウンと、ニュージーランド最大の街オークランドをノンストップで結ぶニュージーランド航空の定期航空便は、ニュージーランド国内線でありながら日本語のアナウンスもときどき流れるほどたくさんの日本人観光客が利用していますが、私がはじめてクイーンズタウンを訪れた1998年の時点ではまだ飛んでいませんでした。
1998年といえば、アンセット・ニュージーランド航空(写真右)が飛んでいたり、今ではニュージーランド航空と同じデザインになってしまったマウントクック航空の一部の中型機が、まだ垂直尾翼にマウントクック・リリーのマークを付けていたりと、ほんの数年前なのに飛んでいる飛行機のデザインは今とはずいぶんと違っていました。そういえば、クイーンズタウン空港も今の半分以下の規模で、物々しい荷物検査など全くない、のどかな空港でした。
2000年にミルフォードトラックを歩く計画を立てていたとき、ニュージーランド航空の国内線時刻表ではじめてノンストップの定期便が就航(当時は1日1往復)したことを知り、さっそく利用しました。それまでクイーンズタウンからオークランドに行くにはクライストチャーチ経由便またはクライストチャーチ乗換しかなく、クライストチャーチ経由便でも経由地のクライストチャーチ空港で15分ほど停まるため、2時間30分以上かかっていたのが、ノンストップ便で1時間50分。機体左側の窓側の席に座るとマウントクックとその周辺の氷河が一望でき、ちょっとした遊覧飛行のような感じでとても気に入りました。2003年にミルフォードトラックを歩いたときもこのノンストップ便を使ったのは言うまでもありません。もちろん機体左側の窓側の搭乗券を空港カウンターでもらいました。
この日のクイーンズタウン発オークランド行、ニュージーランド航空648便(B737)は定刻どおり出発するとのこと。荷物検査も終わり、タラップまで歩いていくと、左側のエンジンの付近でひとりの整備士が作業車に乗って何か作業をしていました。それを横目に飛行機に乗り込んで座席に座ると、作業車とその上に乗った整備士がちょうど窓の横。エンジンではなく、その横についているフラップ付近の継ぎ目部分をさわっていることがわかりました。
何をしているのだろう?と眺めていると、フラップ付近の継ぎ目が少し開いている感じで、整備士がその隙間に右手を突っ込んで何か作業をしているのが分かりました。次の瞬間、その隙間の中で何かを折ったようで、整備士が隙間から手を出すと、その手に100円ライターぐらいの大きさの金属板を持っていました。
えっ?と思って見ていると、整備士は慌ててほかの整備士を呼んだようで、作業車のところに他の2人の整備士がすぐに走ってきました。作業車に乗っている整備士が下にいる整備士にその金属板を渡すと、2人の整備士はそれを覗き込むように見て、首をかしげるばかり。機外のため声は聞こえませんが、おそらく「何、これ?」というような会話をしているのでしょう。作業車の整備士が継ぎ目のなかに手を入れると、またさっきの半分ほどの金属板がでてきました。
機内では、機体トラブルで出発が少し遅れるとのアナウンス。原因が謎の金属板とあの3人なのは間違いありません。
その後も細かい破片のようなものが出てきて、3人はその破片を手にしながら何かを相談している様子。「まだ何か出てくるかもしれないぞ!」と誰かが言ったのか、作業車に乗っていた整備士がふたたび継ぎ目のなかに手を入れると、今度はなんと手の甲より大きいCDサイズの丸い金属板がでてきました。その瞬間、3人は大爆笑。手品の箱のような、次に何が出るかわからない隙間にまた手を入れようとした整備士を、下にいた2人が「やめとけ!やめとけ!」という仕草とともに笑いながら制止していました。
笑い終わると作業車の下にいた2人の整備士は機首のほうに走って行き、しばらくすると機長らしき人がひとりの整備士とともにやってきました。大きな丸い金属板を見た機長はうんうんとうなずき、整備士が持っていた書類にサインをして、そのまま2人は機首のほうに戻っていきました。
えっ!このまま飛ぶの?と思って見ていると、もうひとりの整備士が戻ってきました。手には白いビニールテープ。作業車の上にいた整備士はビニールテープを受け取ると手際よく継ぎ目の隙間にテープを貼って、下の整備士に向かって親指を立てて笑いました。あっさりとした「整備」に愕然です。
飛行機は10分遅れでクイーンズタウン空港を離陸。水平飛行にうつった後もテープの切れ端が風になびいていて、乗っている人間は気になって仕方ありません。この日もマウントクック上空は快晴。マウントクックやマーチソン氷河を眺めている視界の端には常に風になびく白いテープの切れ端が・・・・・。
飛行機は何事も無く定刻にオークランド空港に到着しました。
それにしてもあの金属板は一体何だったのでしょうか?★
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