アニメアンケート '99 調査結果報告

 昨年('99年)の夏から冬にかけて、アニメ共闘会議は、アニメで働いている人たちを対象にアニメ製作に関するアンケート調査を広範囲に行いました。これは、現在のアニメ製作の実態を客観的にとらえることを第一の目的とし、同時に映演アニメユニオンが5年前の '94年と3年前の '96年に行った同様の調査と照らし合わせて、アニメ界の移り変わりを考察することも目的として行ったものです。

 千枚近いアンケートの発送・配布を行った結果、152枚の回収が得られました。5年前と3年前の回収枚数(208,163枚)に比べると、発送・配布枚数は多かったのですが回収枚数がさらに減ってしまい、その方法については組織的に行動することまた、インターネットの利用に踏み切れなかったことなど反省点もあります。また、社会的不況の波からアンケートに協力することで不利益になると考える個人・プロダクションも多くなかなか回収が難しい面も見られました。回収された200枚に満たない結果からアニメ界の客観的事実をとらえることができるのか少々疑問もありますが、現在、私たちがアニメの労働実態を把握する上では、もっとも信頼できるデータであることをふまえて一つの分析結果を報告します。

平均年齢と平均経験年数

 

99年調査
96年調査
94年調査
 96年のアンケート報告では、94年と比較して平均年令31.1才(+1.1才)と経験年数9.6年(+0.9年)の数字から、「若くて経験を積んだ労働者が減っている。」と考えられ、アニメ産業において経験を積んだ若者の流出が始まっていることを危惧しました。
 今回99年の調査では、平均年令が28.6才(-2.5才)、経験年数が7.2年(-2.4才)となり、調査対象自体が若返りました。これは、アンケートに偏りがあったことも考えられますが、アンケートの発送回収にあたった感想からも、この2・3年の間に以前調査したプロダクションがなくなっていたり、連絡のつかない個人が多く、経験を積んだ人たちが減少していることが本来の原因にあると言えるのではないでしょうか。年令分布のグラフを見ても、前回・前々回と同じく30才を境に減少傾向になり、40才過ぎはほとんど見られなくなってしまいます。さらに経験年数のグラフに目を移してみると、圧倒的に増えているのが1・2年の労働者であり、今後のアニメ界を背負っていく人材が何人残ることができるのか大きな問題を投げかけています。人材の流失は、96年調査の時と同様にこれからのアニメ界に不安を投げかける材料であると同時に、さらに問題は深刻化していると言わざるを得ません。
平均年齢
28.6才
31.1才
30.0才
29.6才
31.4才
30.3才
25.8才
30.2才
29.3才
平均経験年数
7.2年
9.6年
8.7年
7.8年
9.8年
5.5年
8.8年

 

 

職種別割合('99年)左図  ('96年)右図

 

平均労働時間と平均年収

 

99年調査

96年調査

94年調査

 前回同様、今回の回収されたアンケートの職種別割合を見ると、アニメーター(作画)がさらにその割合を46%(-7%)に減らしています。これもこの数字からアニメーターが減ったとは考えられませんが、アニメ界の最多数を占めながら雇用的に最も劣悪なアニメーターの労働条件はいっこうに改善されていません。年収200万円に満たない多くのアニメ労働者(全体の49%)には、アニメーターの割合が高いことも事実です。アニメ界の存続と技術の確保を求めるのなら、アニメーターの労働条件が改善されない限り、その安定はありえないでしょう。
 全体的な労働条件は、労働時間が平均10.8時間(+0.7時間)に増加していながら平均年収は247万円(-55万円)と減少しています。これは、年齢と経験年数のところで明らかになったように、経験の少なさが労働時間を長くしており、同時に、週60本にも及ぶテレビアニメ本数と単価の安い仕事にならざるを得ない昨今の低予算のアニメ作品の増加が背景にあると考えられます。アニメで働く人たちは、ますます、貧乏で時間のない苦しい立場に追いやられ、新しく入ってくる人たちの希望も生活も破壊されています。

一日平均
労働時間

10.8時間

10.1時間

9.6時間

平均年収

247万円

302万円

255万円

 

 

 一時金・交通費の支給は、アニメ共闘会議がこのアンケート調査をはじめた頃から「テレビアニメ製作の雇用基準」の要求として最も力を入れてきたところです。一時金においては、当初に比べれば支給するところが増え運動の一定の成果もありましたが、今回は不況の反映からか支給された割合は43%(-9%)に減少しました。
 さらに、交通費の支給は49%(-4%)と残念ながら増加していません。今回の調査で、交通費のかからない人たちを明確にしたことで、交通費の支給なしの割合が23%(-21%)に減少しました。これは素直に喜べる数字ではなく、どちらかというと「交通費がかからない」という人たちが思ったより多数見うけられました。その裏側には、「交通費が支給されないので交通費のかからないところに住む」あるいは「通勤にかける時間が無駄になる」などの理由が推測できます。いずれも長時間労働と低賃金が最大の原因と言えるでしょう。
 前進した面としては、雇用保険についてです。社会保障は政府の悪政の影響で健保加入者77%(-14%)年金加入者69%(-3%)と減少傾向を見せながらも、雇用保険については40%(+18%)と大幅な伸びを示しています。これは、アニメーターの雇用の流失を止めようとする動きにも見え、経営者の「せめて負担の軽い雇用保険ぐらいには加入させよう」という努力が見られます。ユニオンやアニメ共闘の働きかけが今まで無関心であったアニメ労働者や経営者に対して、何らかの影響を与えており、少しづつ状況を打開しようとする意識の改革が進んでいることの反映と思いたいところです。

 

 

 

99年調査

96年調査

94年調査

雇用保険

加入している

42%

22%

14%

未加入

55%

65%

64%

健康保険

加入している

77%

91%

88%

未加入

15%

5%

3%

年 金

加入している

69%

72%

73%

未加入

22%

22%

19%

 

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