宗教心理学2004@立教
――カリスマの宗教心理学

シラバス
ねらい:カリスマをめぐる宗教心理学の学説・理論を学び、個人崇拝のメカニズムを解明する。
授業方法:講義形式だが、受講者の人数によっては、ディスカッションを取り入れたい。
授業内容:テーマは「カリスマの心理学」。カリスマ現象には宗教的なものもあれば、必ずしも宗教的でないものもあるが、特定の個人が超越的なものとして祭り上げられ、崇拝されること自体は、広い意味での宗教性と関わるだろう。カリスマをめぐる先行研究の概観が大部分となるが、最終的には現代日本人にとってのカリスマについて、学生とともに事例を探し、いっしょに分析を加えてゆきたい。
授業計画:
1 カリスマとは何か  ウェーバーの規定
2 カリスマ的指導者へのアプローチ(フロイトのエディプス・コンプレックス論とカリスマ/フロムの権威主義的宗教論/ゴフマンのスティグマ論との接合)
3 カリスマ的指導者の事例研究(エリクソンのサイコヒストリー的アプローチ/新宗教の教祖研究)
4 カリスマ的集団へのアプローチ(デュルケムの宗教論/群衆心理学/フロイトの集団心理学/暗示とマインドコントロール)
5 現代のカリスマとポップカルチャー
成績評価方法:試験による。人数によっては出席および平常点を加味する。
教科書・参考書:指定なし。

0 宗教心理学とは
宗教の心理学 psychology of religion

キリスト教学専攻の学生の割合、信者の割合を確認
宗教心理学という学問が存在するということへの反応をリサーチ
「すでに知っていた」/「知らなかった」
「有用だ」「無用だ」「よく分からないが面白そうだ」「よく分からない、どうでもよい」
どんなものだと思うか。

後は学生と対話をする。

宗教と心理学のライバル関係
心理学は宗教との差別化を図る必要があった
宗教は心理学を利用しようと思った
宗教を外から分析する心理学を退けようともした。
現在は、心理学はもう宗教をあまり相手にしない。
一方で、宗教的な心理学も登場。
宗教でも pastoral counselling などあり、心理学を取り込んだ。

1 カリスマとは何か  ウェーバーの規定

カリスマcharisma=神の賜物の意
ウェーバー(宗教社会学者):特別な「非日常的な」資質(日常語のカリスマと異なり人物そのものではない)
ex. 呪術師、雨を降らせる、病気なおしなどの奇跡、忘我状態

カリスマ的支配
 支配の根拠は指導者のカリスマ。
 カリスマ的指導者=預言者、軍事的英雄、政治的デマゴーグ(民衆扇動家)
 革新性(←非日常性)
cf. 伝統的支配(根拠は支配権力の継承)、合法的支配(根拠は正当な手続き)
 帰依者の評価・承認に支えられている。カリスマの証明がつねに必要。
 後継者問題→伝統化、合法化などによって、非日常的だったカリスマは日常化
 世襲カリスマ(ex. 天皇制)、しかし個人的資質としてのカリスマではない。王権。
 官職カリスマ(ex. カトリックの司教職)、カリスマは儀礼によって対象化され、儀礼をつかさどるものがカリスマを担うようになる。教権。
 真性カリスマ(ex. 修道院):世俗外で非日常的なカリスマを追求。

カリスマ的指導者の情緒性
 忘我状態のシャーマン
 殺人の熱狂に駆り立てられる英雄戦士
 絶叫するデマゴーグ(ex. ヒトラー)
 他者への配慮の欠如、自己完結的
 →カリスマ的集団の発生:指導者の熱情の共有。しかし、日常的対人関係の延長戦ではない。
  共鳴した個人は、それまでの社会関係から離脱

ウェーバーのカリスマ論から学べること
非日常性は対抗的権力の源泉になる。
カリスマ集団は、熱狂的な支持者からなる異議申し立て集団に成長する可能性をはらむ。

2 カリスマ的指導者へのアプローチ
(1)フロイトのエディプス・コンプレックス論とカリスマ

フロイト〜精神分析の創始者
エディプス・コンプレックス
 ギリシア神話『オイディプス』に由来
 父を殺すという予言→捨て子→成長してから争いで父と知らずに父を殺す→スフィンクス退治→母と知らずに母と結婚→真実を知って自ら目を潰し放浪
=父を退けて母を独占したいと望む息子の愛憎入り交じった感情の複合体(コンプレックス)
父へのアンビヴァレンツ(相反する感情の併存)
=愛と憎しみ=父のようになりたい+父を排除したい
cf. 娘の場合:「母を退け父と一体化」or「父を退け母と一体化」、両方の説
 しかし、現在では性別役割の固定視が批判され、「養育者へのアンビヴァレンツ」のみが残る。

エディプスコンプレックスの解消
父の取り込み、同一化。自分の性格そのものに。

原父殺害仮説
〜人間社会と宗教の起源に関わるモデル
原父=ボスザル的存在、女を独占
   他の男達(息子たち)は原父のようになりたくて、共同で殺害。同一化したくて食べてしまう。
   殺害後後悔。二度と権力者が出ないよう、近親相姦をタブーに。
   神へのいけにえという儀式に置き換えて反復。
cf. 王殺しの儀式
 定期的に王を殺害。つねに健康で強い王。
cf. 日本の祟り信仰
 能力のある人物がねたまれ排除され、怨霊となって災い、神として祭ることで逆に守護してもらう。
 (菅原道真など)

フロイトの集団心理論〜教会と軍隊の分析
エディプス・コンプレックスとアンビヴァレンツの解消のもう一つ。
 =父以外のより強大な父的存在を自我理想とする。
 全員を平等に愛する指導者という幻想が特徴。
 強大な父親的存在に屈服したいというマゾ的態度
 自我に満足できない人、自我理想で満足→対象を自我理想とし、すべてを過大評価
 指導者を自我理想とするという共通性から、信奉者同士で同一視。
 自我理想=集団理想
 (複数の集団に多元的に帰属する現代人の場合、イコールにならず、ある程度独自の自我理想を形成。しかし、潜在的には強力な指導者を迎えたい欲求がある)
 一方自我理想を廃棄したい欲求も潜在的にある。英雄神話〜恐ろしい存在をたった一人で退治する

フロイトの議論から学べること
 カリスマを支持するのは、親的なものを自我理想としたいから。
 日常化したカリスマを打倒する英雄は、次のカリスマとなる。
 カリスマはアンビヴァレンツの対象となる

(2)フロムの「威主義的宗教」論
フロム1900-80
 ユダヤ人としてドイツいうまれ、ナチズムの手を逃れアメリカに亡命

ナチズムの分析〜ドイツ人の権威主義
ルターの宗教改革=教会という権威への挑戦。そのかわりに神を絶対視
→権威へのアンビヴァレンツ。
資本主義の発達、個人の自由。中産階級の登場。完全な勝ち組でも負け組でもない。
→自由だけど不安。
プロイセンにおける君主崇拝。第一次世界大戦の敗北
→自信喪失
民主的なワイマール共和国、経済的混乱。既成価値への疑い。
→強力な権威の渇望
ヒトラーの登場。サド=マゾヒズム〜強いものに服従、弱いものは迫害(ユダヤ人虐殺)

cf. ヒトラーの性格
父親との葛藤、反対を押し切って美術を志すが才能がなく失敗、父母が死に孤独に、兵役を拒否し逃亡、逮捕後、一転して軍人として頭角を現すように。
〜父と国家という権威に対するアンビヴァレンツ。自由を求めるが孤独と不安から権威主義に。

権威主義的宗教と人間主義的宗教
(ここでの「宗教」は教団ではなく、宗教的態度)
一般的な宗教理解=権威主義的宗教
〜教義の絶対崇拝、宗教的権威への服従、不服従は罪
別の宗教的態度もある
=人間主義的宗教
人間自身の理性と愛の力を発展させる宗教。権威はそれを助けるもの(権威がないわけではない)。権威は信奉者の成長を望む。(親が子の成長を望むように)
例:エデンからの追放。不服従は罪。〜権威主義的
  イエスの律法主義批判。罪のない人間などだれもいない。権威への服従より、愛が大切。
  仏陀=悟った人間。人は仏陀という権威に服従するのではなく、仏陀のようになるために修行。

フロムのカリスマ論の意味
・カリスマへのアンビヴァレンツが強くて、自由だが孤独な人間→カリスマを求める
・カリスマ集団の敵に対する攻撃性。
・カリスマには、目標としてのカリスマ、育むカリスマもある。(理想的な親、理想の教師のように)


(3)ゴフマンのスティグマ論との接合――リップの自己スティグマ化論

「スティグマ」の三つの意味
・奴隷・犯罪者・反逆者を示す「烙印」(古代ギリシア)
・キリストの傷跡=「聖痕」(キリスト教以来)
・「汚名」(現代の意味)

ゴフマンのスティグマ論
 相互作用のなかで貼られる「異常」「好ましくない」という否定的レッテル
 身体上の障害、性格上の欠点、人種・民族・宗教上の価値剥奪
〜社会的関係のなかで演じられている(属性ではない)
 スティグマを背負うものと背負わせるもの←共通の社会規範
〜文化それ自体が差別の体系
パッシング:見えないスティグマを見つからないようやり過ごす
カバーリング:見えるスティグマを覆い隠そうとする
カミングアウト:親密になった人に告白
「よい適応」:何でもないように振るまったり、ハードな場面で身を引くことで、健常者を差別者にしないように努力

cf. 逸脱理論
 「逸脱」行動から、その社会の特殊性が分かる。
 ラベリングによって犯罪者が作られる。
 「社会問題」は、クレームをつけるものとそれに応答するものとの相互作用によって構築される

スティグマ集団へのアンビヴァレンツ
 プラス感情:同類とともにいる解放感と安心感
 マイナス感情:典型的なスティグマから距離をとりたい
→人種・宗教・民族的なマイノリティであるというスティグマ=アンビヴァレンツの対象

リップの自己スティグマ化論
 歴史上のカリスマの多くが、幼少期・青年期に差別・排除を受けていることに注目
1 スティグマ化:社会からマイナスのレッテルを受ける
2 自己スティグマ化:プラスのものとして再解釈→強固な自己アイデンティティの確立
3 カリスマ化:周囲の人間から新たな価値の体現者として認められる。帰依集団の形成。社会変革へ。

例 イエス:二重のスティグマ=ローマへの反逆者、ユダヤ教からの異端
      十字架:犯罪者の象徴→贖罪者の象徴に転換。罪なくして罪を負った。
  麻原彰晃:弱視者→すべてを見通している

3 カリスマ的指導者の事例研究
(1)エリクソンのサイコヒストリー的アプローチ
エリクソンのライフサイクル論
 人生は八段階
 対人関係の範囲が変わると、外的対立と内的葛藤
 この危機を乗り越えることで成長

サイコヒストリーpsychohistory=心理歴史学
 時代の変化→社会的矛盾
 →青年の葛藤(教わってきたこととの矛盾)→葛藤の克服
 →同じ葛藤を抱えている人たちの支持→社会を変革

事例・青年ルター
中世教会との闘争→間接的に父的なものをめぐる心的葛藤を解決
父性的信仰が特徴〜罪悪感、不安、許しの希求
 男性中心的。中世における聖母崇拝を否定。

マルティン・ルター、1483出生
父ハンス=農夫から坑夫へ、苦労の末、経営者に
息子は野心的でなかったが、父は法律家にしようとラテン語学校から大学まで出す
幼児期:愛すると同時に怖い父親、「自発性/罪悪感」の葛藤
父のむち打ち、学校でのステッキによる尻打ち
母の影の薄さ
迷信と恐怖のまん延する中世→知的革命への途中
その地域の坑夫は極度に迷信深い、不幸は悪霊の影響
突然死の危険→カタストロフィー(破局)への恐怖
つねに神の裁きを気にする生き方
マリアの母、聖アンヌ崇拝(災厄から守ってくれる)
21歳のマルティン、聖アンヌへの祈り。法律の勉強より修道院に関心。
帰り際に雷がそばに落ちる。「助けてください、聖アンヌ。私は修道士になりたいのです」
罰の恐怖から修道士に。修道院に入った後で、初めて父に知らせる。
ハンス、その後他の息子が二人死ぬ。
マルティンの友人から、マルティンを神に差し出すよう説得される。
二年後、マルティンの最初のミサ、ハンスが初めて現れる。
「私は納得していない。あの雷は悪魔の仕業かもしれんぞ」
二人の父に従い、どちらからも認めてもらおうとして、引き裂かれる。
〜境界精神障害の状態=仕事への強迫的衝動的な没頭と不安発作と幻覚
悪魔の恐怖だけでなく、キリストや神までも恐怖の対象。ただ自分を罰するだけの存在。
修道士になったこと=否定的アイデンティティ(望まれているのと反対のアイデンティティを選択する)→アイデンティティ決定の引き延ばし=モラトリアム
恩師シュタウピッツとの出会い
→父なる者への信頼感
ルターを育て上げ、自分の地位を譲り渡す。
信仰が第一であり、それによって恐怖なしに、キリストに向き合える、という観念を受け継ぐ。
「義なるものは信仰によって生きる」
神は、人間の行為を秤にかけて裁くのではない。
神は正義の慈悲深い源泉。信仰によって近づける。
信仰が可能になるのは、キリストの恩寵と愛によって。
人間は完全に罪人であるが、だからこそ神の恩寵を通して、完全に義となる。
幼児期の「自発性/罪悪感」の葛藤を解決。
アンチ・キリストである悪魔と教皇に戦いを挑む=神への反抗の安全弁。
結婚、6人の子供の「父親」となる
=父の決めたいいなずけを蹴ったことによる青年期の引き延ばしへの終止符、自ら父性を身に付ける。宗教改革という運動の父にもなる。
ルターに影響された農民による反乱:最初は共感、しかしやがて暴力で押さえるよう主張。農民の大虐殺につながる。
その後も、自分の引き起こした運動の結果について不安になったり、メランコリーに陥る。

ルター個人の父性的権威への挑戦、神への信仰が正義の源泉
→権威主義的な体制に苦しむ民衆の支持、信仰が抵抗を正当化

事例・ガンディ
1869-1948
インド西部小都市の首相の家に生まれる。
大家族。母親を独占できない。
宗教的だが教条主義的でない母親(ヒンドゥーの教典とコーランを統合しようとする小さな一派)。「厳しいが信頼できる」
母との愛情ある関係→後年の他者との深い交わりや、救済への意欲。
父親へのアンビヴァレンツ。
病床の父の世話〜愛着の証拠。
しかし、13歳の時に性的に未熟なまま結婚させられたことを許せなかった。許せないということがさらに負い目に。
16歳の時、父の世話を抜けて、妻と寝室に入っていたあいだに、父が死去。「決して消えない汚点」
(ルターにおける父の残酷さの呪縛と同様の心理的機能)
エディプス・コンプレックス=ここでは世代コンプレックス。(近代家族ではなく大家族)
 家を継ぐ=父に取って代わって母なる家を自分のものとする。
父への献身的な世話=父を除きたいという願望を打ち消すためのもの。
 彼の権威への抵抗→非暴力的抵抗、同時に権威そのものへの献身でもあるというレトリック

15歳の時のエピソード:兄の借金を返済するために、金を売ったことを告白し、罰を求める。父は涙を流しただけだった。ガンディ「潔い告白が短気な父親を変えた」→後の抵抗運動の教訓。

エリクソン「親への責任」という観念→「人類への責任」という観念に拡張
(他のカリスマ的指導者にも見られる特徴)

インドの母性神:両性具有的。父への献身、後年のガンディの非暴力、性的関係の放棄に通じる。
(厳しい父性的権威とは異なる権威の形態。創造と破壊。すべてを受け入れる寛容さによって優越)
しかし、食への強迫的関心、妻子への無関心。内面への隠された暴力。

ロンドン留学、法律家を目指す。肉食と異性と酒へのほのかな期待。しかし、母にジャイナ教の僧侶の前につれていかれ、禁欲の約束。
童婚を経験したガンディにとって初めてのモラトリアム(青年期における見習い期間)。
大家族からの解放。厳格な禁欲。ここで彼の人格形成がなされる
イギリスの菜食主義運動との出会い。表面的には自由なイギリス女性の異性との距離感。
英国留学、法律家になること=英国的アイデンティティの形成。
同時に、インド的アイデンティティである禁欲主義のイギリスにおける発見。

インド帰国と同時に母の死を知る。その日、ジャイナ教徒のラージチャンドラとの出会い。不殺生を唱えるジャイナ教からの影響。
インドの法律を知らないガンディは惨めな思いをする。アフリカゆきの話に乗る。

南アフリカ、人種差別。ガンディをどの人種に入れるべきかで混乱→アイデンティティの混乱。
結局「有色人種」(クーリー)に。クーリーの弁護士。
列車の一等席の切符を持っていたのに、有色人種という理由で、列車を下ろされる体験。
英国的アイデンティティの否定、インド的アイデンティティというスティグマ
→普遍的的アイデンティティの形成へ(エリクソン)
南アフリカにいるインド人の中で、自分だけがこの事態を改革する運命を背負わされていると確信。
大家族から離れていたインド人たちを引きつける。
1893年 不服従運動を開始、選挙制度、指紋登録強制に反対

その後のガンディ略歴
南アフリカから帰国
インド人を差別するイギリスの法律に抗議
ネール、チャンドラ・ボースらと共に、インド国民会議を組織

第一次サティヤグラーハ運動
1919年 イギリス製品のボイコット インド国産品を愛用 手紡ぎ車の奨励を行う
1921年 ボンベイにて外国製布地の焼却 対英非協力宣言による不服従運動

1929年 世界恐慌にともなう民族運動の高揚を背景に、インド独立要求決議

第二次サティヤグラーハ運動
1930年 イギリスの塩税法に対抗し塩の行進360km。自ら法を破って塩を作ることで逮捕される
1931年  ロンドンでのインド独立会議にインド国民議会 (Indian National Congress) の代表を務めた。
質素なインドの服と木のサンダル、山羊を連れて歩く。

1946-47年 平和行脚
ヒンズー教徒とイスラム教徒間の融和をはかるため、暴動で破壊されたベンガルへ平和行脚に出る。

1947 インド独立
分離独立に関して、ヒンドゥー教批判。

1948年 狂信的な ヒンズー信徒によって 暗殺される。享年79歳

ノート・ポイント
母親との関係〜愛着・孤独
父親との関係〜権威主義、弱った姿、献身的介護、権威の変容、死に際の罪悪感、親への責任感
両性具有的な権威

アイデンティティの混乱
童婚→英国留学→南アフリカ
→普遍的アイデンティティの探求
家族をアフリカに呼び、運動の指導者ともなることで、「父」的存在に。

しいたげる権威(人種差別)に対抗。
しかし非暴力を貫くことで、罰する権威とは異なる、包容し、和解させる権威を実現。

青年期における家族との葛藤の解決=インド人の苦境の解決

インド人であるというスティグマ(植民地インド、英国、南アフリカでの)
→禁欲、不殺生、愛、真理という価値に転換
服従させられ、暴力を受けるというマイナスの状況を、逆に武器に変える。
逆境にあったインド人たちの支持を得て、国民的指導者に。

(2)新宗教の教祖研究
時間がなくて省略

4 カリスマ的集団へのアプローチ〜サポーター・フォロワーの心理

(1)群集心理論
群集=ある場所に一定の目的を共有して集まった人々。しかし、相互に熟知していない。
〜不確実な状況
→相互模倣(どうしていいか分からないので周囲の人と同じことをする)
→相互暗示(意識的な思考なしに行動)
→デマや先導の影響を受けやすくなる=一種の催眠状態

催眠状態(トランス状態):
単調な感覚刺激ないし感各遮断
→通常の意識の機能が低下
→覚醒と睡眠の中間である催眠状態へ
 明確な意識はないが、暗示の影響を強く受けた反応をする

カリスマ集団への応用
 不安定な状況に置かれた孤立した個人=時代の変動、都市化など
→思想や信条や好みを共有した集団を形成したいという動機
→カリスマ的指導者の元に結集することで、準拠集団が成立
〜群集的な集団がカリスマの正当性を強化、同時にカリスマの教示の影響力は群集では強化

(2)洗脳、マインドコントロール論
洗脳=中国共産党の捕虜が受けた思想教育の研究から明らかに
 情報の遮断、極限状態、単調な教示
しかし、実際には洗脳は一時的効果のみ(催眠術と同様)
カルト集団の研究→洗脳に近いことをおこなっている
 相違点:長期の合宿への参加。しかしあくまで自発的に参加を決断させる。教示の効果が持続的。
→マインドコントロール概念の提唱
 洗脳のように強制的ではなく、自発的に、情報の遮断された閉鎖的集団への参加を促し、一定の教義を繰り返し教え込む。もともと自発的参加であるため、操作を受けたと感じられない。

カリスマ集団が内閉的であると、マインドコントロールが起こりやすくなる。
〜「コントロール」という言葉はミスリーディングかも

(3)ナルシシズム集団としてのカリスマ集団(リンドホルム)
・自己喪失欲望論
 指導者や集団と一体化したいという欲望←乳幼児期の自他未分化の状態に返りたいという願望
 (フロムの自由からの逃走と同じ主張)
・ナルシシズム論
 カリスマ的指導者も信奉者もナルシシズム。
 自我の形成のための安定した環境の欠損→埋め合わせるため誇大自己を形成
 複雑で流動的な現代社会:アイデンティティの不安定化→ナルシシズムへ
・信奉者にとって指導者は自我理想。
 指導者にとって信奉者は誇大自己をサポートしてくれる条件。
・反社会的逸脱集団というラベリング→集団は孤立・攻撃性を増す→ラベリングの強化

「現代のカリスマ」に関するアンケート
 現代のカリスマとして思いつく人物を3名書きなさい。

結果
回答者:女性30名、男性17名

男子学生の選んだ現代のカリスマ

複数支持があったもの
麻原彰晃2
石原慎太郎3
小泉純一郎2
長嶋茂雄4
中田英寿2

その他一票
明石家さんま
石原裕次郎
イチロー
ヴァイツゼッカー
押井守
カート・コバーン(ニルヴァーナ)
金正日
清原
小林よしのり
ジャン・リュック・ゴダール
ジョン・レノン
スピルバーグ
武豊
筒井康隆
ティトー
ナルシリ・イエペス
ヒデ(X Jaoan)
浜崎あゆみ
ヒトラー
ビートルズ
フセイン大統領
ブッシュ大統領
マイルス・デイヴィス
マーティン・ルーサー・キングJr
マルコムX
マルティン・ハイデガー
宮崎駿
村治佳織
養老孟司
ヨン様

女子学生の選んだ現代のカリスマ

複数支持があったもの
麻原彰晃4
宇多田ヒカル2
金正日6
小泉純一郎9
ジョージ・ブッシュ3
ダイアナ2
中田英寿2
浜崎あゆみ10
ビート・たけし3
ビートルズ2
ヒトラー2
ビル・ゲイツ2
ビンラディン2
マザー・テレサ2
マーティン・ルーサー・キングJr3

その他一票
アイルトン・セナ
アウン・サン・スー・チー
石原慎太郎
尾崎豊
カルロス・ゴーン(日産社長)
木村拓哉
キリト(pierrot)
黒澤明
小林よしのり
ゴルバチョフ
スターリン
スピルバーグ
田中角栄
デヴィッド・ベッカム
長嶋茂雄
西川貴教
Hyde (L'arc en ciel)
松井秀喜
マリリン・マンソン
ミヒャエル・シューマッハー
宮崎駿
ヨハネ・パウロ二世
渡辺謙

総合ランキング
小泉純一郎11
浜崎あゆみ10
麻原彰晃6
金正日6
長嶋茂雄5
中田英寿4
マーティン・ルーサー・キングJr3
ジョージ・ブッシュ3
ビート・たけし3
石原慎太郎3
小林よしのり2
スピルバーグ25

現代のカリスマとポップカルチャー

カリスマの社会的背景の変遷
 心理的不安の増大
  戦争、占領、社会生活の急激な変化
 不特定多数の個人が、カリスマ的指導者の個人的資質に魅かれる。
=都市化
 人口移動
 メディアの発達
  ルターと聖書、ヒトラーとラジオや映画、ポップスターの登場
現代
 民主主義、大衆の登場、マスメディアの発達
 →相互につながりのない個人が、メディアを介して、カリスマ的個人に傾倒する
現代のカリスマの特徴
 カリスマがポップカルチャー、マスメディアという回路を通じて、作られてはすたれてゆく
 (現代の日常化したカリスマ)
 新宗教、「カルト」、テロリストなどのカリスマ
  大衆の画一化が進めば進むほど、強固なアイデンティティを与える手段としての価値が高まる
  逸脱とされ、排除されればされるほど、攻撃的に。

事例・現代のカリスマ
小泉純一郎

権威へのアンビヴァレンツ
 反官僚支配、郵政民営化、構造改革、新自由主義……反権威主義
 首相公選制の提唱、自民党離党へのためらい、親米路線、靖国参拝……権威主義

日本型リーダーとの違い
従来のリーダー=根回し協調型、目立たない、はっきりとしたことを言わない
小泉=「変人」、一匹狼、はっきりとした発言、主張の一貫性(何度も総理に挑戦するなかで)
他の政治家との個人的つきあいをいっさい持たずに、しかし何度も首相に挑戦し、直接国民に訴えた。
「民衆―カリスマ」という権力構造を、当初から志向

メディアを介した政治的パフォーマンスの利用
 一日二回の記者会見、メールマガジンの発行
 従来の政治家はメディアへの露出や発言を慎重におこなう

生い立ち
政治家三代目。又次郎(逓信大臣)、純也(防衛庁長官)、純一郎(総理大臣)
しかし、金のない代議士の家と呼ばれる。
父・純也=婿養子(又次郎の書生から)。母・芳江=妾の子(表舞台に出ようとしない)。
→本流ではないという意識、孤独。
男子がなかなか生まれず、3人の女子のあと、純一郎誕生。政治家小泉家の血を絶やさないための子供。
かわいがられるがつねに周囲の言いなりという立場。
→ナルシシズム・ニヒリズム・権威主義=ほぼ結論、で、以下はその論証
三女の信子=女だからという理由で大学に行かせてもらえないが、二十代にして秘書官に(当時としては女性秘書官も異例)。父の死去の際、出馬の話もあったが固辞し、純一郎を立てる。しかし、純一郎は政治のことを何も知らず、つねに信子に頼る。現在も秘書として強い影響力を与える。

青年・純一郎〜ドロップアウトの青年期
25歳で慶応大学卒業(落第含む?)。
3年生のときの詩「死のうは一定」〜人間はどうせ死んでしまう。だから死に物狂いで仕事をやり遂げるしかない。
「われは不死鳥のごとし/己の死よりふたたび命を得/己れの灰の中よりよみがえらん。/殺せ、殺せ、殺せ、われを/されどわれは死なじ。」
〜なぜこのように歌わなければならなかったのか。
生の実感が感じられないもどかしさ=無力感。「死んでしまえば何も残らない。……楽天家の私でさえこのような虚無感にふとおそわれるときがある」
表面的なヒロイズム=ナルシシズム。
「死のうは一定」といって突撃した織田信長の引用。攻撃性の美化。サド=マゾヒズム。
「仕事こそは男の生きがい」男性中心主義。
横須賀出身(小五から)、海兵隊の歓楽街。
大学を出ても働かない。女性関係で、地元にビラがまかれる。父の意向で強制的にロンドン留学。
父が急死、帰国。その年(1969)の総選挙に挑むが落選。
1972年に初当選。以来、当選し続ける。
 「姉たちへの負い目があって何も言えない」という発言が伝えられる。

小泉純一郎と女性サポーター
秘書・信子、純一郎の食事、トータルコーディネイト。独身を通し、まるで弟の妻のように振る舞う。
政治の夢を弟で実現。
純一郎、お見合い結婚。二人の男子。4年で調停離婚。三男を身ごもっていた妻を追い出す。以後、一度も会わない。
 小泉側の秘書は、選挙への無関心、ぜいたくが原因とする。
 ジャーナリストの取材では、過酷な選挙運動、過労、家庭内での心労が原因とされる。
女性への冷たさ。男性中心主義。しかし、家では女の言いなり。
小泉支持〜女性による支持が大きい。
姉・信子のマスコミ対策。支持率対策。
つねに女性から愛され、女性の望む役を演じてきた純一郎。姉の言う通りに動いている限り、女性の支持は得られる。
田中真紀子更迭への姉の猛反対。にもかかわらず、更迭に踏み切る。女性の支持の急低下。
=姉と真紀子と女性サポーターは重なっている。女性へのひそかな敵意。真紀子更迭は姉への反抗。
鈴木宗男と田中真紀子の対立による政局混乱を「けんか両成敗」で静めるという発想=男性的な潔さ。首相になるための立役者であった真紀子の恩義を裏切る
=いわゆる女性的な「情」に欠けると見なされる
以来、パフォーマンスで乗り切る。

政治の転換。大衆の人気への依存からの脱却。反官僚からの後退。
在籍期間が長引くとともに、小泉よりの官僚・閣僚・若手議員が育つ。

小泉サポーターの心理
小泉世代以降の政治家のメンタリティ
 学生運動が身近にあったが距離をとる。二世・三世議員。
 独力では何もできない。伝統主義、権威主義
 しかし若手ということでつねに「改革」のイメージをまとわされる。
→冷戦以後のアメリカにおける新自由主義、新保守主義の台頭=弱者を切り捨て強者をより強くする
 「痛み」をいとわない「潔さ」と「改革」のイメージとが心理的に混同しているのでは?
90年代の不況→「二世」の時代(政治家、芸能人、一般的な職業選択)。利用できるものを利用するのは悪いことじゃない。しかし、高度経済成長を生きた親の世代を超えられない。
小泉支持の女性〜オヤジではだめ。若手で改革。しかし育ちがよくなくてはならない。
小泉化した自民党を今なお支持する男性〜弱者切り捨てで驕奢になりたいサドマゾ的権威主義
 ex. 民営化・規制緩和で自由競争を勧める。人質バッシング、親米路線。愛国主義。

小泉にとってのアメリカ。有事法制の意味。
 「基地の町」での少年時代。アメリカには服従せざるを得ない戦後日本の象徴。
 防衛長官であった父。在任時に、防衛庁幹部が核保有と徴兵制をふくむ有事法制の国会可決の可能性を研究。マスコミが暴露、窮地に。その後死去。
 有事法制の成立=父にできなかったことを成し遂げる。同時に父の喪い。
  アメリカへの服従と、アメリカと台頭になることを同時に実現。