エントロピー
Entropy

熱平衡状態から外れた2つの系では、時系列上、互いに熱平衡状態になろうと変化するが、その逆は起こらない。 この一方的に時間の経過とともに進行する過程を不可逆過程という。 これは、理想的な振り子の運動などが時系列的に可逆であることとは大きく違う。 実在の振り子では、気体の摩擦抵抗、或いは振り子の支点の摩擦などで、運動は減衰方向であり、不可逆過程である。 一般に自然現象は不可逆過程である。
熱力学の第二法則は「熱伝導が不可逆過程」ということである。 或いは、「他に影響を与えずに、サイクルによって低熱源から高熱源に熱を移すことは不可能」ということである。 カルノー・サイクルの逆運転で低熱源から高熱源に熱を移すことは可能だが、外部からの仕事が必要である。 ほとんど摩擦のない平面上でも、多くの場合摩擦はある。 この上を球が転がっている。 したがって運動エネルギーをもっている。 やがて摩擦によって運動エネルギーは徐々に失われそれらは熱エネルギーに変化する。 しかし、球が逆に平面から熱を受け取り速度を上げることはない。 いずれにしても、第二法則は多くの表現方法をとり、重要な法則である。
熱機関の効率ηを考える。 2つの高低熱源があり、温度をT2>T1とし、サイクルC'によって高熱源から熱量Q2を受け取り、仕事Wを行い、残りの熱量Q1を低熱源に移す。 この場合の効率は、η = W / Q2 である。 熱力学の第一法則より、Q2 = W + Q1 である。 このサイクルの逆運転Cを考える。 低熱源から熱量Q1'を受け取り、仕事Wを行い、残りの熱量Q2'を高熱源に移す。 この場合、Q2' = W + Q1' である。 以上のことから、
W = Q2 - Q1 = Q2' - Q1'
∴Q2 - Q2' = Q1 - Q1'
低熱源は、Q1を受け取り、Q1'を失うわけだから、熱力学の第二法則より次式が成り立つ。
Q2-Q2'=Q1-Q1'≧0
等号が成り立つのはこの熱機関が可逆サイクルの場合である。 したがって、この期間の効率は次のようになる。
η = (Q2 - Q1) / Q2 = (Q2' - Q1') / Q2 < (Q2' - Q1') / Q2' = ηC
熱機関は可逆の際、ηrevC=(T2-T1)/T2で、不可逆のときは、ηirrevCである。
二つの熱源の間では次式が成り立つ。
1-Q1/Q2 ≦ 1-T1/T2
Q1/T1 ≧ Q2/T2
ここで、熱源→サイクルへの熱移動を正の方向とすれば、Q1は符号を逆にする必要がある。
Q1/T1 + Q2/T2 ≦ 0
一般化した熱源・サイクルを右図のように考える。 サイクルCはj番目の温度Tjの熱源から熱量Qjを受け取り、W=Σ[ j=1 , n ]の仕事を行う。 次にTjと他の熱源Tとの間にカルノー・サイクルCjを運転する。 サイクルCjはTjからQj''の熱を、TからQj'の熱を得る。 カルノー・サイクルなので、
Qj''/Tj + Qj'/T = 0
Tjの熱量の出入りが無いようQj''を決める。 すなわち、Qj+Qj''=0。 しがたって、次式が成り立つ。
Σ[ j=1 , n ](Qj/Tj) = (1/T)Σ[ j=1 , n ]Qj
ここで、右辺については、トムスンの原理より正ではありえない。 0であれば、これは可逆である。 負であれば、これは不可逆過程であるから、サイクルCは不可逆サイクルとなる。 したがって、次の結論に至る。
Σ[ j=1 , n ](Qj/Tj) ≦ 0
∫δQ/T < 0
dQではなく、δQとしたのはQがが状態量ではなく過程による量なので微分可能性がないからである。 この式をクラジウスの公式といい、熱力学の第二法則の数式表現である。
クラジウスの公式を利用して、次の式がなりたつ。
∫δQ/T [ P0 , P ](a) + ∫δQ/T [ P , P0 ](b) = 0
これは状態P0から状態Pへ準静的過程(a)で、またその逆に変化させる準静的過程(b)を経たとき、その経路によらず δQ/T が保存されていることを意味する。 言い換えれば、
∫δQ/T [ P0 , P ](a) = ∫δQ/T [ P0 , P ](b)
つまり、δQ/T は状態がどのような準静的過程で変化しても等しく、この場合、δQ/Tは全微分可能である。 ここで、これをエントロピーと定義し、次のように表す。
dS = δQ/T