2001-01-07
カロテノイド (carotenoids) は、基本的に8個のイソプレノイド単位からなるテトラテルペノイドであるが、骨格の中央における単位の連結様式は head-to-head になっている。カロテノイドを二分して、炭化水素であるものをカロテン類 (carotenes)、酸素官能基を含むものをキサントフィル類 (xanthophylls) という。
カロテノイド骨格の番号付けは、左右4個ずつのイソプレノイド単位のまとまりに対して、片方が1から20位、もう片方がプライム付きの1'から20'位となるように行う。中央の連結部位は 15-15'位とし、側鎖である計10個のメチル基を16から20位および16'から20'位とする。
カロテノイドの基本骨格化合物となる不飽和炭化水素の名称は、carotene カロテンとする。カロテンでは、別に記述がなければ主鎖の二重結合の立体配置は all-trans である。
さまざまなカロテノイドを命名しやすいように、C9末端基(1-6位と16-18位、ならびにそのプライム付きの部分)の構造には次に示すいくつかのパターンが用意されており、そのパターンは特定のギリシア文字で表現される(下図の R は7から15位または7'から15'位の主鎖の部分に対応する)。


末端基の構造が複数のギリシア文字の構造から誘導できるなら、母体はアルファベット順(すなわちβ, γ, ε, κ, φ, χ, ψの順)で前のものに基づく。例えば、βまたはε末端基を完全に飽和にしたものは、ε末端基の4,5-dihydro付加体としてではなく、β末端基の5,6-dihydro付加体として命名する。
CASでは記号γは用いない。β末端基の 5,18-didehydro-5,6-dihydro-誘導体として命名する。
カロテンの特定の構造を表す名称は、Caroteneの前に末端基の構造を示すギリシア文字2文字(コンマ区切り、プライムはどちらにも付けない)を添えて作る。対称なカロテンでは同じ文字を用い、非対称なカロテンでは、アルファベット順(すなわちβ, γ, ε, κ, φ, χ, ψの順)に並べる。前に記したほうが位置番号にプライムがない部分に対応する。
※カロテノイドの構造式では、位置番号にプライムのない部分を左に描くのがよい。
カロテンの誘導体は、可能な限り、通常の有機化学命名法の接頭辞や接尾辞を利用して命名する。位置番号について、IUPAC-IUBではカロテノイドにおける慣習を受け入れ、4,5,4',5'のように、プライムつき位置番号は、あらゆるプライムなし番号より大きいとみなす。しかしCASでは、有機化学命名法では通常どおりのことだが、4,4',5,5'のように、まずプライムの数を無視した順序を考慮する。
水素化度の異なる誘導体は、水素化や脱水素を表す接頭辞、hydro ヒドロ、dehydro デヒドロを用いて命名する。IUPAC-IUBでは、hydroとdehydroは非分離接頭辞であってすべての置換基より後ろ(母体の近く)に記すが、CASでは分離接頭辞であって、他の置換基があればアルファベット順を考慮しつつ混ぜて記す。
エポキシドは、水素化をdihydro ジヒドロであらわしたうえで、-O- を置換基として接頭辞 epoxy エポキシを用いて命名する(よってepoxy は分離接頭辞であり、他の置換基があればアルファベット順を考慮しつつ混ぜて記す)。
※6'-位のアレンの軸不斉に由来する立体化学は、R - S で表示する。
CASでは、形式的にみて、母体Caroteneに含まれる二重結合の水和(>C=C< → >CH-C(OH)<)やエポキシ化に引き続く開裂(>C=C< → >C(O)C< → >C(OH)-C(OH)<)によって生成したと考えられる化合物は、アルコールが主基となりえる場合でも、ヒドロキシ基を常に接頭辞で表現する。
※CASは、こうすることによって対応するオレフィンと見出し(この場合はψ,ψ-Carotene)が同じになるので、収録順があまり離れなくて済むと考えたのであろう。
しかしこうしたヒドロキシ基を接頭辞で表現したなら、CASではその他のヒドロキシ基もすべて接頭辞で表現される。
カロテノイドの二重結合の配列が逆転したとき(レトロカロテノイド)は、イタリック体の接頭辞 retro を用いる。retro には2つの位置番号を添えるが、第1のものは水素原子を失う位置、第2のものは水素原子を得る位置を表す。
カロテノイド骨格の末端が失われた誘導体(アポカロテノイド)は、接頭辞 apo アポによって骨格の短縮を表現する。apo には、残った末端炭素の位置番号を添える。一端を失った骨格は apocarotene アポカロテン、両端を失った骨格は diapocarotene ジアポカロテンとなる。アポカロテノイドは、末端を失う前はψ末端基だったものとして扱う。
※CASではアポで短縮された末端がカルボン酸かそれに関連する官能基に酸化されたときは、アポの末端にあるものとして、位置番号を省略する。
記号ψは、IUPAC-IUBでは、apo が6またはそれより大きい位置番号を伴うとき(つまり末端C9基が完全に失われるか、C-6のみを残すとき)には記さないが、CASでは常に記す(例えば、IUPAC-IUBなら 8'-apo-β-carotene 8'-アポ-β-カロテン;CASでは8'-apo-β,ψ-carotene 8'-アポ-β,ψ-カロテン)。
IUPAC-IUBでは、骨格がカロテノイドに類似した化合物群は、接頭辞 nor ノル(骨格の減炭)や seco セコ(結合の切断)をもちいて命名できるなら、これらの接頭辞を利用することでカロテノイド命名法を適用することができる。しかしCASではこれらの接頭辞の使用は許されず、体系的に命名する。
レチノイド (retinoids) は、4個のイソプレノイド単位がhead-to-tail式に連結した骨格をもち、それはβ,β-カロテンのちょうど半分である。
vitamin A (ビタミンA)という用語は、IUPAC-IUBの1981年勧告 [Ret]によれば、レチノイドのうち生理活性をもつものに限られるべきであり、ビタミンA活性 (vitamin A activity)、ビタミンA欠損 (vitamin A deficiency)、ビタミンA拮抗物質 (vitamin A antagonist) のような用語をつくるのに用いるべきであるとされる。
CASでは、索引見出し Vitamin A は、ビタミンA群やビタミンA活性に関する一般的な事柄を収録するために用いられる。
特定の構造をもつ個々の化合物には慣用名が認められており、CASではこれらが索引見出しになる。番号付けはカロテノイドと同様である。これらの母体では、別に記述がなければ主鎖の二重結合の立体配置は all-trans である。
IUPAC-IUBでは Retinal レチナールを Retinaldehyde レチンアルデヒドと呼んでよい(特に形容詞 retinal「網膜の」と紛らわしいとき)。レチナールの別名 Retinene レチネンは認められない。
炭化水素(R = CH3)は、IUPAC-IUBではdeoxyretinol デオキシレチノールと呼ぶ。CASでは体系的に命名する。
レチノイドの誘導体は、可能なら、以上の母体に基づいて命名する。レチノールにアルコールより優先順位の高い置換基があっても、接頭辞で表現する。
二重結合の立体化学に変化があれば、主鎖に関して cisで表示するが、IUPAC-IUB [Ret] では E - Z を用いてもよい。
レチノイドの関連化合物は、末端の短縮が骨格の過半に及ぶカロテノイドとして、IUPAC-IUBではapoを用いて命名してよい(apoの位置番号がプライムなしになる)。CASでは体系的に命名する。
※アブシジン酸とも呼ばれるが、学術用語集ではアブシシン酸と字訳している。