人間交差点
「左遷」(5月17日放映分)
現在編集中の為、しばらくお待ちください…。
「荘厳な残像」(5月10日放映分)
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海沿いにある工場が、今日もまたたくさんの煙を吐いて操業している…。
夕方…。
仕事を終えて工場で働く大人達が出て行く…。
それを見ていた一人の少年は、「油の匂いの染み付く事が大人」だと思って見つめていた。
その少年の母親は居酒屋を経営していて、そんな大人達を客として迎えて、あちこちとやりくりに追われていた。
少年は「次郎」と言うが、次郎は大の勉強好きで、いつも上で本を読んだりしていた。
だがその時、兄の「一郎」が入ってきて、真面目に「野口一郎」の本を読んでいたのを奪っておちょくり、
それを次郎は必死に返してくれとお願いする。
だがそれでも一郎は、そんな次郎に向けて「たまには息抜きをしろよ」と言って、自分が持っていたエロ本を見せると、
それを次郎は嫌がって、そのまま部屋から出て行く。
そして階段でそんな母親の働く居酒屋の風景を見て、そこに居る客の男達を見て、
「作り笑いをした体裁な大人」としか見つめてなく、「そんな大人にはなりたくない」と、そう思ってしまっていた…。
そんな次郎は勉強好きが講じて、私立の付属中学へと合格したのだが、
母親はそれでも公立へと行くように次郎に薦めるのだが、それを次郎は納得せずに反発する。
だがその時一郎が部屋から降りてきて、自分は勉強が嫌いだから、勉強の出来る次郎のために、
高校に進学しない代わりに、次郎を私立の中学へ行かせるように説得して、渋々母親もそれを承諾する。
こうして次郎は私立の中学へと進学し、高校大学へとスムーズに上がっていく。
だがその生活の中で、大学の生徒達が今まで見ていた大人達と違う事を肌身で感じ取ると、
自然と自分の生まれた町や今まで居た大人達を「軽蔑」してしまい、やがてはここを抜け出したいという事が、
次郎にとっての一つの目標となっていた…。
……………………………………………
その後次郎は大学を卒業して、その大学の哲学史の教師になっていたが、大人へと成長するにつれて、
今まで生まれ育った町や住む人達の明るさとエネルギーの意味を知る。
だがその部屋で兄の一郎から、自分の息子の「雄一郎」をここの付属中学へ入れてくれるのかどうかと、
ソファに座って問いかけていくが、しかし次郎は眼鏡を拭きながら、それは彼の実力次第だと言い返す。
だが一郎は周囲の噂で、ここに入るのはコネと金だという事を聞いていて、それを次郎に問い詰め、
教師という立場で簡単に甥っ子を入学させられるだろうと話し、自分は自営で勤める焼き鳥屋も順調なので、
金なら用意すると言い出す。
しかし次郎は、自分の大学はミッション系で神の教えに従っている為、そんな不正が行われないだろうと答え、
自分の実力で頑張るようにその考えを述べると、「兄弟の縁を切る!」と一郎はソファから立ち上がって怒鳴り、
そのまま研究室から外へと出て行ってしまう!
その後次郎は一郎から言われた事を考えながら家路に向けて歩いていると、側に通る電車を見ながら、
ふと兄の元へと行こうと思い、そのまま電車に乗って、兄が働く居酒屋へと到着する。
そこで兄は開店準備の為に、入口で水撒きをしていると、訪れた次郎の姿を見て、
気持が変わったのかと思って喜びながら、次郎を店の中へと迎え入れる。
その中で一郎は次郎に向けてビールを入れ交わしながら、いくらミッション系だと言っても、
こうして酒も飲むし女だって抱くだろうと、気ままに笑いながら話していたが、
しかし次郎は自分は信者じゃないと静かに語り、その言葉に一郎も驚いてしまう。
その後で次郎は一郎に向けて、どうして雄一郎をあの学校へと入れたいのかと問うと、
一郎はその理由として、雄一郎を自分みたいな焼き鳥屋にしたくなく、
次郎のように立派な人間に育って欲しいと思って入学させたいのだと言う。
しかし次郎は自分はそんなに立派でもなければ、母親の死に目にも逢わなかった薄情者だとののしるが、
あの母親に苦労させられたんだから仕方が無いだろうと、一郎は次郎の事を気遣ってそう答えて、
そのままグラスに入ったビールを飲み干し、店の事しか考えないで、そのくせ金が無いとぼやく母親だと愚痴をこぼす。
その後で一郎から、あれだけ店が賑わっていたにも関わらず、次郎を私立の中学へ入れないくらい金が無いのは、
人が良すぎて来る客達の勘定を「つけ」にしていたからだと明かし、挙句の果てに人の借金の保証人になって、
店を取られては世話無いなと、呆れて話をしていた。
だがそれでも次郎は、一郎はそんな母親が好きだったんだろうと話し、店を取られた時も母親が病気で倒れた時も、
世話を見ていたのは一郎のほうだと言うと、それは長男だから仕方が無かったんだと、そう一郎は理由を答えていた。
しかし次郎は店が取られた際内心喜んでいた事を明かすと、それは一体どうしてなのかと、一郎は疑問に思うと、
その時はまだ大学に入ったばかりであり、店を取られた事により、この生まれ育った町へ帰ってこなくて済むと思い、
内心喜んでいた事を言う。
だがそれは気にするなと一郎は話し、次郎が働きながら大学を卒業した事に、本当に偉いと思って褒め、
今では教授という立場になっているので、きっと母親も草葉の陰で喜んでいるだろうと答えていたが、
しかし次郎はそれだけの事に耐えられたのも、一番嫌いなこの町で、油まみれでも頑張る大人達を見たからだと言う。
だが一郎は次郎にビールを注ぎながら、大学に出たのは、どんなに悪くても給料が良くなるからだろうと問うと、
確かに初めはそうだったけど、その考え方が大学在学中に「ある教授」と出逢った事により変わった事を答え、
「それがお前の先生なのか」と、一郎は不思議に思いながら次郎に問うと、そのまま次郎はそうだと頷いていた。
そして次郎はビールの入ったコップを掴みながら、大学4年の時の事を思い返していた。
……………………………………………
その頃次郎は、バイトをしつつ友達に代弁を頼んで何とか単位を取っていったが、
その大学の中に居た名物教授の単位だけは、上手くやりくりする事はできなかった…。
その教授は学生には特に厳しく、代弁もすぐに見破る為に、その単位だけ取れずに留年する学生も続出していた。
そこで次郎は休憩時間に、その教授に生活費の為にバイトをしているので、
授業が半分しか出席出来ないことを正直に告白し、何とか単位をまけてくれないか頼んでみた。
しかしその教授はそんな次郎に向けて、「授業の半分しか出席できずに、合格点が取れるわけがない!」と、
凄い剣幕で怒鳴りつけ、仮に合格点を取れたとしても、単位はやらないと言いつけ、ここの学生ならあくまでも学生で、
自分の授業を受ける時は、その研究生である事をよく考えるように言い残して、そのまま次郎の元から去っていく。
その言葉に次郎は絶望的だと思い、「どうせ落とされるなら…」と思って、授業に出席せずにバイトに勤しんでいたが、
心の何処かで何かが引っかかっていて、皿洗いのバイトでも板前の人に、汚れが落ちていないと怒鳴られる始末。
そんな中で次郎は、ふとあの教授の姿を思い返していた。
あの目つきに、何か親近感があると…。
そこで次郎は、教授の言うとおりに授業に出てみる事にした。
出席できる半分の授業は、人よりも何倍も真剣に受講しつつ、バイトにも一生懸命頑張っていた。
それは次郎自身でも不思議に思うくらいに…。
そしていよいよ卒業の単位を取るための試験…。
テーマに沿って次郎は真剣に考え、時だけがただ過ぎていくだけだった…。
だがその時、ふと次郎は前を見てみると、そこにはあの教授が笑顔で次郎を見つめていた。
どうやら残っているのは次郎だけらしく、それを聞いた次郎は驚きながら教室の中を振り返った。
確かに誰も居なく、他の生徒達は諦めたか、よほどの自信があるのだろうと話す。
そんな時次郎は、ふとあの教授の目が、子供の頃に見たあの大人達の表情と同じだった事を思い返していた…。
そして教授は次郎に向けて、残り10分を懸命に頑張るように言い残して、再び教壇へと戻っていく。
それから数日後、掲示板にはこの前受けた試験の合格者達の名前が書き出されていた。
しかし集まった学生達からは、「3分の1が落第だ…」と、溜息に似たどよめきが聞こえる中、
すぐさま次郎もその結果を見てみた。
するとそこには、「小川 次郎 100点」という文字が書かれてあり、その状況に次郎は驚きながら、
すぐさまその教授の元へと駆け寄って礼を言う!
だがその教授は、「礼を言われる憶えは無い!」と、厳しい言葉で次郎に向けて言い返していたが、
しかし次郎は、自分は満点なわけがないと、その教授に向けて話すと、「自分の採点に狂いは無い!」と、
厳しい表情のまま次郎に向けて答えて、そのまま背を向けて立ち去ろうとしていた。
だがそれでも次郎は再び頭を下げて礼を言うと、すぐさま教授は立ち止まり、自分も昔は苦学生だった事を語り始め、
今の自分があるのは、自分も頑張ったつもりだがそれだけではなく、世の中を信じた事が大きいことを言い、
その為に信じる大人になるように言い、次郎が呆然としている中で、そのまま静かに離れていく…。
……………………………………………
その話を次郎から聞いた一郎だが、確かに良い話ではあるが、世の中そんな良い人ばかりでは無いだろうと言って、
再びビールを飲み干すと、その言葉に次郎は納得しながら、今居る学校は周囲の噂通りである事を明かしていた。
理事長に事務局…そして、教授達も腐敗していると。
「それなら息子を入れたって…」と、一郎は次郎に話をするが、しかし次郎はそんな学校だからこそ、
雄一郎を入れたくなかったんだと説明するが、「それならどうしてそんな学校に居るんだ?」と、
一郎は不思議に思ってさらに次郎に問いかけてみた。
すると次郎は真剣な表情で、あの教授に教えてもらった「世の中を信じる事」を、今度は自分が教えるのだと答えると、
それを一郎はきょとんとした表情で聞き、さらに次郎は、本当に雄一郎を入学させたかったら、
自分の子供の実力を信じて、ちゃんと入学試験を受けて入って欲しいとお願いして、
そのままテーブルから離れていく…が、その入口で立ち止まって振り返り、さらに一郎に教えていた。
それは、「疑うことよりも、信じることのエネルギーのほうが大きい」という事を!
その言葉を一郎はじっとテーブルに座ったまま聞くと、そのまま次郎は店のドアを閉めて静かに出て行く…。
そして一郎はじっとタバコを吸いながら、「…そうかも知れないな…」と、じっと店の壁を眺めながら思っていたが、
その後すぐに気を取り直して立ち上がり、店の灯りを灯して開店の準備をすると、そこに最初の客が訪れて、
すぐに一郎はその客達を迎え入れた。
その一方で次郎は電車の中で、生まれた街並を眺めながら、「憎む事よりも愛する事のほうが、
遥かに強い物なんだ」と思って、そのまま家路に向けて、夜の市街地へ向けて走り去るのだった…。
「人を信じる事」…今の世の中に無くなってきている、「人間の気持」の一つなのかも知れない。
今の世間を良く見ていけば、大概は「自己主義な考え」が強くて、「他人の気持」なんか二の次に置かれている。
「裏切り」や「争い」などは、人間関係では何らかの事であるが、その中でも「相手の良さ」を見抜いて、
信じぬく事が必要なのだと思う。
例えそれが「相手が自分の事を嫌っていても…」、相手が聞いてくれていると信じていれば、
いつかは伝わるはずだと思いたい…。
「冬の蝉」(5月3日放映分)
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あるビルの工事現場…。
良くある街の風景の中に、一人の作業員の男が昼食を終えて、休憩がてら台本を読んでいた。
どうやら彼は役者らしく、一人つぶやくように台詞を憶える為に練習をしていると、反対側の撮影所の建物から、
黄色い声援が響き渡り、一体何かと思って男はその前を見つめていた。
するとその入口に一台の高級車が止まっていて、その周りを女性達が囲んでいると、
そこにスター俳優の「遠藤秀一」が居て、マネージャーが囲むファンを押さえながら、何とか車に乗せていた。
それを別の作業員がジュースを飲みながら羨ましそうに見つめ、いつか自分達も陽の目を見れるのかと思い、
ずっと土の中の蝉のままでは嫌だなとぼやきながら、その車をじっと見送っていた…。
しかし彼「緑川道夫」はそんなぼやく「森山」に向けて、自分は羽ばたいてみせると堂々と言いきっていた!
……………………………………………
それから数年後、道夫は見事にスター俳優の名を勝ち取り、ラジオスタジオで仕事をしていたが、
そこでディレクターの「吉村」から「今の所、もう一度…」と言われたが、さすがに6度目のリテイクに、
道夫も呆れてぼやいていた。
だがそんな道夫の心情も察して、申し訳無さそうに吉村は頼むが、しかし道夫も、
かなりハードスケジュールの中でしているんだと、そんな吉村に向けてふて腐れるように言い返すと、
さらに吉村はそれを理解はしているが、受けた以上はちゃんと仕事をしようと言って説得する。
だがその言い方に道夫は腹を立てて、今度は吉村に向けて怒鳴り散らしてしまう。
その後道夫は怒ってスタジオを出て行ってしまうと、その後に追いかけた森山は、ぼやく道夫を追いかけて、
何とか怒りを鎮めようと話すが、しかし道夫は怒ったままで、もうラジオの仕事は入れなくて良いと言い返して、
そのままさっさと勝手口へ向けて走っていた。
するとその出口にたくさんの女性ファンが立っていて、その姿に道夫と森山は驚いていたが、
そんな彼女らを側の高級車に乗る遠藤は、冷ややかに見つめるのだった…。
そして道夫は森山と一緒に車に乗っていたが、そこで森山が顔を背けているのを見て、何か言いたい事があるのかと、
道夫は思って問いかけるが、ただ森山は「いや…」と答えるだけであり、道夫は全く納得が行かなかった。
だがその後に森山は、「渚の事は、ちゃんと話をつけておいたから…」と言うと、それを聞いた道夫は、
「あぁ…あの女優の卵か…」と、そっけなくそう答えるが、しかし森山はあまり遊んでばかりいては、
「里美」に失礼じゃないかと話すが、どうやら里美は近く出産するらしく、道夫は怒鳴りながら、
早めに大事を取らせた事を話す。
すると森山は少し寄ると言うが、しかし道夫は自分が疲れている事を理由に断り、人気俳優の体調を管理するのも、
マネージャーの仕事だろうと、森山に向けて怒鳴り散らしながら、運転手に向けて次のスタジオに行くように命じ、
想いが伝わらずに森山は溜息を吐いていた…。
だがその後で道夫はテレビ局で時代劇の仕事の休憩中で、その衣装のままソファで横になりながら、
ふとドラマのオーディションを受けた自分を思い返していた…。
……………………………………………
道夫はそのオーディションで、審査するテレビ局の人達から、「もう少し歯切れ良く…」と注意をされるが、
しかし道夫は納得が行かず、「このシーンではもっと、感情を抑えた芝居のほうが…」と、
その人達に向けて言い返すと、そのディレクターらしき人から、「言われたとおりにやれないなら、
帰ってもらっても良いんだよ!」と、最後通告を出されてしまい、道夫は腹を立ててそのまま出て行ってしまう!
そんな怒っている道夫を森山は心配して、どうだったと弱々しく話しかけるが、どうやらこのドラマのオーディションは、
すでに主役が決定していて、ただの話題づくりなだけだとぼやくと、「そうか…」と思って森山は、
そんな道夫の心情を理解して聞く。
その後に道夫は、森山のほうはどうだったのかと聞いてみたが、やはり彼も5〜6年は雑用だと言われた事を話し、
その場で溜息を吐いていると、それを聞いた道夫は、「売れた者勝ちかぁ…」と思っていると、
ふと先の工事現場のバイト先で見た、女性ファン達に囲まれる遠藤の姿を思い返し、
横に座っている森山に向けて、自分は勝ってみせると誓うのだった!
だがその数日後に、遠藤が大麻所持で逮捕され、それがスポーツ紙で掲載されていると、
その代役として道夫が抜擢されると、とんとん拍子にスターダムに乗り、その年で新人賞まで勝ち取る!
……………………………………………
それを道夫は思い出しながら、「そうだ…俺は勝ったんだ!」と思って微笑んでいたその時、
慌てて森山は中へと入り、里美の調子が悪い事を伝えると、すぐに様子を見に行くように道夫に薦めたが、
しかし今は撮影中であり、それは無理だろうと道夫は言って断っていた。
だがまだその撮影までは充分時間があり、30分あれば行って戻ってこれるだろうと森山は言い返すが、
この衣装のままで行くのかと、道夫はそこでぼやいた後に、もし途中で何かあったら困るだろうと、
森山に向けて言い返し、監督がとても難しい人で、下ろされた役者が何人も居る事を知っているだろうと、
道夫は森山に向けてそう告げる!
だが森山はそれは道夫が気にしすぎているだけであり、本当に重要なのは「しっかり仕事をする事」であり、
「周りの目を気にすること」じゃないんだと言い返すが、しかし道夫はそれでも怒鳴って聞かず、
自分は一瞬だけ売れて消える役者になりたくないんだと、森山に向けてその気持を話す。
だが森山はそんな道夫が怯えすぎだと見え、悲しい表情でそれを言うと、その言葉でさらに道夫の怒りに拍車をかけ、
「誰のおかげで飯が食えると思っているんだ!」と、森山に向けて怒鳴ってしまい、
挙句の果てには森山が持っている車や背広、そして奥さんや子供が養えるのも自分のおかげだろうと言い出す!
だが森山も我慢の限界が来ていて、偉そうな態度を取る道夫に向けて、「…なら、首にしろよ…」と睨みながら言い、
そのまま控え室から外へと出て行こうとしたが、その前に一言道夫に向けて、捨て台詞のようにこう告げる。
「今のお前…馬鹿みたいだよ!」と…。
だが道夫もその言葉でさらに怒り、森山に向けて殴り飛ばすと、そのまま森山は廊下に倒れ、
さらに道夫はそんな森山に向けて、「俺がどれだけ神経を使っているか…」と、自分の苦労を押し付けながら、
森山はただくっついて来ているだけじゃないかと、道夫は思ってその気持を怒鳴りつけるように言う!
だがそのまま森山は静かに立ち上がり、今のポジションを維持すると告げる道夫に向けて、
静かに「そうか…」と言ってそのまま立ち去っていく…。
その後道夫は仕事を終えて、すぐに次の仕事へ向かう為に、走って外で待つ車に乗り込むが、
その中には森山は居なくて、「まさか本当に帰ったんじゃないだろうな…」と、運転手に向けて問いかけると、
どうやら森山はちゃんと運転手に、この仕事が終わった後に病院に寄るように言われ、それを道夫に伝えるが、
しかし道夫はそのまま六本木へ行くよう運転手に指示を出す。
だが運転手も森山にすぐ連れてくるように言われた事を話すが、それでも道夫は森山はただのマネージャーで、
稼いでいるのは自分なんだと怒鳴り、そのまま運転手に有無を言わす間もなく、黙って行くように命じる!
そして運転手が車を走らせていくと、そこで道夫はその車中で、落ち目になったらゴミのように捨てられる世界で、
寝る間もなく頑張っているのは自分なんだと、偉そうにそう言いきりながら、
「顔くらいみせろよ…」の森山の言葉を思い返し、「関係ねぇよ…」とぼやきながら、そのまま眠ってしまうと、
そこで道夫は少年時代の頃を夢に見ていた。
……………………………………………
子供の頃…。
いくつも立つ工場の煙突から煙が出る中、道夫は父親の自転車の後ろに乗って、一緒に家に帰っていた。
どうやら父親も俳優をしていて、近所のおばさんから良く話しかけられた時に、
堂々と道夫は父親の職業を「俳優だよ!」と答えていたが、しかしその父親は売れない大部屋俳優だった為、
言われても誰もピンと来なかった…。
……………………………………………
そんな事を道夫は思い返しながらも、そのまま六本木にあるスナックに到着すると、そのまま運転手を帰らせて、
道夫は一人で中をぶらつき、スナックで飲み歩いていたが、途中で携帯が鳴り響くが、
そのまま道夫はその電話を切ってしまう!
そして時間は午後11時を過ぎ、一人でうなだれて待つ森山の側に、ようやく道夫は到着するが、
酔ったまま森山に向けて、「仕事が長引いたから…」と言って謝っていた。
だが森山はそんな道夫を睨んだ後で、すぐに落ち込みながら、結局赤ちゃんは一声上げただけでこの世を去り、
まだそれを里美に教えていない事を、道夫に向けて説明しながら、ショックを与えないように励ますように言うと、
その意外な言葉に道夫は驚いてしまう!
そして道夫は病室のベッドに横たわる里美の側に寄り、「仕事が立て込んだから…」と言って手を握って謝ると、
それは森山から聞いたからと、笑顔で里美は言いながら、別に無理して来なくても良いのにと、
道夫の事を気遣って答えていた。
しかし道夫はそんな事は無いと言って笑って言うと、里美は「今のみっちゃんは一番大切な時だから…」と、
懸命に道夫が努力した事を理解しようとしていたが、逆に道夫は驚きながら、「来るのが当たり前だろう!」と、
そんな里美に向けて言い返してしまう。
だがそこで里美は、その子供がどっちに似てるか問いかけると、一瞬道夫は戸惑ってしまうが、
すぐに森山が「まだ保育機に入っているから、わからないんだよ…」とフォローし、道夫が側に居て安心するだろうから、
そのまま寝たらどうかと里美に薦める。
すると里美は笑顔で道夫を見つめながら安心すると答え、本当は心細かった事を打ち明かすと、
道夫は気持を打ち殺して、謝りながらすぐに寝るように話していると、そこで看護婦に道夫は呼ばれ、
そのまま里美の手を握りながら、「ちょっと…行ってくる…」と言って、そのまま病室の外へと出て行く。
その後道夫はナースステーションの中で、看護婦から「出生証明書」と「死亡証明書」を書くように言われると、
死んだ事実を知って道夫は驚き、さらにその届けに赤ちゃんの名前も記入するように告げられ、
看護婦が立ち去った後で道夫は、じっと出生証明書を睨みつけていた…。
その後道夫はタバコを吸いながら、今日は何日だったかと思いつつ、子供の名前は何にしようかと考えていた。
子供の名前…。
普通の夫婦だったら話し合っていただろうが、この所ろくに帰っていなかった為、そんな話もしなかったなと、
道夫は後悔しながらその事を思っていたが、こうして今頑張っているのは里美の為でもあるのだと、
すぐに真剣な表情になって思い返していた。
そして時間は1時を過ぎたところで、道夫は自棄になるかのように、子供の名前を適当に「道男」にしようと思い、
すぐにその名を2枚の紙に書き記すと、外で待っていた森山に、その書類に印鑑を押して、
後で看護婦に渡すようにお願いして、そのまま家に帰って寝ると言って、そのまま足早に帰っていく。
そんな後姿を森山は悔やむように見ていたその時、廊下で子供の泣き声が響き渡り、
ふと道夫はその場で足を止めてしまう。
その状況に森山は不思議に思って問いかけると、そこで道夫は何か聞こえなかったか森山に聞くが、
結局森山には何も聞こえなかった…。
だがそこで道夫は、さっき森山が赤ん坊が一泣きしたのを言った事を思い返して問うと、
その為に出生証明書も書いたのだろうと森山は驚きながら答え、確かに一瞬だったけれど、
その赤ん坊は生きていたと落ち込みながら答え、その言葉に道夫も寂しそうな表情で聞いていた…。
するとすぐに道夫は戻って、さっき森山に渡した書類を奪い取ると、「もう少し…ここに居るわ」と言って、
再びナースステーションに戻って、書類に書く子供の名前を真剣に考えていた。
確かに一泣きでも生きていた…そう、お前も生きる為に生まれたんだなと、道夫もそこで納得すると、
先に書いた「道男」の文字を二重線でかき消し、再び真剣に名前を考えていた。
時間は午前3時を過ぎた頃…。
そこで看護婦が困ったように、朝になったら忙しくなる事を話すと、そこで道夫は謝りつつも、
「どうしても良い名前が思いつかなくて…」と、悩みながら書類を見つめていたが、しかし看護婦は、
「事務的な物なので、あまり真剣に考えないんですけど…」と、困った表情のままそう道夫にアドバイスして、
そのまま道夫の側から離れるが、それでも道夫は真剣に子供の名前を考えながら、ふと昔に、
父親の言葉を思い返していた…。
……………………………………………
そこで父親は自転車の後ろに乗る道夫に向けて、どうして「道夫」という名前をつけたかを説明していた。
それは、「自分の道を信じて、まっすぐに進んで欲しかったからだ」と…。
だがすぐに父親は、今の道夫には難しいからわからないかと思って笑って話すが、
その後に道夫に向けてこう教えていた。
「その道はまっすぐで楽な道ばかりじゃなく、こういう上り坂もある事も憶えておけ!」と…。
……………………………………………
そんな事を思い返しながら、静かに道夫は子供の名前の欄にペンを走らせ、そこに「真生」と言う名を書いていた。
その後朝を迎え、落ち込む森山に道夫は書類を渡していたが、無精髭が生えて落ち込んだ森山の姿を見て、
「お前…老けたな」と道夫は笑みを浮かべて話し、逆に森山も道夫も年相応に見えると言って笑って言い返す。
そう…もう互いにもうすぐ40歳であり、それを二人はしみじみと感じると、ふとそこで道夫は、
昔父親が10代の時はなかなか大人になれなくて、イライラしていたが、20歳を過ぎた後は、
嘘のように時が経つのが早く感じた事を思い出し、しみじみとそれを森山に話しながら、
最期に父親が言った言葉が、「人生は一瞬だった…」と言ったのを、ふと思い返していた。
それを森山は静かに聞いていると、そこで道夫は、やっとその意味がわかったと、笑顔に満ちた表情で、
昔の劇団役者時代の事を思い返していた。
そこに集まった者達は、ある者は役者を目指し…ある者は演出家を目指し…またある者は脚本家を目指して、
それぞれに頑張っていた。
「明日への希望に燃えていた頃」…。
そう言いながらふと道夫は、その時の事を「若かったな…」と思って振り返っていた。
……………………………………………
下宿先でみんながすき焼きを食べて集まる中で、道夫は酒に酔った勢いに任せたのか、
そのまま机を叩きながら、「蝉は一週間しか生きられないから可哀想だと言う奴は馬鹿だ!」と、
その場で怒鳴っていたが、しかし集まった仲間達は、「また言い出したよ…」と思って、呆れながらそれを無視する。
だけど道夫はさらに熱弁を続け、蝉の一週間というのは、自分達人間の一生分に値するんだと言い、
その7日間を行きぬく為に、6年間もじっと土の中で耐えていたんだと説明しながら、
そんな自分達が「冬の蝉」なんだと、その場で堂々と言い張っていた!
だがそれは道夫の父親の口癖であり、それをいつの間にか道夫も口癖のように話していると、
最後には自分達も蝉のように、一瞬の夏を駆けなければならないのだと、全員に向けて熱弁を繰り返していた!
……………………………………………
しかし父親が言う「蝉」は、そんな一瞬の夏を駆ける蝉でなく、土の中の6年間も、地上に出た7日間も、
生きる事には変わりはないんだと、ようやく道夫はその意味を悟り、どんな時でもその一瞬一瞬を、
大切に生きていく意味なんだと知る!
ましては自分達は蝉じゃなく「人間」であり、ほんの一瞬だけでも生きて生まれた「真生」もまたそうなんだと、
その書類を見ながら道夫は思っていた。
その後道夫は真生の葬儀を済ませ、その遺骨の入った箱を、道夫は机の上に置いて見つめながら、
自分のように「どれだけの仕事の量をこなした」とか、「どれだけ世の中に名前が出た」とか、
「どれだけ稼いだ」とか「どれだけ業界で力を持った」とか、そんなのは人間として生きる事とは関係ないと考え、
やっとわかった自分の馬鹿さ加減に呆れてしまっていた。
だがそんな道夫を森山は、「お前は良くやっているよ…」と言って慰めると、そのまま道夫は礼を言って立ち上がると、
さらに森山は、「蝉のように死に急ぐことはないよ…」と話すと、道夫はじっと窓の外の空を見上げながら、
静かに返事を返すと、そこで森山に自転車を借りてきて欲しいと頼み、その言葉に森山は驚いてしまう。
つまり道夫は、死んで遺骨になった真生にも、生まれて死んだ場所を見せてやりたいと思い、
その借りた自転車を漕いで街の中を走り抜けていた。
「街とはどんな物か」…「自動車とは…」…「電車とは…」…「どんな人と出会い、どんな人と歩くのか…」…
「どんな物を食べ、どんな所で暮らすのだろうか…」と…。
さらに道夫は父親が話していた名前の由縁を思い返し、「道はまっすぐもあれば、曲がりくねった道や、他にも…」と、
遺骨の真生に向けるかのように心の中で教え、夕方まで街の中を漕ぎ続けていた。
そして街並が見下ろせる丘の坂道に止まり、「ここが…お前が生きるはずだった街なんだ」と、心の中で思っていると、
その姿を入口から見上げていた森山は、そんな道夫の涙を流した表情を微笑ましく見つめ、
道夫は一瞬しか過ぎなかった真生の一生を思い浮かべながら、夕陽に映える街並に向けて涙を流すのだった…。
人は生きていく為に色々と努力をする…それは当たり前のことではある。
だがそんな「当たり前」を「自慢」する事がどんなに愚かか…。
わし自身もそんな一面があるだけに、正直身につまされる思いでこの話を見ていた…。
ほんと、情けない話だ…。
だがその時にどんな幸せな時があっても、不幸な時があっても、結局は生きていく中での「一瞬」にしかすぎない…。
でもその「一瞬」をも大切に生きられたら…それこそ生きる意味としての本来の姿じゃないのだろうか…。
「行方」(4月26日放映分)
……………………………………………
赤く染まる夕焼け空が、街を赤く染める中、その川沿いに二人の親子が手を繋ぎ、歩いていた。
だが二人は何故か不安そうな表情をしていると、突然子供が母親に向けて、「ねぇ…お家へ帰ろうよ…」と、
寂しそうに母親に向けて訴えかけていたが、母親はただ黙って子供の手を握り締め、
そのまま近くの川をじっと眺めた。
しかし寂しさを一層増させるだけで、母親はそれを見ながら、静かに目に涙を浮かべていた…。
……………………………………………
それから数年、幼かった子供は綺麗なレディに成長し、じっとマンションの一室を眺めながら、
その事を思い返す一方、近くのベンチでは一組の若いカップルがいちゃつき、一緒に居た恋人は気を使って、
手を繋いで引っ張ろうと思っていた。
だがその女性は、その一室に明かりが灯った事を静かに話し、気の弱い恋人はそのまま手を引っ込めて、
女性の言葉に相槌するしかなかった…。
その女性の名は「陽子」と言い、その部屋の明かりを見ながら、外から見る窓の明かりは、
何事もなく平和に見えると寂しそうな表情で語ると、それを聞いた恋人は戸惑うと、陽子は時計を見ながら、
「そろそろ時間だわ…」と、そう話していたが、男性は一緒に食事する予定だったのではと思って、
驚いてそれを問うが、どうやら山梨にいる兄との約束があったらしく、それを笑顔で陽子は答えていた。
だがその恋人は、「それならついでに、自分達の事を話せば良いのでは?」と、陽子に向けて問いかけるが、
しかし陽子は「今日はちょっと…」と考え込むと、その言葉に恋人も納得して、そのまま駅へと送っていくのだった。
その後陽子は兄を訪ねて山梨の家へと訪れて、早速用件を聞いてみると、
どうやら一緒に居る父親をしばらく預かって欲しいとの依頼らしく、兄は申し訳なさそうな表情で、
陽子にお願いをしていた。
だが陽子はそれは4年前に片付いたはずだと、凄い剣幕で怒っていた。
それは兄の工場が移転してしまった際、どうしても家族一緒に住みたいという願いがあって、
前に住んでいた蒲田の家を売却して、工場のある山梨へと移住したいきさつがある。
しかし兄はそれを承知で陽子に頼み、「2ヶ月…いや、1ヶ月でも良いから…」と、陽子に向けてお願いする。
それでも陽子は納得が行かずに、怒って睨みつけていると、さらに兄は自分の息子の「ヨシオ」が、
大学を卒業して帰ってきたので、部屋がなくなったと理由をつけて説明するが、しかし陽子は、
それならヨシオと弟の「リュウジ」の二人を一緒の部屋にしたらどうなのかと提案し、
子供に部屋を設ける為に、父親を追い出すのは誰が聞いてもおかしいだろうと、さらに怒ってそう告げる。
だがヨシオのほうも、大学は無事に卒業したが、就職先を大手ばかり狙い、結局就職浪人になってしまい、
かなりショックが大きいのだと切実そうに兄は話すが、それでも陽子はずるいと言い返し、
初めから押し付けるつもりで追い出したのだろうと、兄に向けて怒鳴ると、ほっとした表情で兄は陽子に、
引き受けてくれるのかと思って喜ぶが、しかし陽子の心中は、とても穏やかな物ではなかった…。
そこでふと思い返す幼い時に母親と一緒に行った、川沿いの風景…。
陽子はその時、こんな父親と結婚した為に、母親が死のうと考えたのではないかと思い返していた。
その翌朝、陽子のマンションには父親が一人、ポケコンをして寂しそうに遊んでいた…。
それを陽子は嫌そうな表情で睨みつけながら、そのまま会社へと出かける事を言って、家へと出て行く。
その後陽子は勤め先である、「東西信用金庫」へと到着して仕事をしていたが、ぼーっとしてしまい、
同僚の女子社員から注意を受けて、謝りながら仕事を進めていた。
一方父親は、一人外へと出かけようとして、エレベーターの前で待っていると、そこから出てきた子供が、
駆け足で出てきてぶつかった為、苛立った父親はその一人の子供を捕まえて、「静かにせんか!」と怒鳴ってしまう。
その夜陽子は恋人と一緒にバーで飲んでいたが、そこでその恋人に向けて、「そろそろ潮時かな…」と、
グラスを指でなぞりながらぼやいていた。
彼女はその信用金庫で13年勤めていたが、オンライン化もかなり進み、昔みたいにそろばんや簿記などは、
何も役に立たなくなってきたと話すと、自分は余計者なんだと、同僚は口に出さなくても態度で出ているとぼやく。
すると恋人は、ちょうど良い機会だから結婚しようと言い、自分は陽子が必要なんだとプロポーズをして、
陽子も嫌じゃないのだろうと問いかけると、笑顔で陽子は「もちろんよ!」と答え、5年も付き合っているのだから、
結婚する意思もあると言うが、それでももう一歩の所で踏み切れないんだと、戸惑った表情でそれを答える。
するとその恋人は、自分に原因があるのかと不安に思って問いかけるが、すぐに陽子は首を横に振り、
夫婦だとか家族だとか母親になる事だとか…そうなる事が怖い事を言うと、そこで陽子は、
幼い時から今まで母親が嬉しそうな顔を見た事が一度も無い事を話していた。
いやそれは母親だけでなく、家族自体の話し声が聞こえない「寂しい家族」だった事を明かしていた。
……………………………………………
その原因は「父親のギャンブル好き」…。
一人陽子が戸惑う中で、いつも酔っ払って家から帰り、「金だ!金!!」と、タンスの中を引っ掻き回し、
見つけたお金をまたギャンブルにつぎ込む…。
そんな様子を母親は、必要な金だと言って止めても、そのまま父親は見つけた金を持って、
「何倍にして返してやるからな!」と言い残して外へ出て行き、母親はただ体を震わせながら見つめるだけだった…。
……………………………………………
それを思い返しながら、全ては父親のせいなんだと、陽子は恋人に向けてぼやいてしまう…。
その翌朝、昨日陽子の父親にぶつかった子供の母親達が、凄い剣幕で管理人に向けて訴えかけ、
すぐに一緒に陽子の部屋へと訪れると、何も知らない陽子は驚きながらそれを聞いていた。
つまり父親は近所の子供達を捕まえては、「行儀が悪い!」とか、「挨拶をしろ!」とか説教をしているらしく、
さらにお菓子を食べながら歩いている子供には、怒ってそのお菓子まで取り上げてほっぺをつねり、
すっかり子供達は脅えてしまったと、その母親達は陽子に向けて集中的に怒鳴っていた。
しかし陽子はただ母親達に謝り、父親には説得するので引き取って欲しいと言って、そのまま玄関のドアを閉めると、
陽子は自分の平穏な生活までも、父親のせいで潰れたと思い、怒りのあまり父親が遊んでいたポケコンを取り上げ、
「一体どういうつもりなのよ!」と、父親に向けて怒鳴っていた。
しかし父親は、「なんだ、そんな事か…」とのんびり答えたが、しかし陽子は近所の母親達に文句を言われたと、
父親に向けて怒鳴っていた。
だが父親はそんな母親達のしつけがなってないだけだと言い、親がそんな調子だから、
子供がダメになるんだと反論すると、その目の前に陽子は座り、自分がどうして商業高校に行ったかわかるかと、
父親に向けて問いかけていた。
どうやら陽子は早く家を出て、一人独立したかったらしく、その本音を父親に向けてぶつけると、
その言葉に父親は落ち込むが、さらに陽子は追い討ちをかけるかのように父親に向けて、
家にほとんどお金を入れなかっただろうと訴え、さらには母親の働いた金まで持ち出し、
他の女と遊びほうけた中で、母親はお爺さんとお婆さんの世話をしながら、ずっと一日働きづめだったんだと、
父親に向けて怒鳴り散らし、ついには自分勝手に生きた父親が、子供のしつけを偉そうに言えるわけがないだろうと、
涙を浮かべながら訴えていた!
その言葉に父親は何も言えず、ただじっと座っていると、さらに陽子は「約束の1ヶ月が経ったら、
何が何でも兄の所へ帰ってもらいますからね!」と、捨て台詞を吐いて部屋へと入ってしまう…。
その約束の日…。
陽子は父親を連れて、兄の家がある山梨の駅へと降り立つ。
そのまま陽子は歩いて兄の家へと向かおうとしたが、しかし父親は、駅から家まで歩いて15分かかるし、
今はバスは出てないと言って拒むが、しかし陽子は少しでも早く父親の側から離れたい一心で、
目の前にあったタクシーを使わず、そのまま歩いて兄の家へと向かっていく。
だが途中の上り坂に父親は息を切らしながら歩いていて、「年寄りにはきついよ…」と、
先に行く陽子に向けて話していて、近くにあったファミレスで休まないかと提案する。
だが陽子は「すぐそこじゃない!」と振り向きもせずに怒っていたが、しかし父親はとうとう音を上げて立ち止まり、
それを見た陽子は、「私は先に行くから、一人で休んでいれば!」と怒鳴る。
すると父親はそうさせてもらうと言い、そのまま陽子は兄に言いたいことだけ言って帰るから、
その後にちゃんと一緒に居るように、父親に向けて話して、一人先に兄の家へと向かって歩いていく。
そして陽子は兄の家へと到着して、居間で兄夫婦を睨みつけていると、そこで陽子は、
約束の1ヶ月が過ぎても連絡をよこさない兄夫婦に向けて怒鳴っていた。
すると横に居た兄の嫁が、陽子には申し訳ないと思っていると謝るが、しかし陽子は、
自分の生活も大変なんだと逆に訴えかけていた。
それは兄はわかっていると答えたが、しかし陽子は本当にわかっているのかと思って訴えかけ、
自分は32歳だから、結婚もしたいし勤めも変わらなければならないかも知れない事を話す。
その言葉に兄夫婦は驚くが、しかしまだ陽子自身は決めかねていて、寂しくそれを語りながら、
もし別の事務の仕事に就いた場合は、とても父親の面倒まで見られないことを明かす。
すると兄の嫁は、「ごめんなさいね、ヨシオの為に…」と謝ると、そこで兄が口を挟んで止め、
さらに陽子に向けて、まだヨシオに父親の事を話してない事を説明するが、
だがどうしてその事をヨシオと相談しなければならないのか、陽子は不思議で仕方が無かった。
しかし兄はそこで口ごもり、もう1ヶ月だけ父親を預かって欲しいと陽子にお願いするが、
だが陽子は「約束は約束よ!」と、凄い剣幕で兄に向けて怒鳴ってしまう!
するとそこにヨシオが元気な姿で入ってくると、その状況に陽子は驚きながら、「本当に大丈夫…なの?」と、
ヨシオに向けて問いかけていく。
するとヨシオは元気な姿を見せると、兄夫婦は都合が悪い表情を浮かべ、その状況を見て陽子は、
一体どういう事なのかと、兄夫婦に向けて問いかけ、父親の面倒を見るのが嫌だからと言って、
子供をダシに使うなと怒鳴っていた。
その状況に兄夫婦は戸惑い、何も知らないヨシオは一体どうしたのかと思って聞くと、
そこで陽子は父親を預かったいきさつを話し、「良くそんな嘘が吐けたわね!」と、兄夫婦に向けて怒鳴り散らし、
終いには兄に向けて、今まで通り父親の面倒を見て、さらには蒲田の家を売却したお金と、
自分が貸した金を全部返せとまで言い出す!
その事実にヨシオは驚くが、しかし陽子は自分の生活が思うように行かない苛立ちに、
「もう良い加減にして欲しいわ!」と嘆きながら、そのまま靴を履いて外へと出て行ってしまう。
その頃父親は、ファミレスでコーヒーを飲みながら、一人でポケコンをして遊んでいると、
そこで陽子が入ってきて、父親の手を引っ張って兄の家へと向かっていった。
しかし父親は、「そんなに急がなくても良いじゃないか…」と、陽子に向けて話しかけるが、
だが陽子はそれを聞かずに、そのまま凄い剣幕の表情で、父親を連れて兄の家へと訪れると、
今度はいきなりヨシオが兄夫婦に向けて、「ざけんじゃねぇよ!」と怒鳴り散らし、その事実に陽子は玄関で驚くと、
兄夫婦はヨシオに怯えてしまうが、しかしヨシオは兄夫婦が陽子に向けて、どのように説明したか気にしながら、
そんな兄夫婦を蹴り飛ばしてしまう!
だが兄の嫁は、何とかヨシオを静めようとして、足を押さえながら訴えかけたが、しかしヨシオの怒りは収まらず、
そんな兄の影で相談するような態度に、かなりの苛立ちを見せ、さらにはリュウジも高校に行かなくなった事を、
全て兄のせいにして、卓袱台をひっくり返して兄に向けて怒鳴り散らしていた!
陽子はあまりに我慢が出来ずに、そのまま玄関から居間へ向けて駆け上がろうとしたが、
それを父親が腕を引いて止め、「放っておきなさい…ああなったら、収集がつかん」と、陽子に向けて話しかけた。
そして陽子は、いつからこんな風になったのか父親に聞くが、しかし父親は、
それはヨシオやリュウジが生まれる前から、こうなる事は予測していたんだと、苦笑しながらそう答えていた。
つまり父親は、「子供は親を見て育つ」事を言い、その兄の父親は自分なんだと、情けない表情で父親は言うと、
過去に自分が家族に目を向けずに生きたのを見た兄だから、それを見て育った孫のヨシオもそうなるのだと告げ、
気づくのが遅くて取り返しがつかないんだと、寂しげに父親はそう語っていた。
すると怒りに満ちた表情で出てきたヨシオは、玄関に立っていた父親と陽子の姿を見て、
「どけよ!」と怒鳴り散らしていたが、しかし父親はその間で立ち塞がり、その状況にヨシオはさらに、
「また殴られたいのか!」と脅しをかけて押し倒す!
その状況に陽子は父親の体を支えながら、そんなヨシオを睨みつけると、ヨシオはさらに怒りを増して、
そんな陽子にまで突っかかるが、すぐに父親が立ち上がり、それをヨシオは「老いぼれが!」と捨て台詞を吐いて、
そのまま外へと出て行ってしまう…。
そして陽子は怯える兄夫婦を見つめながら、そのまま父親を連れて家へと連れて帰っていく…。
その電車の中…。
そこで一人の子供が、陽子と父親の間に無理矢理座り、後から着いてきた母親に向けて狭いと訴えると、
父親はその子供に向けて、「後から乗ってきたのだから、狭いなら立ってなさい」と、子供に向けて話しかけるが、
それでも子供はそんな父親に向けて「どけよ!」と言い、聞いた父親はそんな子供に向けて、
軽くげんこつで頭を殴ると、子供は痛くてその場で泣いてしまう。
すると目の前に居た子供の母親は、そんな陽子の父親に向けて、「こんな子供に向けて何て事をするんですか!」と、
泣いている子供を抑えながら怒鳴ると、そこで父親は、「小さいからこそ今が大事なんだ」と言い返し、
このままでは子供が可哀想だと言い、甘やかす事と愛情とは別な事を訴えていた!
それを言われて子供の母親は、「そんなの…あなたに言われる筋合いはありません!」と逆上するが、
しかし父親は、「そんな事もわからないのですか!」と反論して、車内で二人口論してしまい、
怒った母親は泣く子供を引き連れて、別の車両へと移って行く…。
その光景を見て陽子は、父親が男として…夫として…父親として、今までしてこられなかった事を、
取り戻そうとしているんだと理解を示し、それを孫のアキオにぶつけられずに、他人の子供にぶつけている…。
そんな気がしてならないと思いながら、寂しげに座る父親の横顔をじっと見つめていた。
その後陽子は父親を家に連れて帰り、一人父親がポケコンをして遊んでいるのをじっと見つめていると、
ふと天井に吊らされていた蛍光灯を見て、「この明かりを外から見たら、平和そうに見えるんだろうね…」と、
静かに父親に向けて問いかけていた。
その言葉に父親は驚くと、そこで陽子は子供の頃、良く母親と一緒に川の土手へと行った事を明かし、
その向こう岸に映った家々の明かりが、自分以外に平和そうに見えた事を話すと、聞いた父親は、
自分の背中を睨む陽子の姿を、今でも忘れていない事を話していた。
しかし陽子は、そんな明かりの中でも、家庭の悲しみや憎しみも隠れているんだと理解し、本当は母親もまた、
何も言えない自分に苛立ちを感じたのではないかと話す。
何故なら母親は、死ぬ間際まで父親の事を心配していたから…。
それを陽子は、絶対に母親のような生き方は嫌だった事を打ち明かしていたその時、
そこで父親は自分が遊んでいたポケコンの画面を見つめながら、「実にコンピュータという物はバカだ」と話す。
その言葉に陽子は驚くと、さらに父親は、コンピュータは一度記憶した事は忘れはしないが、
人間は色んな事を忘れながら生きれるのにと、苦笑しながらそう話すと、さらに父親は、
過去の悔しい事ばかり思い返していたら、一日も生きていけないことを言い、その言葉を陽子は聞きながら、
父親がしてきた事を忘れたわけでも許したわけでもないが、ただ父親の事を愛していたんだと、
お茶を入れながら話していた。
そして陽子はそんな父親に向けて、自分は結婚する事を言い、返事を待っている相手が居る事を話しながら、
父親にお茶を勧め、さらにそんな父親に向けて、一緒に住もうかと相談する。
その言葉に父親は驚くと、さらに陽子は兄に頼るから腹が立つんだと思い、共働きなら広いマンションも借りれるし、
恋人も許してくれるだろうと話していた。
その言葉に思わず父親は感動のあまり体を震わせつつも、「あぁ…考えておく…」と静かに答えながら、
陽子に見られないように、一粒一粒、大粒の涙を流して、その夜は静かにふけるのだった…。
よく言われる「親のしつけの無さ」…そして、「近所の交流」…。
「しつけ」と「甘え」…「暴力」と「教育」…その微妙な差が、やがて子供を暴徒化させているのではないか…。
その事をこの話では訴えているのではないかと思う。
わしの姉は知能障害を持つ人を、社会復帰する為の先生をしていて、昔にその生徒を連れてきた事がある。
だがそこでの姉は、わしと接する時と同じように「厳しく」しつける。
人から見たら「そこまで厳しくしなくても…」とは思うが、それは姉として、その人を少しでも早く、
社会へ勤めさせようとする努力の現われなのだろうと思う。
人の気持を教えるのはとても難しい事を、この話で見えるのではないかと思う。
「約束」(4月19日放映分)
街灯が明るい下町の商店街。
その中で一人の男性が、子供用の自転車を肩に抱えて歩いていた。
どうやら自分の子供に対してのプレゼントらしく、自分が初めて自転車に乗った時の事を思い浮かべながら、
一体どんな顔をするかなと思って喜んでいた。
だがやはり疲れたのか、公園の中で自転車を下ろして、息を切らしながら休憩をした後で、
自転車を押しながら、自分の当時の事を思い返していた。
……………………………………………
朝目が覚めると、家の玄関に真新しい自転車が置かれ、それが夢のように思えてその男性は少年の頃、
大いに喜んで早速乗り回していた。
そしてその自転車によって、彼の世界観は大きく広がっていった。
隣の町や出来立ての駅前ビルやターミナル…。
こうして彼は自転車が大きな革命的出来事であるとも感じる。
……………………………………………
そしてその男性は、息子である「聡」にも黙っていたので、突然だから驚くだろうなと感じながら、
再び自転車を肩に抱えて、マンションの一室にある自分の家へと到着する。
彼は「染谷」と言う名であり、その表札がかかった家へと辿り着くと、早速彼は聡に向けて話しかけるが、
しかし聡はずっとテレビに熱中していて、返事は返す物の全然その自転車を見ようともせず、
そんなそっけない態度に彼は虚しさを感じていた。
そしてそのままリビングへと入ると、そこで料理をしていた妻が声をかけたが、浮かない顔をする彼に向けて、
一体どうしたんだと不思議に思っていた。
すると彼は上着を椅子に投げ捨てながら妻に向けて、聡のそっけない態度を愚痴っていると、
今の子はそんな物だろうと、あっさりとそう妻に言い返されてしまう…。
だがそのショックは夜寝る前まで続き、それを妻が気に話しかけ、聡は聡なりに喜んでいたと言いながら、
今の時代は物が溢れているので、自転車くらいでは感動はしないのだろうと説明する。
だが彼はそこで、自分が子供の頃の事を思い返していた事を説明し、どうしてあんなに感動できたのだろうかと、
その場で考えていたが、しかし妻はそれを「爺臭い」と言い、まだ35歳なのに昔がどうこう言う歳じゃないと話すと、
その言葉に彼も思わず笑みをこぼしていた。
そして翌日、彼は会社の同僚にその事を話すと、その同僚からも妻のほうが正しいと言われ、
さらには変な所にこだわる所がある事を指摘するが、そこでも彼はその同僚に向けて、
自分が子供だった時に、初めて自分用の自転車を買ってもらって嬉しくなかったかを問う。
しかし同僚は爪楊枝で歯の間を掃除しながら、そんな事まで覚えていないと言いながら、
逆にそんな彼に向けて、覚えすぎだと言い返すと、彼はその言葉を聞いてもあまり納得が行かない表情を浮かべる。
だがそこで同僚は、今は情報社会なので、全て必要なデータはコンピュータに入れ、
入らない物は捨てて新しい情報をどんどん取り入れないとと説明して、それでは今の時代に着いて行けないと、
彼に向けて指摘をして、さらに彼は頭を悩ませる。
だがその後で同僚は、彼の所属する部署に入った派遣会社の女の子のプロポーションが良いじゃないかと言って、
また合コンしようと言いだすと、「またか…」と彼は呆れながら、どうしてそんなに新しい娘が来て、
来る娘来る娘に興味が持てるのかと疑問に思っていた。
だが逆に同僚からは年寄臭いと言われ、仕事のしすぎだと注意をしながら、何か趣味の一つでも持てというが、
しかし彼は「ゴルフならするぞ?」と答えるが、しかし前に同僚に向けて、「ゴルフは接待用」だと話していたので、
それは趣味じゃないと言い返されてしまう。
だがそれでも彼は、「忙しいからな…」と落ち込みながら話すと、それを同僚は彼に向けて、
「それだから『仕事人間』なんだよ!」と文句を言われる反面、それだから出世コースへと進んでいるのだろうけど、
それで人生味気なくないかと語っていた。
しかし彼は「仕事が好きなんだ…」と答えると、聞いた同僚は呆れてしまい、合コンの事を考えておくように言って、
そのまま席を離れていき、彼は同僚の後姿を見ながら、思わず溜息をつきながら、1ヶ月前の事を思い返す。
……………………………………………
その夜、いつものように彼は会社から電車に乗り、駅でマンションの近くに止まるバスを待っていると、
いつもより早く仕事が終わったので、今日は歩いて家まで帰ろうと思いなおして、並んでいる列から離れ、
一人歩き出していく。
5年前に引っ越して以来、歩いて帰るのは初めてだった。
そして彼は近くの商店街の中を歩いていると、その中にあった自転車屋の前で、
子供が父親と二人で自転車を買っている姿を見て、ふと自分の幼い頃の事を思い出していた。
そうそれは、先に話した親から初めて買ってもらった、『自転車のプレゼント』…。
そんな光景を思い浮かべながら、そこで彼は聡に自転車をプレゼントしようと思い立ち、
聡が喜んで自転車を乗る姿を思い描きながら、この1ヶ月間ずっと、タクシー代を倹約したり、
今まで吸っていたタバコもこれを機会に禁煙する事を決意し、今まで飲んでいたコーヒーさえも控えて、
聡にそんな感動を与えてやろうと努力して、そんな笑顔を期待しながら、今まで家路まで歩いて帰ったのだった。
「テレビゲームばかりしていた聡にとって、自分が受けた感動を同じように伝われば良い…」
そう彼は思い浮かべながら…。
……………………………………………
だがそんな期待も外れてしまい、彼自身かなりショックを受けてしまっていた…。
そんな気持の中で彼は仕事を続けていると、そこで内線電話を受けた事務の女性から、
「売り場で『021』ですので、すぐに保安室へ向かってください」と言われる。
この『021』とはデパート用語で「万引き」の事であり、彼はそれを言いながら、
溜息を吐いてすぐに保安室へ向かおうとすると、それが小学生だと聞いて思わず彼は驚いていたが、
その側に居た同僚からは、「どうせゲーム感覚でやったのだろう…」と、呆れながら答えていた。
だが彼はそのまま黙って保安室へと向かうと、向かいにいた少年「中沢哲夫」は、落ち込みながらその場で座る。
そんな姿を見ながら彼は、哲夫が何を取ったか保安員に問うと、それは婦人用のストッキング3足であり、
彼はそれを聞いて、一体どうしてなのかと疑問を抱いてしまい、早速哲夫にそれを問いかけてみた。
だが哲夫はただ体を震わせて答えられずに居ると、そこで彼は優しい口調で哲夫に向けて、
「お店の物を盗ると警察に捕まる事はわかるよね?」と話した途端に、哲夫はその場で大泣きしてしまう。
そしてすぐに彼は保安員に、哲夫の両親に連絡が取れたか聞くと、それは取れたらしく、
後はこちらで処理すると答えると、彼は全てを保安員に委ねつつも、「こうした小学生が万引きするとは…」と思って、
少し虚しく思いながら、哲夫の泣く姿を眺めるのだった…。
だがそこでもう一人の保安員の女性から、万引きする子供は家庭に不満を持っている子が多いと言われ、
その言葉に思わず彼は、はっと昨日の事を思い返し、聡が一人で居る事に不安を抱き始めてしまう!
そして彼は途中で仕事を抜け出し、聡の学校生活の様子を眺めることにした。
何故そうした行動に出たのか…彼は、昨日の自転車に対する聡の態度が、心の何処かで引っかかっていたから…。
あるいは自分が息子の事を考えていると言う、「自己弁護」なのか…。
そんな事を思いつつも、じっと正門の前へと立つと、そこで聡が出てきて、父親の姿を見てどうしたのかと思って、
喜びながら駆け寄っていくと、そこで彼は会社を早退したんだと言いながら、一緒に歩いて帰る事にした。
だがその途中で川へと寄り、水面に向けて石を投げると、それが上手く何回か飛び跳ね、
それを見て聡は感心しながら、同じようにやってみたけど、結局その場で落ちてしまう…。
そして彼はもう一回手本を見せると、それと同じように聡もやるとそれが成功して、思わず喜んではしゃぎだし、
二人で夕方まで石の投げ合いをして楽しんでいた。
その後二人で家路へ向かう為に土手を歩くと、そこで彼は聡と二人で帰るのは久しぶりだなと感じ、
それを聡に話していると、彼はデパートで勤めているので日曜日は休みじゃない為、
こうして一緒に散歩した事がなかった事を聡は話すと、そうなのかと彼は納得しながら、少し落ち込んでしまう。
だが聡はそんな彼に気を使ってか、笑顔で「別に良いよ」と話していたが、だが彼は突然立ち止まり、
今月に1回日曜日に休みを取って、この辺を探検しようかと約束を交わすと、その言葉に聡は腕にしがみついて喜ぶ。
だがしかし彼は休むどころか、そんな約束さえも忘れてしまっていた…。
その理由は、この不況の中でのデパート業界で生き残る為に、どうやって集客しようか必死だったから…。
そんな月日の経ったある日の夜、彼は家に帰って聡の部屋を見ると、気持ちよく眠っていたので、
少し安心しながらそのドアを閉じる。
すると妻から、聡と何かあったのかと問われ、どうかしたのかと不思議に思うが、妻はそうじゃないと言い、
今は店にとって大事な時期だから明日話を聞くと、彼はお茶漬けを流し込みながらそう答え、
それを妻は寂しそうな表情で見つめていた…。
そして彼は次の日も仕事に行って、一生懸命働く…。
「それが家族を守る為だ」と、自分の中で信じていたから…。
そしてさらに仕事に精を出して働き出した彼は、帰宅も遅くなっていて、いつの間にか禁煙までも辞め、
駅からタクシーに乗って家路へと向かう…そんな自分に満足していた。
そして家に帰って玄関をふと見ると、そこにあった自転車が自分の買った物と違う事に気づき、
一体どうしたんだと思って妻に問いかけてみた。
すると逆に妻は呆れ、だいぶ前から取り替えたのだと答えると、それならどうして教えてくれなかったのか、
彼は疑問に思ってさらに妻に問いかける。
だが妻はそんな彼がいつも、仕事から帰って「疲れたぁ」と言って聞いてくれなかったとぼやくと、
そこで彼ははっと思い、そのままダイニングへ行って妻にお茶を入れてもらいながら、詳しい話を妻から聞いてみた。
そして妻から、聡があまりに自転車に乗らないので理由を聞いたらしく、
その答えが「どうせ自転車を買うならマウンテンバイクが欲しかった」らしく、それを彼に向けて話すと、
その言葉を聞いて彼は驚いてしまう。
どうやら学校の中で流行っているらしく、とうとう自転車を取り替えるはめになったのだと妻は言うと、
「今の子はそういう注文をするのか…」と、彼は少し落ち込みながらそう話し、
自分の時は新しい自転車を買ってもらっただけで嬉しかったのにと、その当時の事を思い返していた。
しかし妻は今は時代が違うんだと答え、さらに彼が「客のニーズが年々変わるので苦労する」とのぼやきを話し、
お茶をすする彼に向けて、「あなた、仕事の事なら良くわかるのに」と、笑顔でそう話すと、
その言葉に彼ははっと思ってしまう!
そして彼は寝る前に窓の外を眺めながら、ふと以前に同僚から言われた言葉を思い返して溜息をつく。
「お前は『仕事人間』だからな」と…。
そんな事を思い返しながら、自分の父親はそういう意味ではつまらない親父だったなとつぶやくと、
その言葉に妻は何かと思って反応し、思わず彼は振り返りながら、どうして自分は父親に自転車を買ってもらって、
あんなに嬉しかったのかを考えていた事を話すが、しかしそれと聡とどういう関係があるのか、
妻は疑問に思ってしまう。
すると彼は再び窓の外を見ながら、自分の父親は仕事ばかりしていてほとんど家に居なかった事を、
ふと思い返して語っていた。
その頃はちょうど「高度成長期時代」であり、そういう時代だからか、いつも彼が寝ている時に父親は帰ってきた。
そんな父親を見て彼は子供心に、「親父は何が楽しくて生きているのだろう」と思っていた。
つまり「会社しか知らない父親」…。
だが今となっては自分も同じ事をしていて悔やんで彼は涙を流しながら、聡から見ても今はそう思われているだろうと、
自分自身を責め立ててしまう。
しかし妻は笑顔で、聡はそんな風には思ってなく、大好きだと言っている事を話して頷くと、
その言葉に彼もようやく落ち着きを取り戻しながら、自分は勘違いをしていたんだなと思っていた。
そうそれは子供の頃、自分用の自転車を手に入れた事が嬉しかったのではなく、それは以前に父親が約束していて、
それを守ってくれた事に対して嬉しかったんだなと思い返しながら、それは自分の父親と同じ生き方をしていたんだと、
彼はそう思って窓の外を見つめていた。
その言葉に妻もほっとし、彼もまた笑顔を取り戻して妻を見つめていた。
その後彼は聡が寝ている部屋に入り、じっとその寝顔を見つめながら、前に日曜日に休むと約束した事を思い出し、
そこで妻に向けて、聡と約束していた事があったから、今度の日曜日に休む事を伝え、
初めは妻も心配していたが、しかし彼は「今大事にしなければならないのは、『家族』だ!」とはっきり答え、
その言葉に思わず妻は嬉しく思って、彼を背中からそっと抱き寄っていた。
その後に彼は、心の中で一人こう思う…。
「世の中には物が溢れている。
でも……物では決して埋められない物があるんだ」と!!
そしてその日曜日、彼は聡を自転車に乗せて、約束通り二人で町の中を出かけていく。
笑顔で手を振って出かける二人の姿を、妻は笑顔でベランダから見送りながら、「男と男の約束…か」と、
それが本当の親子関係なのかなと、ふと思うのだった。
そして青空の下、彼は自転車に乗る聡の背中を押しながら出かけ、夕方遅くまで一緒に遊んでいた。
それはまるで、互いの気持が通じ合うかのように…。
今の時代は確かに物が溢れているが、だがそれによって「本当に欲しい物」が見えなくなってきてはしないか?
自分達の時代もまた、父親が高度成長期時代で働いていたが、ちゃんとわしとか子供と見つめる努力はしていたし、
「物は与えるのではなく、『努力して物は買う物』だよ」と教えられた。
果たして今の子供達は一体何を求めているのだろうか…。
それが「人間関係の希薄さ」に繋がっているのなら、親達は一体何をすべきか…。
もしかしたらこの話に、その答えが見出せるのかも知れない…。
「初雪25時」(4月12日放映分)
都会の夜…。
バイク便のバイトをするある男性は、今日も夜中に急ぎの配送に追われて、夜の道を走り回っていた。
だがその時、ちょうど信号が変わってしまい、横からトラックが突っ込んできたのに気づいて、
その男性は慌ててブレーキをかけたが間に合わず、そのままバイクから転倒して、
ヘルメットが取れてトラックに激突してしまう!!
その後救急車に運ばれた男性「和也」は、連絡を受けた女性が泣き叫ぶのに気づいて苦しみながらも、
必死になってその女性に向けて話しかけていた。
「俺たち…ようやく始まったってのに……こんな事で死んで………たまる…かよ………」
だがそんな和也の願いも虚しく、両親とその女性に見守られながら、その命を終えてしまう……。
それから数ヶ月が経過した…。
ある小さな商店街「新宿ゴールデン商店街」の中にある喫茶店「カップル」…。
その中で一人の弁護士が、ある不当解雇の弁護に関して、依頼した会社の人事部長と揉めていた。
しかしその弁護士も考え方を曲げず、「強い者が弱い者をいじめるような物じゃないですか。」と必死に説得するが、
それでもその人事部長は納得が行かず、「裁判に負けておいて…!」と文句を言い始める!
だがそれでもその弁護士は、法律が強い者を守る為だけにあるのではないと言うと、完全にその人事部長は切れ、
「お前は理想論者か!」とののしって、そのまま立ち上がって、推薦した大川教授にも、
「この弁護士は大学では優秀でも、社会では通用しない!」と言っておくと怒鳴って、そのまま帰ってしまう…。
しかしその弁護士は、せめてコーヒー代でも払って欲しいと思っていたが、結局それも言いそびれてしまい、
落ち込みながらその場で座ると、そのマスターが顔見知りであり、「またお客を逃がしてしまいましたね…」と、
困りながら話しかけたので、思わず苦笑してしまっていた。
そしてマスターから、そんなに理想通りの仕事ばかりじゃないので、それを我慢してやり通すのが大人だろうと言うが、
しかしその弁護士は、わかってはいても、やっぱり自分に嘘はつけないんだと、壁を見上げながら思っていた。
そんな時そのカウンターで、あの女性が皿洗いを終えて、マスターに向けて終わった事を話していた。
どうやら先週からバイトで入ったらしく、すぐにマスターは弁護士に向けて「みどり」を紹介すると、
丁寧にみどりが「始めまして!」と礼を言うと、弁護士「鶴橋」も自分の名前を名乗りながら、
「この先のスナックで『正義の味方』をやってまぁす」と、笑いながらそう説明していた ^^;
そしてみどりは仕事を終えて、マスターに帰る事を言ってエプロンを置いて外へと出ると、
まだ若いのにおとなしそうだなと、鶴橋はみどりの事をそう思って、マスターに向けて話しかけていた。
どうやらみどりはまだ17歳で、口数はあまり少ないけれど、よく働いてくれるので助かるのだが、
「何か訳ありみたいだけど…」と、マスター鶴橋に向けてそう説明する。
そんなマスターに鶴橋は、「良い人だね…」と言って褒めるが、しかしマスターは、
「ちゃんとコーヒー代は貰うからね!」と言い返し、思わず鶴橋は、「そんな事を言ってるから、嫁が来ないんだよ」と、
呆れながらそう答えていた ^^;
だがその後にマスターは、そんな鶴橋は「今日子」といつ結婚するのかと問いかけると、思わず鶴橋はむせてしまい、
「そりゃしたいけど…ねぇ…」と、不安そうな表情でそう答えていた。
その頃みどりは和也の実家に電話をしていたが、そこで出てきた父親から、「もう電話はしないでくれ!」と怒鳴るが、
どうやら連れていた子供の「太郎」が実家の両親に取られてしまい、何とか返すように話していたが、
それでも和也の父親は、「子供の事は忘れろ!」と突っぱね、「せめて声だけでも…!」とのみどりの言葉も虚しく、
そのまま電話を切られてしまう…。
それからしばらくして、鶴橋は大川教授に呼ばれ、次から次へと依頼を断って、何が不満なのだと問われていた。
だが鶴橋は自分から断ったのではなく、相手に断られたのだと弁明したが、そこで大川教授は、
先にあった弁護依頼でも、鶴橋の力があれば簡単に勝訴に出来るだろうと言うのだが、
それでも鶴橋は納得が行かない表情を浮かべ、その状況に大川教授も不安がる。
どうやら鶴橋は大川教授の薦めでアメリカへと留学したらしく、その理由は助教授の道を諦めさせたわけでも、
ここで弁護士をするわけでもなく、アメリカで視野を広げたのだろうと、少し鶴橋に向けて怒っていた。
すると鶴橋は、アメリカは訴訟だらけの国で、誰もが訴訟を起こしている事を話すと、やがて日本も管理社会が進めば、
同じようになるだろうと、呆れるように大川教授は答えながら、本場のグローバルスタンダードを学ばせる為に、
法学部で助手をしていた鶴橋を、アメリカに留学させた事を説明する。
しかし鶴橋が受けたアメリカの印象は、「みんなが他人の物を奪い合うみたいだった」と話すが、
それを法律に基づいて財産を守るのが、弁護士の仕事だろうと、大川教授はそう説明すると、
そこで鶴橋から、「法律って、一体何を守る為にあるのでしょう?」と問われ、その言葉に思わず大川教授は驚き、
将来有望なのに、こんな所でくすぶっていたらダメだろうと、そう鶴橋に向けて反論する!
どうやら婚約者である今日子は大川教授の娘さんであり、アメリカから帰って来てから2年という期限は過ぎてるので、
弁護士の仕事を含めてそろそろその答えを出せと、鶴橋に向けて怒鳴りだし、まだこのままの状態が続くならば、
今日子との付き合いも認めないと言い出して、そのまま帰ってしまう。
そんな状況に鶴橋は溜息をつくと、机の上に置いてあった、今日子との2ショット写真を見つめながら、
「今日子さん、ごめん…」と謝り、寂しそうに夜の東京の街を眺めるのだった…。
そんなネオンの輝く街で、もう一人部屋の中で、電気もつけずに寂しそうに写真を眺める人が居た…。
そう、それはあのみどりであり、机の上にはまだ和也が生きていた頃に、太郎と3人で楽しそうに映った写真を見つめ、
「どうして私達を残して死んじゃったの…」と、寂しげにそう語っていた…。
……………………………………………
和也が死んでから、二人の間に生まれた太郎は、無理矢理和也の父親から剥奪され、
その状況にみどりは驚きながら待つように言うが、それを母親は育てられないと暴言を吐く!
だがそれでもみどりは、立派に育ててみせると言うが、それでも父親は認めようとせず、
さらにはまだ二人は17歳と若かった為、法律的には「夫婦」として認めてもらえてなく、
「こんな所帯を持つ真似事をするから!」と、和也の父親はそんなみどりに向けて怒鳴りだし、
さらには和也がいない今、太郎の親権は自分達にあるのだと言い出す!
その状況にみどりは納得がいかずに反論するが、経済能力のないみどりがどうやって生活するんだと、
逆に和也の母親から問われると、「働きます!」と堂々とみどりはそう言い返していたが、
しかし和也の父親は、「こんな乳飲み子を抱えた者を誰が雇うんだ!」と反論し、
さらに輪を掛けて和也の母親が、まだ17歳で子供一人を抱えて育てるのは無理だとののしる!
その状況にみどりは悔やむと、さらに和也の父親から、和也がみどりに太郎を産ませた慰謝料は払うから、
それで一切忘れてくれと言い出すが、それでもみどりは太郎を置いて帰ってくれと、必死になって説得する!
だがしかし太郎はその状況に泣き出し、それをみどりは心配すると、そんな太郎を抱きながら和也の母親は、
「あなたと出会わなければ、バイクの配達のバイトなんかしなくても良かったのに…」と、
まるでみどりのせいにするかのように、和也を返せと無理な理屈をこねながら、そのまま太郎を奪うかのように、
みどりの元から引き離し、「私から大切な家族を奪わないで!」との叫び声も、二人からは何も聞こえることなく、
そのままその扉が閉められてしまう…。
……………………………………………
その事を思い返しながら、みどりは太郎が遊んでいたくまのぬいぐるみを抱いて、自分の無力さに悔やんでいた…。
一方鶴橋はその後、気晴らしの為にスナック「デッグダッグ」へと訪れ、そこから今日子へ向けて電話をかける。
……………………………………………
数年前…。
アメリカから帰った時に、鶴橋は大川教授の元へと訪れてそれを説明していたが、しかし大川教授は、
突然の鶴橋の言葉に驚き、主席で卒業して助教授にもなれるのに、どうしてなのかと問いかけていく。
すると鶴橋は、その2年を僕に預けて欲しいと言い、法という物を書物の中ではなく、
同じ市民の目線で見たいのだと話すと、それならば今日子も2年も放っておくのかと、さらに問いかけると、
「今のままではとても今日子さんを幸せに出来ないんです!」と、力強く鶴橋は答え、法律とは何か、
守るべき物は何かを見つけたいんだと、そう大川教授に向けて話していた。
出世コースが目の前にあるのにと、大川教授は呆れて溜息を吐くと、さらに鶴橋は自分の我侭だと承知の上で、
もう一度深々と頭を下げてお願いをしていた。
……………………………………………
そして電話が繋がったが、出てきたのが母親であり、鶴橋は今日子が居てるかと問うと、
「今日子は今出かけております」と、冷たい返答をしてそのまま電話を切ってしまう。
だが本当は今日子は家に居て、そんな母親に向けて鶴橋からの電話じゃなかったのかと問うと、
ただの間違い電話だと今日子の母親は笑ってとぼけてしまう。
その一方で鶴橋は、手にしていた電話を呆然としながら見た後で、そのまま受話器を置いていた。
外はいきなり雨が降り出す中、鶴橋はただ呆然と考え事をしていると、スナックのおかまのママが出てきて、
一体どうしたんだと言いながら、冷やかすようにキスをしようとしていたので、「これ以上顔を近づけるな!」と、
鶴橋はママに向けて怒鳴り、その言葉にママは拗ねる ^^;
どうやらここのスナックのママは、鶴橋が事務所を構える場所の家主であり、それを逆手に取って言うが、
それでも鶴橋は強気の姿勢を崩さないでいて、その状況にママは、2ヶ月の家賃を滞納しても追い出さないのは、
自分の愛情のおかげだと、感謝するように拗ね出すと、そこで鶴橋は色々あったからと説明して謝っていた。
するとママは笑顔で鶴橋に話しかけながら、やはり自分に素直になる事が一番じゃないかと話していたその時、
外でみどりが傘を差して訪れ、その姿に鶴橋は、どうしたのかと思って驚き、早速スナックの中へと入れていく。
するとみどりは決死の思いで、自分の子供である太郎を取り戻したいんだと、鶴橋に向けて訴えかけていた!
そして鶴橋は事は重大だと思い、そのままみどりを事務所へと入れ、お茶を出して詳しい事情を聞くと、
重々しい表情を浮かべながら、みどりは和也が「運命をともに出来る人」だと説明して、その出逢いを話し始めた。
……………………………………………
和也とみどりは元は暴走族で知り合い、互いに愛し合うようになってから、そのまま暴走族を抜け出し、
「親からも世間からも見捨てられたけど、一生懸命頑張って生きて行こうね!」と、和也と約束を交わしていた。
その当時二人は15歳だったが、恋愛に歳は関係ないのだとみどりは思って、そこで二人は抱き合って、
法律では認められなくても「夫婦」になった。
そして二人は互いに良い家庭を築いて、将来喫茶店を開く夢を抱いて、一生懸命バイトをして働くと、
その1年後に子供を身ごもり、無事に太郎が生まれる。
その後も和也はプレスライダーの仕事に就き、好きなバイクに乗れると思って楽しみにしていて、
一生懸命その仕事をこなしていて、ようやく幸せが掴めそうな時に、あの事故に遭って亡くなってしまう…。
……………………………………………
その話を聞いた後で鶴橋は、子供を取り返してどうするのかと問うと、「一緒にいたいんです!」と、
切実な願いでみどりは即答するが、しかし鶴橋は溜息を吐きながら、みどりのわずかな収入で、
太郎を育てるのは難しいのではと言い返し、さらには法律的にも結婚が出来なかった事まで触れ、
世間では「未婚の母」として言われ、実際に育てられないのではと説得する。
するとみどりは声を震わせながら、いつも法律的にも成人じゃないからと言う理由で、
世間から冷たい目線で見られてきた事を訴えつつも、それでも自分達は「夫婦」だったんだと言い張り、
その言葉に鶴橋は驚いていた。
そしてみどりは、和也の両親から「二人の生活は全部嘘だ!」と言われ、
「法律的には結婚が認められない」という理由で、和也の遺骨さえももらえず、さらには太郎までも連れて行かれ、
それらを説明しながらみどりは、法律で認められなくても夫婦であり、太郎は自分の子供なんだから、
自分の手で育てたいのだと泣きながら訴えていた!
さらにみどりは、この街なら頑張れば、24時間働けるんだと言い、いつも和也と二人で、「25時に幸せになろう」と、
話していた事を思い出しながら、それを笑顔で鶴橋に向けて話していた。
その意味は、たとえ24時間働き詰めになったとしても、神様はきっと自分達に25時間目を作ってくれて、
幸福と休息を与えてくれるのだと、和也はそうみどりに説明していた。
そんな言葉に鶴橋も、和也がとても素敵な人だったんだなと感心すると、そこでみどりは、
自分には親兄弟が居ない中でのたった一人の「家族」だったのだと言い、
太郎が生まれてやっと家族が二人になったのに、それをも奪われてしまってその場で泣き崩れてしまうと、
そんな切実な想いを鶴橋は真摯に受け止め、その場で立ち上がって「取り戻そう、家族を!」と、
みどりに向けて約束して、その依頼を受ける事にした!
その後鶴橋はみどりを帰した後に、色々と調べ物をしていると、そこで今日子から電話がかかり、
「私、弘さんとの事…もう一度良く考えたいと思うの…」と、真剣な声で語り始めていた。
その言葉に鶴橋は驚くと、さらに今日子は、今まで2年待ってきたが、やはり父親の反対を押し切ってまで、
結婚したくないのだと言うと、そこで鶴橋は大川教授には感謝しているけども、
それでも自分に正直に生きたいのだと答えたが、それでも今日子は、「本当に私の事が好きならば、
もう少し私の事を考えて欲しい!」と、鶴橋に向けて切実に訴えかけていた!
だが鶴橋もそれはわかってはいるけれど、それでも自分に嘘を吐いたら、絶対に今日子を幸せに出来ないと言い、
教授に認めてもらうために自分に嘘を吐いたら、夫として…家族として…幸せにする自信が無いと言い切る!
その言葉に今日子は驚くと、さらに鶴橋は今日子に向けて、自分達の答えを出す前に、
明日ちょっと付き合って欲しいと誘い出して電話を切る。
その後鶴橋は東京の夜の街を見ながら、「自分に正直に生きよう…たとえ、全てを失っても…」と、
全てを覚悟の上でそれを決めていた!
そして翌日…。
鶴橋は今日子を連れて、和也の両親が太郎を良く連れる近所の公園へと訪れていた。
その光景を見て鶴橋は、まるで偶然通りかかったかのように、「とても可愛いお子さんですね!」と言うと、
笑顔で和也の両親は鶴橋に話しかけ、息子の子供なのだと言うと、その言葉に鶴橋は、
「お孫さんですかぁ」と言いながら、両親の許可を得て太郎を抱き上げていた。
だがそこでみどりが通りかかってくると、「確かにお母さんの元へとお返ししますよ」と、
鶴橋はそのままみどりに太郎を渡し返していた!
その突然の状況にさすがに和也の両親は怒り出すと、そこで鶴橋は和也の両親に落ち着くように言い、
そんな二人に向けて、「もともとあなた達も、みどりから太郎君を奪ったのですから」と言い返していた!
すると和也の父親はそんな鶴橋に向けて、「誘拐罪で訴えてやる!」と怒鳴ると、その雰囲気を読み取ってか、
突然太郎が泣き始めてしまい、その状況に和也の父親は驚いて黙る。
そして鶴橋はそんな和也の両親に向けて、とにかく互いの否を責めるよりも、話し合おうじゃないかと説得するが、
それでも和也の父親は、「こんな子供に母親が勤まる物か!」と怒鳴って、告訴してやると言い出してしまう!
しかし鶴橋はそんな和也の父親に向けて、「大人だってだけで威張らないでください!」と反論し、
17歳でもみどりは、人を愛する事の出来る人間なんだと告げると、そのままみどりは太郎を連れて去ろうとしたが、
すぐに鶴橋が呼び止めて、「ここで逃げたら、君にも子供にも、決して25時は来ないぞ!」と訴える!
その事を聞いてみどりは驚いて立ち止まると、そこで鶴橋は和也の両親に向けてこう言う。
「法律は人を裁く為にあるんじゃないんです…ましてや、人から物を奪う為にあるんじゃないんです!
法律は『人間が人間を尊重し合い、愛し合って生きる為』にあるんです!」と言い、そんな和也の両親に向けて、
法律で訴える前に、「信じようとする努力」を忘れていると問いかける!
その状況に和也の両親も反省して落ち込むと、さらに鶴橋は、もう一度愛情を持って話し合おうと言い、
横に居た今日子に向けて、「これが僕の答えだ」と、笑顔でそう話しかけ、今日子は驚きながら、
そんな鶴橋の事を見つめるのだった…。
それから数日が経過し、外は寒くなって雪でも降りそうな状況にあった。
そこに鶴橋は喫茶店カップルへと訪れると、その店の中では和也の父親が、
太郎を喜ばせようと頑張ってあやす姿があり、それをみどりが喜びながら見つめていると、
鶴橋は気を使って、「また後で来るよ」と、タバコを咥えながらそのまま外へと出て行く。
しかし外は寒く、思わず鶴橋は体を震わせたその時、そこに今日子がバッグを持って現れ、
驚く鶴橋に向けて今日子は、「…来ちゃった」と、笑顔で話しかけていた。
その言葉に鶴橋は、本当に自分で良いのかと思って問うと、そこで今日子は深く頷きながら、
「私達も25時を見つけましょう…」と、鶴橋に向けてそう話し、その言葉に鶴橋も喜んでいた。
するとそんな二人の間に雪が降り出し、驚きながら二人は空を見上げながら、
初雪とともにそれぞれの25時を見つけて、その旅立ちがスタートするのだった…。
「本当の正義とは何か」…「法は一体何の役割を持つのか」…。
それは生きていく上での永遠のテーマではあるが、結局は「互いに愛情を持って、誠実に話し合う事」が、
とても重要ではないかとは思う。
「最近の世間は冷たくなった」と言われるが、そうなってしまったのは政治でも法でもなく、頑なになった考え方と、
学歴中心で考える世間が問題じゃないのかと、わしは思えてならないのだが…。
「傷」(4月5日放映分)
あるボクシングのタイトルマッチ…。
5R目に突入して、互いにあまりのダメージも無く、フットワークでタイミングを計りながら、互いに睨んでいた。
だが挑戦者のパンチを避けた皮切りに、凄まじいほどにそのチャンピオンはパンチを連打して当てていき、
最後はアッパーで挑戦者をダウンさせる!
カウント待ちでチャンピオンはニュートラルコーナーへと待機するも、その息づかいはとても荒だてながら、
じっとそれを待ちながら、ふと少し前に、小学校の頃を思い返していた…。
……………………………………………
ちょうど雨が降りしきる中、小学生だった少年は、傘を忘れてじっと雨が止むのを待っていた。
他の子供達はそれぞれ母親が迎えに来て、楽しそうにはしゃぎながら帰ったり、合羽を着せられるのを嫌がったり…。
しかし少年は誰の迎えも来ず、じっと雨が止むのを空を見上げながら待っていた。
……………………………………………
結局試合はチャンピオンのKO勝ちに終わり、ゴングとともにチャンピオンの「野口 アキラ」は、
レフリーに片手を上げられて、笑顔で観客に手を振っていた。
これで世界スーパーライト級を4度目の防衛を果たし、ますます取材のカメラが注目する中、
彼は心の中で、ずっと雨が止むのを待ち続けていた事を思っていた…。
その後のアキラは友達と一緒に家に連れ、祝賀パーティとして盛り上がるが、しかしアキラは一人、
ウィスキーをグラスに入れて、じっと外を眺めながら、今の自分には焦りも孤独も無い事を思っていた。
住む場所があり、豪華な料理があり、多くの友達が居る。
そんな中集まった人達は、アキラは本当にニューヒーローって感じだと話し、特に貧乏でもなく、
金の為にボクシングをやっているわけでもないので、まるでコンプレックスみたいな物を感じないと、
その一人が話していた。
だが別の一人は、今の時代はそうだと言い、スポーツのみならず、芸能にしろ文芸にしろ、
今のスターは昔とは全然違うことを話していた。
するとアキラはその中へと入り、自分はコンプレックスを感じた事がない事を話すと、自分は何不自由なく、
とんとん拍子にチャンピオンの座に上ったし、ボクシングをやる原動力を問われた時に、
本当に困ると笑って答えていた。
するとその中の一人が、アキラはトレーニングも自主管理していて、酒も飲んで女にももてる事を話し、
何処を見てもハングリー精神なんて無いなと笑って言うと、自分達の世代はみんなそうじゃないかと、
アキラは気軽に答え、あと何年戦えるかちゃんと計算していて、ガッツとか気合とか、燃える何とかと言われると、
しらけてしまうと呆れて言う。
それを聞いた別の男性はその言葉に納得し、ビジネスとプレイに境が無く、生活トータル全体を見て、
ファッション感覚なんだよなと話していた。
するとマスコミ関係の男は、汗や苦節の何十年なんてのは古いと言い出し、
自分達もそんなファッション感覚で仕事をすれば良いんだよなと、勝手に納得をしていた。
その後パーティも終わって全員が家路に着くと、途端にアキラは洗面所で食べた物を吐きながら、
苦しい表情を浮かべる自分に馬鹿野郎だと思って睨み、結局アキラは彼らの喜ぶ人間になっているだけであり、
ファッション感覚や趣味で世界チャンピオンになれるのかと思い、新人類とか旧人類とか関係あるのか?
そんな自分のまやかしの言葉を信じるほうが怖いと、アキラはそう冷たく感じていた。
そう彼もまた、血反吐を吐くくらいの努力を来る日も来る日もしていて、やっと這い上がった地位であるのだ。
そして朝、再びアキラは朝のランニングをして、ジムでトレーニングを続けていた。
その夜アキラは「Club 7(セブン)」の厨房へと訪れると、その一人がアキラを見て声をかけ、
世界チャンプがこんな裏口から入ったら、ママに叱られると注意をするが、しかしアキラはこの辺を通りかかったので、
ちょっと寄ってみただけだと話していた。
そんな時ママが厨房へと寄ると、どうやら実の母親らしく、アキラの姿を見て喜びながら寄っていき、
今度新しいマンションを見に行って良いかと言うと、アキラは返事を返しつつも、表情は何処か暗かった…。
そしてアキラは心の中で、「母さん…あんただよ…あんたがこの俺を、ボクサーにしたのは…」と思いながら、
再び小学生の雨の日の事を思い返していた…。
……………………………………………
そんな雨の寂しかった時の事を、アキラは作文に書いたら、ひどく母親は怒ってアキラを怒鳴り、
殴り倒したアキラに向けて、原稿用紙を投げつけた!
しかしアキラは、ただ他の子みたいに迎えに来てくれたら良いなと書いただけだと反論すると、
さらに母親はそんなアキラに向けて、学校に行けるだけでも幸せだと怒鳴り、自分は忙しいからと言いだすと、
「ただ酔っ払ってるだけじゃない…」と、アキラは落ち込みながら答え、それを聞いた母親はさらに怒り心頭し、
自分が店で稼いでいるから、贅沢な暮らしが出来るんだろうと怒鳴っていた。
するとアキラは、本当は母親が居ない日もあると書こうとしたんだと言い、その時何をしているか知っていると言うと、
完全に母親はぶち切れ、アキラをつまみながら可愛げの無い子だと侮辱し、箱に入ったたくさんのおもちゃを見せて、
一体これを誰が買って上げたんだと怒鳴っていた。
しかしアキラは全部自分が欲しかったわけじゃないと言い出すと、さらに母親は嘘を言えと言いだし、
これらが本当に全部欲しいと思わなかったのかと、押し付けていると、途中で箱が倒れてしまい、
アキラは顔に傷がついて痛がり、母親の表情は一変して、大丈夫かとアキラの事を心配に思う。
……………………………………………
『あの時本当に欲しかった物は、おもちゃなんかじゃなかったのに、母親はそれに全く気づかなかった。』
心の中でアキラは思いながら、シャドウボクシングで練習をしながら、あの時から必要最低限は欲しがらなくなったと、
それを思いながら練習を続けていた。
そしてアキラは練習を終えてシャワーを浴びていると、そこでトレーナーの男性が入ってきて、
TV局から取材が来ているが、OKしたのか確認をしていた。
するとアキラは笑顔で、「当たり前じゃないですか」と答え、ボクシングなんか表に顔を出さなければ、
ただの殴り合いにしかならない事を話していた。
その言葉にトレーナーの男性は困惑すると、さらにアキラは、それでたくさんのファンを集めて、
初めて商売が成り立つのではないかと言うと、ただそのトレーナーの男性は、じっと黙ってしまっていた…。
その後アキラはTVの取材に応じていると、まずボクシングの始めたきっかけを問われ、すぐさまアキラは、
子供の頃に大場選手のビデオを見て、単にスポーツとして興味があったからだと話していた。
その当時の大場は「孤高のチャンピオン」と呼ばれ、2度目の防衛を果たした後に、届いたばかりのスポーツカーで、
高速道路を走って事故死してしまう…。
それを幼心でカッコいいなと、アキラは思い浮かべながら語ると、それはわかるとリポーターも答え、
大場が世界のボクシングを変えるとまで言われた事を思い浮かべていた。
こうして取材も終わり、互いに挨拶を交わして帰るが、しかしアキラは心の中で、ボクシングがカッコいいとは、
一度も思ったことは無いと思い、逆に野蛮でみっともないスポーツだと思っていた事を、心の中で感じていた。
そして頬に残った傷跡を触りながら、本当にボクシングを始めたきっかけは、子供の頃におもちゃで、
母親に顔を傷つけられた事だと思い、それがみっともなくて誰にも話せなかった事を思い出していた。
……………………………………………
その顔の傷を何度もクラスメイトに聞かれても、自分は嘘を吐いていた。
転んだ拍子にガラスが頬に刺したとか、喧嘩で刺し違えたとか…。
本当の理由はとても言えず、さらには本当に欲しかったものが、あのおもちゃ箱の中には無かった事を思い、
そんなおもちゃで傷ついたなんて、自分自身で認めたくなかった…。
そして大人になってもそれが問われると思い、いつでも因縁をつけられては、相手を睨みつけ、
家に帰れば母親が店へ出かける姿を見て、気に食わなく思って、すぐに部屋へと閉じこもっていた。
そしてどうしても頬の傷の本当の理由を思い出すのが嫌で、常に嘘を吐き続けた。
……………………………………………
そしてその理由付けとしてボクシングを始め、「これはボクシングで傷ついたんだ!」と言えば、
周りの人物にも説明がつきやすいと思い、「ボクシングを始めたきっかけがこの傷だなんて、
僕には似合わないでしょう!」と、鏡を見ながら自分で笑っていた。
するとそこにジムの会長が入ってくると、それを見てアキラは怒るが、しかし会長はそんなアキラに向けて、
最近マスコミの連中との付き合いが多くなったのを気にして、それはよしたほうが良いと助言し、
所詮良い時だけちやほやするだけだと話していた。
しかしアキラは、負けたらマスコミでしか生きる方法が無いと言い返し、今から人脈作りをしなければ、
いざと言う時に潰しが効かないだろうと話し、オリンピック選手や政治家でも、バラエティタレントになる時代だと、
苦笑しながらロッカー室を去って、準備運動をしていた。
すると会長はそんなアキラに向けて、「このジムを継げよ!」と言い、その言葉にアキラは驚くと、
自分はボクシングが嫌いだから止めて欲しいと、ふて腐れながらそう答えていた。
だが会長は、嫌いで世界チャンピオンにまではならないだろうと言い返し、それを自分で認めたくないのだろうと、
ダンベルを持ちながら、「その傷と同じでな…」と、アキラを睨みながら話し、図星な部分を言われてアキラは驚く!
すると会長はダンベルを置きながら、その傷の事はずっと前から知っていた事を語り、
その理由も母親から聞いている事を言うと、意外な事実にアキラは驚き、
「あの人がそんな事を言うわけないでしょう!」と、アキラはその言葉を信じようとはしなかった。
すると会長は、確かにアキラは顔に傷を負ったかも知れないが、その母親も心に傷を負っているんだと話すが、
しかしアキラはそんな会長が本当の母親を知らないんだと言って睨みつけたが、しかし会長は、
今はアキラよりも自分のほうが、アキラの母親の事について良く知っていると話しかける。
……………………………………………
アキラは中学を卒業すると同時に今のジムに入門し、過酷なトレーニングの連続の中で耐え抜きつつも、
それ以来ずっと家には戻らないでいた…。
……………………………………………
それを会長は悲しげな表情で語りながら、もう10年以上も母親の本当の姿を目にしてないのだろうと問い、
アキラの心の中の母親は、10歳の時で止まっているんだと話し、母親の本当の気持ちを考えたことがあるのかと、
アキラに向けて問いかけていく!
そしてアキラが振り向くと同時に、アキラが家出をしてから毎日母親から様子を聞きに電話があった事を、
会長は明らかにし、いつも切る最後には、「アキラは自分を嫌っているから、この事だけは絶対に言わないでくれ」と、
そう言い残して電話を切っていた事を話していた。
その事実にアキラは驚くと、さらに会長は、ジムを継ぐ継がないは別にしても、今突っ張っている考えは、
もう捨てたほうが良いのではないかと話して、そのまま帰りながら、「もうお袋さんを許してやれよ…」と、
アキラに向けて語りかけていた…。
それを言われてアキラはジムの辺りを見回し、そして窓の外を見てみると、そこはすでに雨が降っていて、
じっとその様子を眺めながら考えていた…。
……………………………………………
中学の時、母親は珍しく誕生日にケーキを買ってきていて、アキラが帰って来るのを待っていると、
そこにようやくアキラが帰って来て、嬉しそうにアキラに向けて、その事を話すが、しかしアキラは要らないと突っぱね、
じっと母親はそんなアキラの背中を見ながら切なく感じていた…。
そして世界チャンプになった時でも、母親が祝賀パーティをするとの連絡にも、用事があると言って断り、
それなら仕方が無いなと母親は思いながら、そのまま電話を切ってしまう…。
……………………………………………
そんな事をアキラは考えながら、ふと決心を固めて、雨空を睨みつけていた!
その夜アキラの母親は、いつものように店を終えて閉めると、ふと空の雨を眺めて、嫌だなと感じていた。
するとそこにアキラが傘を持って、「迎えに来たよ…」と静かに手渡すと、その状況に母親は驚きながら、
「どういう風の吹き回しかしら?」と言いつつ、内心嬉しく思いながら、その傘を差す。
そして二人で歩いて帰ると、そこでアキラが少し寄って行かないかと言い、一体何処へと母親は疑問に思うと、
そこでアキラは自分のマンションだと言い、その事を聞いて母親は驚いてしまう!
そしてアキラは「安い酒だけど…」と苦笑しながら話すと、そこで母親は涙を浮かべながら、「…うん」と頷き、
ゆっくりとアキラの後を着いていくのだった。
そこでアキラは歩きながら、自分は雨が止むのを待っていて、母親は『俺』という傘を待っていたのだと思い、
そのままゆっくりと二人で自分の住むマンションへと歩くのだった…。
その後次の試合で、アキラは防衛に失敗してしまって、KO負けを食らってしまう…。
そして新たにチャンピオンになった相手は一躍脚光を浴び、アキラは静かに会長とともに、
リングを降りて控え室へと向けて歩いていく…。
すると一人のレポーターが近寄り、一言答えてくださいとの問いに、掛けていたタオルを払い除けながら、
「ガッツと気合に負けました」と笑顔で答え、その状況にレポーターはあっけに取られながら、
それは引退なのかと問うと、「それ以外、この世界には無いでしょう。」と、逆にさわやかにアキラは答え、
その表情の良さに会長も、心の中で「この野郎…」と思ってつぶやくのだった…。
その後会長と二人で控え室へ向けて歩く中、ふと会長はアキラに向けて、これからどうするのか聞くと、
「家に帰ります」とあっさりとアキラは答え、その意外さに会長は驚くと、「お袋が…待っているんですよ」と、
アキラは今までに見せなかった笑顔を、そこで取り戻したかのように、笑いながらそう答えるのだった。
武道館の上に輝く満天の星空は、まるでアキラの心を洗い流すかのように、綺麗に輝き続けていた…。
人は誰しも「見えない傷」を持っているが、それを許すも許さないも、結局は人が決めることだ。
だがそれにはあっけない時間で終わる浅い傷もあれば、尋常なる時間をかける深い傷もある。
でも結局は傷ついたのは受けた側だけでなく、犯した相手もまた心に傷を負っている事が多い。
それが互いにわかってこそ、初めて「許しあえる」と言う言葉があるのではないかと、この話を見て思う次第だ。