緊急特集
会社再建をめざして
〜労働組合の果たす役割〜

日建協副議長 : 小淵 拓哉

T.会社債権にむけた労働組合の対応
会社更生法とはどういうものか
会社更生法の申請と保全管理人との関係
社員の不安払拭のための確かな情報の伝達
重要な建設産業特有の現場再開
更生手続開始決定と更生管財人との関係
更生計画案への意見反映と更生計画の認可、そして再建へ
U.法的整理時の労働債権について
労働債権とは?
会社更生法での労働債権はどうなる?
あわてて辞める必要はない
最後に
議長メッセージ:厳しい時こそ、組合活動の充実を!

 昨年の暮れから私たちの建設産業内に、「再編」という名の大きな波が押し寄せています。

 ところでこの「再編」という言葉、改めて辞書で意味を調べてみますと、「全体を見渡し、相互に矛盾のない統一ある組織にまとめなおすこと」というような意味が書かれています。この意味からだけで判断するには少し強引ですが、「再編」というものは、「再編」というものは、例えそのきっかけは外圧によるものであったとしても、自らが能動的に取り組んでいかなければならないものと思われます。

 では、このような中で実際、建設産業に従事する私たち、そして労働組合はどのようにこれらの事態に対応し、乗り越えていかなければならないのでしょうか。

 日建協では今年度、「企業再編対策専門委員会」を組織内に立ち上げ、さまざまな企業再編時の労働組合の対応を検討してきました。検討を重ねていく過程においては、実際に対応された方々のいろいろな経験談やそのときの考えが大いに参考となりました。ここでは、
これらの貴重な話をもとに、会社が再編にあたった場合の労働組合の対応について考えてみたいと思います。

 ただしひとことで「再編」といっても、会社更生法、民事再生法に代表される再建型の法的整理や、合併、分社などの企業組織再編があります。今回は紙面の関係もありますので、とくに法的整理である会社更生法下での労働組合の対応について考えてみたいと思います。労働組合の対応ということで、どうしても組合執行部での話が中心となってしまいますが、組合員のみなさんも労働組合がさまざまな場面でいかに重要な存在であるかを感じていただき、仮に再編にあった場合、「自分自身どのように対応すべきか」を一度考えていただければと思います。専門用語も登場し、少々とっつきにくいかもしれませんが、最後までご一読ください。



T.会社再建にむけた労働組合の対応

会社更生法とはどういうものか

 会社が倒産に陥った場合、もしくは陥る恐れがある場合に、これらの対処としてさまざまな手続きがあります。それらには法律に基づいた手続きとそうでないものとがあり、また再建を目的としたものと清算を目的としたものがあります(⇒図1参照)

 これらの手続きのうち、再建型の法的整理である会社更生法は、窮境にあるものの再建の見込みのある株式会社で、事業規模の大きい会社や倒産が社会におよぼす影響の大きい会社を対象としており、債権者、株主その他の利害関係人の利害を調整しながら法的に再建させることを目的とした法律です。

 会社更生法では、裁判所の厳格な監督下のもと、裁判所から選任される更生管財人により会社再建が進められるため、もっとも透明性・公平性の高い手続といわれています。


会社更生法の申請と保全管理人との関係
●組合は会社再建への熱意をアピール

 これより、会社更生法申請という事態のなかでの労働組合の対応について、時系列に見ていきたいと思います。(図2)

 まず、会社更生法申請という事実に直面したとき、労働組合は対応のスタンスを決めます。おおむねそれは「雇用・労働債権の確保」と「会社再建への協力」ということになると思います。労働組合は、労働債権を守るためにも会社資産の確保・保全、つまり職場(特に現場)の保全に努めながら、さまざまな情報を収集していかなければなりません。

 会社更生法の場合、その申請は管轄(本社所在地)の地方裁判所になされます。申請と同時におおむね即日受理されます。これが受理されますと、裁判所から保全管理人(弁護士)が選任され、旧経営陣は退陣します。そしてこの保全管理人が労働組合の団体交渉の相手となります。また労働組合としては、更生手続開始決定が裁判所からなされるために、この保全管理人といろいろな面で連携していくことが求められます。そのためにも、早期に保全管理人との良好な関係を構築する必要があります。

保全管理人が決定されると、労働組合は面談の時間をとってもらうよう申し入れます。このときに一番重要なことは、保全管理人に労働組合のことを可能な限り知ってもらうことです。何事でも第一印象は大切です。労働組合の会社再建についての考えやこれまで推進してきた活動内容、そして会社との関係、会社への影響力等について理解してもらうよう誠意をもって対応します。そこで特に重要なことは、労働組合として会社再建に協力的であるということ、つまり会社再建にむけての熱意を強くアピールすることです。保全管理人はこれまでの会社経営者に代わって、経営や財産の管理をしながら再建の可能性をさまざまな観点から探るわけですが、当然その判断基準のなかに「社員の再建への気持ち」が大きなウエイトを占めていることは言うまでもありません。

また、この最初の保全管理人との面談時には、まず「雇用や労働債権の確保」「労働協約の維持継承」について確認することが重要です。これらは、とりわけ社員の最大の関心事であり、社員の会社再建にむけた第一歩を踏み出すためにも、ぜひとも守られる必要があるものだからです。



社員の不安払拭のための確かな情報の伝達
●組合は確かな情報を組合員に。それから現場中心のオルグ

 会社が更生法を申請して間もなく、当然社員に対する説明会がなされるわけですが、その後の状況や経過等について、タイムリーに会社側から提供されることはあまり望めません。というのも、更生手続開始の決定を得るため、保全管理人を中心に会社側は施主や協力業者等への対外的な動きに奔走することになるためです。このため、いわゆる職制というものは機能しなくなると言われています。

 そこで労働組合は、社内にむけて会社だけでは不十分な部分をカバーする役割を担います。具体的には、社員が持つさまざまな疑問点を保全管理人に問い合わせ、まとめて回答を受け逐一確かな情報として社員に提供することです。確かに申請した当初は、保全管理人も多忙な業務に追われ、労働組合が希望しても面談の時間が取れないことがままあるようです。そのような場合、とりあえず確認したい項目を書面にして手渡し、後日回答(書面による場合も含め)を受け取るという方法を取らざるを得ないと思われます。このタイムリーな情報提供が、社員の不安払拭につながるのです。当然これらの情報はビラ等の紙面にして提供できれば問題ないのですが、これまでの事例では、不安定な状況下(内容によっては裁判所への確認を要するものもある)で、保全管理人が情報の紙面化に慎重になることもあったようです。その場合は、本部執行委員から各支部執行委員を通じて、口頭による伝達で対応するなどの方法をとることになります。

 保全管理人とある程度の確認が取れたら、労働組合は早期に、可能であれば現場に重点を置いたオルグを実施することが望まれます。現場は会社再建の最前線です。現場で働く社員には極力早く確かな情報を提供し、不安を払拭させる必要があります。また一方的な紙面情報よりも、顔と顔を突き合わせたオルグは、双方向のコミュニケーションが取れるという大きな意味を持っているのです。ただし従来のオルグとは違い、このような状況下では本部の委員長、書記長は保全管理人との交渉のため頻繁に本部を留守にすることができないため、実際に現場等へ赴くのは副委員長を中心とした二役以外の役員になるようです。そのためにも本部役員内での情報の共有化は言うまでもなく、あらかじめ想定されるさまざまな質問に対しての共通した回答を用意しておく必要があります。ここで注意すべき点は、これら社員への情報提供に際しては、保全管理人との間で事実確認の取れたものだけを伝えるようにし、間違っても不確かな組合見解や私見は出さないよう努めることです。



重要な建設産業特有の現場再開
●80%以上の再開を

 会社更生法を申請して受理されても、実際に更生手続開始決定がなされなければ意味がありません。そのためには、会社更生法申請後に保全命令によりストップした現場を早期に再開させることが必要となります。これまでの事例からでは、おおむね申請時に稼動していた現場の80%以上の再開が必要と言われています。当然に現場を再開させるためには、施主、協力業者の理解と協力がなければできませんので、社員として会社とともに最大限これに尽力することが望まれます。そして早期に現場を再開させることが、対外的には事業を継続していくという会社存続の大きなアピールになるのです。また社内的には会社再建にむけた社員の気持ちが表れることとなり、労働組合の会社再建への熱意とともに、保全管理人の判断に大きな印象を与えることになるのです。


更生手続開始決定と更生管財人との関係
●組合は賃金水準の維持を強く要求

 更生手続開始決定がなされると、裁判所より更生管財人が選任(保全管理人がそのまま更生管財人になるケースも)されます。この更生管財人は、会社を経営しながら更生計画を作成し、それを実行に移す役割を担います。これから後の団体交渉相手は保全管理人から更生管財人へと移ることとなり、労働組合は更生管財人と賃金や労働条件の維持にむけて交渉していくこととなります。このように重要な交渉相手となる更生管財人とは、保全管理人と同様、良好な関係を構築することに努めなければなりません。

 賃金に関しては、更生法を申請する段階ではそれまで相当な自助努力のもとに抑制されていることが通常ですので、最低限水準の維持を強く要求していく必要があります。また雇用に関してですが、例え更生管財人であっても会社更生法申請という事実だけで人員整理することはできません。当然に整理解雇の4要件が適用されることになります。

整理解雇の4要件
会社は、合理的な理由、やむを得ない事情がなければ社員を解雇できないといわれています。
このため会社が整理解雇をするためには厳しい条件をクリアしなければならず、裁判所の判決の傾向としては、以下の4要件をすべて満たしている場合に限って、解雇に正当な理由があるとしてこれを認めているようです。しかい、この要件のひとつでも欠けるようであれば、解雇の合理性はないとして無効とされます。
@人員整理の必要があるか?
会社が、人員整理をする以外に方法がないという状態になければなりません。
A人員削減の回避努力を尽くしたか?
人員削減の前に、まず配転や出向、希望退職の募集など可能な限りの努力をしなければなりません。
B整理解雇の基準・選定の合理性はあるか?
特定の社員を狙い撃ちにするような解雇はできません。
C整理解雇の手続に合理性があるか?
労働組合との協議・合意がなされていないといけません。

 更生管財人は再建計画を作成するにあたり、債権者にある一定期間内での債権届出を依頼し、更生手続開始前に生じた債権と更生手続開始決定後に生じた債権とに区分します。この際、後者の債権については届出不要とされていますが、賃金・退職金の一部が更生手続前に生じた債権にあたる可能性があるので、その場合は労働債権の届出が必要となります。労働組合は整理して証拠書類を添付し、更生管財人に提出します。労働債権に関してはUで解説します。
※債権=ある特定の人(債権者)が他の特定の人(債務者)に対し,一定の給付を請求する権利



更生計画案への意見反映と更生計画の認可 そして再建へ
●更生計画に労働者の意見を反映させる

 更生管財人による更生計画の作成にあたっては、可能な限り労働組合として参画できるよう申し入れます。参画が認められない場合でも、大幅な労働条件の変更や人員削減などの重要な事項に関しては事前の協議がなされるよう申し入れるべきであると言われています。

 また法律上、「裁判所は更生計画案について過半数労働組合または従業員の過半数を代表とする者の意見を聞かなければならない」とされていますので、関係人集会等で労働組合としての立場や方針について意見を述べ、更生計画に労働者の意見を反映させることが重要となります。ここでは、以前の会社では守られていなかったこと、例えば正確な情報開示など会社経営の透明性などを要求された事例もあります。

 この段階での関係人集会では更生計画案の審議が行われ、最終的に決議が行われます。更生計画が決議された後、裁判所がこれを認可してはじめて更生計画のもとでの新会社がスタートすることになります。

 更生計画認可後、新会社は更生計画に基づいて債務の弁済をすすめていきます。そして将来、債務が完済されるなど計画が遂行されたとき、または計画の遂行が確実であると認められたとき、裁判所は更生管財人の申立て、もしくは裁判所の職権により更生手続終結が決定され、通常の会社となるわけです。


U 法的整理時の労働債権について

労働債権とは?

●労働者が持つ権利なので粘り強く交渉

 前述の労働債権とは、賃金(基本給・時間外手当・通勤手当・その他の諸手当を含む。賞与も労働協約や就業規則にその根拠が示されていれば含まれます)、退職金、解雇予告手当などのことをさします。退職金については、就業規則や労働協約などに退職金規程があり支給基準が定まっていることが、労働債権とされるために重要となります。

 会社が法的整理を選択した場合、この労働債権は先取特権として一般債権者にくらべて優先的に支払われますが、会社が滞納していた税金や社会保険料に対しては、今の日本の法律では優先権を持ちません。ちなみに、諸外国ではこれら税金よりも労働債権が優先されることが法で定められています。日本でも現在、連合が労働債権の順位を税金よりも上にする運動を展開しています。しかし、労働債権に優先権がないからといって諦めるのではなく、税務署や社会保険事務所と粘り強く交渉する必要があります。というのも、過去には交渉によってある程度譲歩してもらった事例もあるからです。

 以上が労働債権についての一般的な説明ですが、倒産時には申し立てられる法的手続の種別ごとに保護の内容が異なってきます。



会社更生法での労働債権はどうなる?

 会社更生法の場合、他の処理に比べて労働債権の保護規定は充実しています。以下に賃金と退職金について説明します。

[賃 金]
 労働協約の継承については保全管理人との確認を要しますが、これまでの事例ではおおむね賃金は現行水準のまま「共益債権」*1として支払われます。また未払い賃金があった場合でも、更生手続開始前6ヶ月間の未払賃金については、同様に共益債権として支払われます。ただし仮に6ヶ月以上前の未払賃金が存在した場合は、「優先的更生債権」*2とされ、更生計画に基づき支払われることになります。取り扱いは表1の通りです。

表1:会社更生法での賃金の取り扱い
債権の内容 債権の分類 弁済額と弁済時期
@更生手続開始前
  6ヶ月間の未払賃金
共益債権 全額 原則更生手続
開始後から随時
支払われる
A更生手続
  開始後の賃金
@更生手続開始6ヶ月
  以上前の未払賃金
優先的
更生債権
全額 更生計画による
延べ払い
B更生計画認可後の
  賃金
全額 通常の支払い

 このように、図3の@からBのどの期間に相当する賃金でも、原則として全額が支払対象となり、支払原資に応じて支払われることになるのですが、債権によっては支払時期に違いが生じることになります。

*1共益債権
更生手続遂行のために必要な債権として、支払われるべき時に他の債権に優先して全額が随時支払われるもの。

*2優先的更生債権
更生計画に基づき弁済されるため延べ払いとなる。また、この優先的更生債権は極めて例外的ではあるが、計画のなかで一部カットされることがありえる。

[退職金]
退職金は退職する時期と理由(会社都合か自己都合か)によって、債権の扱いが異なります。その取り扱いは表2の通りです。
賃金と同様、@からBのどの時期に退職した場合においても、原則として全額が支払対象となりますが、退職時期だけでなく退職理由によっても支払時期に違いが生じます。債権に関しては賃金と同様の扱いです。

表2:会社更生法での退職金の取り扱い
債権の内容 会社都合 自己都合
@更生手続開始
  前の退職金
・退職前6ヶ月間の賃金総額か、退職金の
 3分の1のいずれか多い額が共益債権
・上記金額を超える額が優先的更生債権
A更生手続開始
  後の退職金
全額が
共益債権
・退職前6ヶ月間の賃金総額か、
 退職金の3分の1のいずれか
 多い額が共益債権
・上記金額を超える額が優先的
 更生債権
B更生計画認可
  後の退職金
  更生手続の規制を受けずに、
  通常の支払が行われる



あわてて辞める必要はない

 これらのことを踏まえて、ひとつ言えることがあります。それは「会社更生法を申請したからといって、すぐに会社を辞めるべきではない」ということです。

 会社が会社更生法を申請したという事実に直面したとき、さまざまな理由から会社を去ろうと考える人は少なくないと思います。しかし表2の退職金の扱いにあるように、更生計画認可前の段階で退職する場合、共益債権となりえるのは、退職前6ヶ月間の賃金総額か退職金の3分の1のいずれか多い額でしかなく、それを超える額は優先的更生債権になってしまうのです。当然自己都合ともなると会社都合よりも金額は少なくなります。

 これに対して、更生管財人は会社更生の実現性を高めるために、更生計画に人員整理を盛り込んでくることが十分予想されますので、その場合の退職は当然に会社都合となり、更生手続開始後なら全額が共益債権となりますし、更生計画認可後なら更生手続の規制を受けずに、通常の支払がなされます。また労使交渉によっては上乗せも勝ち取れるかもしれません。ですから、会社が更生法を申請したとしてもすぐに会社を辞めるのではなく、じっくり自身の今後を考えながら様子を見た方が良いと考えられます。


最後に

 ここまで、会社が会社更生法を申請したときの労働組合の対応と労働債権に関することについてふれてきました。これらの内容は、単に文献からだけでなく、実際に会社更生法のもとでさまざまな対応をされた組合役員の方々の経験談に基づいています。一通り読んでいただけたなら、労働組合が多くの場面で難しい対応をしなければならず、同時に会社再建にむけた重要な役割を担っていることがわかっていただけたかと思います。

 とは言っても、十分な時間もとれないなかで過去に経験のない対応に迫られるという、非常に困難な状況に労働組合は置かれることになります。よって、万が一会社の有事に直面した場合でも、可能な限り最善の対応ができるよう、普段からより多くの正確な情報を収集できる体制の整備と、さまざまに対応するための専門知識を身につけておくことが必要です。実際の会社更生法申請という事態のなかでは、保全管理人には従前の労働協約の継承とそれにともなう労働条件の維持を、更生管財人には更生計画のなかに働く者の意見が最大限取り入れられるよう、ひとつひとつ確認しながら協議していけるよう積極的に取り組んでいくことが最も重要と思われます。

 一方個人は、労働組合から随時提供される情報を的確に把握し、他の不確かな情報や憶測等に惑わされず、事の真相を見極めながら冷静に対応することが重要です。また、個々人それぞれ心配事や悩み事を抱えることが多くなると思いますが、決してひとりで悩まず、労働組合に相談することも大切です。最終判断は当然個人となりますが、最善の判断のために助言は積極的に取り入れるべきです。そしていち早く、気持ちを迷いや不安から会社再建へと切り替え、各々が自分の仕事を最後まで完遂させることが、会社再建を着実に進めることにつながるのではないかと思います。■

参考文献:
「働く人のための倒産対策実践マニュアル」日本労働弁護団
「私は辞めません リストラ・職場いじめ・倒産解雇の処方箋」旬報社
「働く人のための職場の法律マニュアル」自由国民社



議長メッセージ
厳しい時こそ、組合活動の充実を!
  
 金融機関による不良債権処理問題などで、年末から日建協の加盟組合が次々と法的整理や経営統合といった企業再編の波に巻き込まれています。日建協は、昭和29年に設立され今日に到りますが、長い歴史の中でこのような状況はかつて経験したことがなく、日建協執行部としても先行き不透明な建設産業や企業経営に対し、たいへん危機感を抱いております。

 特に、その渦中にある組合員ならびにそのご家族のみなさんの不安と動揺を思う時、私たち日建協としてもできる限りの支援を加盟組合に対して行っていくことを強く決意するところです。今回の企業再編が、企業自らの選択というよりも、むしろ外的な要因、すなわち政府や金融機関主導で行なわれることに対し、この産業に従事するものとしてやるせない思いです。

 今月号の特集でお伝えしたように、法的整理を受けて再建をめざす会社の労働組合は、保全管理人から労働者を代表する組織として、会社再建の意志を問われます。また、更生計画策定の過程で必要に応じて裁判所から意見を求められますし、労働条件の変更についてはもちろんのこと、会社再建にむけて積極的に発言していく力がなければなりません。

このように、会社がもしもの時、組織的にしっかりとした組合活動ができるかどうかによって、会社再建のスピードや更生計画に労働者の声を盛り込めるなど、必ず違いが出てきます。会社再建時には労働組合の組織力が求められ、日頃の組合活動の真価が問われるのです。

 長引く景気低迷による民間設備投資の減少や、供給側の改革を優先する政府の構造改革にともなう公共事業の削減により、残念ながら建設市場はさらに縮小すると考えられます。それに比べて、供給過剰といわれる企業に対する再編、淘汰の圧力はますます強まることが予想されます。

 この厳しい時代に私たちは、会社を支える一員として会社の業績向上や業務の効率化に積極的に関っていかなければなりません。一方、労働組合は働く者の立場から、最大の経営資源である“人”が十分に力を発揮できる労働環境はどうあるべきなのかを考え、その具体化にむけて努力する必要があります。

 そのためには、組合活動を企業の存続と発展に不可欠なものと位置付け、正しい経営判断がなされるよう、労働組合も主体的に発言し、活力ある企業を実現していくことが求められます。例えば、職制ではフィルターがかかりやすい現場の声や実態を経営者に正しく伝える機能や、企業は「人と人の集合体」という観点から、個々人の自立やスキルアップを支援したり、そのしくみづくりを会社に要請していくことなどです。厳しい時こそ労働組合の役割は大きいと言えます。

 私たちは、一人ひとりが当事者意識を持って、所属する労働組合の活動を日頃から盛り上げ、よりしっかりとした組織にしていく必要があるのです。ぜひ職場会や一斉集会など、組合員の声を吸い上げる場に仲間と連れだって進んで出席し、意見を出し合ってください。

 今回、会社が法的整理というたいへんな事態となった加盟組合の執行部は、組合員の動揺をおさえるべく、いち早く対策活動に入っています。また、日建協は、国土交通省、厚生労働省などへ会社再建にむけた協力要請など対外的な活動を行い、組合執行部と連携して活動をしていることを併せてご報告します。

 日建協は加盟組合と組合員みなさんのために、今後ともがんばってまいりますので、みなさんのご理解とご支援をよろしくお願いします。

議長 加藤 潤

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