開設の趣旨(開設の挨拶)


 テレビや新聞、週刊誌などのマスコミによって日々大量に流される報道の渦の中で、私たちは、報道されている側の人たちが、その報道によって傷ついているということに鈍感になっているように思います。
 マスコミは、多くの報道の対象を「商品」であるかのように扱い、それを観ている私たちも、知らず知らずのうちに、報道の対象を「商品」として「消費」する感覚に慣らされているように感じます。

 1984年には、共同通信社記者(当時)であった浅野健一氏が『犯罪報道の犯罪』(学陽書房、後に講談社文庫)を発表し、報道の現場から、現在の実名で住所・顔写真付きで、ある犯罪で逮捕された被疑者を報道するマスコミの報道姿勢に根本的な疑問を提起しました。
 翌1985年7月には、緩やかな市民運動団体として、「人権と報道・連絡会」が設立され、市民・研究者・弁護士・報道関係者による報道の改革を目指した運動が産声をあげました。「人権と報道・連絡会」は、当初から、スウェーデンの「報道評議会」型のマスコミの自主・自律的な規制を我が国に確立することを目指して、報道被害の事例を学びながら活動してきました。

 その間に、1987年11月に熊本で開催された日弁連人権擁護大会において、「原則匿名」の実現に向けて活動することを宣言し、1989年末には、被疑者の「呼び捨て」の廃止を決定したり、朝日新聞などが、被疑者の顔写真・連行写真の掲載を原則的やめることが決められるなど、一定の成果はありました。
 また、1997年2月には、新聞労連が「新聞人の良心宣言」を採択し、その中で、「新聞人は被害者・被疑者の人権に配慮し、捜査当局の情報に過度に依拠しない。何をどのように報道するか、被害者・被疑者を顕名とするか匿名とするかについては常に良識と責任を持って判断し、報道による人権侵害を引き起こさないうに努める」と規定しました。

 しかし、大きな事件が起きる度に、マスコミの報道は節度を忘れ、被害者と被疑者の周辺について激しい「集中豪雨」的な取材・報道の嵐となっています。
 古くは、ロス疑惑事件に始まり、東京の幼女誘拐殺人事件、オウム真理教信者の刑事事件、神戸の小学生殺傷事件、和歌山の毒物カレー事件などにおいては、常軌を逸する程の激しい取材と報道がなされました。

 いつまで経っても根本的に改善されることのない被害者と被疑者・被告人の人権を侵害し続けるマスコミの報道による人権侵害について、自分なりに考えていることを公表したいという思いから、この度、ホームページを開設することにしました。
 また、報道問題に限らず、最近の盗聴法や団体規制法など、次々と立法される新しい法律について、戦後民主主義をないがしろにするような危険性を感じていますので、その疑問点を述べたり、インターネットという新しいメディアについて「性悪説」という観点から何度も法的規制が叫ばれていますが、それに対する疑問なども併せて述べていきたいと考えています。
(本HP開設日2000年1月1日)

【開設者のプロフィール】(2003年6月6日最終更新)

氏名 山下幸夫(やました・ゆきお)
1962年生れ。1989年4月に東京で弁護士登録。


【執筆リスト】(2007年1月2日最終更新)

(単著)
  『最前線インターネット法律問題Q&A集』
(1997年、(株)情報管理)(絶版)
  http://www.jkc.co.jp/publish/book.html?law
  「サイバースペースにおける名誉毀損とプロバイダーの責任」NBL723号34頁以下
  「天皇・皇族の人権享有主体性に関する憲法学説の動向とその分析」『季刊運動<経験>』3号43頁以下

  「『サイバー犯罪条約』が日本の捜査活動を拡大する」中央公論2002年10月号所収
  「国連越境組織犯罪防止条約と日本−国際テロを口実に再編される刑事司法」インパクション133号(2002年、インパクト出版会)所収 

(共著)
   現代人文社編集部編『盗聴法がやってくる』(GENJINブックレット06)(1997年、現代人文社)
   寺澤有編著『警察がインターネットを制圧する日』(1998年、(株)メディアワークス)
   現代人文社編集部編『盗聴法がやってきた』(GENJINブックレット08)(1998年、現代人文社)
   荒木伸怡編『現代の少年と少年法』(1999年、明石書店)
   ニフティ訴訟を考える会編「『反論−ネットワークにおける言論の自由と責任』(2000年、光芒社)
   
「プライバシーの権利の観点から見た個人情報保護法案の問題点」個人データ保護と表現の自由を守る会編『ストップ!個人情報ホゴ法』(GENJINブックレット20、2001年、現代人文社)
   「国際的な電子的監視を強化するサイバー犯罪条約の危険性」小倉利丸編『監視社会とプライバシー』
(2001年、インパクト出版会)所収
  「コンピュータ・システムと捜査−弁護の立場から」『新刑事手続T』(2002年、悠々社)398頁以下
  村山裕・伊藤俊克・宮城和博・山下幸夫編著『少年事件の法律相談』(2003年、学陽書房)
  「監視カメラをめぐる法律問題」小倉利丸編『路上に自由を 監視カメラ徹底批判』(2003年、インパクト出版会)138頁以下
  守山正・後藤弘子編著『ビギナーズ少年法』(2005年、成文堂)

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