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*** 万が一に備える日本人の国民性とバックトルクリミッターの必要性 ***

 
日本人は台風や地震、ゴジラの来襲など、古くから様々な災害に見舞われてきたせいか、「備えあれば憂いなし」という言葉からも分かるように、万が一に備えることが無意識のうちに身に付いているように思われます。学校や会社では防災訓練が行なわれ、電車やバスでも急停車に備えてつり革や手すりにつかまるようにアナウンスされます。このように常に最悪のケースを頭に入れている心配性な国民性からか、車においてもエアバッグなどの安全装備の普及も早かったように思われます。
 実はこのエアバッグ、小堀保三郎という日本人が1963年に発明、特許を取得したそうですが、日本国内では、あまりにも奇抜なアイデアで相手にされず、海外ではダイムラーベンツなどが開発を進めたそうですが、開発期間に10数年を要し、特許保持者であった小堀氏は特許収入もなく、生活苦から妻とガス心中をしたという悲しい過去があります。
 日本で初めてエアバッグを搭載したのはホンダのレジェンドで、自動車を作るメーカーが自ら車を壊す映像をCMに使用したことが話題になりましが、そんなホンダはNSX-R(前期)ではあえてエアバッグを設定せずに発売しました。これは徹底した車体の軽量化と操舵性をスポイルするステアリング慣性重量の低減のために、万が一の備えを犠牲にしたものでした。もっともホンダでは車の基本性能を高めることによって、事故を未然に防ぐアクティブセーフティが第一であるという基本理念があるので、車種が車種だけに、一般が考えるほどの大英断ではなかったのかもしれません。
ゴジラ
エアバッグ

kikkawa氏のスタート
 万が一に備えるためのものとして、バックトルクリミッターという機構があります。これは急激なシフトダウン時にリアタイヤがロックしないようにするクラッチの機構なのですが、普通にライディングしている分にはまったく必要がありません。何かあった時にそのありがたさがわかるという点ではエアバッグと似ていますが、ハヤブサのバックトルクリミッターの場合は、タイヤが冷えている時にシフトダウンすると、ちゃんとリアがロックしたりして、99.9999%というNASAレベルの信頼性を持つエアバッグとは好対照で、あまり必要性が感じられません。それどころか、その機構が災いして非常に発進がしづらくなっています。
 クラッチがベタっとつながってしまうために半クラが使いづらく、回転を上げてクラッチをつなぐとかなりの割合で失速してしまいます。そのためレースではスタートで出遅れてしまうことが多々あります。ヨシムラがX-1で全日本選手権に出場していた頃に、ライダーの出口選手もハヤブサのスタートのしづらさは雑誌のインタビューなどで語っていたので、国際ライダーの腕を持ってしてもハヤブサのスタートはしづらいということなのでしょう。
のがたひろおのスタート

 海外ではこのことに早くから着目し、バックトルクリミッターをキャンセルするパーツはかなり定番パーツとなっているようです。わたくしもアメリカのMPSより出ているCLUTCH MODというパーツを購入してみました。これはバックトルクリミッターの稼動部にリング状のパーツをはめて、本来バックトルクがかかっている状態のところで固定し、全長の長いクラッチスプリングに交換することによって、その位置でもクラッチがつながっているようにしてしまうものです。これによってクラッチのつながる位置はかなり近くなってしまいますが、クラッチレバーの調整で対応はできます。
MPS Clutch Mod

のがた号
 MPS CLUTCH MODを装着すると、まずダイレクトな加速感に気が付きます。これは純正のクラッチスプリングがへたっていたこともありますが、専用のクラッチスプリングが強化スプリングになっていることが大きく、パワーが大幅に上がったようにグイグイ加速します。そして問題の発進ですが、これが本来のクラッチ操作だと思わせる自然なつながりで、半クラもちゃんと使えます。シフトダウンについても元々それほど急激にシフトダウンしないというのもありますが、街中や峠のレベルならバックトルクリミッターがなくてもまったく不具合を感じません。若干ギアが入りづらくなっているかもしれませんが、これもハヤブサ以前のスズキ車に乗っていた人なら気にならないレベルだと思います。
 実際使ってみると非常にいいパーツで、海外では定番となっているのに、なぜか日本ではまったく普及していないのは前述のような日本人の国民性から、万が一の時のために備えてあるものをなくしてしまうことができないからかもしれません。
 しかし防災セットの中の非常食も賞味期限が切れていては意味がないのと同じで、使えないものを持っていてもしょうがないような気がします。
 


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