![]() ![]() |
二度目のカンヌ制覇なるか?!と思った 「クラッシュ」は、審査員特別賞を受賞 し、クローネンバーグのセンセーショナ ルな作品として国際的な話題になりまし たね。 スペイダーはCMディレクターという役 どころで、またもやセックスをテーマに した深みのある演技を見せてくれました。 カンヌには、スペイダーとセックスが良 く似合う? ただ、当然ハードなシーンが多かったの に全くエロティックでなかったというの も、クローネンバーグならではの魔術か も知れません。 クラッシュ (原題 Crash) |
|
この映画、劇場で3回観ました。 観る度に違う観点が見つかる、そういう映画でした。 最初の鑑賞は、スクリーンが大きくて綺麗な映画館だったせいもあり良くも悪くも、 リアルな映像映画として目に入ってきました。また、カンヌ以来のメディアによる 事前のプロパガンダとの戦いでもありました。これを、事前情報無しのまっさらな 状態で鑑賞できたら・・・・と悔やまれます。 3回目では、「前までの見方は一体何だったんだぁ?」という気持ちになりました。 この映画、実にわたくしはここに至ってようやく自分の心で「味わう」ことができた ような気がしました。 ☆キャサリン とにかくキャサリンなんです。キャサリンが、最後に涙を流すシーンで思わずこち らも泣きそうになってしまった。わたしは、キャサリンの涙なんて初めて観た、とま では思わなかったけど、そんなに意識してなかった。でも、この映画は、そういう気 持ちで観ると、全然別の話に見えてきました。マスコミの前宣に惑わされてしまって いたということも言えるでしょう。 最後のクラッシュシーンで、何故キャサリンは、ハンドル操作を誤ったのか・・・。 あれは、間違いなく自分から行ったんだと思う。かなり唐突だったもの。 ジェームズをヴォーンと同じ目に会わせないために、自分から先にブレイクしたんだ。 そう思うと、この物語は、今まで思っていた以上に、妻キャサリンの夫ジェームズへ の愛情に貫かれていたことに気がついたのです。 「究極の純愛」とかいうキャッチコピーを人から送られると、いささか唐突な気持ち がする(だってそれだけじゃないから)けれども、自分で選ぶなら分かる。そういう 話だと思いました。 「ヴォーンとセックスしたいでしょ?」と、キャサリンが一方的に語るシーン、あれ の目的は何? キャサリンがヴォーンに興味を持ったから?私は違うと思いました。 ジェームスがヴォーンに興味を持ったらしいことが分かったからだと思う。ヴォーン という第三者を介在させることによって、もはや性的な接点を持ち得なくなってしま った2人の関係をなんとかつなげようと健気に努力する姿に見えました。 キャサリンが語るのは、自分とヴォーンの事ではなくて、ジェームスとヴォーンの事 ばかりなんですもの。 ちなみに「セックスしたいでしょ?」とは言ってない。「ソドマイズしたいでしょ?」 って言ってました。そしてどんな風にジェームスとヴォーンが関わるのかを、延々と 具体的かつ一方的に想像して話してました。ジェームズも思ったよりしゃべってたま したね、ヴォーンの顔が青白いとか、セックスしたいとは思ってないとか。 (ウソばっかり) それと、ジェームスとキャサリンの入れ込み度の進度が入れ替わる時がはっきり分 かったと思いました。例の多重衝突現場がそうです。 これが実に象徴的に、はっきりと描かれていたのには、改めて監督の親切心に驚いて しまいました。ジェームズが「何か引いたらしい」と思い、タイヤとか足周りを点検 する時に、事故現場の雰囲気に触発されたキャサリンが、彼と車のドアの部分でしっ かり交差して外に出ていくのですよ。そしてその時見事にも、あの心をかき乱すBG Mが鳴り始めるんですよ。すごい。 それからあの洗車のシーン。ここで妻は確実に夫より一歩前に出る。その後、自宅で 妻のキズを愛撫しつつ、夫ジェームスの心はかなりあちらの世界の方に引き寄せられ る。しかし、妻は、腕を胸の前に(ガードを)堅くして、全然解放してはいないんで すよ。 しかし夫婦の位置はそのままではいかずに、その後また逆転するんだと思います。 ジェームスが入れ墨を彫った時です。 その後ヴォーンと交流をして、実にその直後に、ヴォーンは、夫婦の乗った車を追い かけつつ、自ら玉砕の道を選ぶのでありました。このあたりに関しては別な考察がま た数百行必要かと思いますが省略します。 その段階で、ジェームスは完全にあっちにイッチャッていて、ヴォーンの車をレスト アして使用したいなどとだだっ子をこねる夫に対するあの寛容な姿勢、と、同時にこ の夫を絶対このままイカセタままにはしない。現実に引き戻す!というような、淡々 としてはいるけれども強い覚悟が、あのしがみつきつつ的共犯関係を築いている風情 の妻キャサリンからは読みとれるのです。 ステキな映画だった。 というのが私の全体の印象になってます。 (by 永T) |