「StrangeHighway」 第8章 その2



 「きっと、彼が帰ってくるんだ。」とジョーイ。
「誰?」「わからない」
「もう一台の車のこと?」
「そうだ。君は乗ってるヤツをみたかい?」
「いいえ、男の人だったけど、はっきりは見えなかっ
った。それがどうかして?」
「いや、よくわからない。とにかくここを離れよう」
車に戻ろうとすると、今まで乗ってきたはずのシボレ
ーが無い!シボレーはなくなり、替わりにそこには、
1965年型のフォード・ムスタングがあった。
10代の頃、事故車を父の助けを借りて自分でレスト
アしたものだ。20年前のあの夜、州間高速自動車道
で道路標識に衝突して、派手に壊れた。しかし、今目
の前にあるものには傷などなく、新品同様だった。
驚くジョーイ。「ジョーイ?」と彼女のいぶかる声。
しかし、彼女は最初からこのムスタングに乗ってきた
のだという。冷たいスティールの心地、
確かにそこに実在している。少女が助手席に乗り込む
と、夜はエジプトの砂に埋もれたファラオの石室のよ
うに荒涼として見えた。あたりを死のような静寂が包
んでいる。まるで、アル中の幻覚を見ているような気
分になった。


ISBN番号:1-57042-287-7

 ふと、手のひらの傷による予知のことを思いだして、彼女の手のひらを見ると、路上
にいると状況は悪くなるばかりだということが分かった。
キーは差し込んだままになっていた。身体に馴染む心地よいエンジン音。ツキから見放
された日々が、遠ざかるような気分がした。17才の時のように、未来が開けている気
分だった。
 彼女の手のひらを見ると、彼にしか見えない傷は多少小さくなっているようだった。
どうやら正しいことをしているようだ。しばし運転を楽しむジョーイ。ふと、彼女がさ
っき言った言葉が思い出されて気に掛かった。自己紹介もしていないのに彼女は彼を
「ジョーイ」と名前で呼んだのだ。それからもう一言「あなたは私が思っていたのとは
全然違うわ」。。。。?
彼女がラジオのスイッチを入れ、音楽が流れた。ブルース・スプリングスティーンの
「サンダー・ロード」。
「君の名前は?」「セレステ。セレステ・ベイカー」
「どうして僕の名前を知っていたんだ?」
彼女は高校の2年先輩だったジョーイに熱を上げていたという。
今17才のセレステが、どうして40才のジョーイの2年後輩なのか、全く訳がわから
ないジョーイ。
スプリングスティーンの曲が終わりdeejayが「ブルース・スプリングスティーンのニュ
ーアルバムBorn to Runからサンダーロードをお送りしました。」といった。「ニューア
ルバムだって?」
「いかがでしたか?みなさん、こいつは大物になると思いますよ」
                                    つづく