「StrangeHighway」 第6章 前半


 メインストリートにあるビルの2階、酒場の上にヘ
ンリー・カディンスカの法律事務所はあった。
 ジョーイは中に入った。法律の本二つの壁に並んで
いた。ヘンリーの父親はこの街で唯一の法律家だった
が、しばらくこのオフィスで一緒に仕事をしていた。
その父はジョーイが高校生の時に亡くなっている。ヘ
ンリーがパイプを灰皿に置きながら椅子から立ち上が
った。
「ミサで見たよ。でも邪魔したくなかったんでね。」
「誰にも気が付きませんでしたよ。」とジョーイ。
ヘンリーは、50代半ばの親切そうな男だ。
「これまでの長い間、君のお父さんは裕福じゃなかっ
た。だから最後に、いくらか使えるお金が手に入って
も、使い方が分からなかったようだね。自分が送った
お金のほとんどを使っていなかったと知ったら、PJ
はショックだろうな。」
「は?どういうことですか?どうして僕はここに呼ば
れたんでしょうか?」
「PJはまだお父さんが亡くなったことを知らないの
かね?」


ISBN番号:1-57042-287-7

「ニューヨークのアパートの留守電にメッセージを残してきましたが、年に一ヶ月かそ
こらしか住んでませんから。1,2週間留守電を聞かない時もありますし・・・。」
「おかしな生き方だね。路上で生活するなんて。でもきっとその方が彼の性に合ってい
るんだろう。彼の本は実に素晴らしいよ。恐るべき自由のセンスを感じる。・・・」
天気も悪くなってるし、できるだけ早くスクラントンに帰りたがるジョーイ。話し相手
が欲しくて寂しそうなカディンスカ。壁の本棚には、法律の本ばかりでなく、哲学の書
が多数並んでいた。小さな街の法律家でいるのは、納得のできる生き方では無いのかも
知れない。自分だけじゃないんだな。とジョーイは思った。
「お父さんの遺言状を読むよ。」
「だったら、僕じゃなくてPJがここにくるべきじゃないですか?」
「PJに関する記述は何も無いんだ。全て君に残すと書いてある。」
「どうして父はそんなことを?」
「君が息子だからじゃないのかね?」
 この20年一度も帰らず、2年患って癌で亡くなった母の手を握ることもなく、両親
を裏切ったろくでなしの自分に、父の遺産を受け取る謂われはないと固辞するジョー
イ。
「とにかく、君の父上は心の広い人だった。全てを君に残したいと言っている。」
立ち上がりながら「ダメです。受け取れません。欲しくありません。」とドアに向かう
ジョーイ。
「まあ待ちなさい。今どこに住んでるんだね?ジョーイ。」
ジョーイはトレーラーパークに暮らしていた。プールもテニスコートも無いどころか、
芝生も無い古いトレーラーだ。仕事はブラックジャックのディーラー。たまにルーレッ
トも回している。必要な時には毎日仕事に出る。
                                    つづく