「StrangeHighway」 第5章


 父の家に帰り、彼は台所から地下室への細い通路を
降りていった。PJの古い部屋へのドアは湿気と歳月
でゆがんでいた。その小さな部屋は空っぽだった。も
う何年も前に家具は売り払われたに違い無い。PJが
この家に来たときは、2階のジョーイの部屋で眠った
のだろう。
ほこり。蜘蛛の巣。壁のしみ:ロールシャッハテスト
のような。PJがこの部屋に住んでいたというただ一
つの証拠は、壁に画鋲でとめられた二枚の映画のポス
ターだけだった。デザインは通俗的でばかばかしいも
のだ。高校時代のPJの夢は、貧しいアッシュビルを
出て映画を作ることだった。「それでも僕にはこれが
必要なんだ。」と彼は一度ジョーイに言った。「ハリ
ウッドではこんなくそみたいな映画を作っても成功す
ることができる。僕は夢を売るくらいならあきらめる
勇気を持ちたいと思う。それを自分に思い起こさせる
ために必要なんだよ。」運命はPJに映画制作の機会
は与えなかった。しかし皮肉なことに彼は、ジョーイ
の見果てぬ夢だったライターになって成功している。
アメリカ中を常に歩き回り、深い内容を高度に洗練さ
れながらも驚くほど平易な文体で表現する。


ISBN番号:1-57042-287-7

 ジョーイは兄を羨んだ。それは妬みとは違うものだ。彼ら兄弟は若い頃から強く特別
の関係を持っていた。それは今でも変わらない。連絡は兄からの電話でなされていた。
兄との関係は非常に複雑で説明が難しいものである。
 雨が芝生を打ち雷が鳴り響き、窓から見る庭はまるで別世界のように見えた。
 彼はジャーを探して地下室に着いた。しかしそこには映画のポスター以外は何も無か
った。台所への階段を登りながら、「ジャー?何のジャーだろう?」と首を傾げた。地
下室を見下ろして「何かのジャーかな?何かに使うジャーかな?」。何故ジャーを探し
に行こうとしたのか思い出せなかった。
精神異常のもう一つのサインだろうか。酒を飲まないでいる時間が長すぎた。
 アッシュビルに来てからずっと感じている、不安と先見当に苦しみながら、彼は階段
を登った。荷造りしたスーツケースを玄関に運び、ドアに鍵をかけた。何かが背後から
近づいてくる。燃えるような黄色い目の黒い犬が彼に牙を剥いた。「あっちへ行け。」
彼はソフトに言った。これもまた幻覚か。
                                    つづく