StrangeHighway17e

「StrangeHighway」 第17章 その5



画像 ジョーイはショットガンを抱え、注意深く最後の部屋に足を踏み入れた。ここは教会堂の入り口の間の下にあたる場所だろう。床も壁も黒光りする石造りだ。セレステが部屋の中央に横たわっていた。頭上からほの暗い黄色いランプが照らしている。レインコートがケープのように広がり、絹のような黒髪が黒い床の上にこぼれていた。意識は無かったが、どうやら無傷のようだ。
 PJはどこかへ消えていた。
暑さはさらに強烈で、頭が沸騰して幻覚を見せているのでは無いか、とまで思うほどだった。ここからいったいどこへ行きうるというのか?壁に隠し扉や、悪魔と契約した修道士が作った秘密の通路でもあるのだろうか。ナンセンスだ。でもPJはどこかに行ってしまった。心臓が早鐘を打つ。ジョーイはショットガンでPJを警戒しながら、眠っているように見えるセレステに近づいた。PJの気配は無い。セレステを起こさなければならない。
突然、危機を感じたジョーイは天井から下がる照明具の下から飛び退いた。
PJはそこにいた。じっと獲物を狙って影の間に潜んでいたのだ。瞳が光り歯がむき出しになる。彼はもう人間とは言えない存在だった。急いでショットガンを構えるが、間に合うとは思えない。絶望的な思いに体が麻痺した。PJが強烈なキックをくらわせてきた。ショットガンがふっとんだ。二人は床でもみあった。これまでの経緯を覆し、ジョーイは正義の裁きを下す決意。ここで負ける訳にはいかない。体に力が満ちてくる。今こそ復讐を果たすのだ。
しかし、どんなに必死でがんばっても、ジョーイは兄のように暴力的な事には不慣れだった。まして兄の体力は人間レベルではない。嵐のようなパンチに身を守る術もなくなり、彼は何度も床に叩きつけられた。PJは立ち上がり、激しい侮蔑を込めて弟を見下ろした。「Fucking alter boy!」冷たく残忍な言葉を吐きながら、PJは何度も急所を蹴りつけてきた。キックがやむと、ジョーイを掴み重量挙げの世界チャンピオンのように差し上げて、投げ降ろした。
ジョーイは壊れたマリオネットの人形のように壁に当たってから床に叩きつけられた。体中傷だらけで、折れた肋骨が肺に突き刺さっているようだ。かすむ視界の中で、PJが背を向けセレステの方に歩いていくのが見えた。自分の側にショットガンがあるのも見えた。なんとかしようと思ったが、体がどうにも動かない。
 床から不気味な振動と熱が伝わってきた。
PJはジョーイに背を向けてセレステの側にかがみ込んだ。
すぐ側にレミントンがある。ジョーイは全神経をショットガンに集中した。激しい痛みをこらえて、銃を手に取ることだけを念じた。がんばるんだ!今までのみじめな人生を取り戻すのは今しか無い!少しずつ手が動き、レミントンに触れた。
PJは独り言をつぶやいている。まるで異国の言葉のようだ。
幸運なことに、地面のうなりとPJのつぶやきが、ジョーイの気配を消してくれる。やらなければ死ぬだけだ。やっても死ぬかもしれない。だが、結局何かはしなけれなならない。

つづく