「StrangeHighway」 第15章 その2



「PJがここに作ろうとしているもの-12使徒のたち
の悪いパロディ-は、狂気の産物ではなくて、いわば供
物だ。」「以前あなたは、PJは自分をユダになぞら
えてると言ったわね。」「全てを、神さえも裏切った
裏切り者。そして、周囲を腐敗と堕落に巻き込む。あ
の晩、大学に帰る前僕のポケットに13ドルをねじ込
できた。」「13ドル。13枚の銀貨・・・。」祭壇
に戻り、側にハンマーを降ろし、白いシーツの一方に
6本のろうそくをひとまとめにして置いた。
「13ドル。僕を仲間に引き入れるための象徴と言う
か、ヤツとしてはそういう意味を込めた戯れのつもり
だったんだろう。」まゆをひそめて、マッチを取り出
しろうそくに火をつけながら、セレステが言った。
「それじゃ彼は、ユダを、自分の守護聖人みたいに思
ってるという訳?」「おそらくそんな所だろうな。」
「ユダはキリストを裏切った罪で地獄に堕ちたのかし
ら。」「もし地獄があればその最下層にいるんじゃな
いかな。」「あなたは地獄なんて無いと思ってるでし
ょう。」「いいかい。今大事なのは、僕が地獄を信じ
てるかどうかじゃなくて、PJが信じてるということ
なんだよ。」「地獄はきっとあるわよ。」


ISBN番号:1-57042-287-7

セレステのコメントを無視しながら、「彼の思い違いの全てをわかってるとは言わない
が、大筋はそんなところだろう。おそらく一流の精神科医でも僕の兄の頭の中の歪んだ
風景には混乱するだろうな。」とジョーイは言った。
6本のろうそくに火をつけ終わり、セレステが言った。「それで、PJは田舎道を通っ
てニューヨークから帰る途中で、コールバレーで奇妙な風景を見つけたわけね。ほとん
どの家は廃屋になり、あちこちで地盤沈下が起こり、排気パイプが増えて、町のはずれ
ではむき出しの炎が裂け目から見える。教会は荒んで聖域では無くなり、町中が地獄に
滑り込んでいるように見えたことでしょうね。彼はどんなに興奮したかしら。あなたは
そういうことがいいたいのでしょう?」「ああ。多くの精神異常者は象徴的意味に非常
にとらわれやすいんだ。彼らは一般の人とは違う感性で生きている。彼らの意識の中で
は全ての人やものは秘密の意味を持っている。偶然ということはあり得ないのさ。」
「あなた、まるで試験の前の一夜漬けの勉強をしてきたみたいね。」「ここ何年も異常
心理学の本を読んできたからね。最初は自分の書く本のためだと思っていたけど、作家
になることをあきらめてからはもっぱら趣味でね。」「きっと無意識のうちに、あなた
はPJを理解しようとしていたのね。」「PJのような、宗教的な妄想をもつ殺人傾向
のある社会病質者は、普通の人間が天使や悪魔の変装した姿に見えるらしい。彼は偉大
な力は最も単純なできごとにおいて発揮されると信じている。」セレステがうなずい
た。「もちろん、彼は大学に行くようになってから、そこかしこで殺人を繰り返してき
たかもしれないけれど、このコールバレーの状況は何かもっと大きな事をやらかしたく
なる気にさせるに十分だろうな。」
 ジョーイは、シーツの上のろうそくの反対側に陶製のマリア像を置いた。「さあ始め
ようぜ。PJを神の扉を開いて教会へご招待しよう。ヤツの幻想に真っ向から飛び込ん
で、シンボリズムにはシンボリズムで、迷信には迷信で戦うんだ。」

                                    つづく