「StrangeHighway」 第11章 その3



「どうして彼女をトランクに入れたんだ?」「オレは
シートを持っていたし、彼女をそのままにする訳には
いかなかった。」「警察に行けば良かったのに。」
「恐くて頭がどうかしていたんだ。お前の兄さんだっ
て恐いこともあるんだ。」
PJはジョーイから頭を放し心配げに家の窓を見た。
「長く話しすぎたな。父さんが心配して出てくるぞ。」
「どうして町に戻った時に警察に行かなかったのさ。」
「車の中で話そうぜ。怪しまれる。」PJは死体の脇
にスーツケースを入れ、トランクを閉めた。ジョーイ
はそこから逃げ出したかったが、彼はPJを愛してい
たし、感謝もしていたので話だけは聞こうと思った。
ジョーイは助手席に座った。車は寒く空気は汚れてい
て、雨は強くなってきた。
「あいつは彼女をさらってきて、レイプしていたぶっ
たんだ。よくあることだが、まさかこのアッシュビル
で起こるとは思わなかった。」「そいつはどんなかっ
こをしてた?」「ラフで危なそうなヤツだった。少し
イカレタヤツかも知れない。体もでかかった。オレは
追いつかなくて正解だったかも知れない。でかくてヒ
ゲが生えていて脂ぎった髪、汚いジーンズから青のフ
ァンネルシャツがはみ出していた。」「シェリフに届
ければ良かったんだ。PJ」


ISBN番号:1-57042-287-7

「それはできなかった。それにもう手遅れだろう?追いかけた男の証拠も無いし。」
「足跡があるだろう?他にも何かみつけるよ。」「この天気で足跡は消えてるし、証拠
が見つかるとは限らない。そうなったら疑われるのはオレだ。」「ここのみんなはPJ
を良く知ってる。PJがこんなことをするはず無いって事が分かってるよ。」「いや、
人の心は変わりやすいものさ。ましてオレはだいぶ前ににこの町を出ている。お前は何
も分かっちゃいないんだ。」「それじゃ彼女を元の場所に置いてくれば良かったんだよ」
PJは啜り泣いた。ジョーイはそんなPJを初めて見た。「そんなことはできなかっ
た。彼女には家族がいるんだぞ。家族はどう思う?裸のままで路上に置いとくわけには
いかない。今となっては間違いだったと思うが。」「でも、このままにしたらそのヒゲ
の男はまた同じことをするんじゃないのか?」「ヤツはもう遠くに逃げてるさ。オレが
見たことを知ってるからな。ヒゲも剃ってるかも知れない。」「でもまだ今からでもシ
ェリフのところに行けば・・・。」「そうかな?お前は父さんと母さんのことを考えて
ない。犯人が見つからなければ、次に疑われるのはオレだ。フットボールのスタープレ
イヤーで大学の奨学生が裸の女をトランクに詰めているところを捕まったら、下手をす
れば国中で大騒ぎだ。」
ジョーイはどんどん兄の術中にはまっていった。
「頼むから父さんと母さんのことを考えてくれ。子どもっぽい正義感で二人の生活を台
無しにしないでくれ。オレはまだ若いからやり直しがきくが二人はそうはいかないんだ
ぞ。隣近所からも孤立していくことは目に見えてる。そんなこと我慢できるか?オレは
無実なのに。彼女をトランクに詰めたのは間違いだったが、だったらオレを撃ち殺せ。
父さんと母さんを不幸にするのだけはやめてくれ。」ジョーイは何も言えなかった。深
い海の底にいるような気分だった。

                                    つづく