「StrangeHighway」 第11章 その1



 ねずみが二匹、慌てて逃げていった。
「あなたのお兄さんのPJが?」セレステは信じられ
ないように言った。彼女も同じ学校の5年後輩なので
PJがどういう人物なのか知っていた。ライターとし
て世界的に有名になる前から、アッシュビル周辺で彼
を知らない人はいなかった。PJは慈善活動に熱心で、
困っている友達に優しく、体育会系なのに徒党を組む
ことも無く、いじめなどの悪さには断固とした姿勢を
とっていた。
 PJは世界一の兄さんだった。
 でも彼は、残忍な殺し屋でもある。
ジョーイにはこの二つのことを同時に受け止めること
ができなかった。気が狂った方がましだろう。
 ジョーイは跪いたまた、死んだ女の冷たい手首を放
した。「あの週末、PJはニューヨークから家に帰っ
ていたんだ。」彼はセレステに語った。「PJは大学
を出てから大手の出版社で編集助手の仕事についた。
映画業界への道が開けるまでのつもりでね。あの時は
家族揃って楽しい土曜を過ごした。でも、日曜の朝の
ミサの後PJは高校時代の古い友達と会うといって、
一日中外出していた。


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僕らはいつも日曜の夕食は5時に取るんだけど、その日PJは6時に帰ってきた。
その後のPJはやたらと上機嫌で元気いっぱいだった。夕食後、彼は急いで部屋に戻り
荷造りをした。そしてスーツケースを持ってきてドアのところに置いたんだ。天気が悪
くニューヨークまでは長い道のりだから、彼はすぐにでかけようとしていた。でも、父
さんがまだ彼を行かせたく無かったんだ。
父さんはPJをとても愛していたんだ。それで、高校・大学時代のフットボールのスク
ラップブックを持ってきた。PJは僕に「父さんが喜ぶなら30分くらいの遅れが何
だ!」っていう意味のウィンクをした。二人は居間に入っていった。僕は少しでもPJ
が早く出発できるようにと思って、スーツケースを車に積んでやろうとしたんだ。車の
鍵は台所に置いてあったから。」
 「ああ、かわいそうにジョーイ。本当に辛かったわね。」セレステは言った。
彼女の苦しみを思い、ジョーイの心は悲痛に張り裂けそうだった。跪き涙を流した。今
夜、彼は彼女のための立会人にならなければならない。20年間果たせずにいたこと
を。
 何という不思議か、20年間ずっと抑圧してきた最悪の夜の記憶が今蘇っている。今
目の前の彼女はわずか2〜3時間前に死んだばかりだ。20年前であろうと2時間前で
あろうと、彼は彼女を救えなかった訳ではあるけれども。
 「雨は少し小降りになっていた。」ジョーイは話を続けた。「だから僕はウインドブ
レーカーのフードを被る必要も無かった。カウンターの上の鍵を掴み、二つのスーツケ
ースを抱えて兄さんの車の側まで持っていった。車は家の裏に停めてあった。多分母さ
んがPJに何か言ったんだと思う。僕が何をしようとしているか、PJに分かるような
ことを。それで彼は僕を止めようとして追いかけてきた。でも、間に合わなかった・・
・。」
                                    つづく