「StrangeHighway」 第10章 その3 



 入り口までくると、セレステが懐中電灯で中を照ら
した。誰もいないようだ。白大理石の聖水盤は空だっ
た。バールを固く握りしめて教会の中に入る。ここで
ミサが行われなくなってから5〜6ヶ月は経っている
だろうが、安全のために電気は通じているのではない
かとジョーイは踏んでいた。屋根や窓に当たるみぞれ
の音がしていたが、当たりは静けさに満ちていた。
しかし、かつて神聖だった場所は今や、神聖な存在で
はなく悪意に満ちた何かが入り込もうとしているよう
だった。壁に沿ってスイッチを探り、ようやく4つの
スイッチをみつけ、一気にスイッチを入れる。
ほの暗い黄色い明かりが信徒席の列を照らし出した。
神聖なものは既にみんな運び出されていた。祭壇の後
ろにかかっていた大きな十字架も。ジョーイはかつて、
時折ここのalter boyが都合が悪い時の代役をするた
めに、この教会にきたことがあったので、ここの以前
の様子を良く知っていた。前世紀の末に作られた12
フィートの無骨な十字架は、専門家の手になる洗練さ
れたものには無い魅力があったものだった。十字架の
あった場所から視線を下に下げると、祭壇の上にぼん
やりした不定形の盛り上がりが見えた。そこからほの
かな光が発せられているような気がする。


ISBN番号:1-57042-287-7

 彼らは注意深く祭壇に近づいていった。足音が虚ろな教会内に響いた。聖具室に通じる
ドアの壁のスイッチを入れると、ほの暗い光が当たりを照らした。
セレステに、ドアの陰に隠れるように身振りで示すと、ジョーイは映画の中の刑事のよ
うに足でドアを蹴り開け、バールを構えたが、そこには誰もいなかった。 聖具室の外に
通じるドアは、開いたままになっていたが、冷たい風に煽られてバタンと閉まった。
「ヤツはもうここにはいない。」二人は、聖職席まで戻り、祭壇の階段の前で止まっ
た。 ジョーイの心臓が激しく脈打つ。セレステ哀しみに満ちた絶望の声をあげた。"Ah,no."
祭壇には、厚いしわくちゃのプラスティックに包まれて、胎児のように身体を丸めた死
体の一部が見えた。顔は見えなかったが、シートの隙間から乱れたブロンドがこぼれて
いた。
 これは既に予知のビジョンでもなく、幻覚でもなかった。
 記憶の中のものでもなく、この身体は現実のものだった。
「君にも見えるかい?どうなんだ?」とセレステに尋ねる。
「見えるわ。」
手を触れると、細い白い腕が露わになった。手のひらには真ん中に傷が見える。ジョー
イは彼女がもう死んでいるということを「知って」はいたが、それでも一縷の希望をも
って、手首の脈をとってみる。生きている証を見つけることはできなかったが、彼女の
冷たい肌に触れ、長くしまわれていたある記憶が呼び覚まされた。
 ---僕はただ手伝いがしたかっただけなんだ。
冷たい雨の中を二つのスーツケースを抱えて車に向かい、それを道路に置いて、トラン
クを開けた・・・。ほの暗い明かりの中に、She is there. She is there. She is
completely and totally there.
半分透けたシートに裸でくるまって。顔はブロンドの髪に隠れ血塗れで、片腕は外には
み出ていた。手のひらには大きな傷がついていた。強い衝撃を受けたジョーイは、この
まま雷に打たれてしまいたいとまで思った。この記憶をもってこれからを生きるのは辛
すぎるから。背後から彼を呼ぶ声が聞こえた。死ぬのが無理ならおしに、盲目に、何も
考えられない人に、なってしまいたいと神に祈った。彼は悲劇に、破滅に直面してい
た。4人の人間--彼自身の、父の、母の、兄PJの。「僕はただ手伝おうとしただけな
んだ。」彼はPJにそういった。"I only wanted to help."
 「兄さんだ。彼が殺したんだ。」
                                    つづく