日本映画2



亀は意外と早く泳ぐ

三木聡の脱力系エンターテイメントです。 何をやっても目立たない平凡な主婦が、ある日偶然見つけた「スパイ募集」の貼り紙。退屈な日常から抜け出そうと、早速面接に行きます。
ある国のスパイになるということでドキドキしながら受けたミッションは、“平凡に暮らすこと”。意識して平凡に過ごす毎日は新しい発見の連続で、充実した楽しい日々を送るのですが、ある日ついに最終ミッションが下されます。
思いっきり緊張感があるはずのスパイと、平凡な主婦との掛け合わせが見事で、上野樹里がそれを好演しています。岩松了とふせえりのスパイコンビが 絶妙。
そして、主人公がかつて憧れていた要潤の使い方や、そこここに笑いのタネが散らばっていて、すごく楽しいです。
力のある人だからこういう、ゆる〜い映画を面白く作れるんでしょうね。

7月2日よりテアトル新宿にてロードショー  配給:ウィルコ
電車男

「2ちゃんねる」から生まれた話題作の映画化です。
電車の中で酔っぱらいに絡まれている女性を、勇気を振り絞って助けたアキバ系おたくの青年が、インターネット住民の絶大な支援を得て恋を成就するというハッピーエンドのラブストーリー。
出版する時はBBSの書き込みそのままで本にして、PCの画面が紙になったということで違和感は少ないのでしょうが、映像にするとこれは全くの別物ですね。リアルタイムで進行していく掲示板というメディアの特性を、これまでになく強く感じました。
普通の映画だったら当然のサイドストーリーが、なんだかとても嘘っぽく感じてしまうというのも不思議なところ。
うーん、微妙だ。
主人公の山田孝之がおたくファッションから変身する所は、映画ならではの楽しいところでしょうか。

6月4日より東京VIRGIN TOHO CINEMAS 六本木ヒルズ他全国東宝洋画系にてロードショー  配給:東宝
四日間の奇蹟

浅倉卓弥のベストセラーの映画化です。
将来を嘱望されるピアニストが通り魔事件に巻き込まれ、大事な手を撃たれてしまいます。彼は、その事件で両親を亡くし、心を病んだ少女を育て、音楽の才能を見出しました。
ある日、海辺の療養施設に慰問に行った彼らは、そこで働く明るくい気だての良い介護士とうち解けますが、落雷事故で彼女は重傷を負います。そして少女には、意識不明の介護士の魂が宿ってしまいます…。
この作品、手を負傷してピアニストを断念した男と、少女の身体に魂を宿す看護士の、二つの苦悩が描かれますが、視点が定まっていないのでちょっと散漫な印象を受けました。原作ではピアニストの視点で描かれているようですが、映画ではイーブン〜やや介護士にウエイトが置かれているので、これはどちらかにした方が良いでしょう。
心と体が入れ替わるという設定はもう珍しくないので、奇蹟の感動が狙いより薄くなっている気がします。
でも、少女役の尾高杏奈は、かなり難しい役どころにもかかわらず素晴らしいです。

6月4日より全国東映系にて公開  配給:東映
樹の海

富士山の青木ヶ原の樹海は、自殺の名所として知られています。
様々な理由でこの森に迷い込んだ人々、それぞれが抱える人生の断片が交錯しながら、物語は綴られていきます。
ローン地獄に苦しみ、自殺を図るOLを探しに行く取り立て屋、犯罪に手を染め樹海に捨てられる男、樹海で失踪した女性を捜す探偵とサラリーマン、心の空洞をもてあますキャリアウーマン。
死と向かい合うことで、生きる意味を知る人々の、心の痛みがとてもよく伝わってきます。
萩原聖人(まさと)、井川遥、池内博之がそれぞれのパートで主演していますが、それぞれに好演、重いテーマですが、余韻と共に、ひとすじの明かりがまぶしい、前向きの作品です。

6月25日より渋谷シネアミューズ他全国順次ロードショー  配給:ビターズエンド
フライ,ダディ,フライ

「GO」などで人気の、金城一紀の原作の映画化です。
自慢の娘を殴った男に復讐する為、そして娘の信頼を取り戻すため、40代のお父さんが一大決心をします。
コーチは、武器を使わず、自分の肉体だけで闘うというポリシーのクールな高校生。ユニークな特訓が始まり、コーチの仲間の落ちこぼれ高校生達の協力で、どんどん力をつけていくおっさん。果たしてその成果は、相手のボクサーに通用するのでしょうか。
堤真一のおっさんぶりが素晴らしく、クールな岡田准一も、とってもかっこいいです。
特訓のプロセスの面白さもさることながら、だんだん近づいていく、世代を越えた二人の男の心が胸を打ちます。
笑えて泣けて、胸にしみる、思いっきり後味の良い映画ですよ。

7月9日より全国東映系にて公開  配給:東映
七人の弔

ダンカン監督の、ブラックユーモアたっぷりの初監督作品です。
ある小さな田舎の駅に集まった7組の親子。一見キャンプを楽しむ風情ですが、どこか不思議なこの集団の真の目的は想像を絶するものでした。
まず最初に「七人の弔」というパロディ・タイトルがあって、それから中身を考えた…というのが本当かどうかはともかく、ダンカン監督の視点は素晴らしいです。
鬼畜の親たちに反撃していく子ども達のとまどい、哀しみ、愛、したたかさなど様々な心模様を映しつつ、虐待という社会問題と、ある犯罪(伏せます)を巧妙に織り込んであります。
ダンカンはじめ温水洋一、渡辺いっけい、高橋ひとみ他個性派キャストも巧いですが、演じる子ども達もすごい。
そして、何といってもダンカンの人間観察の鋭さ、表現の豊かさ、センスが十二分に発揮されています。

8月13日よりテアトル新宿他全国順次ロードショー 配給:オフィス北野 / 東京テアトル
8月のクリスマス

ご存じ、ハン・ソッキュとシム・ウナで号泣させられた、ホ・ジュノ監督の韓国映画のリメイクです。
地方都市の小さな写真館をやっている主人公が、残された日々を静かに送ろうと思っている時に、一人の女性と出会います。
これによって揺れる生への執着、彼女への思いが切なくて、思い出すだけで涙がにじむのですが、リメイク版の山崎まさよしは、残念ながらハン・ソッキュほどの深みがなく、オリジナルには及びません。ヒロインの関めぐみは勝ち気そうな部分が目立ち、こういう繊細な心情を描く作品には、演技が荒削りすぎます。
監督も長崎俊一で良かったのか…疑問が残る映画でした。

9月23日より、シネスイッチ銀座他全国順次公開  配給:東芝エンタテインメント
乱歩地獄

江戸川乱歩小説の中で最もおどろおどろしく、かつ官能的でありながら映像化不可能と言われた4作品の映画化です。
浅野忠信、成宮寛貴と松田龍平といった新鋭・気鋭の俳優が主役で、監督陣には個性派の鬼才が集まりました。
素材が素材だけに、かなり濃密で胃もたれがします。(^O^)
浅野忠信は4作中2作に主演、他の2作には明智小五郎役で出ているという、浅野忠信ワールドといった映画。
体力のある時に、ぜひどうぞ。

秋、シネセゾン渋谷にてロードショー 配給:アルバトロスフィルム
メゾン・ド・ヒミコ

いい映画です。
塗装会社の事務員として働く主人公は、死んだ母親の医療費の借金を抱え、風俗のバイトをしようかと考えていました。
そんな折りに、若くて美しい青年が訪ねてきて、昔妻子を捨てて出て行った父親が余命いくばくもないと聞かされます。父の愛人である青年は、高額のバイトとして来てくれと説得、渋々承諾して訪れたのは、父が運営するゲイの老人ホームでした。
愛も憎しみも紙一重、その溝はうめられなくても越える事はできる…そんな心のふれ合いと優しさを描いて、胸を打たれます。
これ以上の配役はないというくらいのオダギリジョー、色っぽく、時には力強く、魅力全開。化粧っ気がないどころか、そばかすまで描いて地味な役柄をこなす柴咲コウも、勝ち気そうな外見とうらはらの孤独を見事に表現しています。
そして、彼女の上司を演じる西島秀俊は、またしてもおいしい役どころを飄々とした味で見せ、オダギリジョーに言い寄られるツーショットは、素敵すぎ!(^o^)
永遠ではないけれど、誰かと一緒にいることの心地よさ、つかの間でも寄り添える相手がいることの幸福、大事にしたいものをあらためて見つめ直す、とってもすてきな作品です。
全編静かに流れていくのですが、クラブでのダンスシーンは心躍ります。お楽しみ。

8月27日よりシネマライズ、新宿武蔵野館、池袋シネマサンシャイン他ロードショー  配給:アスミック・エース
亡国のイージス

福井晴敏の話題作の映画化です。
某国の工作員を乗せ、国家に反旗をひるがえしたイージス艦副長は、全ミサイルの照準を東京首都圏内にあわせます。 事態を知った先任伍長は、一度艦から離脱したものの、艦を取り戻すべく単身乗り込みます。
国家の有り様を問う大テーマはさておき、防衛庁はじめ、海上自衛隊、航空自衛隊が全面協力というリアルな映像で、エンターテインメントとして迫力十分。
中井貴一と佐藤浩市はどちらの役をやってもそれぞれにはまるだろうし、正義のヒーロー真田広之とのバランスも良いですね。今の日本映画を代表する演技派スターたちの競演で、豪華かつ骨太な仕上がりになっています。
ただ、一部理解に苦しむシーンと、あとで資料を見て初めてわかった、説明不足の人間関係があったのが残念。

7月30日より丸の内ピカデリー1他 全国ロードショー  配給:日本ヘラルド映画