ACT.9 1991年-1

  祖父の家と「トゥルーカラーズ」

1991年に入って、スペイダーは名匠ハーバート
・ロスの監督作品「トゥルーカラーズ」に出演
した。
野心に燃える2人の青年が、政界と法曹界、それ
ぞれが選んだ道の相違から、彼らの友情はやがて
裏切りと復讐の物語に変質していくドラマティッ
クな作品だ。
スペイダーは、苦悩する青年を好演しているが、
出演するに至った経緯の中で、こんなエピソード
がある。



彼はこの台本が気に入り、共演者のジョン・キューザックを尊敬していた。しか
し、それだけでは彼をセットに行かせることはできなかった。
彼は云う。『祖父の家を買うことができるから私は引き受けた。それはとても重
要なことなのです。その家が幽霊がでるようになる所は見たくないし、その為に
私はどうすべきか分かっていた。外に出て働くことだ。もし金が必要でなければ
私は働かない』
彼は続けた。『家族と友人と共に時を過ごし、旅行をし、本を読んで、音楽を聴
き、誰かになりきる方法を学ぶ代りにどうしたらより人間的になれるかというこ
とをもう少し学びたい』
また、スペイダーはこの頃自分の仕事に対してハードボイルドな態度を持ってい
たようで、ジョン・ヒューストンやチャールス・ロートン、特にハンフリー・ボ
ガートのような人間的ヒーローの真似をした。ボギーのようなシニキズムを気取
っていたのだ。
例えば、話す時にセンテンスをゆっくり区切る。ジョークを含み笑いするように
飲み込む。40年代スタイルのジッポライターをパチッといわせタバコに火をつ
け、ずぼらで、しかしエレガントな手つきでカチンとふたをしめる。
しかし、これがどの程度ポーズなのかよく解らない。

一方、こんな横顔も紹介されている。
彼はハリウッドやニューヨークから逃れて、家族の近くにあるアメリカの片田舎
に行った。そこでは彼は映画スターとして扱われないので、運河に沿って彼の方
に来る全ての人に、陽気にハローと叫ぶ。
そしてトレイラーパークで「WARREN Co.Hook And LADDER」という文字がつ
いた帽子をかぶった老人に手を振った。
『トレイラーパークに住むのは楽しいかい?』とスペイダーは大声は聞いた。
『私は消防士を40年間やっていたんだ、いい話をたくさん聞けることを受けお
うよ』スペイダーは彼と共に数時間すわって、ステーキを食べビールを飲んだと
いう。