ACT.6 1988年〜1989年

  カンヌへ

88年、スペイダーはイギリスで「レイチェル
ペーパー」に出演する。主人公のデクスター
フレッチャーが思いを寄せる女の子の恋人役
を演じ、颯爽とした青年ぶりを発揮した。

そして、89年、ようやく初めて世界的にジェ
ームズ・ スペイダーの名が知れ渡る運命の作
品と出会うのだ。
25才の新人監督スティーヴン・ソダーバーグは
自らの体験をもとに8日間で書き上げた「セック
スと嘘とビデオテープ」の準備にかかっていた。

ソダーバーグは回想する。












問題はグレアム役だ。
カイル・マクラクランがこの役を蹴った。
ニューヨークで会った中でたった一人この役に
あいそうな役者はブラッド・グリーンキスト
(Brad Greenquist)という男だが、残念なが
ら彼はモスフィルム(Musifilm)が要求する
ような知名度が無い。
困ったことになった。そういう訳で僕はロスに
帰ってグレアム役を探すことにした。
ジェームズ・スペイダーがこの役に興味を持っ
ているという話聞いた。僕たちはヘレン・スレ
ーターにこの映画の脚本を送ったが、彼女はこ
の脚本はきっと彼の気に入るだろうと思って、
同じエージェントのジェームズに見せた。
案の定彼はこの脚本が気に入った。でも僕は
彼が本当にグレアム役にふさわしいのかどうか
疑問に思う。確かに彼は有名だ。それに彼は良
い役者だ。でもそれが何だっていうんだ。

ジェームズ・スペイダーが今日台本を読んだ。
実に面白い。彼はマークとアネットの家に来て
(彼女は女優だ)一緒に台本を読んだ。
彼は素晴らしかった。最初に部屋に入ってくる
と彼は「こんにちは」といい、是非この映画に
出演したいんだと言った。この言葉で僕はとて
も気を良くした。
彼の名前が初めに上がったときは、全く良く思
ってなかったのにね。
僕が見た彼の映画は、どの役もとてもうまかっ
た。でもこの映画にふさわしいとは思わなかっ
たんだ。そいつは僕の見識の狭い思いこみだっ
たってことだ。やったことが無いからできない
だろうと決めつけるなんてね。
同じ事を僕はアンディーにも思った。
これから僕は考えを変えることにしよう。役者
ってヤツは要求されればどんな役でもできるも
のなんだ。

おそろしいほどナイーブな深層心理の再生…
スペイダーはこの役を見事に演じ、カンヌ映画
祭の主演男優賞を獲得した。作品としてもカン
ヌ映画祭グランプリ、同国際批評家協会賞、
USフィルムフェスティバル89観客賞を受賞
し、ジェームズ・スペイダーの名は世界的に
知られるようになったのである。