ACT.2 1980年

Episode

ニューヨーク時代のことを、「彼はアンドーバーでは大
スターという訳ではなかった」と昔のクラスメイトのク
リスチャン・クレメンソンは当時を振り返って云う。
彼は「バッド・インフルエンス」でスペイダーの兄を演
じている。
また、「しかし彼はプロの役者になることに取りつかれ
ていた」……友人にとってスペイダーの行動は向こうみ
ずで危険にさえ見えたと言う。「 私は彼を恐ろしいと
思ったよ」とはクレメンソンの弁。
なぜなら、ある日学校につくと、自分のクラスメイトが
ニューヨークから来た野性的な男についてこう説明した。
「その男は長い髪でフリンジのついた皮ジャケットを着
て、半ダースの飲み物を飲みながらバスタブに腰掛けて
君を待っている。」
もちろん、それはスペイダーだとすぐに分かったのだが。

タイムズスクウェアのリハーサルスタジオで用務員として働いていたスペイダーは、
エージェントを持たない自称俳優だった。
ある日、スタジオを使っているキャスティングエージェントの机の上に置いてあった
写真の山の中に、彼の上司が彼の写真をそっと入れた。
スペイダーはすぐ来るように、との電話を受けたが、ちょうどその時、彼の母が町に
来ていて二人で美術館に出かけようとしていたところだった。
『母はウールのスーツを着て、白い手袋を着けドレスアップしてピカソ展に行く用意
をしていたんだが、美術館に行く代りに地下鉄に乗ってスタジオへ行ったんだ。
母親を連れて行ったのは僕一人だったよ』
彼はブルック・シールズの兄という小さい役を貰った。
妹のボーイフレンドにことごとくきつく当たる青年像を演じたスペイダーは、その異
色のキャラクターで一部の映画人に注目された。
そして、その後ヨーロッパの巡回公演に行ったりしたが、83年にTV界から誘いの
声がかかった。