赤芽球癆の一症例
(はじめに)
赤芽球癆(pure red cell aplasia 以下PRCA)は、赤芽球系細胞になる単能性細胞(umpotential stem cell)のみが選択的に障害される再生不良性貧血の一亜型と考えられる。原因としては先天性、後天性(原因が明らかでない本体性のもの)、薬剤、免疫学的機序の関与しているものがあり、臨床的には急性型、慢性型に分けられる。
今回、胸腺腫を認め、末梢血で正球性正色素貧血を示し、網状赤血球の消失を認め、顆粒球系、血小板系に数的、質的異常を認めずまた骨髄では赤芽球の無形成を呈し、末梢血同様顆粒球系、血小板系異常が認められずPRCAと診断された症例を経験したので報告する。
(症例)
患者 昭和03年03月01日生 70歳 男性
(既往歴)
糖尿病、狭心症による冠動脈バイパス術
陳旧性肺結核、原因不明の繰り返す貧血
(現病歴)
易疲労感 今回は貧血精査の為平成11年6月30日当院入院となる
(主な検査所見)
H11.07.01 入院時
▼血液学的検査
WBC 43×10/μl RBC 241×10/μl Hb8.0g/dl Ht23.2% PLT 28.9×10/μl MCV 96.3fl MCH 30.8pg MCHC33.4%(St2.0%Seg27.0%Eo1.0%Lym68.0%Mono2.0%Ret0‰)
骨髄像検査 有核細胞 5.5万/μl 巨核球数 31.25/μl(Blast 0.4% 顆粒球系38.0% 好酸球球系0.8% 好塩基球系0.4% リンパ球58.0% 単球2.8% 赤芽球系0.0%)
▼生化学的検査
ALP 389IU/l AST 28IU/l ALT 43IU/l LDH 270IU/l r-GTP 279IU/l Fe 197μg/dl フェリチン 419 ng/ml
エリスロポエチン4025.3 mU/ml
ヒトパルボウィルスB19 IGG(-)IGM(-)
(考察)
PRCAを分類すると5つに分けられる
1、先天性PRCAは乳児期に発症(6ヶ月迄に75%)し殆どの症例は無治療で自然治癒する。
2、薬剤誘発性PRCAは成人特に男性に多い。この症例は糖尿病、狭心症、肺結核の慢性疾患を持ち以前あるいは現在内服している薬剤だけでも11種あり、PRCAの原因と推定される薬剤が3種含まれていた。
3、顆粒リンパ球増加症を伴う慢性PRCA---この症例はN/C比の大きい小リンパ球であった。
4、胸腺腫に合併する慢性PRCA(1.6〜5.0%)
この症例のX線およびCTで胸腺腫を認める。
5、ヒトパルボウィルスB19感染による急性PRCA---この症例はヒトパルボウィルスB19IGG(-)ヒトパルボウィルスB19IGG(-)であった。
(結論)
骨髄像検査で赤芽球が0%、正色素性正球性貧血、網赤血球0‰、上記考察2と4より赤芽球癆と診断された症例であった。PRCA治療のためステロイド剤(プレドニン)を投与していたが、回復を見ないまま平成11年12月22日重篤な肺炎を併発し帰らぬ人となった。