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+小説の主張+ 秋山真琴様より
(文面に訂正を入れておりませんので補足させて頂きますが、秋山さんには以前、『金の踊り子』も書評して頂いたことがあります。なお、書評内容は旧版へのものです)
第1希望の辛口指定。著者の鈴子氏は以前も依頼があった方で、今回は改稿のために細かく突っ込んでくれとの依頼でした。また書評の範囲は読むに値するところまでとの指定でしたので、第1部「ダナ降臨」の第2章「金の踊り子」の終わりまで、原稿用紙約180枚読みました。また今回はアドバイス部分が長くなってしまったので、長所や作品の解説は割愛して、いきなり参りたいと思います。
まず、この作品には物語性が欠落しています。世界観や設定など、そういった本来はバックボーン的なものが表層に出すぎていて、物語りではなく設定説明になってしまっています。例えば、序盤でラウリーの母親が登場する場面。ここでは「目の下にくっきりとくまを作っている」「隠しきれない疲労の色濃い顔をしている」と表面的に語っているだけになってしまっています。そんな表面的な設定解説などしなくても、椅子に座る際溜息をついた・猫背になった、などの隠喩的表現だけで充分にイメージは伝わります。また、グールという獣に関する説明も長く、クリフとオルセイがグールの母親を倒すシーンは必要以上に長く思われました。さらに言えば、このグールの設定は倒錯しています。戦闘前に提示された設定とクリフとオルセイが知っていて、かつそれらを体感しており、それなりの知性を持っていれば、子グールを助けるなんてこと、けしてしないと思います。少なくともそれまでの設定とは相反する行動に、秋山は困惑を受けました。――設定の説明に関しては、必ずしも不要というわけではありません。ファンタジィを語るにおいて世界観や設定の説明は、語らなければなりません。しかし、それ以上にそうでない部分が必要で、この作品では両者のバランスが崩れているように感じました。
バランスが崩れることで、テンポも悪くなってしまっています。それらによって冗長さを感じ、ついつい読み飛ばしがちになってしまいます。改稿にあたって注意すべき点を3つほど考えてみました。
1、緩急をつける。簡潔に言って"ストーリィと直結する場面と、そうでない場面を書き分ける"ということです。現状、魔導士の山から自宅、旅、宿屋、見せ、酒場、そのすべてのシーンが意味を持ってしまっています。どの場面もストーリィの進行に重要で、それを知らなければ次を読んでも分からなくなり、読み飛ばすことができません。これは読者にとって、たいへんなストレスになります。短編ならば、最初から最後まで緊迫した場面であっても読み進めることができますが、長編を書くのなら絶対に息抜きできるポイントが必要になります。また、どのシーンも重要であるということは、相対的に、どのシーンも重要でないということに等しいです。緩がなければ急を実感できなく、急がなければ緩を実感できない。ラウリーとエノアが旅をしている間や、クリフとオルセイが農家に泊まらせて貰う場面など、そういった些細で無駄な場面こそが必要だと思われます。
2、日常を描く。ファンタジィ小説を書くにあたって、読者に世界観を見せることが必要不可欠であるというのは前述の通りですが、それは必ずしも神や魔法の名前、キャラクタの眼の色や髪の色を列記するのとは直結しません。秋山が思うに、世界観を語るなら、日常を描く、これが一番だと思います。つまり衣食住(=文明)のレベルや、日常生活の送り方など、そういった作品内世界における一般性や普通なことを描くことが、世界観の説明につながると思うのです。エノアがどんなに有能な魔導士であったとしても、無能な魔法使いがいなければ、どれぐらい有能なのか分からない。ルイサがどんな美女だとしても、美女でないキャラクタがいなければ、どのぐらい美しいのか分からない。基準や平均値、そういったものが必要です。
3、優先順位をつける。1と2を総括し、何を優先的に書き、何を敢えて書かないべきかについて考えなおす必要があると思います。以下に幾つか指針となるかもしれない考え方を挙げます、
・名前を持っているキャラと、そのキャラに割かれた文字数の比率。
・一つの場面では一人のキャラの内面しか描かない。
・急展開に驚きを持たせるように、伏線とミスディレクションを使い分ける。
・目に見える風景だけでなく、音や匂いも加える。
他にもあると思いますが、改稿の際はこういった点を留意すればいいと思います。
なお、原稿作法に関しては、特に問題点を感じませんでした。やや批判色の強い文面となってしまいましたが、第2章の6以降は面白く読めました。
2003.10.20
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