4(逗留)
「え?」
急に、バンと扉の開く音が聞こえた気がして、ラウリーは目を開けた。
まだ覚めきらない頭で、扉の方向を見る。少し頭を起こし、目をこする。それは、気のせいではなかった。
「魔法使いの、連れの女だな?」
2人の、街の者たちとは違う格好をした、屈強そうな男が立っている。その後ろでは、宿屋の主人がオロオロとしていた。
2人の男の身なりはまったく同じで、制服のようだ。ラウリーは、ロマラール王都にいた近衛兵が、同じような服を着ていたのを思い出した。厚手の上着の下に、皮の胸当てが見える。多分、クラーヴァの兵隊なのだろう。
しかしその兵隊が、どうして自分の元に来ているのか、ラウリーの頭の回線はまったくつながらなかった。上体を起こし、眠気を振り払うために軽くのびをする。ぐっすり眠ったらしく、いくぶん頭は冴えていた。まだ完全にとは行かないが、頭痛はほとんど取れたようだ。夢見は良くなかった、と思うが。
まだ日は赤くなっていなかったが、窓から射しこむ光はすでに、午後のそれになっていた。数時間は眠ったらしい。ラウリーは、エノアはまだ戻ってないのだな、と考えた。
「答えろ、女」
苛立った様子で、男が声を上げた。
早口になられると何を言っているのか分からなかったが、短い罵倒なら理解できる。ラウリーは女、と呼び捨てにされムッとした。
「何の用?」
「我らはクラーヴァ国騎士団の兵である。すみやかに出頭しろ」
もう一人の男が、朗々と響く声で言った。ゆっくりとかみしめるような口調だったため、意味は分かった。
「騎士様。お客様も、穏便にお願い致します」
主人が情けない声でそう言った。兵らは強引に乗り込んできたものらしい。それは客室のドアをノックもせずに入ってきた辺りで、想像できるが。ラウリーは段々と目が覚めてきて、扉に鍵をかけていなかったことに気付き後悔したが、今さらもう遅い。
兵らは寝間着姿のラウリーを引きずり上げでもするつもりなのか、ずかずかと近付いてきたので、ラウリーの方から立ち上がった。そのまま反転し、逃げてやるつもりで。
「?!」
しかし、突然金縛りに遭ったかのように、立ったままの状態から、足が一歩も動かせない。
「どうした、逃げるつもりだったのか?」
せせら笑うかの兵隊の顔を思い切り睨みつけるが、動けない。
「触らないで」
声は出せた。
強い『力』が自分に働いている。ラウリーはそれを魔力だと感知した。その魔力を発しているのは、この兵らではない。正面から──。
「?」
近付いてくる男らと、戸口で立ちつくす主人の、その向こうにいる人間。彼女が魔法を発している本人であるとは、すぐに分かったが……体ではそう感じても、頭では理解できなかった。
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