直木賞のすべて
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第3回

山本周五郎賞

=受賞者=
佐々木 譲

=候補者=
原田宗典
上野 瞭
伊集院 静
山田正紀
泡坂妻夫


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 平成1年/1989年度
 (平成2年/1990年5月17日決定発表/『小説新潮』平成2年/1990年7月号選評掲載)
選考委員  井上ひさし 田辺聖子 野坂昭如 藤沢周平 山口瞳 最終投票
選評総行数  205 164 148 144 157  
評言 評言 評言 評言 評言 評言
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
佐々木譲 『エトロフ発緊急電』 評言 44 39 48 24 43    
原田宗典 『スメル男』 評言 10 11 14 16 11    
上野瞭 『アリスの穴の中で』 評言 37 50 23 17 22    
伊集院静 『三年坂』 評言 25 14 8 20 20    
山田正紀 『ゐのした時空大サーカス』 評言 30 18 19 33 19    
泡坂妻夫 『蔭桔梗』 評言 58 32 41 36 41    
           
見方・注意点

このページの選評出典:『小説新潮』平成2年/1990年7月号
1行当たりの文字数:30字


選考委員井上ひさし×各候補作  見方・注意点
総行数205 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
佐々木譲 全委員 44 4点「三十億だか五十億だかいる人間の中の、ある二人に焦点を当てておき、それが、時代の悲劇的な進展につれてついに結ばれるという距離の縮め方……。(引用者中略)そこに全霊を上げて取組む作者の力技に感心しました。」「ただ、この作者が最も力を注ぐべきだったのは、国家とは何かということだと思うんです。」
原田宗典 全委員 10 4点「この作者の機知の働きはなかなかのものだと思います。それがよく筋立てに表れています。四といういい点数になったのは、この作者の今という時代に対する批評眼に共感を覚えたからです。」
上野瞭 全委員 37 3点「実際、こうして上野さんが小説にして下さったことによって、残念ながらやっぱり男が妊娠する小説は面白くないという貴重な実験結果を、われわれ同業者は得ることになりました。」「危ない方向へ思い切って足を踏み出せばいいと応援しながら読んでいるのですが、倫理とか常識とか、そういうところに、作者自ら話を閉じ込めてしまう。」
伊集院静 全委員 25 4点「文章の力に感心しました。それから、あんまり破綻がないんですね。全部が的に当っている。」「ただ、この短篇集に収められた各作品、パターンが似てるんですね。」
山田正紀 全委員 30 3点「実際に読んでみると、すごくわかりにくい。あれ? あれ? あれ? というふうに、何回も読み返さないとつながってこない。作家の主観に重心がかかりすぎていて、読者と共有すべき客観部分が不足してるんです。」
泡坂妻夫 全委員 58 3点「小太刀の使い手といいますか、きちっと出来ていますね。」「とても好きな作家なんですが、この短篇集について言えば、各篇とも、ひっかけ方が弱いような気がするんです。」「今回は、どうも泡坂さんが大事にしている世界と、微妙なずれがあちこちで感じられるんですよ。」
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他の選考委員
田辺聖子
野坂昭如
藤沢周平
山口瞳
最終投票
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選考委員田辺聖子×各候補作  見方・注意点
総行数164 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
佐々木譲 全委員 39 5点「私、スパイが好きなんです(笑)。」「とにかくばらばらに始まった物語が、だんだん収斂されていき、それぞれの過去を持った人たちが、一つの大きなドラマのうねりの中に巻き込まれて、個人の運命も、国家の命運も一緒になってという、手に汗握る力強さといいますか、これはもう、かいなでの作者では出来ないですね。」
原田宗典 全委員 11 2点「文章がいいんです。お話を面白く構築する腕力も、大変なものだとは思いましたが……。」「最後は、結局、何を書いたんだろう。(引用者中略)いっぺんに、終わりのほうが劇画風になっている。」
上野瞭 全委員 50 1点「ほんと、肩が凝った(笑)。」「作者にユーモアの天賦がないとは思えないんだけれど、ちょっと計算違いではないでしょうか。」「一番不満なのは、男が子供を産むという画期的事業をなしとげて会社へ帰ってみると、もっと周りが変わるとか、本人が変わるとかしないといけないのに、ただ窓際族になっているという結末。」
伊集院静 全委員 14 2点「五篇とも、好感は持って読みました。」「これ、誰かに似ていると思ったら、どうも宮本輝さんの世界に似ているんですね。」「でも、ちょっとしみじみ、ほのぼのしすぎ。」「たしかにいいことはいいんだけれど、あまりにも完結しすぎた世界ですね。」
山田正紀 全委員 18 4点「ふだん、SFには詩情というものを感じないんですが、この作品は、なんとなくこちらの心の琴線に触れてくるところがありまして……。」「なんというか、あえかなケーキという感じの小説なんですね。その味、何かなと考えてみると、悠久というか、永遠というか、そんな時間の味なんですね。」
泡坂妻夫 全委員 32 5点「とにかく、大人の読める小説ですね、これは。」「短篇というのは、日本の文壇ではいつも貶められて、長篇重視というか、鉄鋼業みたいな小説ばかり評価されるんですが、これ、充分、賞を差上げていいんじゃないかと思います。」
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他の選考委員
井上ひさし
野坂昭如
藤沢周平
山口瞳
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選考委員野坂昭如×各候補作  見方・注意点
総行数148 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
佐々木譲 全委員 48 0点→3点「前半は面白かったけれども、後半はかなりがたがた。」「波瀾万丈かと思ったら、お涙頂戴みたいなシーンが出てくるし、絵に描いたような差別の問題が出てきたりもする。」「僕は最初、〇と言いましたが、はじめに読んだ時、一番面白いと思ったのは、「エトロフ」でした。」
原田宗典 全委員 14 0点「三べん読みましたが、どうも面白くない。」「嗅覚がなくなり、その嗅覚のなくなった自分自身、悪臭の元になっているという発想は人間の存在そのもの、深刻なテーマだけど、単なる思いつきに終っている。」
上野瞭 全委員 23 0点「男が妊娠したとなれば、かなり当人は深刻になるはずで、単に胎動がどうの、他人の目がどうのより、書かなきゃいけないことは別にいっぱいあるはずなんです。」「産道がないわけだから、いざ出産となれば、帝王切開せざるを得ない。こんなこと、はじめっからわかっているわけです。これひとつとっても、思いつき以上のことを、作者はやっていないですよ。」
伊集院静 全委員 8 0点「小説となると、向田邦子と宮本輝を一緒くたにして、少し薄めたような世界ですね。泣かせがうまい。併し、これはこうなって、こうなるんだなということが、わかりすぎる。」
山田正紀 全委員 19 0点「彼がこういう小説を書き始めたのはいいけれど、どうして、デジャ・ヴュを持ってきたり、主人公の昔の生活を、陰惨なものに書いてみたりするのか。」「これは、山本賞の対象作品ではないと思う。時間の迷子は特に珍らしくないと思うし。」「文章のほうでいっても、主観なのか客観なのか、よくわからないところがあるんですね。」
泡坂妻夫 全委員 41 5点「中の一篇、それぞれ独立させて読めば、つまり、小説雑誌の中に一篇だけ入っているとき読めば、どれも面白いと思うんです。」「いかにもおやりくださったという感じでね。しかし、全作品を通じてここまでだという印象がつよい。よく考えているけど、あげく印象が似通って。」
  「僕は今日、「エトロフ発緊急電」か、「蔭桔梗」か、このどちらかだと思って来たんです。」
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他の選考委員
井上ひさし
田辺聖子
藤沢周平
山口瞳
最終投票
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選考委員藤沢周平×各候補作  見方・注意点
総行数144 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
佐々木譲 全委員 24 3点「物語としてはよくまとまっていまして、佐々木さん、うまくなったなと思わせられるところもあるんですが、皮一枚のところで、気分が乗らないというか、共感できない小説でしたね。」「日本を裏切るという感じにならないように、純粋な日本人ではないという工夫は、いろいろとこらされていますが、全体がぎこちなく、滑らかに行っていないために、乗れない気分は如何ともしがたいのです。」
原田宗典 全委員 16 4点「SF風でもあるミステリアスな作品なんですが、その過程に大変リアリティがあって、こういう事が現実にあってもちっともおかしくないという感じがありましたね。」「今ふうの面白い人物が書けているように思いました。細部もなかなかうまいですね。」
上野瞭 全委員 17 3点「気持ちの悪い小説でした。男が子供を産んで、性の境界点を超えるわけなんですが、それにどういう意味があるのか、さっぱりわからないですね。」
伊集院静 全委員 20 4点「全部がいいというわけではないんですが、文章なんか初々しくてね。(引用者中略)幾つになっても、初々しさはあっていいと思います。」「全体として、大変いい感じを受けました。」
山田正紀 全委員 33 3点「私が一番感心したのは、時間というものには、もともとセンチメンタルな要素があると思うんです。単純に言えば思い出に耽ったりというようなね。この小説には、そういう時間が持つ、良質な感傷があるような気がしました。」「しかし、(引用者中略)「空中ブランコ」から後は、どうもテーマを持ちきれなくなって、観念的に終わったんじゃないかという気がします。」
泡坂妻夫 全委員 36 5点「五を上げたいんだけれども、同工異曲、私もそこがひっかかりましてね。」「この作品集、いいなあ、名人芸だなあという、感心ばかり先走って、褒める言葉に困るんですよ。」「追随を許さない段階に到達したというか、泡坂さん独自の世界を完成したような気がします。」「むかしの泡坂さんの文章は、もっと癖がありましたね。それがこういう平明で味のある文章に変って来たということは、やはり注目すべきことではないでしょうか。」
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他の選考委員
井上ひさし
田辺聖子
野坂昭如
山口瞳
最終投票
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選考委員山口瞳×各候補作  見方・注意点
総行数157 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
佐々木譲 全委員 43 4点「「スメル男」とか「アリスの穴の中で」の後で読みますと、心に滲みるようにわかるんですね。」「よくわかるということと併せて、前作の「ベルリン飛行指令」からそんなに経っていないのに、よくこれだけ調べた、よくこれだけ書いた、そのバイタリティを、私は買いたいと思いました。」「ただし、長すぎますよ、この人のは。」
原田宗典 全委員 11 3点「今年の候補六人の中では、この人が一番、力があるように思いました。」「全体として、なんでこんなことを書くのかと、そういう思いもありまして、かなりの拒絶反応を抱きながら読みました。」
上野瞭 全委員 22 2点「一つは、こんなに夢を使ってはいけないんじゃないか。」「それから、男が妊娠するといった時の、滑稽な感じがほとんどないんですね。」「まったく拒絶反応だけです。」
伊集院静 全委員 20 3点「古いというのかなあ、安定感がありすぎるというのか、なんか、新派の芝居を見ているみたいで、平成版川口松太郎という感じなんですね。」「君の本音はどこにあるんだ、といつでも思ってしまう。」
山田正紀 全委員 19 2点「これは僕、全然わかりませんでした。」「これね、僕、SFだと思っては読まなかったんです。今みなさんに言われてわかったんです。」「ですから、まったく資格はないんですが、やはり拒絶反応のほうから言って、仮に二点としておきます。」
泡坂妻夫 全委員 41 3点「泡坂さんや伊集院さんといったタイプの作家は、ずしんとくるものを百枚ぐらい書いて、これでどうだと言ってくれないと、評価のしようがないんです。」「羨ましいんですよ、僕は。すごく好きなんです、泡坂さんの生き方が。作品としては、「簪」と「弱竹さんの字」と「十一月五日」、この三つがわりに好きですね。でも如何せん、これで受賞というのは無理でしょう。」
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他の選考委員
井上ひさし
田辺聖子
野坂昭如
藤沢周平
最終投票
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選考委員最終投票×各候補作  見方・注意点
総行数 (1行=30字)
候補 評価 行数 評言
佐々木譲 全委員     3+3+3+2+2=13
原田宗典 全委員      
上野瞭 全委員      
伊集院静 全委員      
山田正紀 全委員      
泡坂妻夫 全委員     1+1+2+3+3=10
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他の選考委員
井上ひさし
田辺聖子
野坂昭如
藤沢周平
山口瞳
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佐々木譲『エトロフ発緊急電』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 全候補 44 4点「三十億だか五十億だかいる人間の中の、ある二人に焦点を当てておき、それが、時代の悲劇的な進展につれてついに結ばれるという距離の縮め方……。(引用者中略)そこに全霊を上げて取組む作者の力技に感心しました。」「ただ、この作者が最も力を注ぐべきだったのは、国家とは何かということだと思うんです。」
田辺聖子 全候補 39 5点「私、スパイが好きなんです(笑)。」「とにかくばらばらに始まった物語が、だんだん収斂されていき、それぞれの過去を持った人たちが、一つの大きなドラマのうねりの中に巻き込まれて、個人の運命も、国家の命運も一緒になってという、手に汗握る力強さといいますか、これはもう、かいなでの作者では出来ないですね。」
野坂昭如 全候補 48 0点→3点「前半は面白かったけれども、後半はかなりがたがた。」「波瀾万丈かと思ったら、お涙頂戴みたいなシーンが出てくるし、絵に描いたような差別の問題が出てきたりもする。」「僕は最初、〇と言いましたが、はじめに読んだ時、一番面白いと思ったのは、「エトロフ」でした。」
藤沢周平 全候補 24 3点「物語としてはよくまとまっていまして、佐々木さん、うまくなったなと思わせられるところもあるんですが、皮一枚のところで、気分が乗らないというか、共感できない小説でしたね。」「日本を裏切るという感じにならないように、純粋な日本人ではないという工夫は、いろいろとこらされていますが、全体がぎこちなく、滑らかに行っていないために、乗れない気分は如何ともしがたいのです。」
山口瞳 全候補 43 4点「「スメル男」とか「アリスの穴の中で」の後で読みますと、心に滲みるようにわかるんですね。」「よくわかるということと併せて、前作の「ベルリン飛行指令」からそんなに経っていないのに、よくこれだけ調べた、よくこれだけ書いた、そのバイタリティを、私は買いたいと思いました。」「ただし、長すぎますよ、この人のは。」
最終投票 全候補     3+3+3+2+2=13
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他の候補作
原田宗典 『スメル男』
上野瞭 『アリスの穴の中で』
伊集院静 『三年坂』
山田正紀 『ゐのした時空大サーカス』
泡坂妻夫 『蔭桔梗』
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原田宗典『スメル男』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 全候補 10 4点「この作者の機知の働きはなかなかのものだと思います。それがよく筋立てに表れています。四といういい点数になったのは、この作者の今という時代に対する批評眼に共感を覚えたからです。」
田辺聖子 全候補 11 2点「文章がいいんです。お話を面白く構築する腕力も、大変なものだとは思いましたが……。」「最後は、結局、何を書いたんだろう。(引用者中略)いっぺんに、終わりのほうが劇画風になっている。」
野坂昭如 全候補 14 0点「三べん読みましたが、どうも面白くない。」「嗅覚がなくなり、その嗅覚のなくなった自分自身、悪臭の元になっているという発想は人間の存在そのもの、深刻なテーマだけど、単なる思いつきに終っている。」
藤沢周平 全候補 16 4点「SF風でもあるミステリアスな作品なんですが、その過程に大変リアリティがあって、こういう事が現実にあってもちっともおかしくないという感じがありましたね。」「今ふうの面白い人物が書けているように思いました。細部もなかなかうまいですね。」
山口瞳 全候補 11 3点「今年の候補六人の中では、この人が一番、力があるように思いました。」「全体として、なんでこんなことを書くのかと、そういう思いもありまして、かなりの拒絶反応を抱きながら読みました。」
最終投票 全候補      
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他の候補作
佐々木譲 『エトロフ発緊急電』
上野瞭 『アリスの穴の中で』
伊集院静 『三年坂』
山田正紀 『ゐのした時空大サーカス』
泡坂妻夫 『蔭桔梗』
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上野瞭『アリスの穴の中で』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 全候補 37 3点「実際、こうして上野さんが小説にして下さったことによって、残念ながらやっぱり男が妊娠する小説は面白くないという貴重な実験結果を、われわれ同業者は得ることになりました。」「危ない方向へ思い切って足を踏み出せばいいと応援しながら読んでいるのですが、倫理とか常識とか、そういうところに、作者自ら話を閉じ込めてしまう。」
田辺聖子 全候補 50 1点「ほんと、肩が凝った(笑)。」「作者にユーモアの天賦がないとは思えないんだけれど、ちょっと計算違いではないでしょうか。」「一番不満なのは、男が子供を産むという画期的事業をなしとげて会社へ帰ってみると、もっと周りが変わるとか、本人が変わるとかしないといけないのに、ただ窓際族になっているという結末。」
野坂昭如 全候補 23 0点「男が妊娠したとなれば、かなり当人は深刻になるはずで、単に胎動がどうの、他人の目がどうのより、書かなきゃいけないことは別にいっぱいあるはずなんです。」「産道がないわけだから、いざ出産となれば、帝王切開せざるを得ない。こんなこと、はじめっからわかっているわけです。これひとつとっても、思いつき以上のことを、作者はやっていないですよ。」
藤沢周平 全候補 17 3点「気持ちの悪い小説でした。男が子供を産んで、性の境界点を超えるわけなんですが、それにどういう意味があるのか、さっぱりわからないですね。」
山口瞳 全候補 22 2点「一つは、こんなに夢を使ってはいけないんじゃないか。」「それから、男が妊娠するといった時の、滑稽な感じがほとんどないんですね。」「まったく拒絶反応だけです。」
最終投票 全候補      
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他の候補作
佐々木譲 『エトロフ発緊急電』
原田宗典 『スメル男』
伊集院静 『三年坂』
山田正紀 『ゐのした時空大サーカス』
泡坂妻夫 『蔭桔梗』
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伊集院静『三年坂』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 全候補 25 4点「文章の力に感心しました。それから、あんまり破綻がないんですね。全部が的に当っている。」「ただ、この短篇集に収められた各作品、パターンが似てるんですね。」
田辺聖子 全候補 14 2点「五篇とも、好感は持って読みました。」「これ、誰かに似ていると思ったら、どうも宮本輝さんの世界に似ているんですね。」「でも、ちょっとしみじみ、ほのぼのしすぎ。」「たしかにいいことはいいんだけれど、あまりにも完結しすぎた世界ですね。」
野坂昭如 全候補 8 0点「小説となると、向田邦子と宮本輝を一緒くたにして、少し薄めたような世界ですね。泣かせがうまい。併し、これはこうなって、こうなるんだなということが、わかりすぎる。」
藤沢周平 全候補 20 4点「全部がいいというわけではないんですが、文章なんか初々しくてね。(引用者中略)幾つになっても、初々しさはあっていいと思います。」「全体として、大変いい感じを受けました。」
山口瞳 全候補 20 3点「古いというのかなあ、安定感がありすぎるというのか、なんか、新派の芝居を見ているみたいで、平成版川口松太郎という感じなんですね。」「君の本音はどこにあるんだ、といつでも思ってしまう。」
最終投票 全候補      
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他の候補作
佐々木譲 『エトロフ発緊急電』
原田宗典 『スメル男』
上野瞭 『アリスの穴の中で』
山田正紀 『ゐのした時空大サーカス』
泡坂妻夫 『蔭桔梗』
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山田正紀『ゐのした時空大サーカス』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 全候補 30 3点「実際に読んでみると、すごくわかりにくい。あれ? あれ? あれ? というふうに、何回も読み返さないとつながってこない。作家の主観に重心がかかりすぎていて、読者と共有すべき客観部分が不足してるんです。」
田辺聖子 全候補 18 4点「ふだん、SFには詩情というものを感じないんですが、この作品は、なんとなくこちらの心の琴線に触れてくるところがありまして……。」「なんというか、あえかなケーキという感じの小説なんですね。その味、何かなと考えてみると、悠久というか、永遠というか、そんな時間の味なんですね。」
野坂昭如 全候補 19 0点「彼がこういう小説を書き始めたのはいいけれど、どうして、デジャ・ヴュを持ってきたり、主人公の昔の生活を、陰惨なものに書いてみたりするのか。」「これは、山本賞の対象作品ではないと思う。時間の迷子は特に珍らしくないと思うし。」「文章のほうでいっても、主観なのか客観なのか、よくわからないところがあるんですね。」
藤沢周平 全候補 33 3点「私が一番感心したのは、時間というものには、もともとセンチメンタルな要素があると思うんです。単純に言えば思い出に耽ったりというようなね。この小説には、そういう時間が持つ、良質な感傷があるような気がしました。」「しかし、(引用者中略)「空中ブランコ」から後は、どうもテーマを持ちきれなくなって、観念的に終わったんじゃないかという気がします。」
山口瞳 全候補 19 2点「これは僕、全然わかりませんでした。」「これね、僕、SFだと思っては読まなかったんです。今みなさんに言われてわかったんです。」「ですから、まったく資格はないんですが、やはり拒絶反応のほうから言って、仮に二点としておきます。」
最終投票 全候補      
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他の候補作
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原田宗典 『スメル男』
上野瞭 『アリスの穴の中で』
伊集院静 『三年坂』
泡坂妻夫 『蔭桔梗』
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泡坂妻夫『蔭桔梗』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 全候補 58 3点「小太刀の使い手といいますか、きちっと出来ていますね。」「とても好きな作家なんですが、この短篇集について言えば、各篇とも、ひっかけ方が弱いような気がするんです。」「今回は、どうも泡坂さんが大事にしている世界と、微妙なずれがあちこちで感じられるんですよ。」
田辺聖子 全候補 32 5点「とにかく、大人の読める小説ですね、これは。」「短篇というのは、日本の文壇ではいつも貶められて、長篇重視というか、鉄鋼業みたいな小説ばかり評価されるんですが、これ、充分、賞を差上げていいんじゃないかと思います。」
野坂昭如 全候補 41 5点「中の一篇、それぞれ独立させて読めば、つまり、小説雑誌の中に一篇だけ入っているとき読めば、どれも面白いと思うんです。」「いかにもおやりくださったという感じでね。しかし、全作品を通じてここまでだという印象がつよい。よく考えているけど、あげく印象が似通って。」
藤沢周平 全候補 36 5点「五を上げたいんだけれども、同工異曲、私もそこがひっかかりましてね。」「この作品集、いいなあ、名人芸だなあという、感心ばかり先走って、褒める言葉に困るんですよ。」「追随を許さない段階に到達したというか、泡坂さん独自の世界を完成したような気がします。」「むかしの泡坂さんの文章は、もっと癖がありましたね。それがこういう平明で味のある文章に変って来たということは、やはり注目すべきことではないでしょうか。」
山口瞳 全候補 41 3点「泡坂さんや伊集院さんといったタイプの作家は、ずしんとくるものを百枚ぐらい書いて、これでどうだと言ってくれないと、評価のしようがないんです。」「羨ましいんですよ、僕は。すごく好きなんです、泡坂さんの生き方が。作品としては、「簪」と「弱竹さんの字」と「十一月五日」、この三つがわりに好きですね。でも如何せん、これで受賞というのは無理でしょう。」
最終投票 全候補     1+1+2+3+3=10
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他の候補作
佐々木譲 『エトロフ発緊急電』
原田宗典 『スメル男』
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伊集院静 『三年坂』
山田正紀 『ゐのした時空大サーカス』
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