直木賞のすべて
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第96回

=受賞者=
逢坂 剛
常盤新平

=候補者=
早坂 暁
山崎光夫
赤羽 尭
小松重男
落合恵子


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 昭和61年/1986年下半期
 (昭和62年/1987年1月16日決定発表/『オール讀物』昭和62年/1987年4月号選評掲載)
選考委員  池波正太郎 山口瞳 渡辺淳一 村上元三 井上ひさし 藤沢周平 陳舜臣 黒岩重吾 五木寛之
選評総行数  44 60 52 54 70 59 55 56 83
評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
逢坂剛 『カディスの赤い星』 評言 17 9 19 10 23 10 15 14 8
常盤新平 『遠いアメリカ』 評言 22 27 27 2 28 17 8 11 3
早坂暁 『ダウンタウン・ヒーローズ』 評言 6 21 21 6 15 10 0 13 7
山崎光夫 「ジェンナーの遺言」 評言 0 0 0 6 4 7 9 7 5
赤羽尭 『脱出のパスポート』 評言 0 0 0 8 3 7 0 0 4
小松重男 「鰈の縁側」 評言 0 0 0 10 4 5 0 0 0
落合恵子 『アローン・アゲイン』 評言 7 10 0 5 4 7 22 0 40
                 
見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和62年/1987年4月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員池波正太郎×各候補作  見方・注意点
バランスのよかった二作授賞 総行数44 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
逢坂剛 全委員 17 「千何百枚もの長篇を一気に読ませてくれたし、その筆力と力強い構築は瑕瑾を吹き飛ばす勢いをもっていた。まさに直木賞のあたえどき、受けどきといってよい。」
常盤新平 全委員 22 「三十年前の日本の、東京の青春像を一組の男女に託して描いたわけだが、五十をこえた作者が、このテーマに、みずみずしい姿勢で立ち向ったのがよかった。」
早坂暁 全委員 6 「私は最後まで評価しなかったが最後まで残り、賞を争ったのだから、今後、持続して小説を書いてもらいたい。」
山崎光夫 全委員 0  
赤羽尭 全委員 0  
小松重男 全委員 0  
落合恵子 全委員 7 「五回目の候補作だったが、いかにせん、今回の小説はちから(原文傍点)が弱かったと私はおもう。落合さんの場合は「これぞ」という作品を候補にしていただきたい。」
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選考委員山口瞳×各候補作  見方・注意点
天の時、地の利 総行数60 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
逢坂剛 全委員 9 「冒険小説を読まない僕は、逢坂さんを論ずる資格がない。ただし、引きこまれるようにして読まされたのは逢坂さんに力量があるからだ。」
常盤新平 全委員 27 「昭和二十年代の終りから三十年代の初めにかけて、喫茶店ブームというのがあったが、そこで無為に過す青年という設定は、まさに天の時、地の利を得たと言うべきか。」「桃色のストロー・ハットの似合う丸顔の小柄な女性である恋人がいい。」「これが稀に見る美しい青春小説になっているのは、ここに常盤さんの万感の思いが籠められているからだ。」
早坂暁 全委員 21 「大衆小説は、まず面白くなければ話にならないというのが僕の持論であり、この点で(引用者中略)満票に近い票を集めるものと予測したが意外な結果に終った。とにかく面白すぎるくらいに面白くて、ゲラゲラ笑わせたり泣かせたりする。」「早坂ファンである僕としては、とても残念だ。」
山崎光夫 全委員 0  
赤羽尭 全委員 0  
小松重男 全委員 0  
落合恵子 全委員 10 「受賞しても少しも不思議ではない。」「西洋料理の名人の拵えたポテト・サラダである。今回は、不幸にして、サラダがビーフ・ステーキの副えものになってしまった。」
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池波正太郎
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選考委員渡辺淳一×各候補作  見方・注意点
新鮮なフィクションを 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
逢坂剛 全委員 19 「わたしは、いわゆる冒険小説なるものをあまり好きではないが、(引用者中略)構成力と文章力には感心した。」「欠点も含んでいる。しかしこれだけの長丁場をさほど飽きさせず書ききった、意欲とエネルギーは評価しなければならない。」
常盤新平 全委員 27 「たしかに初々しさが魅力だが、それをこえる小説としての手ごたえということになると、いささかもの足りない。」「正直いって、この作品が受賞なら、早坂氏の作品が受賞してもおかしくなかった。」「いま一つ積極的に推す気になれなかったのは、いずれも自伝的・エッセイ的要素が強く、しかるべき人が五十年以上も生きてくれば、この種のものを一本ぐらいは書けそうに思ったからである。」
早坂暁 全委員 21 「正直いって、この作品(引用者注:「遠いアメリカ」)が受賞なら、早坂氏の作品が受賞してもおかしくなかった。むしろ早坂氏のほうが、文章力やプロとしての小説をつくる技は上であろう。」「いま一つ積極的に推す気になれなかったのは、いずれも自伝的・エッセイ的要素が強く、しかるべき人が五十年以上も生きてくれば、この種のものを一本ぐらいは書けそうに思ったからである。」
山崎光夫 全委員 0  
赤羽尭 全委員 0  
小松重男 全委員 0  
落合恵子 全委員 0  
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選考委員村上元三×各候補作  見方・注意点
読みごたえ 総行数54 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
逢坂剛 全委員 10 「量的にも(引用者中略)読みごたえがあった。」「文学として見れば不満が残らないでもない。しかし面白い作品を待っているわたしとしては、この作品はよろこぶべきであろう。」
常盤新平 全委員 2 「歯ごたえを感じなかった」
早坂暁 全委員 6 「(引用者注:「遠いアメリカ」と)比べてみて早坂暁氏のほうを買ったが、作意があざとい、すれていると批評を聞くと、なるほどと思わざるを得なかった。早坂氏には、腰のすわった作品を望みたい。」
山崎光夫 全委員 6 「読みはじめて、これはおそろしい題材だな、と思ったが、期待は途中で消えてしまった。この作者は、もっと文章と会話を練る必要がある。」
赤羽尭 全委員 8 「読み終ってがっかりした。筆力も持っている人なのだから、その力を最後まで持続できるよう、考える必要がある。」
小松重男 全委員 10 「小説を書くときの態度に疑問がある。ここに出てくる将軍も家来たちも作りすぎであり、後半の刃傷と話が二つに分れている。」「もう一ぺん新人に立ち戻って、次々に書くのを待ちたい。それだけの技量を持っているのだから。」
落合恵子 全委員 5 「わたしは落合恵子氏のいい読者ではないので、申訳がないとは思うものの、いまのところ落合氏の作品は直木賞のものではない。」
  「五十枚くらいの短篇と、一千枚を越す長篇を同時に並べて評をするのは矛盾していないか、という疑問は前々からある。」
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選考委員井上ひさし×各候補作  見方・注意点
一頭地抜けた三作 総行数70 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
逢坂剛 全委員 23 「日本編におけるユーモアは稀代のものすごさ、これにはただただ舌を巻くしかない。」「スペイン編では、作品という名の小宇宙を統べるルールが崩れて惨々たる展開になるが、それでもまだたっぷりお釣りがくる。」
常盤新平 全委員 28 「一見、素気ない作品のように見えるが、各所に仕組まれた小説的仕掛けは特筆に値いする。」「登場人物たちを描出する手際もあざやかだ。たとえば父親。ここ十年来の日本の小説にあらわれた父親像の、これは白眉である。」
早坂暁 全委員 15 「無類のおもしろさ、しかし芯になにか饐えた匂いを発するものがある。」「読了後の読者に遺す置土産のすくないことが気にかかる。」
山崎光夫 全委員 4 「題材の大きさに引き摺られ文体にいつもの艶が失せた。」
赤羽尭 全委員 3 「あまりにもカッチリと出来上りすぎていて息苦しい。」
小松重男 全委員 4 「前半は諧謔にあふれ快調である。がしかし後半の悲劇がすこし大きすぎ、重すぎた。」
落合恵子 全委員 4 「最初の作は感動的だけれど、男が登場すると筆が甘くなる。」
  「三作授賞(引用者注:「遠いアメリカ」「カディスの赤い星」「ダウンタウン・ヒーローズ」)ということでもいいと思って選考会に出かけたのである。」
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選考委員藤沢周平×各候補作  見方・注意点
二作受賞を喜ぶ 総行数59 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
逢坂剛 全委員 10 「「百舌の叫ぶ夜」にひきつづいて、この作家のもはや安定した力量と呼んでいい筆力を示した作品だった。これだけの長い物語を倦かせずに読ませる構成力と達意の文章は、もうプロ作家のものである。」
常盤新平 全委員 17 「ときめきと不安が混在する青春なるもの、ことに昭和三十年代初期という時代の青春を見事に描き出した作品だった。」「小説のとどのつまりは文章によって成立すること、丁寧でつつしみ深い文章がどういうことを表現出来るかを示した作品でもあった。」
早坂暁 全委員 10 「おもしろさでは候補作中群を抜いていた。」「虚実相まじわる物語の虚の部分に、一瞬筆が流れて嘘が見え透く部分があり、またやはり文章が粗かった。」
山崎光夫 全委員 7 「緊迫感のある書き出しから最後にウイルスを破壊するまで一気に読ませる。しかし中盤で話がややごたつき、また時どき紋切り型の表現があるのが惜しまれる。」
赤羽尭 全委員 7 「先端技術とか経済戦略とかいうものが高度な機密情報となり得る現代を描いて、おもしろい作品だった。ただし翻訳文を読むような会話の生硬さは一考を要するだろう。」
小松重男 全委員 5 「話をしめくくる第三章が平凡で、また鷹狩は考証不足だが、こういう素材の発見はこの作者らしい手柄か。」
落合恵子 全委員 7 「冒頭のディスク・ジョッキーを描いた作品は出色の出来だったが、ほかの三篇が、この作家の安定した力を感じさせはするものの、話が風俗に流れすぎた。」
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選考委員陳舜臣×各候補作  見方・注意点
新しい小説を 総行数55 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
逢坂剛 全委員 15 「千枚以上の長篇にもかかわらず、構成の乱れをみせず、作品の世界に読者をひきこむ力を持続させた。ミステリーや冒険小説で直木賞を受賞するのは難しいという声がよく耳にはいる。そこに壁の如きものがあるという人もいる。逢坂氏の受賞は、そんな伝説の壁がもはや存在しないことを証明したといえよう。」
常盤新平 全委員 8 「すぐれた青春小説であり、昭和三十年代前半のムードをみごとに描いている。ただ東西のミステリーを読破した常盤新平氏が、なぜ骨組みのしっかりしたミステリーをひっさげて登場しないのか、それだけが不満である。」
早坂暁 全委員 0  
山崎光夫 全委員 9 「背景が際立って、その前にあらわれる人間の存在感が薄くかんじられた。作者はテーマに惚れこみすぎたのではあるまいか。」
赤羽尭 全委員 0  
小松重男 全委員 0  
落合恵子 全委員 22 「落合恵子氏のように新しい小説の担い手になるべき作家は、つねに自分の作品が警戒心をもって読まれることを覚悟しなければならない。」「前回の候補作にくらべて肩の力がとれているが、贅肉をそいだという見方と、軽くなったという見方が相半ばしたようだ。現代風俗と人間の深奥の愛憎とを合わせ鏡にして、小宇宙をうつし出す方法はけっしてまちがっていない。」
  「今回は量的にも質的にもレベルの高い作品がそろっていたようにおもう。」
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選考委員黒岩重吾×各候補作  見方・注意点
感銘度と面白さ 総行数56 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
逢坂剛 全委員 14 「千三百枚の長篇だが乱れが殆ど感じられないのには感心した。ただ人間描写が甘い。」「氏のこれからの課題は人間に対する凝視力を深めることにあるのではないか。今少し読後の感銘が欲しい。」
常盤新平 全委員 11 「味のある文章で青春の悩みと希望を見事に描き切り当時の風俗を彷彿とさせる。」「この小説の魅力はたんなる青春小説ではなくアメリカを遠い国とする「時代」が息づいているところにある。」
早坂暁 全委員 13 「今回の候補作の中で最も面白く読んだ。読み終ってほろりとさせるものがある。一見自叙伝風だが内容の拡がり方を見て半分はフィクションと視た。」「意外に点が入らなかったのは残念だ。」
山崎光夫 全委員 7 「私は一気に読んだ。面白かったが主人公も、部長、看護婦も同じような人物に見える。」「この作品がもつ暖かさは買いたい。」
赤羽尭 全委員 0  
小松重男 全委員 0  
落合恵子 全委員 0  
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他の選考委員
池波正太郎
山口瞳
渡辺淳一
村上元三
井上ひさし
藤沢周平
陳舜臣
五木寛之
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選考委員五木寛之×各候補作  見方・注意点
実作者の及び腰 総行数83 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
逢坂剛 全委員 8 「〈カディスの赤い星〉の逢坂氏の筆力と、落合氏の作家的力量を合わせて二作受賞というところだろうか、とも考えていた。」
常盤新平 全委員 3  
早坂暁 全委員 7 「現役の作家としてすでに一家をなしている早坂暁氏の候補作についてはウォーミングアップのキャッチボールを、あたかも正念場での力投のようにあれこれ言うわけにはいかない。」
山崎光夫 全委員 5 「出だしの迫力(引用者中略)も、決して前記二作(引用者注:「アローン・アゲイン」「カディスの赤い星」)と格段の差のあるものではなく、」
赤羽尭 全委員 4 「骨太な構成力なども、決して前記二作(引用者注:「アローン・アゲイン」「カディスの赤い星」)と格段の差のあるものではなく、」
小松重男 全委員 0  
落合恵子 全委員 40 「〈A列車で行こう〉のときとくらべて、作品が少し痩せてきたような気もしないでもない。それにしても五回までも水準以上の作品をコンスタントに発表しつづけた才能は、なみなみならぬものがあると思う。」「(引用者注:「カディスの赤い星」と)落合氏の作家的力量を合わせて二作受賞というところだろうか、とも考えていた。」
  「今回はどの作品が受賞しても、また受賞作なしに決定しても、反対はしないつもりで選考の席にのぞんだ。」
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他の選考委員
池波正太郎
山口瞳
渡辺淳一
村上元三
井上ひさし
藤沢周平
陳舜臣
黒岩重吾
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逢坂剛『カディスの赤い星』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 全候補 17 「千何百枚もの長篇を一気に読ませてくれたし、その筆力と力強い構築は瑕瑾を吹き飛ばす勢いをもっていた。まさに直木賞のあたえどき、受けどきといってよい。」
山口瞳 全候補 9 「冒険小説を読まない僕は、逢坂さんを論ずる資格がない。ただし、引きこまれるようにして読まされたのは逢坂さんに力量があるからだ。」
渡辺淳一 全候補 19 「わたしは、いわゆる冒険小説なるものをあまり好きではないが、(引用者中略)構成力と文章力には感心した。」「欠点も含んでいる。しかしこれだけの長丁場をさほど飽きさせず書ききった、意欲とエネルギーは評価しなければならない。」
村上元三 全候補 10 「量的にも(引用者中略)読みごたえがあった。」「文学として見れば不満が残らないでもない。しかし面白い作品を待っているわたしとしては、この作品はよろこぶべきであろう。」
井上ひさし 全候補 23 「日本編におけるユーモアは稀代のものすごさ、これにはただただ舌を巻くしかない。」「スペイン編では、作品という名の小宇宙を統べるルールが崩れて惨々たる展開になるが、それでもまだたっぷりお釣りがくる。」
藤沢周平 全候補 10 「「百舌の叫ぶ夜」にひきつづいて、この作家のもはや安定した力量と呼んでいい筆力を示した作品だった。これだけの長い物語を倦かせずに読ませる構成力と達意の文章は、もうプロ作家のものである。」
陳舜臣 全候補 15 「千枚以上の長篇にもかかわらず、構成の乱れをみせず、作品の世界に読者をひきこむ力を持続させた。ミステリーや冒険小説で直木賞を受賞するのは難しいという声がよく耳にはいる。そこに壁の如きものがあるという人もいる。逢坂氏の受賞は、そんな伝説の壁がもはや存在しないことを証明したといえよう。」
黒岩重吾 全候補 14 「千三百枚の長篇だが乱れが殆ど感じられないのには感心した。ただ人間描写が甘い。」「氏のこれからの課題は人間に対する凝視力を深めることにあるのではないか。今少し読後の感銘が欲しい。」
五木寛之 全候補 8 「〈カディスの赤い星〉の逢坂氏の筆力と、落合氏の作家的力量を合わせて二作受賞というところだろうか、とも考えていた。」
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他の候補作
常盤新平 『遠いアメリカ』
早坂暁 『ダウンタウン・ヒーローズ』
山崎光夫 「ジェンナーの遺言」
赤羽尭 『脱出のパスポート』
小松重男 「鰈の縁側」
落合恵子 『アローン・アゲイン』
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常盤新平『遠いアメリカ』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 全候補 22 「三十年前の日本の、東京の青春像を一組の男女に託して描いたわけだが、五十をこえた作者が、このテーマに、みずみずしい姿勢で立ち向ったのがよかった。」
山口瞳 全候補 27 「昭和二十年代の終りから三十年代の初めにかけて、喫茶店ブームというのがあったが、そこで無為に過す青年という設定は、まさに天の時、地の利を得たと言うべきか。」「桃色のストロー・ハットの似合う丸顔の小柄な女性である恋人がいい。」「これが稀に見る美しい青春小説になっているのは、ここに常盤さんの万感の思いが籠められているからだ。」
渡辺淳一 全候補 27 「たしかに初々しさが魅力だが、それをこえる小説としての手ごたえということになると、いささかもの足りない。」「正直いって、この作品が受賞なら、早坂氏の作品が受賞してもおかしくなかった。」「いま一つ積極的に推す気になれなかったのは、いずれも自伝的・エッセイ的要素が強く、しかるべき人が五十年以上も生きてくれば、この種のものを一本ぐらいは書けそうに思ったからである。」
村上元三 全候補 2 「歯ごたえを感じなかった」
井上ひさし 全候補 28 「一見、素気ない作品のように見えるが、各所に仕組まれた小説的仕掛けは特筆に値いする。」「登場人物たちを描出する手際もあざやかだ。たとえば父親。ここ十年来の日本の小説にあらわれた父親像の、これは白眉である。」
藤沢周平 全候補 17 「ときめきと不安が混在する青春なるもの、ことに昭和三十年代初期という時代の青春を見事に描き出した作品だった。」「小説のとどのつまりは文章によって成立すること、丁寧でつつしみ深い文章がどういうことを表現出来るかを示した作品でもあった。」
陳舜臣 全候補 8 「すぐれた青春小説であり、昭和三十年代前半のムードをみごとに描いている。ただ東西のミステリーを読破した常盤新平氏が、なぜ骨組みのしっかりしたミステリーをひっさげて登場しないのか、それだけが不満である。」
黒岩重吾 全候補 11 「味のある文章で青春の悩みと希望を見事に描き切り当時の風俗を彷彿とさせる。」「この小説の魅力はたんなる青春小説ではなくアメリカを遠い国とする「時代」が息づいているところにある。」
五木寛之 全候補 3  
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他の候補作
逢坂剛 『カディスの赤い星』
早坂暁 『ダウンタウン・ヒーローズ』
山崎光夫 「ジェンナーの遺言」
赤羽尭 『脱出のパスポート』
小松重男 「鰈の縁側」
落合恵子 『アローン・アゲイン』
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早坂暁『ダウンタウン・ヒーローズ』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 全候補 6 「私は最後まで評価しなかったが最後まで残り、賞を争ったのだから、今後、持続して小説を書いてもらいたい。」
山口瞳 全候補 21 「大衆小説は、まず面白くなければ話にならないというのが僕の持論であり、この点で(引用者中略)満票に近い票を集めるものと予測したが意外な結果に終った。とにかく面白すぎるくらいに面白くて、ゲラゲラ笑わせたり泣かせたりする。」「早坂ファンである僕としては、とても残念だ。」
渡辺淳一 全候補 21 「正直いって、この作品(引用者注:「遠いアメリカ」)が受賞なら、早坂氏の作品が受賞してもおかしくなかった。むしろ早坂氏のほうが、文章力やプロとしての小説をつくる技は上であろう。」「いま一つ積極的に推す気になれなかったのは、いずれも自伝的・エッセイ的要素が強く、しかるべき人が五十年以上も生きてくれば、この種のものを一本ぐらいは書けそうに思ったからである。」
村上元三 全候補 6 「(引用者注:「遠いアメリカ」と)比べてみて早坂暁氏のほうを買ったが、作意があざとい、すれていると批評を聞くと、なるほどと思わざるを得なかった。早坂氏には、腰のすわった作品を望みたい。」
井上ひさし 全候補 15 「無類のおもしろさ、しかし芯になにか饐えた匂いを発するものがある。」「読了後の読者に遺す置土産のすくないことが気にかかる。」
藤沢周平 全候補 10 「おもしろさでは候補作中群を抜いていた。」「虚実相まじわる物語の虚の部分に、一瞬筆が流れて嘘が見え透く部分があり、またやはり文章が粗かった。」
陳舜臣 全候補 0  
黒岩重吾 全候補 13 「今回の候補作の中で最も面白く読んだ。読み終ってほろりとさせるものがある。一見自叙伝風だが内容の拡がり方を見て半分はフィクションと視た。」「意外に点が入らなかったのは残念だ。」
五木寛之 全候補 7 「現役の作家としてすでに一家をなしている早坂暁氏の候補作についてはウォーミングアップのキャッチボールを、あたかも正念場での力投のようにあれこれ言うわけにはいかない。」
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他の候補作
逢坂剛 『カディスの赤い星』
常盤新平 『遠いアメリカ』
山崎光夫 「ジェンナーの遺言」
赤羽尭 『脱出のパスポート』
小松重男 「鰈の縁側」
落合恵子 『アローン・アゲイン』
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山崎光夫「ジェンナーの遺言」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 全候補 0  
山口瞳 全候補 0  
渡辺淳一 全候補 0  
村上元三 全候補 6 「読みはじめて、これはおそろしい題材だな、と思ったが、期待は途中で消えてしまった。この作者は、もっと文章と会話を練る必要がある。」
井上ひさし 全候補 4 「題材の大きさに引き摺られ文体にいつもの艶が失せた。」
藤沢周平 全候補 7 「緊迫感のある書き出しから最後にウイルスを破壊するまで一気に読ませる。しかし中盤で話がややごたつき、また時どき紋切り型の表現があるのが惜しまれる。」
陳舜臣 全候補 9 「背景が際立って、その前にあらわれる人間の存在感が薄くかんじられた。作者はテーマに惚れこみすぎたのではあるまいか。」
黒岩重吾 全候補 7 「私は一気に読んだ。面白かったが主人公も、部長、看護婦も同じような人物に見える。」「この作品がもつ暖かさは買いたい。」
五木寛之 全候補 5 「出だしの迫力(引用者中略)も、決して前記二作(引用者注:「アローン・アゲイン」「カディスの赤い星」)と格段の差のあるものではなく、」
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他の候補作
逢坂剛 『カディスの赤い星』
常盤新平 『遠いアメリカ』
早坂暁 『ダウンタウン・ヒーローズ』
赤羽尭 『脱出のパスポート』
小松重男 「鰈の縁側」
落合恵子 『アローン・アゲイン』
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赤羽尭『脱出のパスポート』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 全候補 0  
山口瞳 全候補 0  
渡辺淳一 全候補 0  
村上元三 全候補 8 「読み終ってがっかりした。筆力も持っている人なのだから、その力を最後まで持続できるよう、考える必要がある。」
井上ひさし 全候補 3 「あまりにもカッチリと出来上りすぎていて息苦しい。」
藤沢周平 全候補 7 「先端技術とか経済戦略とかいうものが高度な機密情報となり得る現代を描いて、おもしろい作品だった。ただし翻訳文を読むような会話の生硬さは一考を要するだろう。」
陳舜臣 全候補 0  
黒岩重吾 全候補 0  
五木寛之 全候補 4 「骨太な構成力なども、決して前記二作(引用者注:「アローン・アゲイン」「カディスの赤い星」)と格段の差のあるものではなく、」
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他の候補作
逢坂剛 『カディスの赤い星』
常盤新平 『遠いアメリカ』
早坂暁 『ダウンタウン・ヒーローズ』
山崎光夫 「ジェンナーの遺言」
小松重男 「鰈の縁側」
落合恵子 『アローン・アゲイン』
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小松重男「鰈の縁側」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 全候補 0  
山口瞳 全候補 0  
渡辺淳一 全候補 0  
村上元三 全候補 10 「小説を書くときの態度に疑問がある。ここに出てくる将軍も家来たちも作りすぎであり、後半の刃傷と話が二つに分れている。」「もう一ぺん新人に立ち戻って、次々に書くのを待ちたい。それだけの技量を持っているのだから。」
井上ひさし 全候補 4 「前半は諧謔にあふれ快調である。がしかし後半の悲劇がすこし大きすぎ、重すぎた。」
藤沢周平 全候補 5 「話をしめくくる第三章が平凡で、また鷹狩は考証不足だが、こういう素材の発見はこの作者らしい手柄か。」
陳舜臣 全候補 0  
黒岩重吾 全候補 0  
五木寛之 全候補 0  
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他の候補作
逢坂剛 『カディスの赤い星』
常盤新平 『遠いアメリカ』
早坂暁 『ダウンタウン・ヒーローズ』
山崎光夫 「ジェンナーの遺言」
赤羽尭 『脱出のパスポート』
落合恵子 『アローン・アゲイン』
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落合恵子『アローン・アゲイン』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 全候補 7 「五回目の候補作だったが、いかにせん、今回の小説はちから(原文傍点)が弱かったと私はおもう。落合さんの場合は「これぞ」という作品を候補にしていただきたい。」
山口瞳 全候補 10 「受賞しても少しも不思議ではない。」「西洋料理の名人の拵えたポテト・サラダである。今回は、不幸にして、サラダがビーフ・ステーキの副えものになってしまった。」
渡辺淳一 全候補 0  
村上元三 全候補 5 「わたしは落合恵子氏のいい読者ではないので、申訳がないとは思うものの、いまのところ落合氏の作品は直木賞のものではない。」
井上ひさし 全候補 4 「最初の作は感動的だけれど、男が登場すると筆が甘くなる。」
藤沢周平 全候補 7 「冒頭のディスク・ジョッキーを描いた作品は出色の出来だったが、ほかの三篇が、この作家の安定した力を感じさせはするものの、話が風俗に流れすぎた。」
陳舜臣 全候補 22 「落合恵子氏のように新しい小説の担い手になるべき作家は、つねに自分の作品が警戒心をもって読まれることを覚悟しなければならない。」「前回の候補作にくらべて肩の力がとれているが、贅肉をそいだという見方と、軽くなったという見方が相半ばしたようだ。現代風俗と人間の深奥の愛憎とを合わせ鏡にして、小宇宙をうつし出す方法はけっしてまちがっていない。」
黒岩重吾 全候補 0  
五木寛之 全候補 40 「〈A列車で行こう〉のときとくらべて、作品が少し痩せてきたような気もしないでもない。それにしても五回までも水準以上の作品をコンスタントに発表しつづけた才能は、なみなみならぬものがあると思う。」「(引用者注:「カディスの赤い星」と)落合氏の作家的力量を合わせて二作受賞というところだろうか、とも考えていた。」
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他の候補作
逢坂剛 『カディスの赤い星』
常盤新平 『遠いアメリカ』
早坂暁 『ダウンタウン・ヒーローズ』
山崎光夫 「ジェンナーの遺言」
赤羽尭 『脱出のパスポート』
小松重男 「鰈の縁側」
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