直木賞のすべて
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第90回

=受賞者=
神吉拓郎
高橋 治

=候補者=
連城三紀彦
西木正明
北方謙三
樋口修吉
赤瀬川 隼


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 昭和58年/1983年下半期
 (昭和59年/1984年1月17日決定発表/『オール讀物』昭和59年/1984年4月号選評掲載)
選考委員  池波正太郎 源氏鶏太 村上元三 五木寛之 水上勉 山口瞳 井上ひさし
選評総行数  43 54 56 88 58 58 90
評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
神吉拓郎 『私生活』 評言 14 8 12 34 20 23 15
高橋治 「秘伝」 評言 17 11 14 34 20 18 13
連城三紀彦 『宵待草夜情』 評言 0 8 5 5 12 6 11
西木正明 「夜の運河」 評言 0 3 6 5 0 3 6
北方謙三 『友よ、静かに瞑れ』 評言 14 8 12 11 5 6 19
樋口修吉 『ジェームス山の李蘭』 評言 0 5 5 4 0 5 10
赤瀬川隼 「潮もかなひぬ」 評言 0 5 5 13 4 6 13
             
見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和59年/1984年4月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員池波正太郎×各候補作  見方・注意点
多彩な作品群 総行数43 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
神吉拓郎 全委員 14 「神吉拓郎〔私生活〕一本にしぼって、選考会へ出た」「掌篇のテクニックを振りしぼって丹念に書いた十七篇が、こうして〔私生活〕という、よき題名のもとに結実すると、相当の重量感があり、現代の壮・中年層の私生活(原文傍点)が、あざやかに切りとられている。」
高橋治 全委員 17 「ようやく、小説の構築と文章になってきて、これまでの候補作にくらべると見ちがえるばかりだが、この素材とテーマなら、二百枚の必要はない。」「魚釣りの描写は、ちからがこもってはいても長すぎ(原文傍点)て、二人の名人の描出とバランスがとれなくなってしまった。」
連城三紀彦 全委員 0  
西木正明 全委員 0  
北方謙三 全委員 14 「これまでの諸作にくらべて状況、人物の描写がスムーズに頭へ入ってくるようになったが、主人公に作者がおぼれすぎた。」「クライマックス、ラスト・シーン共に、もう一つ、工夫がほしい。」「これからの北方さんには、ハード・ボイルドにこだわらず、おもしろい小説を書いてもらいたい。」
樋口修吉 全委員 0  
赤瀬川隼 全委員 0  
  「今回は、大体において、多彩に粒がそろっていて、心強い感じがした。」
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他の選考委員
源氏鶏太
村上元三
五木寛之
水上勉
山口瞳
井上ひさし
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選考委員源氏鶏太×各候補作  見方・注意点
豊作 総行数54 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
神吉拓郎 全委員 8 「玉石混淆の嫌いもないではないが、それぞれ人生の一断面を鋭どく抉ぐっていて、各人物がよく活かされている。文章の省略が利いていて、それらが一層この作品集の効果をあげている。」
高橋治 全委員 11 「やや力み過ぎの感がないではなかったが、(引用者中略)文章にも張りがあり、申し分のない作品となっている。」
連城三紀彦 全委員 8 「女の魔性とでもいうべきものを見事に描き上げている。どの作品にもそれぞれの味わいがあって申し分がなかったし、作者の力量の程を感じさせたのだが、他の委員の賛成が得られなかった。」
西木正明 全委員 3 「前に候補作となった「オホーツク諜報船」に比較すると落ちる。」
北方謙三 全委員 8 「文句なしに面白かった。やや荒いタッチで一気に読ませる。」「しかし、何故、坂口が下山に殺されなければならないかの説明が十分でないところが惜しまれる。」
樋口修吉 全委員 5 「前半が面白く、後半になるとそれが落ちた。」
赤瀬川隼 全委員 5 「万葉集と朝鮮語の関係についての説明が果して本当なのかとの疑問を最後まで拭い得なかった。」
  「今回は豊作だと思った。」「私は、二作を合わせて一本にしたとは思っていない。二作ともに捨て難い味があった。」
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他の選考委員
池波正太郎
村上元三
五木寛之
水上勉
山口瞳
井上ひさし
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選考委員村上元三×各候補作  見方・注意点
二作を推す 総行数56 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
神吉拓郎 全委員 12 「どれも読みやすいし、軽いものもあり、読後にずっしりしたものが残るものもあり、この作者は凡手ではない。長篇を書いても、しっかりした作品を読ませてくれるだろう。」
高橋治 全委員 14 「魚の種類などには全くうといわたしも、ぐんぐん引きつけられた。」「最後に百五十キロもの巨魚の正体を見せるあたりに、ちょっと不満が残った。しかし、前作の「地雷」より、はるかにすぐれている。直木賞にふさわしい作品と言っていい。」
連城三紀彦 全委員 5 「自分の文章に酔いすぎている。その割に、読者に訴える力は弱い。せっかくの才能を、大切にしてほしい。」
西木正明 全委員 6 「読みはじめてすぐ、話の中味が割れてしまう。文章をもっと練ってほしい。せめて最後に救いがあったので、ほっとしたが、この材料はもう古い。」
北方謙三 全委員 12 「読み終って落胆した。最後に坂口が、なぜ下山に射たれるのか、説明が足りない。」「ハードボイルド派というようなレッテルを張られて、この作者は自分から狭いところへ入り込んでいるのではなかろうか。」
樋口修吉 全委員 5 「面白い材料なのに、手を拡げすぎて、何を書きたかったのか、読後感が散漫になった。才筆なのに、惜しい。」
赤瀬川隼 全委員 5 「万葉仮名をハングルに直すと、こうも意味が変るという点に、もっと説得力のある立証をしてもらいたかった。」
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他の選考委員
池波正太郎
源氏鶏太
五木寛之
水上勉
山口瞳
井上ひさし
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選考委員五木寛之×各候補作  見方・注意点
それぞれに魅力あり 総行数88 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
神吉拓郎 全委員 34 「二作(引用者注:「私生活」と「友よ、静かに瞑れ」)を受賞作として推したいと考えて選考会にのぞんだ。」「これはきわどい小説である。前作の「ブラックバス」よりも気難しくなく(原文傍点)なった部分だけ俗に近づいており、そのきわどい警戒水位のすれすれで踏みこたえたところが、この作家の手腕だろう。」
高橋治 全委員 34 「前に候補になった「地雷」とは、がらりと変った作風の力作である。」「人間の業の象徴としての怪魚であるから、原寸大で目に見えてしまうより、遂に得体の知れない幻の生きものとして海中にひそませておきたい思いもあった。そこを描き切れば、この小説はひとつの神話的な世界にまで高まったかもしれない。」
連城三紀彦 全委員 5 「すでに読んだもののほうに水準の高い作品があって、それが影響したせいか、今一歩の感をうけた。」
西木正明 全委員 5 「すでに読んだもののほうに水準の高い作品があって、それが影響したせいか、今一歩の感をうけた。」
北方謙三 全委員 11 「二作(引用者注:「私生活」と「友よ、静かに瞑れ」)を受賞作として推したいと考えて選考会にのぞんだ。」「まだ充分に余力のある人だし、有無を言わさぬ作品をひっさげて再挑戦するほうが御本人も納得がいくだろう。」
樋口修吉 全委員 4 「クセの強さが魅力である。次作を期待したい。」
赤瀬川隼 全委員 13 「口惜しい小説だった。私はもともとこういう発想が大好きなたちであるから、折角の物語を自分ならこう書いたのに、と残念に思ったりもした。」「サンスクリットで万葉古語を読むという本を読んだ直後だったので、ことに興味ぶかく読んだ。」
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他の選考委員
池波正太郎
源氏鶏太
村上元三
水上勉
山口瞳
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選考委員水上勉×各候補作  見方・注意点
それぞれの世界 総行数58 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
神吉拓郎 全委員 20 「切れ味のいい作品、そうでないのもあったが、わずか十八枚で締めあげる職人芸の醍醐味である。」「都会にくらす庶民の哀愁。日常を些細に描きとめて、心にくい世界だ。」「借りものでない心因の所産で、「ブラックバス」以来、こつこつと彫りこんできた手練を感じさせた。」
高橋治 全委員 20 「ふたつわずかな註文が生じた。題名にひねりが足りない。それと最後に出てくる深海の巨魚の描写が少しあっけない。」「それにしても、材料がよい。取り組み方も誠実で方言に苦心している。」「「絢爛たる影絵」から、ここに辿りついた氏の小説づくりの真率さに文句はない。」
連城三紀彦 全委員 12 「無理な筋はこびが、骨になって刺さった。」「妖しさがあって魅かれはするが、うんと云わせる説得性に欠ける。」「じっくり女性描写をやってもらいたいものだ。筋はこびより人間の面白さにである。悲しみは自然と出よう。腕のある人だから。」
西木正明 全委員 0  
北方謙三 全委員 5 「筆勢に圧倒された。が、相手がチンピラすぎた。大臣級の悪者がいなけりゃ、ひとり狼のつよさもバランスがとれまい。」
樋口修吉 全委員 0  
赤瀬川隼 全委員 4 「前回のあのみずみずしさが欠けた。この人には、ずばぬけた作品がうまれる日は近かろう、と思う。」
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他の選考委員
池波正太郎
源氏鶏太
村上元三
五木寛之
山口瞳
井上ひさし
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選考委員山口瞳×各候補作  見方・注意点
やや大安売の感 総行数58 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
神吉拓郎 全委員 23 「私の尊敬する作家で、雑誌連載中も楽しく読んだ。こういう短篇連作は、二篇か三篇、ズシンとくる、もしくはジンとくるものがあればいいと思っているが、神吉さんの資質の生かされた作品があるとは思われなかった。軽い。」「前回候補の「ブラックバス」(引用者中略)がこの連作に含まれていると仮定して受賞に納得した。」
高橋治 全委員 18 「二人の狙う巨魚に魅力がない。それと今日性に欠ける憾みが残ったが、毎回違った題材、異なるテーマで力作を書く気合に打たれた。」「(引用者注:授賞は)力量のある作家の将来性に賭けるという意味あいが濃い。」
連城三紀彦 全委員 6 「「昭和枯れすすき」をむりやりミステリーに仕上げたという印象で説明過多。ミステリーを捨てる時がきているのではないか。」
西木正明 全委員 3 「滑稽も哀れもある好短篇であるが焦点が定まっていない。」
北方謙三 全委員 6 「文句なしに面白いが、これは不良少年の自慢話であって目が小説家の目になっていない。」
樋口修吉 全委員 5 「間のいい文章を書く人だ。今度の作品は、どの人物も同じ調子で喋るのが気になるのと、結末がよくわからぬという致命的な難があった。」
赤瀬川隼 全委員 6 「多津子という女性に艶がない。しかし、なんとも好感の持てる作家であって、このまま進めば必ず壁を突き破るはずだと信じている。」
  「今回は、受賞作ナシか高橋・神吉二作受賞を予測していたが、前者では遺憾、後者ではやや大安売だと思い大変に困った。」
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他の選考委員
池波正太郎
源氏鶏太
村上元三
五木寛之
水上勉
井上ひさし
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選考委員井上ひさし×各候補作  見方・注意点
選評 総行数90 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
神吉拓郎 全委員 15 「そういう日常(引用者注:よく吟味された日常)の積み重ねによって培われた趣味が、これらの数篇を作者に書かせたのである。ただし十七篇全部を見わたすと凸凹ありすぎる。たとえば「警戒水位」(凸)と「季節労働者」(凹)とが同じ作者によるものとは、ほとんど信じがたい。」
高橋治 全委員 13 「物語はパターン通りに進行するが、それが読む者には非常に快いのである。パターン通り、定石通りの物語が、言葉を信じさえすれば(原文傍点)、骨太な神話になることを作者はよく知っていた。」「今回はこれだと思いながら、わたしは会場へ向ったのだった。」
連城三紀彦 全委員 11 「心理の盲点を衝いたトリックや文章でしか実現できない比喩や意味と筋(つまり物語)の屋台崩しに、毎回、唸らされる。ただし次第に煩瑣な説明の量がふえてきており(引用者中略)意味と筋に濁りが生じてきている。」
西木正明 全委員 6 「〈日本人が東南アジアに生みつけてしまったものを、当の日本人が拒否してしまう〉という皮肉な構造に、作者の眼が光っている。」
北方謙三 全委員 19 「この作者のこれまでの武器がすべて揃えられている。だが、今回は、主人公の、死闘を挑むべき敵が弱小すぎた。」「この作者の主人公には強大な敵こそよく似合う。さもなければ、主人公の方がすこし弱くなるか、そのどちらかだろう。」
樋口修吉 全委員 10 「文章によって読者の想像をかき立たせる力がある。ただし推理小説を予想させるプロローグは誤算だったのではないか。内容は痛快な青春悪漢小説と大人の純愛小説なので、プロローグで刷り込まれた期待は、ついに永遠に宙吊りになったままである。」
赤瀬川隼 全委員 13 「今回の題材は、この枚数で支えるには巨きすぎたかもしれない。そこで作者の美点がそれぞれ幾分かずつ損われてしまったのではないか。とにかくこれは凄い題材ではある。」
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他の選考委員
池波正太郎
源氏鶏太
村上元三
五木寛之
水上勉
山口瞳
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神吉拓郎『私生活』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 全候補 14 「神吉拓郎〔私生活〕一本にしぼって、選考会へ出た」「掌篇のテクニックを振りしぼって丹念に書いた十七篇が、こうして〔私生活〕という、よき題名のもとに結実すると、相当の重量感があり、現代の壮・中年層の私生活(原文傍点)が、あざやかに切りとられている。」
源氏鶏太 全候補 8 「玉石混淆の嫌いもないではないが、それぞれ人生の一断面を鋭どく抉ぐっていて、各人物がよく活かされている。文章の省略が利いていて、それらが一層この作品集の効果をあげている。」
村上元三 全候補 12 「どれも読みやすいし、軽いものもあり、読後にずっしりしたものが残るものもあり、この作者は凡手ではない。長篇を書いても、しっかりした作品を読ませてくれるだろう。」
五木寛之 全候補 34 「二作(引用者注:「私生活」と「友よ、静かに瞑れ」)を受賞作として推したいと考えて選考会にのぞんだ。」「これはきわどい小説である。前作の「ブラックバス」よりも気難しくなく(原文傍点)なった部分だけ俗に近づいており、そのきわどい警戒水位のすれすれで踏みこたえたところが、この作家の手腕だろう。」
水上勉 全候補 20 「切れ味のいい作品、そうでないのもあったが、わずか十八枚で締めあげる職人芸の醍醐味である。」「都会にくらす庶民の哀愁。日常を些細に描きとめて、心にくい世界だ。」「借りものでない心因の所産で、「ブラックバス」以来、こつこつと彫りこんできた手練を感じさせた。」
山口瞳 全候補 23 「私の尊敬する作家で、雑誌連載中も楽しく読んだ。こういう短篇連作は、二篇か三篇、ズシンとくる、もしくはジンとくるものがあればいいと思っているが、神吉さんの資質の生かされた作品があるとは思われなかった。軽い。」「前回候補の「ブラックバス」(引用者中略)がこの連作に含まれていると仮定して受賞に納得した。」
井上ひさし 全候補 15 「そういう日常(引用者注:よく吟味された日常)の積み重ねによって培われた趣味が、これらの数篇を作者に書かせたのである。ただし十七篇全部を見わたすと凸凹ありすぎる。たとえば「警戒水位」(凸)と「季節労働者」(凹)とが同じ作者によるものとは、ほとんど信じがたい。」
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他の候補作
高橋治 「秘伝」
連城三紀彦 『宵待草夜情』
西木正明 「夜の運河」
北方謙三 『友よ、静かに瞑れ』
樋口修吉 『ジェームス山の李蘭』
赤瀬川隼 「潮もかなひぬ」
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高橋治「秘伝」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 全候補 17 「ようやく、小説の構築と文章になってきて、これまでの候補作にくらべると見ちがえるばかりだが、この素材とテーマなら、二百枚の必要はない。」「魚釣りの描写は、ちからがこもってはいても長すぎ(原文傍点)て、二人の名人の描出とバランスがとれなくなってしまった。」
源氏鶏太 全候補 11 「やや力み過ぎの感がないではなかったが、(引用者中略)文章にも張りがあり、申し分のない作品となっている。」
村上元三 全候補 14 「魚の種類などには全くうといわたしも、ぐんぐん引きつけられた。」「最後に百五十キロもの巨魚の正体を見せるあたりに、ちょっと不満が残った。しかし、前作の「地雷」より、はるかにすぐれている。直木賞にふさわしい作品と言っていい。」
五木寛之 全候補 34 「前に候補になった「地雷」とは、がらりと変った作風の力作である。」「人間の業の象徴としての怪魚であるから、原寸大で目に見えてしまうより、遂に得体の知れない幻の生きものとして海中にひそませておきたい思いもあった。そこを描き切れば、この小説はひとつの神話的な世界にまで高まったかもしれない。」
水上勉 全候補 20 「ふたつわずかな註文が生じた。題名にひねりが足りない。それと最後に出てくる深海の巨魚の描写が少しあっけない。」「それにしても、材料がよい。取り組み方も誠実で方言に苦心している。」「「絢爛たる影絵」から、ここに辿りついた氏の小説づくりの真率さに文句はない。」
山口瞳 全候補 18 「二人の狙う巨魚に魅力がない。それと今日性に欠ける憾みが残ったが、毎回違った題材、異なるテーマで力作を書く気合に打たれた。」「(引用者注:授賞は)力量のある作家の将来性に賭けるという意味あいが濃い。」
井上ひさし 全候補 13 「物語はパターン通りに進行するが、それが読む者には非常に快いのである。パターン通り、定石通りの物語が、言葉を信じさえすれば(原文傍点)、骨太な神話になることを作者はよく知っていた。」「今回はこれだと思いながら、わたしは会場へ向ったのだった。」
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他の候補作
神吉拓郎 『私生活』
連城三紀彦 『宵待草夜情』
西木正明 「夜の運河」
北方謙三 『友よ、静かに瞑れ』
樋口修吉 『ジェームス山の李蘭』
赤瀬川隼 「潮もかなひぬ」
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連城三紀彦『宵待草夜情』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 全候補 0  
源氏鶏太 全候補 8 「女の魔性とでもいうべきものを見事に描き上げている。どの作品にもそれぞれの味わいがあって申し分がなかったし、作者の力量の程を感じさせたのだが、他の委員の賛成が得られなかった。」
村上元三 全候補 5 「自分の文章に酔いすぎている。その割に、読者に訴える力は弱い。せっかくの才能を、大切にしてほしい。」
五木寛之 全候補 5 「すでに読んだもののほうに水準の高い作品があって、それが影響したせいか、今一歩の感をうけた。」
水上勉 全候補 12 「無理な筋はこびが、骨になって刺さった。」「妖しさがあって魅かれはするが、うんと云わせる説得性に欠ける。」「じっくり女性描写をやってもらいたいものだ。筋はこびより人間の面白さにである。悲しみは自然と出よう。腕のある人だから。」
山口瞳 全候補 6 「「昭和枯れすすき」をむりやりミステリーに仕上げたという印象で説明過多。ミステリーを捨てる時がきているのではないか。」
井上ひさし 全候補 11 「心理の盲点を衝いたトリックや文章でしか実現できない比喩や意味と筋(つまり物語)の屋台崩しに、毎回、唸らされる。ただし次第に煩瑣な説明の量がふえてきており(引用者中略)意味と筋に濁りが生じてきている。」
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他の候補作
神吉拓郎 『私生活』
高橋治 「秘伝」
西木正明 「夜の運河」
北方謙三 『友よ、静かに瞑れ』
樋口修吉 『ジェームス山の李蘭』
赤瀬川隼 「潮もかなひぬ」
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西木正明「夜の運河」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 全候補 0  
源氏鶏太 全候補 3 「前に候補作となった「オホーツク諜報船」に比較すると落ちる。」
村上元三 全候補 6 「読みはじめてすぐ、話の中味が割れてしまう。文章をもっと練ってほしい。せめて最後に救いがあったので、ほっとしたが、この材料はもう古い。」
五木寛之 全候補 5 「すでに読んだもののほうに水準の高い作品があって、それが影響したせいか、今一歩の感をうけた。」
水上勉 全候補 0  
山口瞳 全候補 3 「滑稽も哀れもある好短篇であるが焦点が定まっていない。」
井上ひさし 全候補 6 「〈日本人が東南アジアに生みつけてしまったものを、当の日本人が拒否してしまう〉という皮肉な構造に、作者の眼が光っている。」
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北方謙三『友よ、静かに瞑れ』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 全候補 14 「これまでの諸作にくらべて状況、人物の描写がスムーズに頭へ入ってくるようになったが、主人公に作者がおぼれすぎた。」「クライマックス、ラスト・シーン共に、もう一つ、工夫がほしい。」「これからの北方さんには、ハード・ボイルドにこだわらず、おもしろい小説を書いてもらいたい。」
源氏鶏太 全候補 8 「文句なしに面白かった。やや荒いタッチで一気に読ませる。」「しかし、何故、坂口が下山に殺されなければならないかの説明が十分でないところが惜しまれる。」
村上元三 全候補 12 「読み終って落胆した。最後に坂口が、なぜ下山に射たれるのか、説明が足りない。」「ハードボイルド派というようなレッテルを張られて、この作者は自分から狭いところへ入り込んでいるのではなかろうか。」
五木寛之 全候補 11 「二作(引用者注:「私生活」と「友よ、静かに瞑れ」)を受賞作として推したいと考えて選考会にのぞんだ。」「まだ充分に余力のある人だし、有無を言わさぬ作品をひっさげて再挑戦するほうが御本人も納得がいくだろう。」
水上勉 全候補 5 「筆勢に圧倒された。が、相手がチンピラすぎた。大臣級の悪者がいなけりゃ、ひとり狼のつよさもバランスがとれまい。」
山口瞳 全候補 6 「文句なしに面白いが、これは不良少年の自慢話であって目が小説家の目になっていない。」
井上ひさし 全候補 19 「この作者のこれまでの武器がすべて揃えられている。だが、今回は、主人公の、死闘を挑むべき敵が弱小すぎた。」「この作者の主人公には強大な敵こそよく似合う。さもなければ、主人公の方がすこし弱くなるか、そのどちらかだろう。」
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他の候補作
神吉拓郎 『私生活』
高橋治 「秘伝」
連城三紀彦 『宵待草夜情』
西木正明 「夜の運河」
樋口修吉 『ジェームス山の李蘭』
赤瀬川隼 「潮もかなひぬ」
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樋口修吉『ジェームス山の李蘭』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 全候補 0  
源氏鶏太 全候補 5 「前半が面白く、後半になるとそれが落ちた。」
村上元三 全候補 5 「面白い材料なのに、手を拡げすぎて、何を書きたかったのか、読後感が散漫になった。才筆なのに、惜しい。」
五木寛之 全候補 4 「クセの強さが魅力である。次作を期待したい。」
水上勉 全候補 0  
山口瞳 全候補 5 「間のいい文章を書く人だ。今度の作品は、どの人物も同じ調子で喋るのが気になるのと、結末がよくわからぬという致命的な難があった。」
井上ひさし 全候補 10 「文章によって読者の想像をかき立たせる力がある。ただし推理小説を予想させるプロローグは誤算だったのではないか。内容は痛快な青春悪漢小説と大人の純愛小説なので、プロローグで刷り込まれた期待は、ついに永遠に宙吊りになったままである。」
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他の候補作
神吉拓郎 『私生活』
高橋治 「秘伝」
連城三紀彦 『宵待草夜情』
西木正明 「夜の運河」
北方謙三 『友よ、静かに瞑れ』
赤瀬川隼 「潮もかなひぬ」
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赤瀬川隼「潮もかなひぬ」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
池波正太郎 全候補 0  
源氏鶏太 全候補 5 「万葉集と朝鮮語の関係についての説明が果して本当なのかとの疑問を最後まで拭い得なかった。」
村上元三 全候補 5 「万葉仮名をハングルに直すと、こうも意味が変るという点に、もっと説得力のある立証をしてもらいたかった。」
五木寛之 全候補 13 「口惜しい小説だった。私はもともとこういう発想が大好きなたちであるから、折角の物語を自分ならこう書いたのに、と残念に思ったりもした。」「サンスクリットで万葉古語を読むという本を読んだ直後だったので、ことに興味ぶかく読んだ。」
水上勉 全候補 4 「前回のあのみずみずしさが欠けた。この人には、ずばぬけた作品がうまれる日は近かろう、と思う。」
山口瞳 全候補 6 「多津子という女性に艶がない。しかし、なんとも好感の持てる作家であって、このまま進めば必ず壁を突き破るはずだと信じている。」
井上ひさし 全候補 13 「今回の題材は、この枚数で支えるには巨きすぎたかもしれない。そこで作者の美点がそれぞれ幾分かずつ損われてしまったのではないか。とにかくこれは凄い題材ではある。」
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他の候補作
神吉拓郎 『私生活』
高橋治 「秘伝」
連城三紀彦 『宵待草夜情』
西木正明 「夜の運河」
北方謙三 『友よ、静かに瞑れ』
樋口修吉 『ジェームス山の李蘭』
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