直木賞のすべて
直木賞のすべて

第88回

=候補者=
胡桃沢耕史
赤瀬川 隼
落合恵子
岩川 隆
森 瑤子
高橋 治
連城三紀彦


直木賞-選評の概要
トップページ
受賞作・候補作一覧
受賞作家の群像
候補作家の群像
選考委員の群像
小研究
大衆選考会
リンク集
マップ

ページの最後へ


Last Update[H19]2007/1/31

88   一覧へ 87前の回へ 後の回へ89
 昭和57年/1982年下半期
 (昭和58年/1983年1月17日決定発表/『オール讀物』昭和58年/1983年4月号選評掲載)
選考委員  井上ひさし 源氏鶏太 池波正太郎 城山三郎 阿川弘之 山口瞳 五木寛之 村上元三 水上勉
選評総行数  67 53 49 52 42 60 49 51 54
評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
胡桃沢耕史 『天山を越えて』 評言 15 16 19 8 3 14 7 9 12
赤瀬川隼 「捕手はまだか」 評言 33 13 24 11 0 5 12 5 13
落合恵子 『結婚以上』 評言 0 4 0 7 0 8 0 4 0
岩川隆 『海峡』 評言 0 5 0 0 0 18 0 10 0
森瑤子 「熱い風」 評言 0 6 0 0 12 0 0 4 0
高橋治 『絢爛たる影絵』 評言 10 6 0 15 0 4 0 6 25
連城三紀彦 「白い花」その他2篇 評言 0 5 6 11 0 9 6 5 0
                 
見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和58年/1983年4月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員井上ひさし×各候補作  見方・注意点
掠奪されつつ 総行数67 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史 全委員 15 「なにがなんでも物語を創りあげてみせるという力業がありました。」「構成の工夫に較べると、惜しくも文章の工夫にやや乏しく、また練り上げ不足の細部がいくつか散見され、力業がいくらか割り引かれてしまいました。」
赤瀬川隼 全委員 33 「文章は平明な上に心象を捕まえる力が強く、しかも一人よがりの飾りもなく、一等賞だと思います。」「作者の世代にとって野球と平等主義とは一対をなすものであったにちがいなく、たとえ片腕を失おうとも、このゲームの善き平等主義をどこかで支えようという意地は失っていないぞ、と低い声でであるが、たしかにうたっているところに、さわやかな感動をおぼえました。」
落合恵子 全委員 0  
岩川隆 全委員 0  
森瑤子 全委員 0  
高橋治 全委員 10 「手がたい仕上げで文章も練達です。ただし大事な個所、いいと感じ入った個所の多くが他からの引用、あるいは証言という手法なので、だいぶ損をしたのではないかと思います。作者は正直すぎたのです。」
連城三紀彦 全委員 0  
  「かねてから、「娯楽小説の大切な部分が、他から掠奪されつづけている」という感想を抱いています。」「いずれにせよ言葉、文、文章が大事。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
源氏鶏太
池波正太郎
城山三郎
阿川弘之
山口瞳
五木寛之
村上元三
水上勉
  ページの先頭へ

選考委員源氏鶏太×各候補作  見方・注意点
胡桃沢氏を推す 総行数53 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史 全委員 16 「構想が雄大で、現実感に満ちていて、いくつかのどんでん返しもよく利いていた。作品の気力も充実していて、私は、この作品を推した。」
赤瀬川隼 全委員 13 「私は、終始、好感をもって読んだのだが、最後の最も感動的な場面が、ちょっと弱いように思われた。」
落合恵子 全委員 4 「如何にも才気に満ちた作品のように思えるが、読後の印象は薄かった。」
岩川隆 全委員 5 「好きになった作品であった。登場人物にそれぞれ魅力があり、力作であったが、この種の作品としては類型があるように思われた。」
森瑤子 全委員 6 「阿川委員のみが唯一の授賞作として頑張ったが、私にはこの作品のよさが、どうしても理解出来なかった。私の老いのせいだろうか。」
高橋治 全委員 6 「私には面白かったのは第三部だけで、第一部第二部は、論文を読まされているようで味気なかった。」
連城三紀彦 全委員 5 「「黒髪」は、あまり票を得られなかったが、私は、再読し、女の執念の凄じさに打たれた。二作ならこの作品だと思った。」
  「総じてこんどの場合は、レベルが低かったということであろうか。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
井上ひさし
池波正太郎
城山三郎
阿川弘之
山口瞳
五木寛之
村上元三
水上勉
  ページの先頭へ

選考委員池波正太郎×各候補作  見方・注意点
よきかな〔捕手はまだか〕 総行数49 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史 全委員 19 「直木賞に豪快な冒険物語は大いに期待するところだが、はじめに主人公の生存がわかってしまっては、後の冒険にサスペンスが生まれぬ。」「では、サスペンスに代る内容の充実があるかというと、心理・言動の描写の辻褄が合わなくなってくる。」
赤瀬川隼 全委員 24 「この作は、先ず何よりも後味がよかった。」「登場人物が、まったくの創作であることを、はじめに打ちあけていながら、読みはじめると、たちまちにひきつけられたのは、フィクションの人物と人生に〔小説としての真実〕があるからだ。」「最後に票が分散して授賞とはならなかった」
落合恵子 全委員 0  
岩川隆 全委員 0  
森瑤子 全委員 0  
高橋治 全委員 0  
連城三紀彦 全委員 6 「印象に残った。」「ことに〔白い花〕がよく、これからも独自のたくらみ(原文傍点)の詩情に磨きをかけてもらいたいとおもう。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
井上ひさし
源氏鶏太
城山三郎
阿川弘之
山口瞳
五木寛之
村上元三
水上勉
  ページの先頭へ

選考委員城山三郎×各候補作  見方・注意点
「絢爛たる影絵」の読みごたえ 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史 全委員 8 「奔放でスケールも大きく、パンチもあった。舞台もいい。まさかと思わせる話なのだが、ドラマチックな描写もあり、読者をひきずりこんで行く。ただ細部で首をかしげさせるところがいくつかあるのが惜しい。」
赤瀬川隼 全委員 11 「野球の進行につれて、さまざまな人生が浮きぼりにされてくるさまが「舞踏会の手帖」を思わせた。作者は省くことの効果を知っており、読み手を一気にひっぱって行く力があり、後味もよかった。ただ赤峰という男の出し方に、わたしはやや不自然さを感じた。」
落合恵子 全委員 7 「都会的なしゃれた作品で、文章にも当世風のリズムがあって読みやすい。気のきいた構成と展開だが、いかにも人生がわかっているという感じがあるのは、どういうものであろうか。」
岩川隆 全委員 0  
森瑤子 全委員 0  
高橋治 全委員 15 「わたしには読みごたえがあった。人間分析の鋭さ、周到さ。」「偉大な個性とは組織にとって何であったか。その組織まで斜陽に追いやったものは何なのか。人生論、芸術論を超えて考えさせるものがあった。」
連城三紀彦 全委員 11 「きめ細かな、気のきいた描写。映画的というか、絵画的というかカラフルで、相当な手腕を感じさせ、プロットにも工夫がこらされている。ただミステリーの常かも知れぬが、作者がやや勝手に人物を動かしすぎるという感じが残った。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
井上ひさし
源氏鶏太
池波正太郎
阿川弘之
山口瞳
五木寛之
村上元三
水上勉
  ページの先頭へ

選考委員阿川弘之×各候補作  見方・注意点
選評 総行数42 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史 全委員 3 「胡桃沢耕史氏の力作にしても、あんな話し方をする日系二世はあり得ない。」
赤瀬川隼 全委員 0  
落合恵子 全委員 0  
岩川隆 全委員 0  
森瑤子 全委員 12 「印象に残つた。」「くつきり描かれてゐて、凡手に非ずと感心した。性生活や浮気の記述に独りよがりの難点はあつても、推すならこれをと思つたが、大方の委員の賛同を得られなかつた。」
高橋治 全委員 0  
連城三紀彦 全委員 0  
  「七篇通じて一行のユーモアも見出せなかつたことに不満を感じた。笑ふ場面は多々あるけれども作中人物が勝手に笑つてゐるだけで、私はをかしくも何ともない。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
井上ひさし
源氏鶏太
池波正太郎
城山三郎
山口瞳
五木寛之
村上元三
水上勉
  ページの先頭へ

選考委員山口瞳×各候補作  見方・注意点
うしろ姿が見えない 総行数60 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史 全委員 14 「面白さでは一番。この先輩作家の努力と闘志には頭がさがる。私が推し切れなかったのは、シルクロードや満洲浪人などについて無智であるためで、胡桃沢さんには申し訳なく思っているし、委員の資格を問われても弁解の余地はない。」
赤瀬川隼 全委員 5 「わかりやすい好感の持てる小説であるが、それだけに、もうひとヒネリないと受賞作としては寸が足りない。」
落合恵子 全委員 8 「男女関係の様相が変ってきているという枠組のなかで書いているように思われた。編集部の注文であったのかもしれないが、そんなものを跳ね飛ばさないと海千山千の選考委員を騙すことはできない。」
岩川隆 全委員 18 「節度のある文章がかえってマイナスになった。このテーマなら、作者自身が面白がって、憑かれたようにスピードをあげて、頭でなくて体で書くといった書き方が適したように思う。」「私にも竜飛岬の強風にひれ伏す昼顔の花が見えてこなかった。多恵の地肌、平作老人源助老人の体臭が臭ってこない。」
森瑤子 全委員 0  
高橋治 全委員 4 「意外にも文学青年であることに驚く。つまりは生硬であって、ここを脱けださないと小説にならない。」
連城三紀彦 全委員 9 「全般的な力では候補者中のトップ。肌あいが立原正秋と似ているが、その立原の直木賞受賞作「白い罌粟」と較べて、まだ少し差があるというのが偽らざるところの感想。」
  「該当作ナシ。ただし、胡桃沢さんを熱烈に支持する人がいたら同調するという曖昧かつ無責任な態度で出席した。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
井上ひさし
源氏鶏太
池波正太郎
城山三郎
阿川弘之
五木寛之
村上元三
水上勉
  ページの先頭へ

選考委員五木寛之×各候補作  見方・注意点
日和見的選考の弁 総行数49 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史 全委員 7  
赤瀬川隼 全委員 12 「私の見るところで、この後もますます力のある作品を続けて発表してくれそうな予感をおぼえさせるのは、赤瀬川氏と、連城三紀彦氏の二人かもしれない。」
落合恵子 全委員 0  
岩川隆 全委員 0  
森瑤子 全委員 0  
高橋治 全委員 0  
連城三紀彦 全委員 6 「私の見るところで、この後もますます力のある作品を続けて発表してくれそうな予感をおぼえさせるのは、赤瀬川氏と、連城三紀彦氏の二人かもしれない。」
  「つか氏や、村松氏の際のようにきっぱり一人に賭けて推すほどの情熱はなかったために、うーん、と腕組みしながら成り行きを見守るしかなかった。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
井上ひさし
源氏鶏太
池波正太郎
城山三郎
阿川弘之
山口瞳
村上元三
水上勉
  ページの先頭へ

選考委員村上元三×各候補作  見方・注意点
嘆きの種 総行数51 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史 全委員 9 「もっと得票が得られなかったのは残念であった。この作品は細かい欠点はあるものの、大衆文学としての条件は具えているし、この作者のこれまでの作品の中でも傑出している。不運だったと言わざるを得ない。」
赤瀬川隼 全委員 5 「読後感は快いが、これがなぜ「天山」と同じ票を集めたのか、読み返してもわからない。直木賞の作品ではない、と今でも考えている。」
落合恵子 全委員 4 「五篇のうち、はじめの二作だけがおとなの小説になっていたが、あとの三篇はつまらない。」
岩川隆 全委員 10 「この作者の努力は買うし、部分的にすぐれたところも多かったが、読後にあまり感銘が残らなかったのは、こういう題材を扱った場合の難しさであろう。」
森瑤子 全委員 4 「おそらく作者が満足しているに違いないこの文章に、気取りが感じられるし、うまいとは思えなかった。」
高橋治 全委員 6 「題名は、内容にふさわしくないし、小津安二郎のエピソードを扱った部分だけが面白い。評伝としても生煮えで、その点が物足りない。」
連城三紀彦 全委員 5 「文章はしっかりしているのに、これが推理小説とするのなら、最後の謎解きに三作とも無理がある。」
  「今回は揉めるだろうと思っていたが、決選投票の形になり、二作(引用者注:「天山を越えて」と「捕手はまだか」)が四票ずつに分れた。過半数を得ないので、結局、該当作なしということになった」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
井上ひさし
源氏鶏太
池波正太郎
城山三郎
阿川弘之
山口瞳
五木寛之
水上勉
  ページの先頭へ

選考委員水上勉×各候補作  見方・注意点
感想 総行数54 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
胡桃沢耕史 全委員 12 「スケールの大きな、楽しい絵空事を目ざす労作である。」「おもしろく読んだのだが、しかし――が残った。文章もところどころ粗かったように思う。前作の方がよかったのかもしれない。」
赤瀬川隼 全委員 13 「仕上りの心地よさがつたわる好短篇だった。」「野球をあまり知らない私も、ひっぱられた。こんな一日の連帯を作者はその心奥で創ってみせたのである。ここには人生があった。」
落合恵子 全委員 0  
岩川隆 全委員 0  
森瑤子 全委員 0  
高橋治 全委員 25 「いちばん魅かれた。」「説明が多くて、描写が少ない、という欠点もあった。「伝」を語ることのむずかしさだ。これが小説か、といわれれば、作者も、考えこまざるを得ないだろうが、私は推すつもりでいた。作者の小津さんへの畏敬のふかさに魅かれたからだ。不運にも、賛成委員が少なかった。」
連城三紀彦 全委員 0  
  「授賞なしは、この他の候補作品の低調も語って、今回はしかたがない。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
井上ひさし
源氏鶏太
池波正太郎
城山三郎
阿川弘之
山口瞳
五木寛之
村上元三
  ページの先頭へ


胡桃沢耕史『天山を越えて』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 全候補 15 「なにがなんでも物語を創りあげてみせるという力業がありました。」「構成の工夫に較べると、惜しくも文章の工夫にやや乏しく、また練り上げ不足の細部がいくつか散見され、力業がいくらか割り引かれてしまいました。」
源氏鶏太 全候補 16 「構想が雄大で、現実感に満ちていて、いくつかのどんでん返しもよく利いていた。作品の気力も充実していて、私は、この作品を推した。」
池波正太郎 全候補 19 「直木賞に豪快な冒険物語は大いに期待するところだが、はじめに主人公の生存がわかってしまっては、後の冒険にサスペンスが生まれぬ。」「では、サスペンスに代る内容の充実があるかというと、心理・言動の描写の辻褄が合わなくなってくる。」
城山三郎 全候補 8 「奔放でスケールも大きく、パンチもあった。舞台もいい。まさかと思わせる話なのだが、ドラマチックな描写もあり、読者をひきずりこんで行く。ただ細部で首をかしげさせるところがいくつかあるのが惜しい。」
阿川弘之 全候補 3 「胡桃沢耕史氏の力作にしても、あんな話し方をする日系二世はあり得ない。」
山口瞳 全候補 14 「面白さでは一番。この先輩作家の努力と闘志には頭がさがる。私が推し切れなかったのは、シルクロードや満洲浪人などについて無智であるためで、胡桃沢さんには申し訳なく思っているし、委員の資格を問われても弁解の余地はない。」
五木寛之 全候補 7  
村上元三 全候補 9 「もっと得票が得られなかったのは残念であった。この作品は細かい欠点はあるものの、大衆文学としての条件は具えているし、この作者のこれまでの作品の中でも傑出している。不運だったと言わざるを得ない。」
水上勉 全候補 12 「スケールの大きな、楽しい絵空事を目ざす労作である。」「おもしろく読んだのだが、しかし――が残った。文章もところどころ粗かったように思う。前作の方がよかったのかもしれない。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
赤瀬川隼 「捕手はまだか」
落合恵子 『結婚以上』
岩川隆 『海峡』
森瑤子 「熱い風」
高橋治 『絢爛たる影絵』
連城三紀彦 「白い花」その他2篇
  ページの先頭へ

赤瀬川隼「捕手はまだか」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 全候補 33 「文章は平明な上に心象を捕まえる力が強く、しかも一人よがりの飾りもなく、一等賞だと思います。」「作者の世代にとって野球と平等主義とは一対をなすものであったにちがいなく、たとえ片腕を失おうとも、このゲームの善き平等主義をどこかで支えようという意地は失っていないぞ、と低い声でであるが、たしかにうたっているところに、さわやかな感動をおぼえました。」
源氏鶏太 全候補 13 「私は、終始、好感をもって読んだのだが、最後の最も感動的な場面が、ちょっと弱いように思われた。」
池波正太郎 全候補 24 「この作は、先ず何よりも後味がよかった。」「登場人物が、まったくの創作であることを、はじめに打ちあけていながら、読みはじめると、たちまちにひきつけられたのは、フィクションの人物と人生に〔小説としての真実〕があるからだ。」「最後に票が分散して授賞とはならなかった」
城山三郎 全候補 11 「野球の進行につれて、さまざまな人生が浮きぼりにされてくるさまが「舞踏会の手帖」を思わせた。作者は省くことの効果を知っており、読み手を一気にひっぱって行く力があり、後味もよかった。ただ赤峰という男の出し方に、わたしはやや不自然さを感じた。」
阿川弘之 全候補 0  
山口瞳 全候補 5 「わかりやすい好感の持てる小説であるが、それだけに、もうひとヒネリないと受賞作としては寸が足りない。」
五木寛之 全候補 12 「私の見るところで、この後もますます力のある作品を続けて発表してくれそうな予感をおぼえさせるのは、赤瀬川氏と、連城三紀彦氏の二人かもしれない。」
村上元三 全候補 5 「読後感は快いが、これがなぜ「天山」と同じ票を集めたのか、読み返してもわからない。直木賞の作品ではない、と今でも考えている。」
水上勉 全候補 13 「仕上りの心地よさがつたわる好短篇だった。」「野球をあまり知らない私も、ひっぱられた。こんな一日の連帯を作者はその心奥で創ってみせたのである。ここには人生があった。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
胡桃沢耕史 『天山を越えて』
落合恵子 『結婚以上』
岩川隆 『海峡』
森瑤子 「熱い風」
高橋治 『絢爛たる影絵』
連城三紀彦 「白い花」その他2篇
  ページの先頭へ

落合恵子『結婚以上』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 全候補 0  
源氏鶏太 全候補 4 「如何にも才気に満ちた作品のように思えるが、読後の印象は薄かった。」
池波正太郎 全候補 0  
城山三郎 全候補 7 「都会的なしゃれた作品で、文章にも当世風のリズムがあって読みやすい。気のきいた構成と展開だが、いかにも人生がわかっているという感じがあるのは、どういうものであろうか。」
阿川弘之 全候補 0  
山口瞳 全候補 8 「男女関係の様相が変ってきているという枠組のなかで書いているように思われた。編集部の注文であったのかもしれないが、そんなものを跳ね飛ばさないと海千山千の選考委員を騙すことはできない。」
五木寛之 全候補 0  
村上元三 全候補 4 「五篇のうち、はじめの二作だけがおとなの小説になっていたが、あとの三篇はつまらない。」
水上勉 全候補 0  
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
胡桃沢耕史 『天山を越えて』
赤瀬川隼 「捕手はまだか」
岩川隆 『海峡』
森瑤子 「熱い風」
高橋治 『絢爛たる影絵』
連城三紀彦 「白い花」その他2篇
  ページの先頭へ

岩川隆『海峡』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 全候補 0  
源氏鶏太 全候補 5 「好きになった作品であった。登場人物にそれぞれ魅力があり、力作であったが、この種の作品としては類型があるように思われた。」
池波正太郎 全候補 0  
城山三郎 全候補 0  
阿川弘之 全候補 0  
山口瞳 全候補 18 「節度のある文章がかえってマイナスになった。このテーマなら、作者自身が面白がって、憑かれたようにスピードをあげて、頭でなくて体で書くといった書き方が適したように思う。」「私にも竜飛岬の強風にひれ伏す昼顔の花が見えてこなかった。多恵の地肌、平作老人源助老人の体臭が臭ってこない。」
五木寛之 全候補 0  
村上元三 全候補 10 「この作者の努力は買うし、部分的にすぐれたところも多かったが、読後にあまり感銘が残らなかったのは、こういう題材を扱った場合の難しさであろう。」
水上勉 全候補 0  
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
胡桃沢耕史 『天山を越えて』
赤瀬川隼 「捕手はまだか」
落合恵子 『結婚以上』
森瑤子 「熱い風」
高橋治 『絢爛たる影絵』
連城三紀彦 「白い花」その他2篇
  ページの先頭へ

森瑤子「熱い風」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 全候補 0  
源氏鶏太 全候補 6 「阿川委員のみが唯一の授賞作として頑張ったが、私にはこの作品のよさが、どうしても理解出来なかった。私の老いのせいだろうか。」
池波正太郎 全候補 0  
城山三郎 全候補 0  
阿川弘之 全候補 12 「印象に残つた。」「くつきり描かれてゐて、凡手に非ずと感心した。性生活や浮気の記述に独りよがりの難点はあつても、推すならこれをと思つたが、大方の委員の賛同を得られなかつた。」
山口瞳 全候補 0  
五木寛之 全候補 0  
村上元三 全候補 4 「おそらく作者が満足しているに違いないこの文章に、気取りが感じられるし、うまいとは思えなかった。」
水上勉 全候補 0  
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
胡桃沢耕史 『天山を越えて』
赤瀬川隼 「捕手はまだか」
落合恵子 『結婚以上』
岩川隆 『海峡』
高橋治 『絢爛たる影絵』
連城三紀彦 「白い花」その他2篇
  ページの先頭へ

高橋治『絢爛たる影絵』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 全候補 10 「手がたい仕上げで文章も練達です。ただし大事な個所、いいと感じ入った個所の多くが他からの引用、あるいは証言という手法なので、だいぶ損をしたのではないかと思います。作者は正直すぎたのです。」
源氏鶏太 全候補 6 「私には面白かったのは第三部だけで、第一部第二部は、論文を読まされているようで味気なかった。」
池波正太郎 全候補 0  
城山三郎 全候補 15 「わたしには読みごたえがあった。人間分析の鋭さ、周到さ。」「偉大な個性とは組織にとって何であったか。その組織まで斜陽に追いやったものは何なのか。人生論、芸術論を超えて考えさせるものがあった。」
阿川弘之 全候補 0  
山口瞳 全候補 4 「意外にも文学青年であることに驚く。つまりは生硬であって、ここを脱けださないと小説にならない。」
五木寛之 全候補 0  
村上元三 全候補 6 「題名は、内容にふさわしくないし、小津安二郎のエピソードを扱った部分だけが面白い。評伝としても生煮えで、その点が物足りない。」
水上勉 全候補 25 「いちばん魅かれた。」「説明が多くて、描写が少ない、という欠点もあった。「伝」を語ることのむずかしさだ。これが小説か、といわれれば、作者も、考えこまざるを得ないだろうが、私は推すつもりでいた。作者の小津さんへの畏敬のふかさに魅かれたからだ。不運にも、賛成委員が少なかった。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
胡桃沢耕史 『天山を越えて』
赤瀬川隼 「捕手はまだか」
落合恵子 『結婚以上』
岩川隆 『海峡』
森瑤子 「熱い風」
連城三紀彦 「白い花」その他2篇
  ページの先頭へ

連城三紀彦「白い花」その他2篇×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
井上ひさし 全候補 0  
源氏鶏太 全候補 5 「「黒髪」は、あまり票を得られなかったが、私は、再読し、女の執念の凄じさに打たれた。二作ならこの作品だと思った。」
池波正太郎 全候補 6 「印象に残った。」「ことに〔白い花〕がよく、これからも独自のたくらみ(原文傍点)の詩情に磨きをかけてもらいたいとおもう。」
城山三郎 全候補 11 「きめ細かな、気のきいた描写。映画的というか、絵画的というかカラフルで、相当な手腕を感じさせ、プロットにも工夫がこらされている。ただミステリーの常かも知れぬが、作者がやや勝手に人物を動かしすぎるという感じが残った。」
阿川弘之 全候補 0  
山口瞳 全候補 9 「全般的な力では候補者中のトップ。肌あいが立原正秋と似ているが、その立原の直木賞受賞作「白い罌粟」と較べて、まだ少し差があるというのが偽らざるところの感想。」
五木寛之 全候補 6 「私の見るところで、この後もますます力のある作品を続けて発表してくれそうな予感をおぼえさせるのは、赤瀬川氏と、連城三紀彦氏の二人かもしれない。」
村上元三 全候補 5 「文章はしっかりしているのに、これが推理小説とするのなら、最後の謎解きに三作とも無理がある。」
水上勉 全候補 0  
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
胡桃沢耕史 『天山を越えて』
赤瀬川隼 「捕手はまだか」
落合恵子 『結婚以上』
岩川隆 『海峡』
森瑤子 「熱い風」
高橋治 『絢爛たる影絵』
  ページの先頭へ



ページの先頭へ

トップページ受賞作・候補作一覧受賞作家の群像候補作家の群像選考委員の群像
小研究大衆選考会リンク集マップ