直木賞のすべて
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第72回

=受賞者=
半村 良
井出孫六

=候補者=
素 九鬼子
難波利三
古川 薫
小林久三
栗山良八郎


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 昭和49年/1974年下半期
 (昭和50年/1975年1月16日決定発表/『オール讀物』昭和50年/1975年4月号選評掲載)
選考委員  松本清張 石坂洋次郎 司馬遼太郎 源氏鶏太 水上勉 今日出海 村上元三 川口松太郎 柴田錬三郎
選評総行数  57 56 81 61 49 67 55 36 56
評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
半村良 「雨やどり」 評言 20 11 26 5 16 21 10 10 12
井出孫六 『アトラス伝説』 評言 35 17 32 8 14 8 11 10 40
素九鬼子 『大地の子守歌』 評言 3 7 3 3 12 10 3 9 0
難波利三 「イルティッシュ号の来た日」 評言 2 19 5 6 0 9 6 0 0
古川薫 「塞翁の虹」 評言 2 8 6 19 9 0 6 3 0
小林久三 『暗黒告知』 評言 6 5 0 6 0 0 5 0 4
栗山良八郎 「短剣」 評言 2 4 20 14 6 8 2 9 4
  欠席
書面回答
      欠席
書面回答
  欠席
書面回答
 
見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和50年/1975年4月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員松本清張×各候補作  見方・注意点
対照の妙 総行数57 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
半村良 全委員 20 「格段に腕を上げてきた。この作品の題名がそのまま結末になっているところ、また、あっさりと仕上げて、しかも情緒を漂わせているところ、O・ヘンリーの短篇の妙を思わせるものがある。」
井出孫六 全委員 35 「参考に「非英雄伝」(以前の候補作で再読)、「太陽の葬送」を読んだが、手腕はしっかりしたものである。」「先覚芸術家の気骨を描く。文体よくそれに相応する。冬崖の伝記に詳しいものがないのも小説化に有利している。」
素九鬼子 全委員 3 「前候補作同様、その甘たれた特徴がすでに陳腐。」
難波利三 全委員 2 「凡作、」
古川薫 全委員 2 「凡作、」
小林久三 全委員 6 「残念ながら支持者が少なかった。乱歩賞との距離がここにあるが、将来、両賞との質的接近が推理作家に(木々高太郎のごとく)一つの課題であろう。」
栗山良八郎 全委員 2 「構成力を買う。」
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他の選考委員
石坂洋次郎
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川口松太郎
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選考委員石坂洋次郎×各候補作  見方・注意点
抜群の出来栄え 総行数56 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
半村良 全委員 11 「邦子の夫は入牢中のやくざという設定だが、上手にさらっと扱って抜群の出来栄えだと思った。」
井出孫六 全委員 17 「冬崖の生活環境の変遷を、彼の絵画の進展の段階に結びつけているあたり、どうもスッキリしないと思った。しかし推薦者多数でこの作品が選ばれたことに異存はない。」
素九鬼子 全委員 7 「それぞれいま一と息といった作品」
難波利三 全委員 19 「着実ないい作品だと思ったが、支持者が少いのが残念だった。」
古川薫 全委員 8 「それぞれいま一と息といった作品」
小林久三 全委員 5 「それぞれいま一と息といった作品」
栗山良八郎 全委員 4 「それぞれいま一と息といった作品」
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松本清張
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選考委員司馬遼太郎×各候補作  見方・注意点
包丁芸のうまさ 総行数81 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
半村良 全委員 26 「手だれの料理人が、目の前で、軽い素材ながらあざやかに一品料理を作ってみせたような包丁芸のうまさがあり、この作家のすぐれた資質を感じさせた。作品は軽いものだけに受賞に値するかどうかの不安があったが、私も推し、幸い最後まで残った。」
井出孫六 全委員 32 「話の筋さえうまくつかむことができず、読んでいてもその世界に酔うことができなかった。」「自分にはこの作品の理解力がなさそうですからといって、良否についての発言はしなかった。」
素九鬼子 全委員 3 「稀少な愛好者のために書かれたような感じ」
難波利三 全委員 5 「敬服するほどに整っている。しかし人間の問題として、ダイナミズムに乏しい。」
古川薫 全委員 6 「敬服するほどに整っている。しかし人間の問題として、ダイナミズムに乏しい。」
小林久三 全委員 0  
栗山良八郎 全委員 20 「読んでおもしろかった。」「しかしこれは雑談で言いつくせる主題であり、それを小説の主題にするには、よほど小説としての糖質や脂質が必要なのではないか。しかしすでに歴史化している日本海軍の人間秩序の一断面を伝えるものとして、後世に残しておきたいような感じがする。」
  「今回は、昂奮させられるような作品にめぐまれなかったのではないか。」
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松本清張
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川口松太郎
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選考委員源氏鶏太×各候補作  見方・注意点
感想 総行数61 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
半村良 全委員 5 「今一つ積極的になれなかったのは、すでに実力十分の同氏に、もっといい作品で受賞して貰いたかったからである。」
井出孫六 全委員 8 「よく調べてあって、それが実っている。ただ、私なりに納得しがたいところがあったり、どこかに無理が感じられたが、しかし、明治の初期の怖さがよく出ていて、積極的に推した。」
素九鬼子 全委員 3 「いちだんと観念的になって来たようである。」
難波利三 全委員 6 「読みながらうまいと思った。しかし、読み終って日が過ぎると、何んとなく印象が薄れてくる。そこに難があった。」
古川薫 全委員 19 「どこかにぎこちないところがあり、それがこの作品の魅力にもなっている。風格もある。」「この作家は、山口県にいて小説を書いていることで損をしているのでなかろうか。(引用者中略)紙一重のところで、迫力、あるいは鮮度、または現代性に差が出てくるように思うのだが、これは私の誤解であることを次作で証明して貰いたい。」
小林久三 全委員 6 「足尾銅山事件の田中正造のことが巧みにバックに描かれている。しかし、推理小説としては第一級品といえないような気が今もしている。」
栗山良八郎 全委員 14 「今でも候補作品七篇のうち最も強く印象に残っている」「パンチの利いた短篇であった。」「海軍の下士官を描いた小説として残しておきたい作品であった。」
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選考委員水上勉×各候補作  見方・注意点
井出作品を推す 総行数49 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
半村良 全委員 16 「達者なこの作家はもはや売れっ子の地位にある。この作品は、氏の前作「新宿の男」と比して秀でているとは思えぬ。しかし、力量充分であり、短篇としての仕上りもよいと推す委員の声をきけば、「アトラス伝説」の重厚と組みあわせて、両氏の授賞に手をあげる方に廻った。」
井出孫六 全委員 14 「全候補作で「アトラス伝説」がぬきん出ていた。」「資料を調べる作者の誠実な眼ざしが何ともいえずよい。これだと思いきめて臨んだ」
素九鬼子 全委員 12 「作風は独自のもので、いつも直木賞よりは別の……という声もある。」「頑固な作家魂に敬服するし、そういう心田を貴重に思う。」
難波利三 全委員 0  
古川薫 全委員 9 「興味ぶかく読んだ」「主人公の心理や人間像にいまひとつの個性ある肉づけが加わればいい材料だったと惜しまれ、かねてから注目していた人だけに残念の思いである。」
小林久三 全委員 0  
栗山良八郎 全委員 6 「興味ぶかく読んだ」「わが在所に近い舞鶴海兵団が舞台なので、面白くよんだが、さていざ授賞となると推しかねた。」
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松本清張
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司馬遼太郎
源氏鶏太
今日出海
村上元三
川口松太郎
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選考委員今日出海×各候補作  見方・注意点
佳作ぞろい 総行数67 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
半村良 全委員 21 「なかなかの才筆で、週刊誌や娯楽雑誌から降るように注文が来ても、破綻なく書きこなす腕を持った才人と云えるだろう。」「直ぐ使える作家、今のジャーナリズムに打ってつけの作品を短時日にこなす作家は便利には違いないが、少し時代の嗜好が変れば、また作家が少し疲れてくると不要な作家になってしまう危険も少くない。」
井出孫六 全委員 8 「将来に楽しみが持てる作家と云えるかも知れない。しかし真摯な態度は認めても、実際にどの程度の発展の可能性を持っているか、予断は許されない。」
素九鬼子 全委員 10 「選考委の席上、直木賞に属する作品かどうか問題になったというが、私もその点疑問に思う。叙情詩的筆致は作者生得の資質だろうが、そのために生々しさが薄れている。」
難波利三 全委員 9 「選に漏れたのは、どこかに類型的なものと、語り口に生硬さがあったからだろうが、私には好ましい個性的なもののあることは認めずにはいられない。」
古川薫 全委員 0  
小林久三 全委員 0  
栗山良八郎 全委員 8 「選に漏れたのは、どこかに類型的なものと、語り口に生硬さがあったからだろうが、私には好ましい個性的なもののあることは認めずにはいられない。」
  「どれも佳作ぞろいというか、優劣がつけにくかった。どれを採っても入賞作として恥ずかしくはない。」「逆に見れば、それほど図抜けた作品がなかったという風にも受けとれる。」
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他の選考委員
松本清張
石坂洋次郎
司馬遼太郎
源氏鶏太
水上勉
村上元三
川口松太郎
柴田錬三郎
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選考委員村上元三×各候補作  見方・注意点
文句はつけないが 総行数55 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
半村良 全委員 10 「前回の参考作品になった「新宿の男」のほうが、短篇としてよくまとまっていた。わたしの慾から言えば、実力のある作家だけに、この人には長篇のSFで、直木賞を得てほしかった。」
井出孫六 全委員 11 「面白い材料を扱っているのに、作品としては醗酵していない。」「この人は今後、史料を自分なりに一ぺん消化してから作品にする、という努力を願いたい。」
素九鬼子 全委員 3 「全体に稚さを感ずる。」
難波利三 全委員 6 「かんじんのロシア船と弥吉の住む土地とのかかわり合いが、面白そうでいながら、作者のひとり合点で終っている。」
古川薫 全委員 6 「題材の料理法を間違っている。史料そのものを、扮飾なしに書きたかったのか、小説にしたかったのか、作者の腰が据わっていない。」
小林久三 全委員 5 「田中正造が登場するだけに、そのほうの興味で読んだ。推理小説としても、出来のいいほうではない。」
栗山良八郎 全委員 2 「素材だけのもの」
  「こんどは候補作の七篇とも、読んでいて、あまり気持が弾んでこなかった。」「わたし一人、該当者なしを主張した」
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他の選考委員
松本清張
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司馬遼太郎
源氏鶏太
水上勉
今日出海
川口松太郎
柴田錬三郎
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選考委員川口松太郎×各候補作  見方・注意点
喰い違う評価 総行数36 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
半村良 全委員 10 「前回にも候補作品になっていて筆力は相当なものだが作品的には弱く、次作を期待するという選評を書いておいた。」「あまりにも小品すぎて、腕は判っても推薦する気にならなかった。」
井出孫六 全委員 10 「小説というよりも記録的な要素が多分で推薦には不満であったが、文章にいや味なところがなく川上冬崖の死を小説的に見ているという以外には感銘が薄い作品だ。」
素九鬼子 全委員 9 「終りがやや弱くなったが然しいい作品であった。」「(引用者注:「アトラス伝説」よりも)純粋で重厚でもあり、主題がはっきりしていて読後の感銘も深い。」
難波利三 全委員 0  
古川薫 全委員 3 「短篇では古川薫の「塞翁の虹」を推薦した」
小林久三 全委員 0  
栗山良八郎 全委員 9 「終りがやや弱くなったが然しいい作品であった。」「(引用者注:「アトラス伝説」よりも)純粋で重厚でもあり、主題がはっきりしていて読後の感銘も深い。」
  「私は病中で委員会に出席出来ず書面回答したにすぎず、書面で意見を述べただけで結果は委員諸氏の決定に従うといった。然しかほどまで喰い違うとは予想もしなかった」
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他の選考委員
松本清張
石坂洋次郎
司馬遼太郎
源氏鶏太
水上勉
今日出海
村上元三
柴田錬三郎
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選考委員柴田錬三郎×各候補作  見方・注意点
物語をつくる資質 総行数56 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
半村良 全委員 12 「作者の他の作品を加味して推そうと考えて、選考会に臨んだ。」「私は、すでに、前回の「不可触領域」を高く買っていたし、この作者の活躍ぶりに、直木賞という重みを加えたかった。」
井出孫六 全委員 40 「私は「アトラス伝説」を、小説としては読んでいなかった。小説として読めば、これほど退屈な物語はなかった。」「私が、読んだ限りでは、この作者は、資料あさりの努力家ではあるが、物語をつくる才能はきわめて乏しいのである。」
素九鬼子 全委員 0  
難波利三 全委員 0  
古川薫 全委員 0  
小林久三 全委員 4 「(引用者注:「アトラス伝説」よりも)小説をつくる資質があると、私はみた。」
栗山良八郎 全委員 4 「(引用者注:「アトラス伝説」よりも)小説をつくる資質があると、私はみた。」
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他の選考委員
松本清張
石坂洋次郎
司馬遼太郎
源氏鶏太
水上勉
今日出海
村上元三
川口松太郎
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半村良「雨やどり」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
松本清張 全候補 20 「格段に腕を上げてきた。この作品の題名がそのまま結末になっているところ、また、あっさりと仕上げて、しかも情緒を漂わせているところ、O・ヘンリーの短篇の妙を思わせるものがある。」
石坂洋次郎 全候補 11 「邦子の夫は入牢中のやくざという設定だが、上手にさらっと扱って抜群の出来栄えだと思った。」
司馬遼太郎 全候補 26 「手だれの料理人が、目の前で、軽い素材ながらあざやかに一品料理を作ってみせたような包丁芸のうまさがあり、この作家のすぐれた資質を感じさせた。作品は軽いものだけに受賞に値するかどうかの不安があったが、私も推し、幸い最後まで残った。」
源氏鶏太 全候補 5 「今一つ積極的になれなかったのは、すでに実力十分の同氏に、もっといい作品で受賞して貰いたかったからである。」
水上勉 全候補 16 「達者なこの作家はもはや売れっ子の地位にある。この作品は、氏の前作「新宿の男」と比して秀でているとは思えぬ。しかし、力量充分であり、短篇としての仕上りもよいと推す委員の声をきけば、「アトラス伝説」の重厚と組みあわせて、両氏の授賞に手をあげる方に廻った。」
今日出海 全候補 21 「なかなかの才筆で、週刊誌や娯楽雑誌から降るように注文が来ても、破綻なく書きこなす腕を持った才人と云えるだろう。」「直ぐ使える作家、今のジャーナリズムに打ってつけの作品を短時日にこなす作家は便利には違いないが、少し時代の嗜好が変れば、また作家が少し疲れてくると不要な作家になってしまう危険も少くない。」
村上元三 全候補 10 「前回の参考作品になった「新宿の男」のほうが、短篇としてよくまとまっていた。わたしの慾から言えば、実力のある作家だけに、この人には長篇のSFで、直木賞を得てほしかった。」
川口松太郎 全候補 10 「前回にも候補作品になっていて筆力は相当なものだが作品的には弱く、次作を期待するという選評を書いておいた。」「あまりにも小品すぎて、腕は判っても推薦する気にならなかった。」
柴田錬三郎 全候補 12 「作者の他の作品を加味して推そうと考えて、選考会に臨んだ。」「私は、すでに、前回の「不可触領域」を高く買っていたし、この作者の活躍ぶりに、直木賞という重みを加えたかった。」
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他の候補作
井出孫六 『アトラス伝説』
素九鬼子 『大地の子守歌』
難波利三 「イルティッシュ号の来た日」
古川薫 「塞翁の虹」
小林久三 『暗黒告知』
栗山良八郎 「短剣」
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井出孫六『アトラス伝説』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
松本清張 全候補 35 「参考に「非英雄伝」(以前の候補作で再読)、「太陽の葬送」を読んだが、手腕はしっかりしたものである。」「先覚芸術家の気骨を描く。文体よくそれに相応する。冬崖の伝記に詳しいものがないのも小説化に有利している。」
石坂洋次郎 全候補 17 「冬崖の生活環境の変遷を、彼の絵画の進展の段階に結びつけているあたり、どうもスッキリしないと思った。しかし推薦者多数でこの作品が選ばれたことに異存はない。」
司馬遼太郎 全候補 32 「話の筋さえうまくつかむことができず、読んでいてもその世界に酔うことができなかった。」「自分にはこの作品の理解力がなさそうですからといって、良否についての発言はしなかった。」
源氏鶏太 全候補 8 「よく調べてあって、それが実っている。ただ、私なりに納得しがたいところがあったり、どこかに無理が感じられたが、しかし、明治の初期の怖さがよく出ていて、積極的に推した。」
水上勉 全候補 14 「全候補作で「アトラス伝説」がぬきん出ていた。」「資料を調べる作者の誠実な眼ざしが何ともいえずよい。これだと思いきめて臨んだ」
今日出海 全候補 8 「将来に楽しみが持てる作家と云えるかも知れない。しかし真摯な態度は認めても、実際にどの程度の発展の可能性を持っているか、予断は許されない。」
村上元三 全候補 11 「面白い材料を扱っているのに、作品としては醗酵していない。」「この人は今後、史料を自分なりに一ぺん消化してから作品にする、という努力を願いたい。」
川口松太郎 全候補 10 「小説というよりも記録的な要素が多分で推薦には不満であったが、文章にいや味なところがなく川上冬崖の死を小説的に見ているという以外には感銘が薄い作品だ。」
柴田錬三郎 全候補 40 「私は「アトラス伝説」を、小説としては読んでいなかった。小説として読めば、これほど退屈な物語はなかった。」「私が、読んだ限りでは、この作者は、資料あさりの努力家ではあるが、物語をつくる才能はきわめて乏しいのである。」
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他の候補作
半村良 「雨やどり」
素九鬼子 『大地の子守歌』
難波利三 「イルティッシュ号の来た日」
古川薫 「塞翁の虹」
小林久三 『暗黒告知』
栗山良八郎 「短剣」
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素九鬼子『大地の子守歌』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
松本清張 全候補 3 「前候補作同様、その甘たれた特徴がすでに陳腐。」
石坂洋次郎 全候補 7 「それぞれいま一と息といった作品」
司馬遼太郎 全候補 3 「稀少な愛好者のために書かれたような感じ」
源氏鶏太 全候補 3 「いちだんと観念的になって来たようである。」
水上勉 全候補 12 「作風は独自のもので、いつも直木賞よりは別の……という声もある。」「頑固な作家魂に敬服するし、そういう心田を貴重に思う。」
今日出海 全候補 10 「選考委の席上、直木賞に属する作品かどうか問題になったというが、私もその点疑問に思う。叙情詩的筆致は作者生得の資質だろうが、そのために生々しさが薄れている。」
村上元三 全候補 3 「全体に稚さを感ずる。」
川口松太郎 全候補 9 「終りがやや弱くなったが然しいい作品であった。」「(引用者注:「アトラス伝説」よりも)純粋で重厚でもあり、主題がはっきりしていて読後の感銘も深い。」
柴田錬三郎 全候補 0  
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他の候補作
半村良 「雨やどり」
井出孫六 『アトラス伝説』
難波利三 「イルティッシュ号の来た日」
古川薫 「塞翁の虹」
小林久三 『暗黒告知』
栗山良八郎 「短剣」
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難波利三「イルティッシュ号の来た日」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
松本清張 全候補 2 「凡作、」
石坂洋次郎 全候補 19 「着実ないい作品だと思ったが、支持者が少いのが残念だった。」
司馬遼太郎 全候補 5 「敬服するほどに整っている。しかし人間の問題として、ダイナミズムに乏しい。」
源氏鶏太 全候補 6 「読みながらうまいと思った。しかし、読み終って日が過ぎると、何んとなく印象が薄れてくる。そこに難があった。」
水上勉 全候補 0  
今日出海 全候補 9 「選に漏れたのは、どこかに類型的なものと、語り口に生硬さがあったからだろうが、私には好ましい個性的なもののあることは認めずにはいられない。」
村上元三 全候補 6 「かんじんのロシア船と弥吉の住む土地とのかかわり合いが、面白そうでいながら、作者のひとり合点で終っている。」
川口松太郎 全候補 0  
柴田錬三郎 全候補 0  
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他の候補作
半村良 「雨やどり」
井出孫六 『アトラス伝説』
素九鬼子 『大地の子守歌』
古川薫 「塞翁の虹」
小林久三 『暗黒告知』
栗山良八郎 「短剣」
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古川薫「塞翁の虹」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
松本清張 全候補 2 「凡作、」
石坂洋次郎 全候補 8 「それぞれいま一と息といった作品」
司馬遼太郎 全候補 6 「敬服するほどに整っている。しかし人間の問題として、ダイナミズムに乏しい。」
源氏鶏太 全候補 19 「どこかにぎこちないところがあり、それがこの作品の魅力にもなっている。風格もある。」「この作家は、山口県にいて小説を書いていることで損をしているのでなかろうか。(引用者中略)紙一重のところで、迫力、あるいは鮮度、または現代性に差が出てくるように思うのだが、これは私の誤解であることを次作で証明して貰いたい。」
水上勉 全候補 9 「興味ぶかく読んだ」「主人公の心理や人間像にいまひとつの個性ある肉づけが加わればいい材料だったと惜しまれ、かねてから注目していた人だけに残念の思いである。」
今日出海 全候補 0  
村上元三 全候補 6 「題材の料理法を間違っている。史料そのものを、扮飾なしに書きたかったのか、小説にしたかったのか、作者の腰が据わっていない。」
川口松太郎 全候補 3 「短篇では古川薫の「塞翁の虹」を推薦した」
柴田錬三郎 全候補 0  
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他の候補作
半村良 「雨やどり」
井出孫六 『アトラス伝説』
素九鬼子 『大地の子守歌』
難波利三 「イルティッシュ号の来た日」
小林久三 『暗黒告知』
栗山良八郎 「短剣」
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小林久三『暗黒告知』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
松本清張 全候補 6 「残念ながら支持者が少なかった。乱歩賞との距離がここにあるが、将来、両賞との質的接近が推理作家に(木々高太郎のごとく)一つの課題であろう。」
石坂洋次郎 全候補 5 「それぞれいま一と息といった作品」
司馬遼太郎 全候補 0  
源氏鶏太 全候補 6 「足尾銅山事件の田中正造のことが巧みにバックに描かれている。しかし、推理小説としては第一級品といえないような気が今もしている。」
水上勉 全候補 0  
今日出海 全候補 0  
村上元三 全候補 5 「田中正造が登場するだけに、そのほうの興味で読んだ。推理小説としても、出来のいいほうではない。」
川口松太郎 全候補 0  
柴田錬三郎 全候補 4 「(引用者注:「アトラス伝説」よりも)小説をつくる資質があると、私はみた。」
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他の候補作
半村良 「雨やどり」
井出孫六 『アトラス伝説』
素九鬼子 『大地の子守歌』
難波利三 「イルティッシュ号の来た日」
古川薫 「塞翁の虹」
栗山良八郎 「短剣」
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栗山良八郎「短剣」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
松本清張 全候補 2 「構成力を買う。」
石坂洋次郎 全候補 4 「それぞれいま一と息といった作品」
司馬遼太郎 全候補 20 「読んでおもしろかった。」「しかしこれは雑談で言いつくせる主題であり、それを小説の主題にするには、よほど小説としての糖質や脂質が必要なのではないか。しかしすでに歴史化している日本海軍の人間秩序の一断面を伝えるものとして、後世に残しておきたいような感じがする。」
源氏鶏太 全候補 14 「今でも候補作品七篇のうち最も強く印象に残っている」「パンチの利いた短篇であった。」「海軍の下士官を描いた小説として残しておきたい作品であった。」
水上勉 全候補 6 「興味ぶかく読んだ」「わが在所に近い舞鶴海兵団が舞台なので、面白くよんだが、さていざ授賞となると推しかねた。」
今日出海 全候補 8 「選に漏れたのは、どこかに類型的なものと、語り口に生硬さがあったからだろうが、私には好ましい個性的なもののあることは認めずにはいられない。」
村上元三 全候補 2 「素材だけのもの」
川口松太郎 全候補 9 「終りがやや弱くなったが然しいい作品であった。」「(引用者注:「アトラス伝説」よりも)純粋で重厚でもあり、主題がはっきりしていて読後の感銘も深い。」
柴田錬三郎 全候補 4 「(引用者注:「アトラス伝説」よりも)小説をつくる資質があると、私はみた。」
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他の候補作
半村良 「雨やどり」
井出孫六 『アトラス伝説』
素九鬼子 『大地の子守歌』
難波利三 「イルティッシュ号の来た日」
古川薫 「塞翁の虹」
小林久三 『暗黒告知』
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