直木賞のすべて
直木賞のすべて

第66回

=候補者=
田中小実昌
石井 博
宮地佐一郎
岡本好古
福岡 徹
木野 工
広瀬 正
藤沢周平


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 昭和46年/1971年下半期
 (昭和47年/1972年1月20日決定発表/『オール讀物』昭和47年/1972年4月号選評掲載)
選考委員  源氏鶏太 川口松太郎 石坂洋次郎 司馬遼太郎 村上元三 柴田錬三郎 大佛次郎 水上勉 今日出海 松本清張
選評総行数  50 43 49 58 55 49 74 55 60 51
評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
田中小実昌 『自動巻時計の一日』 評言 12 0 11 17 14 7 10 35 25 6
石井博 「老人と猫」 評言 2 0 4 0 4 4 0 0 0 0
宮地佐一郎 『菊酒』 評言 2 11 10 0 7 4 16 0 12 13
岡本好古 「空母プロメテウス」 評言 6 0 10 0 7 14 0 0 0 0
福岡徹 『華燭』 評言 5 0 7 0 5 4 0 0 0 0
木野工 「襤褸」 評言 16 26 8 0 13 10 28 16 8 9
広瀬正 『エロス』 評言 6 0 3 32 6 2 0 0 0 0
藤沢周平 「囮」 評言 3 0 2 0 4 4 0 0 0 8
                   
見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和47年/1972年4月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員源氏鶏太×各候補作  見方・注意点
「襤褸」を推す 総行数50 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
田中小実昌 全委員 12 「もし授賞作を選ぶとすれば、「自動巻時計の一日」と「襤褸」のどちらか、であろうと思って選考会に出席した」「ユーモアがあって、ある種の才能をはっきりと感じさせる作品であるが、田中小実昌氏の本来の才能は、もっと別のところにあったように思う。」
石井博 全委員 2 「それだけの作品であった。」
宮地佐一郎 全委員 2 「読み辛いということで損をしていた」
岡本好古 全委員 6 「この作品を全く新しいと見ることも易しいが、小説以前とけなすことも易しい。私は、中途半端でしかあり得なかった。」
福岡徹 全委員 5 「読み終るのが惜しいくらいに面白かった。しかし、この面白さは、作者の意地の悪い(?)眼への興味でもあったようだ。」
木野工 全委員 16 「もし授賞作を選ぶとすれば、「自動巻時計の一日」と「襤褸」のどちらか、であろうと思って選考会に出席した」「今でも「襤褸」が惜しかったと思っている。」「必ずしも器用でないし、省略すべき点もいろいろあるが、全身をぶっつけるようにして書いてある。濃度がある。」
広瀬正 全委員 6 「このもしもあのときに、の設定にそれほどの必然性が感じられなかった。前に候補になった二作よりもすっきりしているが、それだけに軽くなってしまっている。」
藤沢周平 全委員 3 「うまいだけに終っていたようだ」
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他の選考委員
川口松太郎
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選考委員川口松太郎×各候補作  見方・注意点
残念な「襤褸」 総行数43 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
田中小実昌 全委員 0  
石井博 全委員 0  
宮地佐一郎 全委員 11 「文学的素養よりも好学心過剰が災いしている。文学は学問ではない。」「(引用者注:学問を)芸術の鍋で煮るという肝心の技術を身につけなければ作品の生れぬ事を知って貰いたい。」
岡本好古 全委員 0  
福岡徹 全委員 0  
木野工 全委員 26 「諸作品中これだけが人間性を貫いている。残酷な人生を風のように流されて死んで行く売女の哀れを感情をこめずに書いている。」「無駄を書かずにおけば作品になれたものを、愚にもつかぬ無駄が呆れるほどの枚数を使っている。」「花子の描写は芸術だが、遊郭の説明は新聞記者の報道記事だ。そこにこの作品の失敗がある。」
広瀬正 全委員 0  
藤沢周平 全委員 0  
  「大衆文学そのものの堕落とでもいうか、方途の定まらぬ作品が年々に多い。」
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選考委員石坂洋次郎×各候補作  見方・注意点
私の好きな作品 総行数49 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
田中小実昌 全委員 11 「私の好きな作品」「構成、文章とも新鮮味があっていいと思ったのだが、大衆性、娯楽性――つまり直木賞向きの作品かどうかということになると、ためらわれるものがあった。」
石井博 全委員 4 「ひかれるものが乏しかった。」
宮地佐一郎 全委員 10 「この作者は、この文体を崩して、面白おかしい小説めいたものを書こうなどと迷わず、この調子で勉強された方がいいと思う。直木賞だけが世間に認められるチャンスではないのだから。」
岡本好古 全委員 10 「私の好きな作品」「構成、文章とも新鮮味があっていいと思ったのだが、大衆性、娯楽性――つまり直木賞向きの作品かどうかということになると、ためらわれるものがあった。」
福岡徹 全委員 7 「これを読んで、志賀直哉氏や武者小路実篤氏等が、学習院在学中、乃木希典院長に好意をもてなかったと言ってたことが頷けるような気がした。」
木野工 全委員 8 「明治三十年代、東北地方の津軽に生れ育った私は、周辺にこれと似た貧しい人々の生活をたくさん眺めて来ているが、それだけに暗い思い出をそそられて拾い上げる気になれなかった。」
広瀬正 全委員 3 「ひかれるものが乏しかった。」
藤沢周平 全委員 2 「ひかれるものが乏しかった。」
  「直木賞というものがある以上、毎回、授賞者を出して、文壇に清新の気を齎した方がいいというのが私の考え方だ」「だが、そういう私自身も、今回の予選通過作品八篇を通読して、このたびはむずかしいかなと思ったのだから、どうしようもなかった。」
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選考委員司馬遼太郎×各候補作  見方・注意点
二つの作品 総行数58 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
田中小実昌 全委員 17 「脈搏と血の温度を感じさせる文体によっていかがわしいほどにナマな現実の世界に誘い入れてくれた。」「読みやめることを許さない力をもっていたのは、(引用者中略)生きものくさい臭気や体温の懐しさについつい誘われつづけてしまったせいであるにちがいない。」
石井博 全委員 0  
宮地佐一郎 全委員 0  
岡本好古 全委員 0  
福岡徹 全委員 0  
木野工 全委員 0  
広瀬正 全委員 32 「私は広瀬正氏の「エロス」を推した。」「この小説の設定につかわれた人間も空間も時間も、フラスコや試験管といったふうの実験器具として組みあわされ、作者自身は白い実験衣を着た進行係にすぎず、実験の進められようが非現実的であっても、遊戯としてわりきってしまえばじつにおもしろい。」「才能(広瀬氏のは従来の文学的才能ではなさそうである)という点では、私は三作(引用者注:「エロス」と前候補作二つ)とも頭がさがった。」
藤沢周平 全委員 0  
  「事務局がどうにか水準以上の候補作をさがすのに苦心惨憺しているような印象で、気の早い言い方で恐縮だが、この賞の小説世界の電圧が一般に低下しているのではないかと思ったりする。」
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選考委員村上元三×各候補作  見方・注意点
点が辛いのではない 総行数55 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
田中小実昌 全委員 14 「強力に推すのには弱い」「こんどの予選作品の中で、一ばん面白く読んだ。饒舌だが、そのしゃべりに、独特のものがある。といって、直木賞にふさわしい作品、とは思えない。」
石井博 全委員 4 「何かありそうで、結局、練れた文章に引きずられて読んだにとどまった。」
宮地佐一郎 全委員 7 「作中に引用した和歌や詩を除いてしまうと、小説の部分が脆くて、頼りない。」「「狂火」を買うが、これも直木賞の作品としては力が弱い。」
岡本好古 全委員 7 「アメリカへの皮肉とも受けとれるが、主人公の二世の大尉が何を考えているのか、わからない。」
福岡徹 全委員 5 「作者の執念には敬服するが、これは小説ではないし、ノンフィクションにしては作者が前面に出すぎている。」
木野工 全委員 13 「強力に推すのには弱い」「調べたことを生のまま書きすぎて、作品の中に消化していない。」「この作家は筆力も豊かだし、物語性のある作品を期待したい。」
広瀬正 全委員 6 「構成に難点がある。」「しゃれた結末を期待していたが、平凡に終っている。」
藤沢周平 全委員 4 「悪く言えば、小説以前の習作で、小手先の器用さしかない。」
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川口松太郎
石坂洋次郎
司馬遼太郎
柴田錬三郎
大佛次郎
水上勉
今日出海
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選考委員柴田錬三郎×各候補作  見方・注意点
魅力の欠如 総行数49 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
田中小実昌 全委員 7 「私は、はじめから、採らなかった。この作家には、本質に欠けているものがあるような気がする。作家の「姿勢」の問題であろう。」
石井博 全委員 4 「候補にあげられたのが、おかしいくらいで、落ちるのは、はじめから判然としていた。」
宮地佐一郎 全委員 4 「直木賞候補にされるのがむしろ損である。この作者は、別の分野で活躍して欲しい人である。」
岡本好古 全委員 14 「アメリカの戦争映画でも観る方が、はるかにましだ、と評したら酷であろうか。この作者が、アメリカのマリンを描かねばならぬ、何かの必然的な理由があるとは、思えないのである。」
福岡徹 全委員 4 「候補にあげられたのが、おかしいくらいで、落ちるのは、はじめから判然としていた。」
木野工 全委員 10 「あるいは当選するのではあるまいか、という気持で、選考会に臨んだのであるが、大半の委員が、自然主義時代から一歩も出ていない、という意見に屈せざるを得なかった。しかし、私は、作者の努力をみとめるのに、やぶさかではない。」
広瀬正 全委員 2 「前作「ツィス」より、数段劣る。」
藤沢周平 全委員 4 「候補にあげられたのが、おかしいくらいで、落ちるのは、はじめから判然としていた。」
  「後日になって、当選作を出してもよかったのではないか、という気持が起ったが、選考会の席上では、どうしても、強く推す作はなかったのだから、やむを得ない。」
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村上元三
大佛次郎
水上勉
今日出海
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選考委員大佛次郎×各候補作  見方・注意点
楽しませる性格を 総行数74 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
田中小実昌 全委員 10 「文学にするのには、もっと枚数を減じ抽象化した方がより効果があろう。この作家、不思議な才筆で、ごく平凡な、つまらぬことを書いて何とも面白く人に読ませてしまう頭脳を持っている。」
石井博 全委員 0  
宮地佐一郎 全委員 16 「一番文章がよく(古いと言う声があった。私はそう信じない。いきいきとして的確で美しい性質を認めるべきである)、仕事の間口も広く、懸命すぎる硬いところが除かれれば、優れたものを幾らでも書けそうである。」
岡本好古 全委員 0  
福岡徹 全委員 0  
木野工 全委員 28 「文章も態度も立派で、文学として優れ、(引用者中略)日本の自然主義文学の時代に、仮に田山花袋がこの小説を書いて発表したものとしたら、一世を聳動し、「重右衛門の最後」以上に深刻な作品として今日にも重きを為す名作として残ったろうと思う。しかし出る時が五十年遅れた。」「私など大いに感心したが文学の進歩に逆転する恨み無きを得ない。」
広瀬正 全委員 0  
藤沢周平 全委員 0  
  「今度は低調だと言うような声が耳に入ったが、私はそうは信じなかった。以前の直木賞の候補作品と言うと、読者を意識に置いて書いたもののような手ぬるさ、甘さがあった。最近になってその傾向が逆転して、読者を構わぬような作品が目立つ。」「粒の揃った候補作品が集まりながら、賞に該当するものなしとなった結果は、その故である。」
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選考委員水上勉×各候補作  見方・注意点
田中氏の世界に好感 総行数55 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
田中小実昌 全委員 35 「私は魅かれた。」「この作家には独自な眼があり、この人でなければ出せない云いまわしがあって、思わず笑った。単なる云いまわしに終らず、確かな一個の人生がそこにあったと思う。」「独自の視野と文体をもって、従来のドラマ性ある受賞作に挑戦して勝つことの難しさをこの作品で私は知った。」
石井博 全委員 0  
宮地佐一郎 全委員 0  
岡本好古 全委員 0  
福岡徹 全委員 0  
木野工 全委員 16 「印象ぶかく読んだ」「この作者は確かな眼をもっている。が、如何せん文体が古くて、時代の背景や史実に力を入れすぎたために、主人公の方がうすれたところがあり、惜しいと思った。」「こういう作風には好意ももったのだけれど、受賞となると手入れが足りない。」
広瀬正 全委員 0  
藤沢周平 全委員 0  
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村上元三
柴田錬三郎
大佛次郎
今日出海
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選考委員今日出海×各候補作  見方・注意点
作品の欠点弱点 総行数60 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
田中小実昌 全委員 25 「作者は平凡な「自動巻時計の一日」を「退屈な話」にまで推し進めたなら、驚くべき文学になったことだろう。勿論作者の分析も観察も鋭く、面白く読んだが、また退屈な面もあった。退屈だなと思いながらも最後まで結局読ます力は、凡ならざる作家だとも思った。」
石井博 全委員 0  
宮地佐一郎 全委員 12 「佳篇の力作であることに違いはない。しかし生硬な生真面目さが読む方をも窮屈にさせる。この辺は第三者の容喙を許さぬ個性的な問題ではあるが。」
岡本好古 全委員 0  
福岡徹 全委員 0  
木野工 全委員 8 「力作であった。まことに綿密に調べて、感心したが、調べた部分と主人公の人生とのつながりが分裂しているというよりは消化し切れていない憾みがあった。」
広瀬正 全委員 0  
藤沢周平 全委員 0  
  「今回も亦直木賞の受賞作がなかった。銓衡が厳しかったというよりは、実際候補作品が甲乙をつけ難いほど揃って佳作が並んでいたからだとも云える。」「何れも作家としての資質を疑うものはなく、筆力も充分だが、作品に欠点弱点がある。」
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柴田錬三郎
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水上勉
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選考委員松本清張×各候補作  見方・注意点
次回に期待 総行数51 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
田中小実昌 全委員 6 「退屈だった。日常的な「退屈の中の面白さ」という味も稀薄である。こういうものは文章の洗練で生きるのだが、端的にいってその感覚がみえない。」
石井博 全委員 0  
宮地佐一郎 全委員 13 「この作者が一貫して土佐ものに取材する態度には敬服する。しかし材料の下にフィクションが身を細くしている。」「この作者の作風に「手がたい」という批評は、想像力の未育というように私には聞える。」
岡本好古 全委員 0  
福岡徹 全委員 0  
木野工 全委員 9 「古めかしい自然主義ふう(派とはいわない)の作品で、ざらざらした印象だけだ。売春婦の哀れが類型的に積み上げられているだけで、性格の個性が一つも出ていない。」
広瀬正 全委員 0  
藤沢周平 全委員 8 「私は期待をもつが、まだ無理な点がある。」「余計なことだが、彫師の世界を書くなら、浮世絵師や板元などとの関係をもっと調べたほうがよい。本作品にはその不備がみられる。」
  「全候補作品を通読したとき、これでは困ると思った。困るというのは授賞作が見当らない意味だけでなく、この程度のものが一期間の推薦作かと思ったからである。」
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他の選考委員
源氏鶏太
川口松太郎
石坂洋次郎
司馬遼太郎
村上元三
柴田錬三郎
大佛次郎
水上勉
今日出海
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田中小実昌『自動巻時計の一日』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
源氏鶏太 全候補 12 「もし授賞作を選ぶとすれば、「自動巻時計の一日」と「襤褸」のどちらか、であろうと思って選考会に出席した」「ユーモアがあって、ある種の才能をはっきりと感じさせる作品であるが、田中小実昌氏の本来の才能は、もっと別のところにあったように思う。」
川口松太郎 全候補 0  
石坂洋次郎 全候補 11 「私の好きな作品」「構成、文章とも新鮮味があっていいと思ったのだが、大衆性、娯楽性――つまり直木賞向きの作品かどうかということになると、ためらわれるものがあった。」
司馬遼太郎 全候補 17 「脈搏と血の温度を感じさせる文体によっていかがわしいほどにナマな現実の世界に誘い入れてくれた。」「読みやめることを許さない力をもっていたのは、(引用者中略)生きものくさい臭気や体温の懐しさについつい誘われつづけてしまったせいであるにちがいない。」
村上元三 全候補 14 「強力に推すのには弱い」「こんどの予選作品の中で、一ばん面白く読んだ。饒舌だが、そのしゃべりに、独特のものがある。といって、直木賞にふさわしい作品、とは思えない。」
柴田錬三郎 全候補 7 「私は、はじめから、採らなかった。この作家には、本質に欠けているものがあるような気がする。作家の「姿勢」の問題であろう。」
大佛次郎 全候補 10 「文学にするのには、もっと枚数を減じ抽象化した方がより効果があろう。この作家、不思議な才筆で、ごく平凡な、つまらぬことを書いて何とも面白く人に読ませてしまう頭脳を持っている。」
水上勉 全候補 35 「私は魅かれた。」「この作家には独自な眼があり、この人でなければ出せない云いまわしがあって、思わず笑った。単なる云いまわしに終らず、確かな一個の人生がそこにあったと思う。」「独自の視野と文体をもって、従来のドラマ性ある受賞作に挑戦して勝つことの難しさをこの作品で私は知った。」
今日出海 全候補 25 「作者は平凡な「自動巻時計の一日」を「退屈な話」にまで推し進めたなら、驚くべき文学になったことだろう。勿論作者の分析も観察も鋭く、面白く読んだが、また退屈な面もあった。退屈だなと思いながらも最後まで結局読ます力は、凡ならざる作家だとも思った。」
松本清張 全候補 6 「退屈だった。日常的な「退屈の中の面白さ」という味も稀薄である。こういうものは文章の洗練で生きるのだが、端的にいってその感覚がみえない。」
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他の候補作
石井博 「老人と猫」
宮地佐一郎 『菊酒』
岡本好古 「空母プロメテウス」
福岡徹 『華燭』
木野工 「襤褸」
広瀬正 『エロス』
藤沢周平 「囮」
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石井博「老人と猫」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
源氏鶏太 全候補 2 「それだけの作品であった。」
川口松太郎 全候補 0  
石坂洋次郎 全候補 4 「ひかれるものが乏しかった。」
司馬遼太郎 全候補 0  
村上元三 全候補 4 「何かありそうで、結局、練れた文章に引きずられて読んだにとどまった。」
柴田錬三郎 全候補 4 「候補にあげられたのが、おかしいくらいで、落ちるのは、はじめから判然としていた。」
大佛次郎 全候補 0  
水上勉 全候補 0  
今日出海 全候補 0  
松本清張 全候補 0  
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他の候補作
田中小実昌 『自動巻時計の一日』
宮地佐一郎 『菊酒』
岡本好古 「空母プロメテウス」
福岡徹 『華燭』
木野工 「襤褸」
広瀬正 『エロス』
藤沢周平 「囮」
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宮地佐一郎『菊酒』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
源氏鶏太 全候補 2 「読み辛いということで損をしていた」
川口松太郎 全候補 11 「文学的素養よりも好学心過剰が災いしている。文学は学問ではない。」「(引用者注:学問を)芸術の鍋で煮るという肝心の技術を身につけなければ作品の生れぬ事を知って貰いたい。」
石坂洋次郎 全候補 10 「この作者は、この文体を崩して、面白おかしい小説めいたものを書こうなどと迷わず、この調子で勉強された方がいいと思う。直木賞だけが世間に認められるチャンスではないのだから。」
司馬遼太郎 全候補 0  
村上元三 全候補 7 「作中に引用した和歌や詩を除いてしまうと、小説の部分が脆くて、頼りない。」「「狂火」を買うが、これも直木賞の作品としては力が弱い。」
柴田錬三郎 全候補 4 「直木賞候補にされるのがむしろ損である。この作者は、別の分野で活躍して欲しい人である。」
大佛次郎 全候補 16 「一番文章がよく(古いと言う声があった。私はそう信じない。いきいきとして的確で美しい性質を認めるべきである)、仕事の間口も広く、懸命すぎる硬いところが除かれれば、優れたものを幾らでも書けそうである。」
水上勉 全候補 0  
今日出海 全候補 12 「佳篇の力作であることに違いはない。しかし生硬な生真面目さが読む方をも窮屈にさせる。この辺は第三者の容喙を許さぬ個性的な問題ではあるが。」
松本清張 全候補 13 「この作者が一貫して土佐ものに取材する態度には敬服する。しかし材料の下にフィクションが身を細くしている。」「この作者の作風に「手がたい」という批評は、想像力の未育というように私には聞える。」
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他の候補作
田中小実昌 『自動巻時計の一日』
石井博 「老人と猫」
岡本好古 「空母プロメテウス」
福岡徹 『華燭』
木野工 「襤褸」
広瀬正 『エロス』
藤沢周平 「囮」
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岡本好古「空母プロメテウス」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
源氏鶏太 全候補 6 「この作品を全く新しいと見ることも易しいが、小説以前とけなすことも易しい。私は、中途半端でしかあり得なかった。」
川口松太郎 全候補 0  
石坂洋次郎 全候補 10 「私の好きな作品」「構成、文章とも新鮮味があっていいと思ったのだが、大衆性、娯楽性――つまり直木賞向きの作品かどうかということになると、ためらわれるものがあった。」
司馬遼太郎 全候補 0  
村上元三 全候補 7 「アメリカへの皮肉とも受けとれるが、主人公の二世の大尉が何を考えているのか、わからない。」
柴田錬三郎 全候補 14 「アメリカの戦争映画でも観る方が、はるかにましだ、と評したら酷であろうか。この作者が、アメリカのマリンを描かねばならぬ、何かの必然的な理由があるとは、思えないのである。」
大佛次郎 全候補 0  
水上勉 全候補 0  
今日出海 全候補 0  
松本清張 全候補 0  
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他の候補作
田中小実昌 『自動巻時計の一日』
石井博 「老人と猫」
宮地佐一郎 『菊酒』
福岡徹 『華燭』
木野工 「襤褸」
広瀬正 『エロス』
藤沢周平 「囮」
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福岡徹『華燭』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
源氏鶏太 全候補 5 「読み終るのが惜しいくらいに面白かった。しかし、この面白さは、作者の意地の悪い(?)眼への興味でもあったようだ。」
川口松太郎 全候補 0  
石坂洋次郎 全候補 7 「これを読んで、志賀直哉氏や武者小路実篤氏等が、学習院在学中、乃木希典院長に好意をもてなかったと言ってたことが頷けるような気がした。」
司馬遼太郎 全候補 0  
村上元三 全候補 5 「作者の執念には敬服するが、これは小説ではないし、ノンフィクションにしては作者が前面に出すぎている。」
柴田錬三郎 全候補 4 「候補にあげられたのが、おかしいくらいで、落ちるのは、はじめから判然としていた。」
大佛次郎 全候補 0  
水上勉 全候補 0  
今日出海 全候補 0  
松本清張 全候補 0  
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他の候補作
田中小実昌 『自動巻時計の一日』
石井博 「老人と猫」
宮地佐一郎 『菊酒』
岡本好古 「空母プロメテウス」
木野工 「襤褸」
広瀬正 『エロス』
藤沢周平 「囮」
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木野工「襤褸」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
源氏鶏太 全候補 16 「もし授賞作を選ぶとすれば、「自動巻時計の一日」と「襤褸」のどちらか、であろうと思って選考会に出席した」「今でも「襤褸」が惜しかったと思っている。」「必ずしも器用でないし、省略すべき点もいろいろあるが、全身をぶっつけるようにして書いてある。濃度がある。」
川口松太郎 全候補 26 「諸作品中これだけが人間性を貫いている。残酷な人生を風のように流されて死んで行く売女の哀れを感情をこめずに書いている。」「無駄を書かずにおけば作品になれたものを、愚にもつかぬ無駄が呆れるほどの枚数を使っている。」「花子の描写は芸術だが、遊郭の説明は新聞記者の報道記事だ。そこにこの作品の失敗がある。」
石坂洋次郎 全候補 8 「明治三十年代、東北地方の津軽に生れ育った私は、周辺にこれと似た貧しい人々の生活をたくさん眺めて来ているが、それだけに暗い思い出をそそられて拾い上げる気になれなかった。」
司馬遼太郎