直木賞のすべて
直木賞のすべて

第64回

=受賞者=
豊田 穣

=候補者=
三樹青生
梅本育子
黒部 亨
阿部牧郎
広瀬 正
宮地佐一郎
武田八洲満


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 昭和45年/1970年下半期
 (昭和46年/1971年1月18日決定発表/『オール讀物』昭和46年/1971年4月号選評掲載)
選考委員  源氏鶏太 石坂洋次郎 水上勉 村上元三 今日出海 大佛次郎 柴田錬三郎 川口松太郎 司馬遼太郎 松本清張
選評総行数  53 59 73 55 53 51 56 38 59 57
評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
豊田穣 『長良川』 評言 12 17 36 6 25 13 10 12 7 8
三樹青生 「終曲」 評言 0 8 2 5 7 15 7 10 3 4
梅本育子 『時雨のあと』 評言 0 0 0 4 0 0 9 0 4 0
黒部亨 「すだまの裔たち」 評言 0 0 3 4 0 0 0 0 0 0
阿部牧郎 「アンモニア戦記」 評言 9 7 11 5 8 0 8 0 10 6
広瀬正 『マイナス・ゼロ』 評言 10 0 0 6 0 0 9 0 16 0
宮地佐一郎 『宮地家三代日記』 評言 9 23 18 9 7 23 5 10 13 8
武田八洲満 「紀伊国屋文左衛門」 評言 0 0 3 6 0 0 8 0 5 30
              欠席
書面回答
   
見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』昭和46年/1971年4月号
1行当たりの文字数:14字


選考委員源氏鶏太×各候補作  見方・注意点
「長良川」の感動 総行数53 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
豊田穣 全委員 12 「一作ならこの作品をと決めて選考委員会に出席した。」「私は、感動した。この感動は、日を経てもかわることがなかった。私小説的であるが、私小説ではない。文章も重厚である。」
三樹青生 全委員 0  
梅本育子 全委員 0  
黒部亨 全委員 0  
阿部牧郎 全委員 9 「荒荒しいが、微笑ましい青春が感じさせられる。私は、久し振りに愉しい青春小説を読んだ気がして、強く推した。しかし、強く推したが、(引用者注:「長良川」との)二作に授賞の場合は、という前提に立ってであった。」
広瀬正 全委員 10 「席上あまり高く評価されなかったようだが、私にはひどく面白かった。」「空想力と構想力、更には昭和七年頃の東京風俗、人物などが巧みに描かれていて申し分がなかった。しかし、直木賞作品となると別のことのように思わせられた。」
宮地佐一郎 全委員 9 「大変な労作である。」「しかし、私にはこれを読みながら小説を読む愉しみは全く感じられず、寧ろ苦痛であった。」
武田八洲満 全委員 0  
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他の選考委員
石坂洋次郎
水上勉
村上元三
今日出海
大佛次郎
柴田錬三郎
川口松太郎
司馬遼太郎
松本清張
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選考委員石坂洋次郎×各候補作  見方・注意点
いまひといき 総行数59 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
豊田穣 全委員 17 「危な気のない文章でよく書いてあるが、(引用者中略)短篇の連続のようなもので、一貫した盛り上りが乏しいのがもの足りなかった。」
三樹青生 全委員 8 「題材がヨーロッパであるだけに浮わずっておってバタ臭い、三人の男女の人間関係もいま一つスッキリしない感じだった。」
梅本育子 全委員 0  
黒部亨 全委員 0  
阿部牧郎 全委員 7 「才筆だが、この作者はもっとスッキリしたものが書ける筈、題材がアンモニアで少し臭いということで落ちてしまった。」
広瀬正 全委員 0  
宮地佐一郎 全委員 23 「私は時間がなくて静軒の分しか読めなかったが、三代分全部読んだのは源氏鶏太君一人だけだった。これは審査員の怠慢として自戒しているが、最初の支持者(小生もその一人)が多かったにも関わらず選に洩れたのは、創作なのか伝記なのか、その辺がハッキリせず、この長い日記を読み通す迫力に欠けていたという理由であろう。」
武田八洲満 全委員 0  
  「別室の芥川賞がとっくに決定して審査員諸氏が帰った気配がするのに、直木賞の方はなかなか決まらず、(引用者中略・注:決定まで)だいぶ時間もかかり疲れもした。しかし決ってしまうと、みんなつとめてよかったという気がした。」
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他の選考委員
源氏鶏太
水上勉
村上元三
今日出海
大佛次郎
柴田錬三郎
川口松太郎
司馬遼太郎
松本清張
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選考委員水上勉×各候補作  見方・注意点
感想 総行数73 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
豊田穣 全委員 36 「豊田穣氏の誠実さと、この人の力量が今回では光るのであった。」「豊田氏の体験のなまなかでなかったことが逆に迫り、「私小説」としても成功していないということにも、かえって、私は好感をもつものである。」「授賞作なしという意見にさからって、この作を推した理由は、「長良川」「伊吹山」「石塔」の三短篇に流れる作者の心根にふれたからで、これが直木賞となることは、運を?んで快事と断じたのである。」
三樹青生 全委員 2 「きめがこまかくても「終曲」は私をゆさぶらず、」
梅本育子 全委員 0  
黒部亨 全委員 3 「もう一つ工夫の不足が感じられた。」
阿部牧郎 全委員 11 「たしかにこの作者の世界を感じさせる。」「労作「われは潮(原文ママ)の子」より面白く、しっかりした文章で安心もできるのだが、どこか重量感がない。」
広瀬正 全委員 0  
宮地佐一郎 全委員 18 「この仕事の完成に頭はさがるものの、さて小説としてどうか。」「とにもかくにも三分の二までを丹念に読んだが、あとは、銓衡後にゆっくり読む楽しみにしたことであった。」
武田八洲満 全委員 3 「文体の粗いのが気になり、」
  「松本さんも云われたことだが、「面白い小説」を待つ。だが私は、直木賞はやはり文芸だと思う。」
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他の選考委員
源氏鶏太
石坂洋次郎
村上元三
今日出海
大佛次郎
柴田錬三郎
川口松太郎
司馬遼太郎
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選考委員村上元三×各候補作  見方・注意点
大衆文学を 総行数55 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
豊田穣 全委員 6 「直木賞の作品ではないと思うが、この作者の実力はもうわかっている。直木賞作家としてふさわしい、という点で、授賞に同意した。」
三樹青生 全委員 5 「推理小説としては物足りないし、人物が描けていないが、実力のある人だと思う」
梅本育子 全委員 4 「実在した作家を裸に剥いて、ひなた(原文傍点)へ引きずり出した形だが、読後感もよくなかった。」
黒部亨 全委員 4 「墨絵のタッチで描くべきなのを、油絵で描いた、という感じがする。」
阿部牧郎 全委員 5 「この作者の器用さが、かえって新鮮さを失い、小さくまとまってしまったように思われる。」
広瀬正 全委員 6 「着想は新しいとは思えない。昭和七年の東京の描写などは面白いが、終章の同一人物が二人あらわれるあたりがつまらなかった。」
宮地佐一郎 全委員 9 「果してこれが文学作品かどうか、いまでも疑問に思っている。」「努力には、敬意を払いたい。」
武田八洲満 全委員 6 「こんどの八篇の中で、ただ一つ直木賞候補らしい作品だと思った。いくつも破綻があるし、饒舌すぎるが、実力は買いたい。」
  「こんどは、ずば抜けた作品がなかったし、該当者なしにするか、あるいは作者の実績で選ぶほかないのではないか、という気持で銓衡会場へ行った。」
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柴田錬三郎
川口松太郎
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選考委員今日出海×各候補作  見方・注意点
作品のそれぞれ 総行数53 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
豊田穣 全委員 25 「一頭地を抜きん出ていると思って、迷うことなく豊田氏を推した。」「あの凄絶な空中戦を自ら闘い、傷ついた経験は、やはり一人称で書かなければ書きようがなかったに違いない。あの生々しい体験を昇華して、文学にした作者の成熟した腕と精神を私は高く評価するものである。」
三樹青生 全委員 7 「道具立てが大きすぎて、共感を呼び難いが、筆は素直で伸びやかだ。」
梅本育子 全委員 0  
黒部亨 全委員 0  
阿部牧郎 全委員 8 「三度直木賞の候補にのぼりながら何か一つもの足りぬものがあるのか、賞を逸する結果になってしまったことを作者は考えて頂きたい。」
広瀬正 全委員 0  
宮地佐一郎 全委員 7 「この十年にわたる労作に努力賞を献ずべきかも知れない。しかし私は感動すべきものが少なかったことを遺憾に思った。」
武田八洲満 全委員 0  
  「今年は珍しく粒ぞろいで、甲論乙駁を繰り返し、選考に長時間を要した。」
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他の選考委員
源氏鶏太
石坂洋次郎
水上勉
村上元三
大佛次郎
柴田錬三郎
川口松太郎
司馬遼太郎
松本清張
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選考委員大佛次郎×各候補作  見方・注意点
宮地家三代日記 総行数51 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
豊田穣 全委員 13 「私小説に近いものとして惹きつけられていると、飛行機の墜落や満洲の悲惨な事件が不意に出て来た。筆者の経験だったとしても最初の一篇とはひどく調子が違って、嘘が出て来たような感銘を受けた。」「しかし力作でもあり、筆力ゆたかで、推薦を憚らなかった。」
三樹青生 全委員 15 「読んでストーリイとして最も面白かった」「如何にも上手に事が運ばれていて、反って何かが欠落しているような遺憾があった、作られ過ぎたと言うことかも知れぬ。」
梅本育子 全委員 0  
黒部亨 全委員 0  
阿部牧郎 全委員 0  
広瀬正 全委員 0  
宮地佐一郎 全委員 23 「思いつきだけのものや書きなぐりの多い当世にこうした努力した作品こそ直木賞に値するものではないか、と思った。しかし、真面目過ぎて、ついて読むのに根気を要し、疲労を感じた。」「この作品は、直木賞には漏れても他のものよりも後まで残って、幸福なる少数の読者を見つけて行くだろう。作者はそれに安んずべきだし、もっと外の仕事、「小説」を書く気になっては、どうだろうか?」
武田八洲満 全委員 0  
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他の選考委員
源氏鶏太
石坂洋次郎
水上勉
村上元三
今日出海
柴田錬三郎
川口松太郎
司馬遼太郎
松本清張
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選考委員柴田錬三郎×各候補作  見方・注意点
歴史と戦争体験 総行数56 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
豊田穣 全委員 10 「長良川の歴史と、自分の戦争体験と、現在の状況を、巧妙にむすびつけた筆力は大したものである。敬服のほかはない。この作者の受賞は、むしろおそいぐらいである。」
三樹青生 全委員 7 「このストーリイは、途中で、底が割れてしまっている。作者自身は、かなり気負っているが、それにも拘らず、終末になると、読む側は、興味索然となってしまった。」
梅本育子 全委員 9 「もしこの作家(引用者注:登場人物の吉田絃二郎)を仮名にしたならば、ごく平凡な日記にしかならないだろうと思われた。文章にも、みるべきものがなかった。」
黒部亨 全委員 0  
阿部牧郎 全委員 8 「この作品は、必ずしも上出来ではない。しかし、私は、この作者の実力を買って、推したが、過半数の票をとることはできなかった。」
広瀬正 全委員 9 「面白い点では、いちばん面白かったが、ただそれだけのことで、いったい、なんのためにこんなに努力して、多くの枚数をついやしたのか、作家の情熱は、ただ、読者をおどろかせたり、面白がらせたりするためにだけ、わきたつものではなかろう。」
宮地佐一郎 全委員 5 「資料として価値があり、小説としては、あまりにも読みづらい。むしろ、直木賞候補作品からはずすべきであった。」
武田八洲満 全委員 8 「やさしい文章をつかい乍ら、これほど読みにくい時代小説も、珍しいのではあるまいか。」「各処で大きなあやまりをおかしているのも、気になった。」
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川口松太郎
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選考委員川口松太郎×各候補作  見方・注意点
大物出て来い 総行数38 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
豊田穣 全委員 12 「まとまっているという事も好きではないのだが、作者の素質を取る。筆力も正確だし内容も面白くしっかりと書けているが、小細工が多すぎる。」「然し候補作の中では光っていたようだ。」
三樹青生 全委員 10 「狐につままれたような小説だが音楽好きには楽しいテーマなのだ。」「推理小説としては失敗作だろうが、私の個人趣味はなかなか棄て切れない。まとまりの悪いのが残念だった。」
梅本育子 全委員 0  
黒部亨 全委員 0  
阿部牧郎 全委員 0  
広瀬正 全委員 0  
宮地佐一郎 全委員 10 「なかなかの努力作だが小説なのか研究なのか記録なのか、その点の判断がつきかねた。」「直木賞は飽くまで文学でなければならないのだ。」
武田八洲満 全委員 0  
  「近年の直木賞は作品が小粒になる傾向が強い。よく書けていて強い感動がない。」
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他の選考委員
源氏鶏太
石坂洋次郎
水上勉
村上元三
今日出海
大佛次郎
柴田錬三郎
司馬遼太郎
松本清張
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選考委員司馬遼太郎×各候補作  見方・注意点
ナシが本音だが 総行数59 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
豊田穣 全委員 7 「受賞作なしというのが本音だったが、石坂委員が、努力して掬いあげるべきです、といわれたのに発奮し、作品になじみのふかい豊田穣氏「長良川」に過不足無さを感じ、これを推した。」
三樹青生 全委員 3 「おもしろかったが、推すほどの理由がみつからず、」
梅本育子 全委員 4 「実名を外してもなお虚構の浮力があるかといえば疑わしい。」
黒部亨 全委員 0  
阿部牧郎 全委員 10 「ごく常識的にいえば、受賞作というのは、金屏風の前にすわるだけの目方が必要で(引用者中略)この才能ある作家としてはごく手の内のものでありすぎた。」
広瀬正 全委員 16 「一読者として一番面白かった」「この人の空想能力と空想構築の堅牢さにおどろいた。」「七分目がた、これを推した。が、どうもぶ(原文傍点)がわるく、ぶ(原文傍点)の悪い理由もよくわかるから、途中で推しつづける根気をうしなった。」
宮地佐一郎 全委員 13 「小説としての計量規準外の目方がありすぎる。」「その労については心の慄えるような敬意をおぼえる。が、多分に小説的であるにしても小説そのものでなく、むしろこの労作が小説としての評価の場におかれたことを気の毒に感じた。」
武田八洲満 全委員 5 「戯曲風に書かれた独特のスタイルだが、小生には人物群が結像しにくかった。」
  「こんどはいわば不作で、どの作品を推していいのかわからないままに出席した。」
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水上勉
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大佛次郎
柴田錬三郎
川口松太郎
松本清張
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選考委員松本清張×各候補作  見方・注意点
武田氏の構成力 総行数57 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
豊田穣 全委員 8 「わたくしは消極的だった。文章もうまく、話にも好感がもてるが、直木賞には私小説的なもの(この作品が私小説というのではない)よりも、やはり大きな構成のあるものを望みたい。」
三樹青生 全委員 4 「もっとも適当にまとまっているが、もっとも既成的のものである。新しい「破調」があるとよかった。」
梅本育子 全委員 0  
黒部亨 全委員 0  
阿部牧郎 全委員 6 「氏のものとして出来が悪いのが提出されたのは不運である。結末が火野葦平の「糞尿譚」をすぐ思い出させるのも損である。」
広瀬正 全委員 0  
宮地佐一郎 全委員 8 「ほとんど家伝の資料(と思われる)無しには成立しない労作で、この点が独特でもありマイナスでもある。」
武田八洲満 全委員 30 「推すなら武田八洲満氏の「紀伊国屋文左衛門」だと思った。ともかくこれには構成がある。史実も自分のものにしている。」「(引用者注:荻原重秀を)歩の悪い仕事を上から押しつけられる能吏として捉えていることに感心した。」「構想力のある新人と思う。」
  「今期は強い作品がなかった。」
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他の選考委員
源氏鶏太
石坂洋次郎
水上勉
村上元三
今日出海
大佛次郎
柴田錬三郎
川口松太郎
司馬遼太郎
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豊田穣『長良川』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
源氏鶏太 全候補 12 「一作ならこの作品をと決めて選考委員会に出席した。」「私は、感動した。この感動は、日を経てもかわることがなかった。私小説的であるが、私小説ではない。文章も重厚である。」
石坂洋次郎 全候補 17 「危な気のない文章でよく書いてあるが、(引用者中略)短篇の連続のようなもので、一貫した盛り上りが乏しいのがもの足りなかった。」
水上勉 全候補 36 「豊田穣氏の誠実さと、この人の力量が今回では光るのであった。」「豊田氏の体験のなまなかでなかったことが逆に迫り、「私小説」としても成功していないということにも、かえって、私は好感をもつものである。」「授賞作なしという意見にさからって、この作を推した理由は、「長良川」「伊吹山」「石塔」の三短篇に流れる作者の心根にふれたからで、これが直木賞となることは、運を?んで快事と断じたのである。」
村上元三 全候補 6 「直木賞の作品ではないと思うが、この作者の実力はもうわかっている。直木賞作家としてふさわしい、という点で、授賞に同意した。」
今日出海 全候補 25 「一頭地を抜きん出ていると思って、迷うことなく豊田氏を推した。」「あの凄絶な空中戦を自ら闘い、傷ついた経験は、やはり一人称で書かなければ書きようがなかったに違いない。あの生々しい体験を昇華して、文学にした作者の成熟した腕と精神を私は高く評価するものである。」
大佛次郎 全候補 13 「私小説に近いものとして惹きつけられていると、飛行機の墜落や満洲の悲惨な事件が不意に出て来た。筆者の経験だったとしても最初の一篇とはひどく調子が違って、嘘が出て来たような感銘を受けた。」「しかし力作でもあり、筆力ゆたかで、推薦を憚らなかった。」
柴田錬三郎 全候補 10 「長良川の歴史と、自分の戦争体験と、現在の状況を、巧妙にむすびつけた筆力は大したものである。敬服のほかはない。この作者の受賞は、むしろおそいぐらいである。」
川口松太郎 全候補 12 「まとまっているという事も好きではないのだが、作者の素質を取る。筆力も正確だし内容も面白くしっかりと書けているが、小細工が多すぎる。」「然し候補作の中では光っていたようだ。」
司馬遼太郎 全候補 7 「受賞作なしというのが本音だったが、石坂委員が、努力して掬いあげるべきです、といわれたのに発奮し、作品になじみのふかい豊田穣氏「長良川」に過不足無さを感じ、これを推した。」
松本清張 全候補 8 「わたくしは消極的だった。文章もうまく、話にも好感がもてるが、直木賞には私小説的なもの(この作品が私小説というのではない)よりも、やはり大きな構成のあるものを望みたい。」
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他の候補作
三樹青生 「終曲」
梅本育子 『時雨のあと』
黒部亨 「すだまの裔たち」
阿部牧郎 「アンモニア戦記」
広瀬正 『マイナス・ゼロ』
宮地佐一郎 『宮地家三代日記』
武田八洲満 「紀伊国屋文左衛門」
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三樹青生「終曲」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
源氏鶏太 全候補 0  
石坂洋次郎 全候補 8 「題材がヨーロッパであるだけに浮わずっておってバタ臭い、三人の男女の人間関係もいま一つスッキリしない感じだった。」
水上勉 全候補 2 「きめがこまかくても「終曲」は私をゆさぶらず、」
村上元三 全候補 5 「推理小説としては物足りないし、人物が描けていないが、実力のある人だと思う」
今日出海 全候補 7 「道具立てが大きすぎて、共感を呼び難いが、筆は素直で伸びやかだ。」
大佛次郎 全候補 15 「読んでストーリイとして最も面白かった」「如何にも上手に事が運ばれていて、反って何かが欠落しているような遺憾があった、作られ過ぎたと言うことかも知れぬ。」
柴田錬三郎 全候補 7 「このストーリイは、途中で、底が割れてしまっている。作者自身は、かなり気負っているが、それにも拘らず、終末になると、読む側は、興味索然となってしまった。」
川口松太郎 全候補 10 「狐につままれたような小説だが音楽好きには楽しいテーマなのだ。」「推理小説としては失敗作だろうが、私の個人趣味はなかなか棄て切れない。まとまりの悪いのが残念だった。」
司馬遼太郎 全候補 3 「おもしろかったが、推すほどの理由がみつからず、」
松本清張 全候補 4 「もっとも適当にまとまっているが、もっとも既成的のものである。新しい「破調」があるとよかった。」
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他の候補作
豊田穣 『長良川』
梅本育子 『時雨のあと』
黒部亨 「すだまの裔たち」
阿部牧郎 「アンモニア戦記」
広瀬正 『マイナス・ゼロ』
宮地佐一郎 『宮地家三代日記』
武田八洲満 「紀伊国屋文左衛門」
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梅本育子『時雨のあと』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
源氏鶏太 全候補 0  
石坂洋次郎 全候補 0  
水上勉 全候補 0  
村上元三 全候補 4 「実在した作家を裸に剥いて、ひなた(原文傍点)へ引きずり出した形だが、読後感もよくなかった。」
今日出海 全候補 0  
大佛次郎 全候補 0  
柴田錬三郎 全候補 9 「もしこの作家(引用者注:登場人物の吉田絃二郎)を仮名にしたならば、ごく平凡な日記にしかならないだろうと思われた。文章にも、みるべきものがなかった。」
川口松太郎 全候補 0  
司馬遼太郎 全候補 4 「実名を外してもなお虚構の浮力があるかといえば疑わしい。」
松本清張 全候補 0  
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他の候補作
豊田穣 『長良川』
三樹青生 「終曲」
黒部亨 「すだまの裔たち」
阿部牧郎 「アンモニア戦記」
広瀬正 『マイナス・ゼロ』
宮地佐一郎 『宮地家三代日記』
武田八洲満 「紀伊国屋文左衛門」
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黒部亨「すだまの裔たち」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
源氏鶏太 全候補 0  
石坂洋次郎 全候補 0  
水上勉 全候補 3 「もう一つ工夫の不足が感じられた。」
村上元三 全候補 4 「墨絵のタッチで描くべきなのを、油絵で描いた、という感じがする。」
今日出海 全候補 0  
大佛次郎 全候補 0  
柴田錬三郎 全候補 0  
川口松太郎 全候補 0  
司馬遼太郎 全候補 0  
松本清張 全候補 0  
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他の候補作
豊田穣 『長良川』
三樹青生 「終曲」
梅本育子 『時雨のあと』
阿部牧郎 「アンモニア戦記」
広瀬正 『マイナス・ゼロ』
宮地佐一郎 『宮地家三代日記』
武田八洲満 「紀伊国屋文左衛門」
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阿部牧郎「アンモニア戦記」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
源氏鶏太 全候補 9 「荒荒しいが、微笑ましい青春が感じさせられる。私は、久し振りに愉しい青春小説を読んだ気がして、強く推した。しかし、強く推したが、(引用者注:「長良川」との)二作に授賞の場合は、という前提に立ってであった。」
石坂洋次郎 全候補 7 「才筆だが、この作者はもっとスッキリしたものが書ける筈、題材がアンモニアで少し臭いということで落ちてしまった。」
水上勉 全候補 11 「たしかにこの作者の世界を感じさせる。」「労作「われは潮(原文ママ)の子」より面白く、しっかりした文章で安心もできるのだが、どこか重量感がない。」
村上元三 全候補 5 「この作者の器用さが、かえって新鮮さを失い、小さくまとまってしまったように思われる。」
今日出海 全候補 8 「三度直木賞の候補にのぼりながら何か一つもの足りぬものがあるのか、賞を逸する結果になってしまったことを作者は考えて頂きたい。」
大佛次郎 全候補 0  
柴田錬三郎 全候補 8 「この作品は、必ずしも上出来ではない。しかし、私は、この作者の実力を買って、推したが、過半数の票をとることはできなかった。」
川口松太郎 全候補 0  
司馬遼太郎 全候補 10 「ごく常識的にいえば、受賞作というのは、金屏風の前にすわるだけの目方が必要で(引用者中略)この才能ある作家としてはごく手の内のものでありすぎた。」
松本清張 全候補 6 「氏のものとして出来が悪いのが提出されたのは不運である。結末が火野葦平の「糞尿譚」をすぐ思い出させるのも損である。」
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他の候補作
豊田穣 『長良川』
三樹青生 「終曲」
梅本育子 『時雨のあと』
黒部亨 「すだまの裔たち」
広瀬正 『マイナス・ゼロ』
宮地佐一郎 『宮地家三代日記』
武田八洲満 「紀伊国屋文左衛門」
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広瀬正『マイナス・ゼロ』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
源氏鶏太 全候補 10 「席上あまり高く評価されなかったようだが、私にはひどく面白かった。」「空想力と構想力、更には昭和七年頃の東京風俗、人物などが巧みに描かれていて申し分がなかった。しかし、直木賞作品となると別のことのように思わせられた。」
石坂洋次郎 全候補 0  
水上勉 全候補 0  
村上元三 全候補 6