直木賞のすべて
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第118回

=候補者=
北村 薫
折原 一
京極夏彦
桐野夏生
池上永一


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 平成9年/1997年下半期
 (平成10年/1998年1月16日決定発表/『オール讀物』平成10年/1998年3月号選評掲載)
選考委員  黒岩重吾 阿刀田高 平岩弓枝 井上ひさし 田辺聖子 渡辺淳一 津本陽 五木寛之
選評総行数  84 120 119 176 125 88 105 62
評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
北村薫 『ターン』 評言 0 19 18 14 19 5 3 0
折原一 『冤罪者』 評言 5 13 17 26 14 6 3 0
京極夏彦 『嗤う伊右衛門』 評言 0 21 10 26 30 22 9 12
桐野夏生 『OUT』 評言 61 30 26 55 35 51 47 13
池上永一 『風車祭』 評言 4 25 25 21 15 5 7 11
               
見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成10年/1998年3月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員黒岩重吾×各候補作  見方・注意点
「OUT」について 総行数84 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
北村薫 全委員 0  
折原一 全委員 5 「現代の不安感が存在するが、ストーリーが余りにも作為的で、読後、脱力感を覚えた。」
京極夏彦 全委員 0  
桐野夏生 全委員 61 「候補作品の中で最も気になった」「氏の描写のしたたかさに感嘆しながら読み進んだ。」「佐竹の過去の殺人描写に至り、完全に白けてしまった。」「私が首を横に振ったのは、作者が佐竹に、快楽殺人ではなく、死を共有したかった、二人にしか分らない天国と地獄などと、文学少女じみた甘ったれたことをいわせているからである。」
池上永一 全委員 4 「沖縄の伝承や神事、風俗などがよく描かれているが、小説的構築が未完成である。」
  「どんなに暗く残酷であっても、それが私を戦慄させるような作品であったなら、懸命に推すであろう。」「残念ながら今回はそういう作品がなかった。」
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他の選考委員
阿刀田高
平岩弓枝
井上ひさし
田辺聖子
渡辺淳一
津本陽
五木寛之
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選考委員阿刀田高×各候補作  見方・注意点
力作でありながら 総行数120 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
北村薫 全委員 19 「小説家のルーティン・ワークとしてなんの不足もない。だが正直な感想を述べれば、それだけの作品と言えなくもない。現時点で、異次元へのトリップを書くならば、なにか従来の作品にプラスするものがあってしかるべきではないのか。」「わるいところはなにもないけれど、敢て高い評価を感ずることもできなかった。」
折原一 全委員 13 「トリックと謎解きを主眼とする推理小説のものさしで計れば充分にレベルを越えた作品であろう。が、直木賞の候補作として読むとき、文章のあや、人物への目配り、筋運びの整合性などに少しずつ疵があるように感じられた。」
京極夏彦 全委員 21 「評価のむつかしい作品であった。韜晦趣味も作者の技の一つであることは充分に認めるのだが、読者の精力が韜晦を明かすことにのみ多く費され、それを解き分けてみると、ストーリィそのものは思いのほかたあいがない、そんな作品に感じられてしまった。」
桐野夏生 全委員 30 「残酷な事件がつぎつぎに起きて、エキサイティングではあるけれど、読み終って残るものが乏しい。」「快楽殺人の共有感を持たなければ、納得のむつかしい作品である。おもしろければ、それでよいというものではあるまい。筆力は水準を越えていながら、推輓をためらった第一の理由である。」
池上永一 全委員 25 「作者の強い志に圧倒された。」「が、読みにくいことは相当読みにくい。」「本筋を離れたエピソードが多過ぎるし、ストーリィの発展もゆるく散漫な感じが否めない。それが沖縄風と主張されると私には応ずるすべもない。」「最後の最後まで悩みながら、エンターテインメントとして不足がある、と考えざるをえなかった。」
  「選考会を開く以上、是非とも受賞作を出したい。関係者が皆そう思っているにもかかわらず、今回はそれができなかった。選考委員会は軽々に、この結論を出したわけではない。」
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他の選考委員
黒岩重吾
平岩弓枝
井上ひさし
田辺聖子
渡辺淳一
津本陽
五木寛之
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選考委員平岩弓枝×各候補作  見方・注意点
一長一短について 総行数119 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
北村薫 全委員 18 「今回の候補作品の中、唯一、さわやかさ、明るさを感じさせてくれた。」「惜しむらくは、主人公の男女の描き方が空気のようにさっぱりしすぎていて、人間臭がない。作品に奥行きがないと思うのは、その故ではないのだろうか。」
折原一 全委員 17 「常習犯が犯行を重ねていて、たまたま立件された犯罪だけが無実であり、支援グループが働いて、牢獄から娑婆へひっぱり出した結果、その支援者が彼の犯罪の目撃者になるという皮肉が面白かった。その反面、もう一つの犯罪にかかわり合う人達、殊に恋人を殺された男と、その男の二度目の妻となる女性の描写に、もう一工夫が欲しい。」
京極夏彦 全委員 10 「下敷のある作品は、下敷にした作品を越えないと成功とはいえない。」「(引用者注:「四谷怪談」よりも)この作品のほうが、むしろ、リアリティに乏しいという印象を受けた。」
桐野夏生 全委員 26 「どこにもありそうな日常の中に生きている四人の女性が殺人にかかわり合うまでの見事な話の進め方にひきこまれたが、後半、死人の解体のあたりからしらけてしまった。」「一人の主婦が他人の殺人の後始末、それも人間を解体する決心をするに至る心理や状況の追いつめ方が弱いために、最後は殺人に進まざるを得なかった主人公に読者が納得しにくくなるのも小説の欠点」
池上永一 全委員 25 「一番、作者の心の熱さが伝わって来た」「ピシャーマと少年のかかわり合いにロマンがあり、ギイギイという六本足の豚の存在もユーモラスで大いに笑ってしまった。この作者に必要なのは調べ抜いたことの八十パーセントを捨てて書くという姿勢で、それが成功すると捨てたものが行間に滲み出て来て、書いたよりも更に深く、読者を理解させる。」
  「(引用者注:一長一短の)短に目をつぶって授賞作として推すことをしなかったのは、迂闊に授賞して短の部分がその作家のさきゆきの致命傷になるのではないかという不安があった故である。」
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他の選考委員
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渡辺淳一
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選考委員井上ひさし×各候補作  見方・注意点
度がすぎれば毒 総行数176 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
北村薫 全委員 14 「才気が溢れている。」「機知がある。しかし、作者は、簡潔に書かれるべき前半部分をややこしく作りすぎ、読者に門前払いを食わせている。」
折原一 全委員 26 「これは力作、ある冤罪事件を軸に、「この瞬間も誰かに見張られているのでは……」という神経症的な強迫観念を的確に言語化し、小説にしている。」「事件を切り刻み、前後を並べ変えて、謎を発生させるのも大事であるが、この作品の場合、その度が過ぎて、かえって感興を殺ぎ、登場人物の彫りを浅くした。」
京極夏彦 全委員 26 「この作品は「時代小説のふりをした現代小説」で、その知的なからくりも作者の力量を窺わせるに充分であるが、しかし作者は登場人物たちの心理をいじりすぎ、ややこしくしすぎた。そのせいで、せっかくの大きな力量が小さくちぢこまって表現されてしまった感がある。」
桐野夏生 全委員 55 「今回、評者がもっとも高い評点をつけた」「冒頭の弁当工場の夜勤の光景から第一の死体解体のあたりまでは快調そのものの運びで、まったく完璧である。」「クライマックスは、作者の意図は充分に尊重しながらも、一読者としては、「話をややこしくしすぎて、最後が絵空事になってしまったのでは……。惜しい」と呟やかざるを得なかった。」「評者は最後までこの作品を推したが、しかし最後の最後に折れてしまった」
池上永一 全委員 21 「馬力と筆力に脱帽する。」「もっとも言葉にしにくいものに、とにかく言葉を与えて読者の前に提供し得た力業にも敬意を表する。」「ただ均質にびっしりと、ややこしく書いてあるので、なにが大事で、なにが大事でないかが、はっきりしない。そこで読者は「読む地獄」を味わうことになった。」
  「最近の新鋭たちは謎を作りすぎていないか。」「物語を複雑にしすぎているように見える。もう一つ云えば、物語をできるだけややこしく作ろうとする癖がある。」
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他の選考委員
黒岩重吾
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平岩弓枝
田辺聖子
渡辺淳一
津本陽
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選考委員田辺聖子×各候補作  見方・注意点
受賞作なしは残念だけれど…… 総行数125 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
北村薫 全委員 19 「時間軸のズレというアイデアは面白いが、しかしこの種の題材はこれ以上深まりそうにないので、いっそう趣向が問題だろう。私はこのヒロインが、沈着というより、従容としてみえ、リッパすぎて困った。」「ただラストのあと味がとてもいい。」
折原一 全委員 14 「事件が複雑に入り組んでみえるが、それは狂言廻しの五十嵐友也の扱いによるのではないか。友也の人間が書けていないので読み手が信用してついていけない。」「しかし闇の犯罪を掬う手の、指のまたから〈真実〉はこぼれおちてしまう、その現代の悪の一端を示唆して迫力があった。」
京極夏彦 全委員 30 「南北の「東海道四谷怪談」を下敷に新時代の怪談として挑戦した志は買うが、やはり南北を超えていない。」「伊東喜兵衛の悪辣に対立する情念が稀薄で、もどかしかった。」「ただし読んでいる限りは作者の力感に圧倒されて力んで読めた。」
桐野夏生 全委員 35 「簡潔にして力強く、無駄がなく、美しくさえ感じられる文体。要所をはずさぬ、的確で犀利な人物造型。すごい作品だ。」「途中でもう一人の男性主人公が登場したときから、テーマが二つに割れたと感じた。」「あとのテーマの異常性愛の世界、この作品では単なる嗜癖にとどまっている。人間を逸脱してゆく恐れと恍惚をもっと見据えるべきではないか。」
池上永一 全委員 15 「読んで元気の出る小説だ。」「何より登場人物がみな魅力的だ。」「沖縄の風土色ゆたかな、絢爛たる力作。ただ作者があまり入れこみすぎて、やや冗長になった感がなくもない。」
  「受賞作なしは残念だけれど、有望作家は輩出しているの印象があって、私は悲観していない。」
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他の選考委員
黒岩重吾
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平岩弓枝
井上ひさし
渡辺淳一
津本陽
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選考委員渡辺淳一×各候補作  見方・注意点
現代のビート 総行数88 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
北村薫 全委員 5 「部分的には優れた感性やユニークな視点がちりばめられているが、長篇より短篇にしたほうが作者の資質が生きそうである。」
折原一 全委員 6 「初めは衝動的な行為に走る人間の闇の部分でも探るのかと期待したが、途中からはただの謎解きだけの小説になって失望した。」
京極夏彦 全委員 22 「冒頭部がよく、江戸の闇の妖しさが迫ってきて、新しいタイプの時代小説かと期待を抱いた。」「なによりも不満だったのは、伊右衛門の実態が少しも見えてこないことである。」「これだけの長篇を書く以上は、主人公はくっきりと姿を表すべきで、その基本デッサンをないがしろにしては、気取りだけが先行した底の浅い小説になってしまう。」
桐野夏生 全委員 51 「最も惹かれた。」「前半、とくに冒頭部が秀逸」「欠陥がないわけではなく、その一つは、雅子らが死体処理という異常な行動をするにいたる心理的背景が書き込まれていないことである。」「それでもなお、わたしがこの作品を推したのは、雅子という新しい女主人公を創り出した手柄と、この作品に一貫して溢れる作者の気迫と、現代の激しい鼓動、ビートのようなものを感じたからである。」
池上永一 全委員 5 「沖縄の方言を駆使して、それなりの効果を上げているが、あまりに長すぎて小説的緊迫感に欠けていた。」
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他の選考委員
黒岩重吾
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平岩弓枝
井上ひさし
田辺聖子
津本陽
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選考委員津本陽×各候補作  見方・注意点
流露感の薄さ 総行数105 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
北村薫 全委員 3 「想像の世界へ読者を誘いこむ方法に新味が乏しかった。」
折原一 全委員 3 「謎解きゲームで、推理小説の分野で活躍する人材だろう。」
京極夏彦 全委員 9 「後半はしだいに話がいきおいをつけてゆくので、その筆勢は評価するが、全編を見直せば、やはり不要な身振りが多すぎたように思う。」
桐野夏生 全委員 47 「ひとりが衝動的に夫を絞殺するあたりから、説得力が乏しくなってくる。」「本職の暴力団員が、金さえもらえば依頼人の素姓もたしかめず、屍体解体をうけおう場面もあるが、すでに説得力はなくなっている。」
池上永一 全委員 7 「石垣島の風土と沖縄の土俗の本質をつかんでいる点をおおいに買うが、あまりにもボリュームが多すぎて、小説として完成させるにはもっと刈りこみが必要であろう。」
  「読者は、作者に説得してほしい。いっとき小説世界に埋没して、そのなかに生きたい。だが、提示された作品は、その世界のなかに引きこむ説得力を欠いていた。」
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他の選考委員
黒岩重吾
阿刀田高
平岩弓枝
井上ひさし
田辺聖子
渡辺淳一
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選考委員五木寛之×各候補作  見方・注意点
複雑な心境 総行数62 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
北村薫 全委員 0  
折原一 全委員 0  
京極夏彦 全委員 12 「(引用者注:「風車祭」「嗤う伊右衛門」「OUT」のうち)どれが受賞作になってもおかしくないと考えて選考の席にのぞんだ」「書き手のほうから読者を選別する資質が感じられると言われれば反論するわけにはいかない。」
桐野夏生 全委員 13 「(引用者注:「風車祭」「嗤う伊右衛門」「OUT」のうち)どれが受賞作になってもおかしくないと考えて選考の席にのぞんだ」「女主人公の職場での存在感にくらべて、その犯行手段の幼稚さがいちじるしく物語のリアリティーを損ねていたことも確かだろう。」
池上永一 全委員 11 「(引用者注:「風車祭」「嗤う伊右衛門」「OUT」のうち)どれが受賞作になってもおかしくないと考えて選考の席にのぞんだ」「濃密な描写力に感嘆しながらも、いささかその長大さをもてあましたのも事実だった」
  「過半数の支持を集める突出した作品がなく、受賞作なしに終ったのは、なんとなく複雑な心境だった。」
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他の選考委員
黒岩重吾
阿刀田高
平岩弓枝
井上ひさし
田辺聖子
渡辺淳一
津本陽
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北村薫『ターン』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾 全候補 0  
阿刀田高 全候補 19 「小説家のルーティン・ワークとしてなんの不足もない。だが正直な感想を述べれば、それだけの作品と言えなくもない。現時点で、異次元へのトリップを書くならば、なにか従来の作品にプラスするものがあってしかるべきではないのか。」「わるいところはなにもないけれど、敢て高い評価を感ずることもできなかった。」
平岩弓枝 全候補 18 「今回の候補作品の中、唯一、さわやかさ、明るさを感じさせてくれた。」「惜しむらくは、主人公の男女の描き方が空気のようにさっぱりしすぎていて、人間臭がない。作品に奥行きがないと思うのは、その故ではないのだろうか。」
井上ひさし 全候補 14 「才気が溢れている。」「機知がある。しかし、作者は、簡潔に書かれるべき前半部分をややこしく作りすぎ、読者に門前払いを食わせている。」
田辺聖子 全候補 19 「時間軸のズレというアイデアは面白いが、しかしこの種の題材はこれ以上深まりそうにないので、いっそう趣向が問題だろう。私はこのヒロインが、沈着というより、従容としてみえ、リッパすぎて困った。」「ただラストのあと味がとてもいい。」
渡辺淳一 全候補 5 「部分的には優れた感性やユニークな視点がちりばめられているが、長篇より短篇にしたほうが作者の資質が生きそうである。」
津本陽 全候補 3 「想像の世界へ読者を誘いこむ方法に新味が乏しかった。」
五木寛之 全候補 0  
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他の候補作
折原一 『冤罪者』
京極夏彦 『嗤う伊右衛門』
桐野夏生 『OUT』
池上永一 『風車祭』
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折原一『冤罪者』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾 全候補 5 「現代の不安感が存在するが、ストーリーが余りにも作為的で、読後、脱力感を覚えた。」
阿刀田高 全候補 13 「トリックと謎解きを主眼とする推理小説のものさしで計れば充分にレベルを越えた作品であろう。が、直木賞の候補作として読むとき、文章のあや、人物への目配り、筋運びの整合性などに少しずつ疵があるように感じられた。」
平岩弓枝 全候補 17 「常習犯が犯行を重ねていて、たまたま立件された犯罪だけが無実であり、支援グループが働いて、牢獄から娑婆へひっぱり出した結果、その支援者が彼の犯罪の目撃者になるという皮肉が面白かった。その反面、もう一つの犯罪にかかわり合う人達、殊に恋人を殺された男と、その男の二度目の妻となる女性の描写に、もう一工夫が欲しい。」
井上ひさし 全候補 26 「これは力作、ある冤罪事件を軸に、「この瞬間も誰かに見張られているのでは……」という神経症的な強迫観念を的確に言語化し、小説にしている。」「事件を切り刻み、前後を並べ変えて、謎を発生させるのも大事であるが、この作品の場合、その度が過ぎて、かえって感興を殺ぎ、登場人物の彫りを浅くした。」
田辺聖子 全候補 14 「事件が複雑に入り組んでみえるが、それは狂言廻しの五十嵐友也の扱いによるのではないか。友也の人間が書けていないので読み手が信用してついていけない。」「しかし闇の犯罪を掬う手の、指のまたから〈真実〉はこぼれおちてしまう、その現代の悪の一端を示唆して迫力があった。」
渡辺淳一 全候補 6 「初めは衝動的な行為に走る人間の闇の部分でも探るのかと期待したが、途中からはただの謎解きだけの小説になって失望した。」
津本陽 全候補 3 「謎解きゲームで、推理小説の分野で活躍する人材だろう。」
五木寛之 全候補 0  
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他の候補作
北村薫 『ターン』
京極夏彦 『嗤う伊右衛門』
桐野夏生 『OUT』
池上永一 『風車祭』
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京極夏彦『嗤う伊右衛門』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾 全候補 0  
阿刀田高 全候補 21 「評価のむつかしい作品であった。韜晦趣味も作者の技の一つであることは充分に認めるのだが、読者の精力が韜晦を明かすことにのみ多く費され、それを解き分けてみると、ストーリィそのものは思いのほかたあいがない、そんな作品に感じられてしまった。」
平岩弓枝 全候補 10 「下敷のある作品は、下敷にした作品を越えないと成功とはいえない。」「(引用者注:「四谷怪談」よりも)この作品のほうが、むしろ、リアリティに乏しいという印象を受けた。」
井上ひさし 全候補 26 「この作品は「時代小説のふりをした現代小説」で、その知的なからくりも作者の力量を窺わせるに充分であるが、しかし作者は登場人物たちの心理をいじりすぎ、ややこしくしすぎた。そのせいで、せっかくの大きな力量が小さくちぢこまって表現されてしまった感がある。」
田辺聖子 全候補 30 「南北の「東海道四谷怪談」を下敷に新時代の怪談として挑戦した志は買うが、やはり南北を超えていない。」「伊東喜兵衛の悪辣に対立する情念が稀薄で、もどかしかった。」「ただし読んでいる限りは作者の力感に圧倒されて力んで読めた。」
渡辺淳一 全候補 22 「冒頭部がよく、江戸の闇の妖しさが迫ってきて、新しいタイプの時代小説かと期待を抱いた。」「なによりも不満だったのは、伊右衛門の実態が少しも見えてこないことである。」「これだけの長篇を書く以上は、主人公はくっきりと姿を表すべきで、その基本デッサンをないがしろにしては、気取りだけが先行した底の浅い小説になってしまう。」
津本陽 全候補 9 「後半はしだいに話がいきおいをつけてゆくので、その筆勢は評価するが、全編を見直せば、やはり不要な身振りが多すぎたように思う。」
五木寛之 全候補 12 「(引用者注:「風車祭」「嗤う伊右衛門」「OUT」のうち)どれが受賞作になってもおかしくないと考えて選考の席にのぞんだ」「書き手のほうから読者を選別する資質が感じられると言われれば反論するわけにはいかない。」
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桐野夏生『OUT』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾 全候補 61 「候補作品の中で最も気になった」「氏の描写のしたたかさに感嘆しながら読み進んだ。」「佐竹の過去の殺人描写に至り、完全に白けてしまった。」「私が首を横に振ったのは、作者が佐竹に、快楽殺人ではなく、死を共有したかった、二人にしか分らない天国と地獄などと、文学少女じみた甘ったれたことをいわせているからである。」
阿刀田高 全候補 30 「残酷な事件がつぎつぎに起きて、エキサイティングではあるけれど、読み終って残るものが乏しい。」「快楽殺人の共有感を持たなければ、納得のむつかしい作品である。おもしろければ、それでよいというものではあるまい。筆力は水準を越えていながら、推輓をためらった第一の理由である。」
平岩弓枝 全候補 26 「どこにもありそうな日常の中に生きている四人の女性が殺人にかかわり合うまでの見事な話の進め方にひきこまれたが、後半、死人の解体のあたりからしらけてしまった。」「一人の主婦が他人の殺人の後始末、それも人間を解体する決心をするに至る心理や状況の追いつめ方が弱いために、最後は殺人に進まざるを得なかった主人公に読者が納得しにくくなるのも小説の欠点」
井上ひさし 全候補 55 「今回、評者がもっとも高い評点をつけた」「冒頭の弁当工場の夜勤の光景から第一の死体解体のあたりまでは快調そのものの運びで、まったく完璧である。」「クライマックスは、作者の意図は充分に尊重しながらも、一読者としては、「話をややこしくしすぎて、最後が絵空事になってしまったのでは……。惜しい」と呟やかざるを得なかった。」「評者は最後までこの作品を推したが、しかし最後の最後に折れてしまった」
田辺聖子 全候補 35 「簡潔にして力強く、無駄がなく、美しくさえ感じられる文体。要所をはずさぬ、的確で犀利な人物造型。すごい作品だ。」「途中でもう一人の男性主人公が登場したときから、テーマが二つに割れたと感じた。」「あとのテーマの異常性愛の世界、この作品では単なる嗜癖にとどまっている。人間を逸脱してゆく恐れと恍惚をもっと見据えるべきではないか。」
渡辺淳一 全候補 51 「最も惹かれた。」「前半、とくに冒頭部が秀逸」「欠陥がないわけではなく、その一つは、雅子らが死体処理という異常な行動をするにいたる心理的背景が書き込まれていないことである。」「それでもなお、わたしがこの作品を推したのは、雅子という新しい女主人公を創り出した手柄と、この作品に一貫して溢れる作者の気迫と、現代の激しい鼓動、ビートのようなものを感じたからである。」
津本陽 全候補 47 「ひとりが衝動的に夫を絞殺するあたりから、説得力が乏しくなってくる。」「本職の暴力団員が、金さえもらえば依頼人の素姓もたしかめず、屍体解体をうけおう場面もあるが、すでに説得力はなくなっている。」
五木寛之 全候補 13 「(引用者注:「風車祭」「嗤う伊右衛門」「OUT」のうち)どれが受賞作になってもおかしくないと考えて選考の席にのぞんだ」「女主人公の職場での存在感にくらべて、その犯行手段の幼稚さがいちじるしく物語のリアリティーを損ねていたことも確かだろう。」
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他の候補作
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折原一 『冤罪者』
京極夏彦 『嗤う伊右衛門』
池上永一 『風車祭』
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池上永一『風車祭』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
黒岩重吾 全候補 4 「沖縄の伝承や神事、風俗などがよく描かれているが、小説的構築が未完成である。」
阿刀田高 全候補 25 「作者の強い志に圧倒された。」「が、読みにくいことは相当読みにくい。」「本筋を離れたエピソードが多過ぎるし、ストーリィの発展もゆるく散漫な感じが否めない。それが沖縄風と主張されると私には応ずるすべもない。」「最後の最後まで悩みながら、エンターテインメントとして不足がある、と考えざるをえなかった。」
平岩弓枝 全候補 25 「一番、作者の心の熱さが伝わって来た」「ピシャーマと少年のかかわり合いにロマンがあり、ギイギイという六本足の豚の存在もユーモラスで大いに笑ってしまった。この作者に必要なのは調べ抜いたことの八十パーセントを捨てて書くという姿勢で、それが成功すると捨てたものが行間に滲み出て来て、書いたよりも更に深く、読者を理解させる。」
井上ひさし 全候補 21 「馬力と筆力に脱帽する。」「もっとも言葉にしにくいものに、とにかく言葉を与えて読者の前に提供し得た力業にも敬意を表する。」「ただ均質にびっしりと、ややこしく書いてあるので、なにが大事で、なにが大事でないかが、はっきりしない。そこで読者は「読む地獄」を味わうことになった。」
田辺聖子 全候補 15 「読んで元気の出る小説だ。」「何より登場人物がみな魅力的だ。」「沖縄の風土色ゆたかな、絢爛たる力作。ただ作者があまり入れこみすぎて、やや冗長になった感がなくもない。」
渡辺淳一 全候補 5 「沖縄の方言を駆使して、それなりの効果を上げているが、あまりに長すぎて小説的緊迫感に欠けていた。」
津本陽 全候補 7 「石垣島の風土と沖縄の土俗の本質をつかんでいる点をおおいに買うが、あまりにもボリュームが多すぎて、小説として完成させるにはもっと刈りこみが必要であろう。」
五木寛之 全候補 11 「(引用者注:「風車祭」「嗤う伊右衛門」「OUT」のうち)どれが受賞作になってもおかしくないと考えて選考の席にのぞんだ」「濃密な描写力に感嘆しながらも、いささかその長大さをもてあましたのも事実だった」
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他の候補作
北村薫 『ターン』
折原一 『冤罪者』
京極夏彦 『嗤う伊右衛門』
桐野夏生 『OUT』
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