直木賞のすべて
直木賞のすべて

第104回

=受賞者=
古川 薫

=候補者=
酒見賢一
東郷 隆
もりたなるお
宮城谷昌光
出久根達郎
堀 和久


直木賞-選評の概要
トップページ
受賞作・候補作一覧
受賞作家の群像
候補作家の群像
選考委員の群像
小研究
大衆選考会
リンク集
マップ

ページの最後へ


Last Update[H19]2007/1/31

104   一覧へ 103前の回へ 後の回へ105
 平成2年/1990年下半期
 (平成3年/1991年1月16日決定発表/『オール讀物』平成3年/1991年3月号選評掲載)
選考委員  渡辺淳一 平岩弓枝 陳舜臣 井上ひさし 田辺聖子 五木寛之 黒岩重吾 山口瞳 藤沢周平
選評総行数  101 61 111 72 117 71 84 117 143
評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言 評言
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
古川薫 『漂泊者のアリア』 評言 24 19 33 33 14 23 38 47 26
酒見賢一 「墨攻」 評言 8 7 27 5 10 9 0 5 17
東郷隆 「水阿弥陀仏」その他2篇 評言 11 5 8 5 21 7 23 0 13
もりたなるお 『銃殺』 評言 20 7 6 6 12 8 0 16 22
宮城谷昌光 『天空の舟』 評言 11 12 29 18 18 8 9 31 16
出久根達郎 「無明の蝶」その他3篇 評言 15 8 5 5 16 8 10 0 16
堀和久 『死にとうない』 評言 9 3 11 5 9 8 0 0 33
                 
見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成3年/1991年3月号
1行当たりの文字数:13字


選考委員渡辺淳一×各候補作  見方・注意点
鮮やかな義江像 総行数101 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
古川薫 全委員 24 「今回のはまさしく手応えがあった。」「読みすすむうちに主人公に惹かれ、頁を追うのが急がされたのは久し振りである。」「瑕瑾をこえて、さまざまな屈折を経て成長した義江という人物が鮮やかに浮かび上り、しかもその主人公を見る作者の目のあたたかさがよく伝わってくる。」
酒見賢一 全委員 8 「筋書きを追うに急で、小説のまろやかさに欠ける。若い人らしい熱気は認めるが、この文章の荒さでは小説的感興を呼び起すにはほど遠い。」
東郷隆 全委員 11 「歴史的怪奇小説という独特の世界に挑み、それなりに読ませる。だがときに資料の羅列や解説にとどまり、奇をてらうだけに終る危うさがある。せっかく怪奇ものを書くなら、そこから人間性の本質に迫る魔性のようなものを、引きずり出して欲しいものである。」
もりたなるお 全委員 20 「二・二六事件を皇道派の将校の側から書いたところが新鮮で迫力があった。」「主人公がなぜ皇道派にくわわるにいたったのか、その部分が抜けているところが小説の彫りを浅くしてしまった。文章は長年のキャリアを感じさせてたしかだが、そのたしかさが小説のつくりにまでおよぶと、少し問題が生じてくる。」
宮城谷昌光 全委員 11 「小説の仕掛けの大きさと創作意欲には感心した。しかしストーリーを動かすにはそれなりのディテールが必要で、それを無視すると、いわゆる梗概のような痩せた小説になってしまう。」
出久根達郎 全委員 15 「なかなかの小説巧者で、小太刀の名手という感じを受けた。表題作(引用者注:「無明の蝶」)と「四人め」がとくに印象に残ったが、少し人物やストーリーを動かしすぎる嫌いがある。読者へのサービスのつもりかもしれないが、あまり話をつくりすぎるとリアリティを失い、興醒めする。」
堀和久 全委員 9 「四度目の候補で、その努力には頭が下るが、初めと最後の章がいささか陳腐で、いま一歩およばなかった。しかし中半(引用者中略)は力強く、氏の候補作のなかでも今回のが最も充実していた。」
  「今回の候補作は変化に富み、それぞれに個性的で読み甲斐があった。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
平岩弓枝
陳舜臣
井上ひさし
田辺聖子
五木寛之
黒岩重吾
山口瞳
藤沢周平
  ページの先頭へ

選考委員平岩弓枝×各候補作  見方・注意点
「漂泊者のアリア」に感動 総行数61 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
古川薫 全委員 19 「登場人物の描写が秀れていて感銘を受けました。」「一人の人間の人生の怖しさ、面白さ、哀しさを描き切った古川さんの力量に感動しています。」
酒見賢一 全委員 7 「この前も書いたように思いますが、物語の面白さが先行して、人間を描くことがおろそかであっては、小説とはいえないのではないかと私は考えています。」
東郷隆 全委員 5 「その作品を通じて、読者になにがいいたいのか、作者の心がどこにあるのかが曖昧なところで損をしたようです。」
もりたなるお 全委員 7 「力のこもったいい作品ですが、終章を女性の視点にするならば最初の書き出しの部分、ドラマの進め方の計算が違うのではないかという気がしました。」
宮城谷昌光 全委員 12 「なかなかの力作で興味深く読みましたが、出て来る人物が、いわゆる中国の歴史小説のパターンになっていて、作者のオリジナリティが生かされていないのが惜しいと思いました。」
出久根達郎 全委員 8 「好感を持ちました。たしかに文章には少々、無造作なところがあるのですが、独特の小世界が巧みに書かれていて、気持のよい作品だと思います。」
堀和久 全委員 3 「宗教家の伝記というのは難かしいものだと思いました。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
渡辺淳一
陳舜臣
井上ひさし
田辺聖子
五木寛之
黒岩重吾
山口瞳
藤沢周平
  ページの先頭へ

選考委員陳舜臣×各候補作  見方・注意点
心強いこと 総行数111 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
古川薫 全委員 33 「フィクションをまじえないという原則をつらぬき、藤原義江にまつわる大量の資料をみごとに処理している。」「作者の視線のあたたかさがかんじられる。伝記小説には、よくべったりと寄りかかった姿勢のものがあるが、この作品は主人公をつきはなしている。(引用者中略)その適当な間隔に好意がもてた。」
酒見賢一 全委員 27 「その手腕はみごとである。だが、前作の『後宮小説』が作者のフィクションでつくられ、時代さえ特定できない物語であったのにくらべると、『墨攻』はどこかでタガをはめられ、伸縮の自在に苦しんでいるふしがうかがわれる。」
東郷隆 全委員 8 「秀作であるだけに、おそろしさの奥にかくされた人間性に、作者の筆がその直前でとまっているような、歯痒さがかんじられた。物語ることに夢中になりすぎたせいかもしれない。」
もりたなるお 全委員 6 「主人公が皇道派に共鳴した背景が、十分説得力をもって書かれていない。皇道派善玉アプリオリが作品を軽くしたようにおもう。」
宮城谷昌光 全委員 29 「わずかなとっかかりを、丹念につなぎ合わせ、深いブランクを埋め、壮大な物語を構成した筆力は、端倪すべからざるものがある。」「欲をいえば、文字のなかった世界の「太古の響き」とでもいうべきものを、もっと轟かせてほしかった。」
出久根達郎 全委員 5 「達者な作品である。劇画化がオーバーで、そのため登場人物の存在感がかえって薄れてしまった。」
堀和久 全委員 11 「大久保長安や春日局のころにくらべると、格段によくなっている。この作品では悲壮感過剰のところが浮いてくる。宗教者は小説化するのが難しい対象で、それに挑戦した意気は壮とするに足るが、どうやら壁が高すぎたようだ。」
  「今回の候補作諸篇は、ぜんたいに前回にくらべてレベルが高かったようにおもう。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
渡辺淳一
平岩弓枝
井上ひさし
田辺聖子
五木寛之
黒岩重吾
山口瞳
藤沢周平
  ページの先頭へ

選考委員井上ひさし×各候補作  見方・注意点
おもしろく、かつ深く 総行数72 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
古川薫 全委員 33 「藤原義江が人生の転機にさしかかるたびに現われる善意の人びとを入念に描くことで、作者は「人が人を創る」という人生の真実の一つを読者に分かち与えることにみごとに成功した。」「また、読後の読者は「人生とはものさびしいものだ」という感想を抱かれるかもしれない。この一種の哀感は、作者の年輪が自然に紡ぎ出したものにちがいない。」
酒見賢一 全委員 5 「才気あふれる素材処理術と情報を満載した独得の文章。」「一読して三嘆すべき立派な作品だった。」
東郷隆 全委員 5 「薀蓄と諧謔味のある文章。」「一読して三嘆すべき立派な作品だった。」
もりたなるお 全委員 6 「テーマにたいする凄まじい執念と平明で安定した文章。」「一読して三嘆すべき立派な作品だった。」
宮城谷昌光 全委員 18 「構想は中国古代に材を仰いですこぶる広大、文章は格調高く、かつ融通無碍、しかもそのおもしろさは彼の三国志をさえ凌ぐかとおもわれ、「これは大変な書き手が現われたものだ」と度胆を抜かれた。」「最後まで、この作品と「漂泊者のアリア」(古川薫)との二作受賞にこだわらざるを得なかった。」
出久根達郎 全委員 5 「細部の豊かさおもしろさと自在な文章。」「一読して三嘆すべき立派な作品だった。」
堀和久 全委員 5 「主題の大きさと速度感のある文章。」「一読して三嘆すべき立派な作品だった。」
  「「読んでいるあいだはとてもたのしく、そのなかからこれはという一作にしぼるのは、かなりむずかしかった」というのが、評者の率直な感想である。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
渡辺淳一
平岩弓枝
陳舜臣
田辺聖子
五木寛之
黒岩重吾
山口瞳
藤沢周平
  ページの先頭へ

選考委員田辺聖子×各候補作  見方・注意点
昂揚の佳作群 総行数117 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
古川薫 全委員 14 「抑制の利いたそっけないほどの文体が、かえって波乱に満ちた型やぶりの芸術家の生涯を描き出すのに功あった。」「作者の目は冷静だが、暖い。志高き小説と思った。ほとんど満票に近かった。」
酒見賢一 全委員 10 「独自の文体も確立され、洗練されてきた。まだまだお若いことだし、材料も無限、ということを身を以て証された。今後に期待し、注目したい。」
東郷隆 全委員 21 「作品集『人造記』の中で『上海魚水石』は候補に上っていないが、私はこれも面白く読んだ。いうならむしろ、『上海魚水石』がいちばんいいように思った。」「『上海魚水石』は文学的風韻にみちていた……。それに比してたとえば『人造記』という作品中、王朝末期のオハナシの中に、突如、「カレー」という語が不用意に飛び出してくる。(引用者中略)読者は作者のめくらましに酔いたいのに。」
もりたなるお 全委員 12 「氏のお作はいつも読後、ある重い感動が残るのだが、またいつもどこか、もどかしい不満もある。この作品の主人公も静止的で、それが盛り上りに欠ける印象を与えるのだろうか。」
宮城谷昌光 全委員 18 「私はこの作品も推したのだが、(引用者注:「漂泊者のアリア」との)二作受賞とならなかった。」「不思議な小説だが、イメージが鮮烈で、人間がいきいきしていて、上下二冊だが、巻を措く能わずという面白い作品である。」「意欲的な新人が彗星の如く現れたと大いに楽しく思ったのだが……。期待したい大型新人である。」
出久根達郎 全委員 16 「面白い素材を、上手な話術で、しかも人生の蓄積深い(ということは、人生に一家言ある、ということだ)オトナが書いているのだから、大人が読んで面白からぬはずはない、……というような小説。しかしこの作品のよさも危うさも、一にかかって、そこのところに在る。」「しかしまあ、私は大いに楽しまされた。」
堀和久 全委員 9 「堀氏の従前の候補作の中ではもっとも共感できた力作、修行時代の主人公の顔は力強いイメージであった。が、名僧とうたわれてからの落差が大きすぎて混乱する。前後にもうひと工夫あったほうがよかったろうか。」
  「今回は粒選りの作品が揃ったという印象。」「今回の候補作品のどれをとっても受賞圏内にある佳作のように思われ、また「日本文学振興協会」の目くばりもよくゆきとどいているように感じた。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
渡辺淳一
平岩弓枝
陳舜臣
井上ひさし
五木寛之
黒岩重吾
山口瞳
藤沢周平
  ページの先頭へ

選考委員五木寛之×各候補作  見方・注意点
古川薫氏の実績に脱帽 総行数71 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
古川薫 全委員 23 「今回の候補作のなかでは、(引用者中略)最も安定した作家的力量を発揮されていた。」「ただ、直木賞はあくまで新人賞であるという私の固定観念が、この作品を無条件で推すことをためらわせるところがあったのも事実である。」「多少の躊躇はあったが、全選考委員が一致しての評価であれば、異論のあろうはずがない。」
酒見賢一 全委員 9 「すでに一家をなした感のある堂々たる作風で、これが受賞作として推されたとしても異存はなかっただろう。登場後みじかい間に、ここまで完熟する才能には恐るべきものがある。」
東郷隆 全委員 7 「「水阿弥陀仏」が奇妙に印象に残った。ふと魯迅の「故事新編」の作風を連想したのは、この作家の才能にただならぬものを感じたからである。」
もりたなるお 全委員 8 「逝きし人々への鎮魂の譜として、作者の真情がよく伝わってくる力作だ。登場人物たちをつきはなして視ることがむずかしい点が、この作品に評価のわかれるところではあるまいか。」
宮城谷昌光 全委員 8 「壮大きわまる長篇で、このむずかしい時代に挑んだ宮城谷昌光さんの力業に小説家として羨望の念を禁ずることができなかった。最後まで受賞圏内にとどまったのも当然だろう。」
出久根達郎 全委員 8 「独特の小世界をつむぎ出した佳作である。味のある文章と肩肘張らない語り口で気楽に読みすすむことができるが、その実、なかなかしたたかな小説づくりの仕掛けが隠されていると見た。」
堀和久 全委員 8 「宗教家を魅力的に描くことは剣豪をいきいきと描くことよりも何十倍もむずかしいことを痛感させられた。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
渡辺淳一
平岩弓枝
陳舜臣
井上ひさし
田辺聖子
黒岩重吾
山口瞳
藤沢周平
  ページの先頭へ

選考委員黒岩重吾×各候補作  見方・注意点
年輪の魅力 総行数84 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
古川薫 全委員 38 「私が最も惹かれたのは、古川薫氏の「漂泊者のアリア」である。」「藤原義江を描く作者の眼光は鋭く、また慈愛に満ちている。」「淡々と描きながらも、主人公の人生が重くのしかかって来るのは、作者の才能に年輪が加わったせいではないか。」
酒見賢一 全委員 0  
東郷隆 全委員 23 「票が入れば、受賞作として良い、と考えていたが、余り票が入らなかった。」「私は「水阿弥陀仏」を実に面白く読んだ。この面白さは理屈抜きだが、結構、足利義尚を通し権力をからかい、憐れんでいる。」「この一作なら良いが、「放屁権介」「人造記」となると作品の濃度が落ちて来る。」
もりたなるお 全委員 0  
宮城谷昌光 全委員 9 「夏王朝となると半分は神話の世界である。私としては、もっと伊尹に焦点を当て、自由奔放に描いて欲しかった。そのせいか、この種の小説に必要な迫力が余り感じられない。」
出久根達郎 全委員 10 「古本屋という商売が醸し出す黴臭い雰囲気、また裏に隠されている商魂などがよく描かれている。ただ小説を作り過ぎているために、作品が浅く感じられたのは残念である。作者がそのことに気付いたなら凄い小説が生まれそうな気がする。」
堀和久 全委員 0  
  「今回の候補作は充実していた。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
渡辺淳一
平岩弓枝
陳舜臣
井上ひさし
田辺聖子
五木寛之
山口瞳
藤沢周平
  ページの先頭へ

選考委員山口瞳×各候補作  見方・注意点
プロの文章 総行数117 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
古川薫 全委員 47 「抜きん出ていて一歩も二歩もリードしている。」「いつもの力みや文学臭が消えて、端正で、いい味の文章になっている。」「下関の出てくる所、九州の田舎町の描写が哀れ深くていい。」「古川さんが純粋にもっといいものを書きたいという願いを何十年も保ち続けたことに、ただただ頭が下る思いだ。」
酒見賢一 全委員 5 「私は前回の『後宮小説』のほうを面白く読んだ。今回は勉強して書いた小説で、つまり説明があって描写がない。」
東郷隆 全委員 0  
もりたなるお 全委員 16 「二・二六事件の全容を明らかにしたいという作者の執念に打たれた。」「第八章「蝉の声降る」の緊迫感が圧巻だと思った。私はこれが受賞作となっても少しも不思議ではないと思っていたが、意外に票数が伸びなかった。」
宮城谷昌光 全委員 31 「凄い人が出てきたもんだと思った。」「初めは(引用者中略)文章に辟易したが、次第にストーリーの面白さで読まされてしまった。」「しかし、私見によれば、これは断じてプロの文章ではない。直木賞はエンターテインメントの文学賞であるのだから、直木賞受賞を狙うならば読み易さということについて一考あってしかるべきだ。」
出久根達郎 全委員 0  
堀和久 全委員 0  
  「高見順さんふうに言えば臍のある小説がない。」「今回は小説らしい小説がなかった。ほとんどが一代記か実録だった。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
渡辺淳一
平岩弓枝
陳舜臣
井上ひさし
田辺聖子
五木寛之
黒岩重吾
藤沢周平
  ページの先頭へ

選考委員藤沢周平×各候補作  見方・注意点
本来の実力発揮 総行数143 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
古川薫 全委員 26 「新聞小説のせいか編年体ふうに書きいそいだ印象があり、また重要な個所でやや突っこみ不足を感じさせるところもあって、私はそれについては不満を述べたが、しかし総体として眺めれば、この作家の安定した筆力は候補作の中で頭ひとつ抜け出ていた。特に孤独な境涯に落ちる晩年の描写が、伝説的なテナー藤原義江の孤影を陰影深く彫り上げて、作者の本来具えている実力を示していた。」
酒見賢一 全委員 17 「短い話の中に(引用者中略)いきいきした人間の動きが書かれていた。」「前々回候補作「後宮小説」の衝撃はないものの、そのかわりに一段とまとまりがよくなり、酒見さんが着実に一人の作家に成長しつつあることを感じさせるものだった。」
東郷隆 全委員 13 「勉強のあとが窺え、かつよくまとまった作品だった。中でも出来は「水阿弥陀仏」が一番かと思われた」「難を言えば資料に執着しすぎて小説的なのびを欠いた感じが気になったが、個性的な作家になりそうな可能性がみられる。」
もりたなるお 全委員 22 「皇道派が掲げる理念の全体像、あるいはのちに二・二六事件となる蹶起に対する主人公の認識の甘さがあるようで、そこが気持にひっかかった。」「また、私はもりたさんの文章を信用しているのだが、「銃殺」ではやや緊張感を欠く表現がみられた。」
宮城谷昌光 全委員 16 「雄大な叙事詩を読んだような読後感が残る作品だった。しかしこの作品には無視出来ない平板さ、風景や登場人物が立体的に立ち上がって来ないという欠点があった。」「とはいうものの、ほとんど史料というものもないはずの古代中国の興亡の姿を、ここまでリアルに描き出した手腕が凡手であるはずがなく、次の作品に大いに期待したい作家である。」
出久根達郎 全委員 16 「手の内の古本商売にかかわる話はいきいきと描かれているのに対し、話を作ったと思われる部分、あるいははっきりと虚構とわかるものになると、作意が目立つ弱点があった。」「候補作四篇の中では、(引用者中略)「猫じゃ猫じゃ」がいいと思った。猫の生態の描写も巧みで、佳作である。」
堀和久 全委員 33 「第二章に入ると内容、表現ともに一変して引きしまり、緊張感みなぎる小説になる。圧巻は主人公である失意の修行僧が悟りをもとめて旅に出る部分」「この小説は第一章と最終章が不出来で損をしているが、概ね受賞の水準に達していて、堀さんの進境を窺わせる作品だった。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の選考委員
渡辺淳一
平岩弓枝
陳舜臣
井上ひさし
田辺聖子
五木寛之
黒岩重吾
山口瞳
  ページの先頭へ


古川薫『漂泊者のアリア』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一 全候補 24 「今回のはまさしく手応えがあった。」「読みすすむうちに主人公に惹かれ、頁を追うのが急がされたのは久し振りである。」「瑕瑾をこえて、さまざまな屈折を経て成長した義江という人物が鮮やかに浮かび上り、しかもその主人公を見る作者の目のあたたかさがよく伝わってくる。」
平岩弓枝 全候補 19 「登場人物の描写が秀れていて感銘を受けました。」「一人の人間の人生の怖しさ、面白さ、哀しさを描き切った古川さんの力量に感動しています。」
陳舜臣 全候補 33 「フィクションをまじえないという原則をつらぬき、藤原義江にまつわる大量の資料をみごとに処理している。」「作者の視線のあたたかさがかんじられる。伝記小説には、よくべったりと寄りかかった姿勢のものがあるが、この作品は主人公をつきはなしている。(引用者中略)その適当な間隔に好意がもてた。」
井上ひさし 全候補 33 「藤原義江が人生の転機にさしかかるたびに現われる善意の人びとを入念に描くことで、作者は「人が人を創る」という人生の真実の一つを読者に分かち与えることにみごとに成功した。」「また、読後の読者は「人生とはものさびしいものだ」という感想を抱かれるかもしれない。この一種の哀感は、作者の年輪が自然に紡ぎ出したものにちがいない。」
田辺聖子 全候補 14 「抑制の利いたそっけないほどの文体が、かえって波乱に満ちた型やぶりの芸術家の生涯を描き出すのに功あった。」「作者の目は冷静だが、暖い。志高き小説と思った。ほとんど満票に近かった。」
五木寛之 全候補 23 「今回の候補作のなかでは、(引用者中略)最も安定した作家的力量を発揮されていた。」「ただ、直木賞はあくまで新人賞であるという私の固定観念が、この作品を無条件で推すことをためらわせるところがあったのも事実である。」「多少の躊躇はあったが、全選考委員が一致しての評価であれば、異論のあろうはずがない。」
黒岩重吾 全候補 38 「私が最も惹かれたのは、古川薫氏の「漂泊者のアリア」である。」「藤原義江を描く作者の眼光は鋭く、また慈愛に満ちている。」「淡々と描きながらも、主人公の人生が重くのしかかって来るのは、作者の才能に年輪が加わったせいではないか。」
山口瞳 全候補 47 「抜きん出ていて一歩も二歩もリードしている。」「いつもの力みや文学臭が消えて、端正で、いい味の文章になっている。」「下関の出てくる所、九州の田舎町の描写が哀れ深くていい。」「古川さんが純粋にもっといいものを書きたいという願いを何十年も保ち続けたことに、ただただ頭が下る思いだ。」
藤沢周平 全候補 26 「新聞小説のせいか編年体ふうに書きいそいだ印象があり、また重要な個所でやや突っこみ不足を感じさせるところもあって、私はそれについては不満を述べたが、しかし総体として眺めれば、この作家の安定した筆力は候補作の中で頭ひとつ抜け出ていた。特に孤独な境涯に落ちる晩年の描写が、伝説的なテナー藤原義江の孤影を陰影深く彫り上げて、作者の本来具えている実力を示していた。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
酒見賢一 「墨攻」
東郷隆 「水阿弥陀仏」その他2篇
もりたなるお 『銃殺』
宮城谷昌光 『天空の舟』
出久根達郎 「無明の蝶」その他3篇
堀和久 『死にとうない』
  ページの先頭へ

酒見賢一「墨攻」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一 全候補 8 「筋書きを追うに急で、小説のまろやかさに欠ける。若い人らしい熱気は認めるが、この文章の荒さでは小説的感興を呼び起すにはほど遠い。」
平岩弓枝 全候補 7 「この前も書いたように思いますが、物語の面白さが先行して、人間を描くことがおろそかであっては、小説とはいえないのではないかと私は考えています。」
陳舜臣 全候補 27 「その手腕はみごとである。だが、前作の『後宮小説』が作者のフィクションでつくられ、時代さえ特定できない物語であったのにくらべると、『墨攻』はどこかでタガをはめられ、伸縮の自在に苦しんでいるふしがうかがわれる。」
井上ひさし 全候補 5 「才気あふれる素材処理術と情報を満載した独得の文章。」「一読して三嘆すべき立派な作品だった。」
田辺聖子 全候補 10 「独自の文体も確立され、洗練されてきた。まだまだお若いことだし、材料も無限、ということを身を以て証された。今後に期待し、注目したい。」
五木寛之 全候補 9 「すでに一家をなした感のある堂々たる作風で、これが受賞作として推されたとしても異存はなかっただろう。登場後みじかい間に、ここまで完熟する才能には恐るべきものがある。」
黒岩重吾 全候補 0  
山口瞳 全候補 5 「私は前回の『後宮小説』のほうを面白く読んだ。今回は勉強して書いた小説で、つまり説明があって描写がない。」
藤沢周平 全候補 17 「短い話の中に(引用者中略)いきいきした人間の動きが書かれていた。」「前々回候補作「後宮小説」の衝撃はないものの、そのかわりに一段とまとまりがよくなり、酒見さんが着実に一人の作家に成長しつつあることを感じさせるものだった。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
古川薫 『漂泊者のアリア』
東郷隆 「水阿弥陀仏」その他2篇
もりたなるお 『銃殺』
宮城谷昌光 『天空の舟』
出久根達郎 「無明の蝶」その他3篇
堀和久 『死にとうない』
  ページの先頭へ

東郷隆「水阿弥陀仏」その他2篇×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一 全候補 11 「歴史的怪奇小説という独特の世界に挑み、それなりに読ませる。だがときに資料の羅列や解説にとどまり、奇をてらうだけに終る危うさがある。せっかく怪奇ものを書くなら、そこから人間性の本質に迫る魔性のようなものを、引きずり出して欲しいものである。」
平岩弓枝 全候補 5 「その作品を通じて、読者になにがいいたいのか、作者の心がどこにあるのかが曖昧なところで損をしたようです。」
陳舜臣 全候補 8 「秀作であるだけに、おそろしさの奥にかくされた人間性に、作者の筆がその直前でとまっているような、歯痒さがかんじられた。物語ることに夢中になりすぎたせいかもしれない。」
井上ひさし 全候補 5 「薀蓄と諧謔味のある文章。」「一読して三嘆すべき立派な作品だった。」
田辺聖子 全候補 21 「作品集『人造記』の中で『上海魚水石』は候補に上っていないが、私はこれも面白く読んだ。いうならむしろ、『上海魚水石』がいちばんいいように思った。」「『上海魚水石』は文学的風韻にみちていた……。それに比してたとえば『人造記』という作品中、王朝末期のオハナシの中に、突如、「カレー」という語が不用意に飛び出してくる。(引用者中略)読者は作者のめくらましに酔いたいのに。」
五木寛之 全候補 7 「「水阿弥陀仏」が奇妙に印象に残った。ふと魯迅の「故事新編」の作風を連想したのは、この作家の才能にただならぬものを感じたからである。」
黒岩重吾 全候補 23 「票が入れば、受賞作として良い、と考えていたが、余り票が入らなかった。」「私は「水阿弥陀仏」を実に面白く読んだ。この面白さは理屈抜きだが、結構、足利義尚を通し権力をからかい、憐れんでいる。」「この一作なら良いが、「放屁権介」「人造記」となると作品の濃度が落ちて来る。」
山口瞳 全候補 0  
藤沢周平 全候補 13 「勉強のあとが窺え、かつよくまとまった作品だった。中でも出来は「水阿弥陀仏」が一番かと思われた」「難を言えば資料に執着しすぎて小説的なのびを欠いた感じが気になったが、個性的な作家になりそうな可能性がみられる。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
古川薫 『漂泊者のアリア』
酒見賢一 「墨攻」
もりたなるお 『銃殺』
宮城谷昌光 『天空の舟』
出久根達郎 「無明の蝶」その他3篇
堀和久 『死にとうない』
  ページの先頭へ

もりたなるお『銃殺』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一 全候補 20 「二・二六事件を皇道派の将校の側から書いたところが新鮮で迫力があった。」「主人公がなぜ皇道派にくわわるにいたったのか、その部分が抜けているところが小説の彫りを浅くしてしまった。文章は長年のキャリアを感じさせてたしかだが、そのたしかさが小説のつくりにまでおよぶと、少し問題が生じてくる。」
平岩弓枝 全候補 7 「力のこもったいい作品ですが、終章を女性の視点にするならば最初の書き出しの部分、ドラマの進め方の計算が違うのではないかという気がしました。」
陳舜臣 全候補 6 「主人公が皇道派に共鳴した背景が、十分説得力をもって書かれていない。皇道派善玉アプリオリが作品を軽くしたようにおもう。」
井上ひさし 全候補 6 「テーマにたいする凄まじい執念と平明で安定した文章。」「一読して三嘆すべき立派な作品だった。」
田辺聖子 全候補 12 「氏のお作はいつも読後、ある重い感動が残るのだが、またいつもどこか、もどかしい不満もある。この作品の主人公も静止的で、それが盛り上りに欠ける印象を与えるのだろうか。」
五木寛之 全候補 8 「逝きし人々への鎮魂の譜として、作者の真情がよく伝わってくる力作だ。登場人物たちをつきはなして視ることがむずかしい点が、この作品に評価のわかれるところではあるまいか。」
黒岩重吾 全候補 0  
山口瞳 全候補 16 「二・二六事件の全容を明らかにしたいという作者の執念に打たれた。」「第八章「蝉の声降る」の緊迫感が圧巻だと思った。私はこれが受賞作となっても少しも不思議ではないと思っていたが、意外に票数が伸びなかった。」
藤沢周平 全候補 22 「皇道派が掲げる理念の全体像、あるいはのちに二・二六事件となる蹶起に対する主人公の認識の甘さがあるようで、そこが気持にひっかかった。」「また、私はもりたさんの文章を信用しているのだが、「銃殺」ではやや緊張感を欠く表現がみられた。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
古川薫 『漂泊者のアリア』
酒見賢一 「墨攻」
東郷隆 「水阿弥陀仏」その他2篇
宮城谷昌光 『天空の舟』
出久根達郎 「無明の蝶」その他3篇
堀和久 『死にとうない』
  ページの先頭へ

宮城谷昌光『天空の舟』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一 全候補 11 「小説の仕掛けの大きさと創作意欲には感心した。しかしストーリーを動かすにはそれなりのディテールが必要で、それを無視すると、いわゆる梗概のような痩せた小説になってしまう。」
平岩弓枝 全候補 12 「なかなかの力作で興味深く読みましたが、出て来る人物が、いわゆる中国の歴史小説のパターンになっていて、作者のオリジナリティが生かされていないのが惜しいと思いました。」
陳舜臣 全候補 29 「わずかなとっかかりを、丹念につなぎ合わせ、深いブランクを埋め、壮大な物語を構成した筆力は、端倪すべからざるものがある。」「欲をいえば、文字のなかった世界の「太古の響き」とでもいうべきものを、もっと轟かせてほしかった。」
井上ひさし 全候補 18 「構想は中国古代に材を仰いですこぶる広大、文章は格調高く、かつ融通無碍、しかもそのおもしろさは彼の三国志をさえ凌ぐかとおもわれ、「これは大変な書き手が現われたものだ」と度胆を抜かれた。」「最後まで、この作品と「漂泊者のアリア」(古川薫)との二作受賞にこだわらざるを得なかった。」
田辺聖子 全候補 18 「私はこの作品も推したのだが、(引用者注:「漂泊者のアリア」との)二作受賞とならなかった。」「不思議な小説だが、イメージが鮮烈で、人間がいきいきしていて、上下二冊だが、巻を措く能わずという面白い作品である。」「意欲的な新人が彗星の如く現れたと大いに楽しく思ったのだが……。期待したい大型新人である。」
五木寛之 全候補 8 「壮大きわまる長篇で、このむずかしい時代に挑んだ宮城谷昌光さんの力業に小説家として羨望の念を禁ずることができなかった。最後まで受賞圏内にとどまったのも当然だろう。」
黒岩重吾 全候補 9 「夏王朝となると半分は神話の世界である。私としては、もっと伊尹に焦点を当て、自由奔放に描いて欲しかった。そのせいか、この種の小説に必要な迫力が余り感じられない。」
山口瞳 全候補 31 「凄い人が出てきたもんだと思った。」「初めは(引用者中略)文章に辟易したが、次第にストーリーの面白さで読まされてしまった。」「しかし、私見によれば、これは断じてプロの文章ではない。直木賞はエンターテインメントの文学賞であるのだから、直木賞受賞を狙うならば読み易さということについて一考あってしかるべきだ。」
藤沢周平 全候補 16 「雄大な叙事詩を読んだような読後感が残る作品だった。しかしこの作品には無視出来ない平板さ、風景や登場人物が立体的に立ち上がって来ないという欠点があった。」「とはいうものの、ほとんど史料というものもないはずの古代中国の興亡の姿を、ここまでリアルに描き出した手腕が凡手であるはずがなく、次の作品に大いに期待したい作家である。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
古川薫 『漂泊者のアリア』
酒見賢一 「墨攻」
東郷隆 「水阿弥陀仏」その他2篇
もりたなるお 『銃殺』
出久根達郎 「無明の蝶」その他3篇
堀和久 『死にとうない』
  ページの先頭へ

出久根達郎「無明の蝶」その他3篇×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一 全候補 15 「なかなかの小説巧者で、小太刀の名手という感じを受けた。表題作(引用者注:「無明の蝶」)と「四人め」がとくに印象に残ったが、少し人物やストーリーを動かしすぎる嫌いがある。読者へのサービスのつもりかもしれないが、あまり話をつくりすぎるとリアリティを失い、興醒めする。」
平岩弓枝 全候補 8 「好感を持ちました。たしかに文章には少々、無造作なところがあるのですが、独特の小世界が巧みに書かれていて、気持のよい作品だと思います。」
陳舜臣 全候補 5 「達者な作品である。劇画化がオーバーで、そのため登場人物の存在感がかえって薄れてしまった。」
井上ひさし 全候補 5 「細部の豊かさおもしろさと自在な文章。」「一読して三嘆すべき立派な作品だった。」
田辺聖子 全候補 16 「面白い素材を、上手な話術で、しかも人生の蓄積深い(ということは、人生に一家言ある、ということだ)オトナが書いているのだから、大人が読んで面白からぬはずはない、……というような小説。しかしこの作品のよさも危うさも、一にかかって、そこのところに在る。」「しかしまあ、私は大いに楽しまされた。」
五木寛之 全候補 8 「独特の小世界をつむぎ出した佳作である。味のある文章と肩肘張らない語り口で気楽に読みすすむことができるが、その実、なかなかしたたかな小説づくりの仕掛けが隠されていると見た。」
黒岩重吾 全候補 10 「古本屋という商売が醸し出す黴臭い雰囲気、また裏に隠されている商魂などがよく描かれている。ただ小説を作り過ぎているために、作品が浅く感じられたのは残念である。作者がそのことに気付いたなら凄い小説が生まれそうな気がする。」
山口瞳 全候補 0  
藤沢周平 全候補 16 「手の内の古本商売にかかわる話はいきいきと描かれているのに対し、話を作ったと思われる部分、あるいははっきりと虚構とわかるものになると、作意が目立つ弱点があった。」「候補作四篇の中では、(引用者中略)「猫じゃ猫じゃ」がいいと思った。猫の生態の描写も巧みで、佳作である。」
        - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
他の候補作
古川薫 『漂泊者のアリア』
酒見賢一 「墨攻」
東郷隆 「水阿弥陀仏」その他2篇
もりたなるお 『銃殺』
宮城谷昌光 『天空の舟』
堀和久 『死にとうない』
  ページの先頭へ

堀和久『死にとうない』×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
渡辺淳一 全候補 9 「四度目の候補で、その努力には頭が下るが、初めと最後の章がいささか陳腐で、いま一歩およばなかった。しかし中半(引用者中略)は力強く、氏の候補作のなかでも今回のが最も充実していた。」
平岩弓枝 全候補 3 「宗教家の伝記というのは難かしいものだと思いました。」
陳舜臣 全候補 11 「大久保長安や春日局のころにくらべると、格段によくなっている。この作品では悲壮感過剰のところが浮いてくる。宗教者は小説化するのが難しい対象で、それに挑戦した意気は壮とするに足るが、どうやら壁が高すぎたようだ。」
井上ひさし 全候補 5 「主題の大きさと速度感のある文章。」「一読して三嘆すべき立派な作品だった。」
田辺聖子 全候補 9 「堀氏の従前の候補作の中ではもっとも共感