直木賞のすべて
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第10回

=候補者=
堤 千代
宇井無愁
大庭さち子
松坂忠則
岩下俊作


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 昭和14年/1939年下半期
 (昭和15年/1940年2月14日決定発表/『文藝春秋』昭和15年/1940年4月号経緯掲載)
選考委員  佐藤春夫 白井喬二 室生犀星 大佛次郎 瀧井孝作 小島政二郎 菊池寛 佐佐木茂索 三上於菟吉 久米正雄 吉川英治
選評総行数  177 87 42 80 163 193          
評言 評言 評言 評言 評言 評言 選評なし 選評なし 選評なし 選評なし 選評なし
候補作 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数 評価 行数
堤千代 「小指」 評言 63 31 18 0 19 148                    
宇井無愁 「お狸さん」 評言 10 8 0 0 22 0                    
大庭さち子 「妻と戦争」 評言 7 20 0 0 14 14                    
松坂忠則 「火の赤十字」 評言 11 13 3 0 10 0                    
岩下俊作 「富島松五郎伝」 評言 42 12 18 0 78 8                    
                     
見方・注意点

このページの選評出典:『オール讀物』平成14年/2002年10月号再録(初出:『文藝春秋』昭和15年/1940年4月号)
1行当たりの文字数:15字


選考委員佐藤春夫×各候補作  見方・注意点
総行数177 (1行=15字)
候補 評価 行数 評言
堤千代 全委員 63 「相当に才能のある作者が偶よく纏ったものを書いたというのを認めるには吝でないまでも授賞が作者の将来まで見通さなければならないとすれば見合した方が適当らしい、と思われたものである。」
宇井無愁 全委員 10 「しかし生憎と宇井無愁は「お狸さん」だけしか見ていないのでこれ亦双手をあげて賛成の気持にならない。」
大庭さち子 全委員 7 「文章もすべて常識的なだけに無難としても何やら魅力に欠けた作風のせいか積極的に気が動かない。」
松坂忠則 全委員 11 「異色のある戦争小説で事実とはいえ作中人物や情景などの活写されたところに写生文風の趣のなかなかに捨て去り難いものがあるではないか。」
岩下俊作 全委員 42 「百五十枚を通読して後に爽快な気持になっただけでもこの作に賛意を表したが、(引用者中略)果して直木賞のものか芥川賞のものかという論になると判断に困らないではない。」
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他の選考委員
白井喬二
室生犀星
大佛次郎
瀧井孝作
小島政二郎
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選考委員白井喬二×各候補作  見方・注意点
総行数87 (1行=15字)
候補 評価 行数 評言
堤千代 全委員 31 「人情の機微、人間味に委ねて、文学上の時局弄作の跡を、惜しいかな私は、根底に横わる欠陥と見ないでは居られ無かった。」
宇井無愁 全委員 8 「一種の名人芸に入っていると思うが、推賞する気になれなかった。」
大庭さち子 全委員 20 「主材は時局物だが、人間心理の普遍性に透徹している所に、此作のはっきりとした存立価値があると思った。」
松坂忠則 全委員 13 「昨日までの戦争文学を無視し、灰汁を抜いて、何の遅滞もなくタイプして行く。」「戦争小説を文学賞とするに当って点が甘過ぎることは、警戒すべきだと思った。」
岩下俊作 全委員 12 「鈍重な筆致であり、文学形式としては一種の旧套派であろう。然し強く読む者の魂をゆらいで行く所がある。」
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他の選考委員
佐藤春夫
室生犀星
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瀧井孝作
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選考委員室生犀星×各候補作  見方・注意点
総行数42 (1行=15字)
候補 評価 行数 評言
堤千代 全委員 18 「たんにいやあな気持であればいいのだが、それ以上にふかく陰惨であることがらが書かれていることは文学の徳にもとるような気がした」
宇井無愁 全委員 0  
大庭さち子 全委員 0  
松坂忠則 全委員 3 「問題になったのは堤千代という人の「小指」、岩下俊作の「富島松五郎伝」の二篇に、「火の十字架」であった。
岩下俊作 全委員 18 「変化の伴う折返し巻き返したような描写も、たいへん感心した。」
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白井喬二
大佛次郎
瀧井孝作
小島政二郎
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選考委員大佛次郎×各候補作  見方・注意点
総行数80 (1行=15字)
候補 評価 行数 評言
堤千代 全委員 0  
宇井無愁 全委員 0  
大庭さち子 全委員 0  
松坂忠則 全委員 0  
岩下俊作 全委員 0  
  「標準も曖昧になって来るので、銓衡の厳密を期する為には、芥川賞と同じく作品本位にしたいと思う。」
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佐藤春夫
白井喬二
室生犀星
瀧井孝作
小島政二郎
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選考委員瀧井孝作×各候補作  見方・注意点
総行数163 (1行=15字)
候補 評価 行数 評言
堤千代 全委員 19 「手の届く限りくまくままで描いて、控え目なものがないから、読み乍ら余情のうつりが来ず、読んで頭を働かせるたのしさと云うものが全くないと思った。」
宇井無愁 全委員 22 「この面白い仕組に、読後ふざけたものがのこるから、人物は生のままの味に描いた方が身にしみると思った。」
大庭さち子 全委員 14 「感情の衝撃どぎつい場面ばかりを並べる仕組は、大衆小説の手かもしれぬが、これは智慧のない浅はかなやり方だと思われた。」
松坂忠則 全委員 10 「読後、そう感銘は残らない、浅い感じで、創作とか小説とか言えるのではなく、読物としては佳いと思った。」
岩下俊作 全委員 78 「大衆文芸にこの作品の如き読後の感じの佳い清純な甘味の傾向が開けるならば――この作品は若い未熟でそんな新風のお手本にはなれんが示唆にはなる――と思ったりして、(引用者中略)大衆文芸のために一つのおみやげを差上げるような抱負で、敢えて推薦した。」
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他の選考委員
佐藤春夫
白井喬二
室生犀星
大佛次郎
小島政二郎
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選考委員小島政二郎×各候補作  見方・注意点
総行数193 (1行=15字)
候補 評価 行数 評言
堤千代 全委員 148 「作者が花柳界の女性の心理を捉えて生かし切っているところに、喋っている人の呼吸まで聞えるくらい活写しているところに、僕は感服したのだ。」
宇井無愁 全委員 0  
大庭さち子 全委員 14 「感心した。これはテーマ小説である。「五」の小野の言葉には真実があると思った。」
松坂忠則 全委員 0  
岩下俊作 全委員 8 「断じて大衆小説ではない。仮りに一歩を譲って、大衆小説だとしても、大衆小説としては優れた作品ではない。」
  「「妻と戦争」も「小指」と同じように芝居に上演されてしまった。その意味で、資格を失った訳である。」「派生的な事情で賞に洩れたと云うことは、僕には不本意至極である。」
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他の選考委員
佐藤春夫
白井喬二
室生犀星
大佛次郎
瀧井孝作
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堤千代「小指」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
佐藤春夫 全候補 63 「相当に才能のある作者が偶よく纏ったものを書いたというのを認めるには吝でないまでも授賞が作者の将来まで見通さなければならないとすれば見合した方が適当らしい、と思われたものである。」
白井喬二 全候補 31 「人情の機微、人間味に委ねて、文学上の時局弄作の跡を、惜しいかな私は、根底に横わる欠陥と見ないでは居られ無かった。」
室生犀星 全候補 18 「たんにいやあな気持であればいいのだが、それ以上にふかく陰惨であることがらが書かれていることは文学の徳にもとるような気がした」
大佛次郎 全候補 0  
瀧井孝作 全候補 19 「手の届く限りくまくままで描いて、控え目なものがないから、読み乍ら余情のうつりが来ず、読んで頭を働かせるたのしさと云うものが全くないと思った。」
小島政二郎 全候補 148 「作者が花柳界の女性の心理を捉えて生かし切っているところに、喋っている人の呼吸まで聞えるくらい活写しているところに、僕は感服したのだ。」
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他の候補作
宇井無愁 「お狸さん」
大庭さち子 「妻と戦争」
松坂忠則 「火の赤十字」
岩下俊作 「富島松五郎伝」
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宇井無愁「お狸さん」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
佐藤春夫 全候補 10 「しかし生憎と宇井無愁は「お狸さん」だけしか見ていないのでこれ亦双手をあげて賛成の気持にならない。」
白井喬二 全候補 8 「一種の名人芸に入っていると思うが、推賞する気になれなかった。」
室生犀星 全候補 0  
大佛次郎 全候補 0  
瀧井孝作 全候補 22 「この面白い仕組に、読後ふざけたものがのこるから、人物は生のままの味に描いた方が身にしみると思った。」
小島政二郎 全候補 0  
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他の候補作
堤千代 「小指」
大庭さち子 「妻と戦争」
松坂忠則 「火の赤十字」
岩下俊作 「富島松五郎伝」
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大庭さち子「妻と戦争」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
佐藤春夫 全候補 7 「文章もすべて常識的なだけに無難としても何やら魅力に欠けた作風のせいか積極的に気が動かない。」
白井喬二 全候補 20 「主材は時局物だが、人間心理の普遍性に透徹している所に、此作のはっきりとした存立価値があると思った。」
室生犀星 全候補 0  
大佛次郎 全候補 0  
瀧井孝作 全候補 14 「感情の衝撃どぎつい場面ばかりを並べる仕組は、大衆小説の手かもしれぬが、これは智慧のない浅はかなやり方だと思われた。」
小島政二郎 全候補 14 「感心した。これはテーマ小説である。「五」の小野の言葉には真実があると思った。」
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他の候補作
堤千代 「小指」
宇井無愁 「お狸さん」
松坂忠則 「火の赤十字」
岩下俊作 「富島松五郎伝」
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松坂忠則「火の赤十字」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
佐藤春夫 全候補 11 「異色のある戦争小説で事実とはいえ作中人物や情景などの活写されたところに写生文風の趣のなかなかに捨て去り難いものがあるではないか。」
白井喬二 全候補 13 「昨日までの戦争文学を無視し、灰汁を抜いて、何の遅滞もなくタイプして行く。」「戦争小説を文学賞とするに当って点が甘過ぎることは、警戒すべきだと思った。」
室生犀星 全候補 3 「問題になったのは堤千代という人の「小指」、岩下俊作の「富島松五郎伝」の二篇に、「火の十字架」であった。
大佛次郎 全候補 0  
瀧井孝作 全候補 10 「読後、そう感銘は残らない、浅い感じで、創作とか小説とか言えるのではなく、読物としては佳いと思った。」
小島政二郎 全候補 0  
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他の候補作
堤千代 「小指」
宇井無愁 「お狸さん」
大庭さち子 「妻と戦争」
岩下俊作 「富島松五郎伝」
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岩下俊作「富島松五郎伝」×各選考委員  見方・注意点
選考委員 評価 行数 評言
佐藤春夫 全候補 42 「百五十枚を通読して後に爽快な気持になっただけでもこの作に賛意を表したが、(引用者中略)果して直木賞のものか芥川賞のものかという論になると判断に困らないではない。」
白井喬二 全候補 12 「鈍重な筆致であり、文学形式としては一種の旧套派であろう。然し強く読む者の魂をゆらいで行く所がある。」
室生犀星 全候補 18 「変化の伴う折返し巻き返したような描写も、たいへん感心した。」
大佛次郎 全候補 0  
瀧井孝作 全候補 78 「大衆文芸にこの作品の如き読後の感じの佳い清純な甘味の傾向が開けるならば――この作品は若い未熟でそんな新風のお手本にはなれんが示唆にはなる――と思ったりして、(引用者中略)大衆文芸のために一つのおみやげを差上げるような抱負で、敢えて推薦した。」
小島政二郎 全候補 8 「断じて大衆小説ではない。仮りに一歩を譲って、大衆小説だとしても、大衆小説としては優れた作品ではない。」
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他の候補作
堤千代 「小指」
宇井無愁 「お狸さん」
大庭さち子 「妻と戦争」
松坂忠則 「火の赤十字」
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