直木賞のすべて
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選評の概要
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井上ひさし
Inoue Hisashi
生没年月日【注】 昭和9年/1934年11月16日〜
在任期間 第88回〜(通算25.5年・51回)
在任年齢 48歳1ヶ月〜
経歴 本名=井上廈(イノウエ・ヒサシ)。山形県生まれ。上智大学文学部卒。
受賞歴 芸術祭賞脚本奨励賞(昭和35年/1960年)「うかうか三十・ちょうちょう四十」《戯曲》
第7回斎田喬戯曲賞『十一ぴきのネコ』(昭和46年/1971年)《戯曲》
第17回「新劇」岸田戯曲賞(昭和47年/1972年)『道元の冒険』『表裏源内蛙合戦』
第22回芸術選奨文部大臣新人賞(昭和46年/1971年度)『道元の冒険』
第6回小説現代ゴールデン読者賞(昭和47年/1972年)『いとしのブリジット・ボルドー』
第31回読売文学賞戯曲賞(昭和54年/1979年)『しみじみ日本・乃木大将』『小林一茶』《戯曲》
第14回紀伊国屋演劇賞個人賞(昭和54年/1979年)『しみじみ日本・乃木大将』『小林一茶』《戯曲》
第2回日本SF大賞(昭和56年/1981年)『吉里吉里人』
第33回読売文学賞小説賞(昭和56年/1981年)『吉里吉里人』
第13回星雲賞[日本長編部門](昭和57年/1982年)『吉里吉里人』
第20回吉川英治文学賞(昭和61年/1986年)『腹鼓記』『不忠臣蔵』
第15回テアトロ演劇賞(昭和63年/1988年)「昭和庶民伝」《戯曲》
土木学会賞著作賞(平成2年/1990年)『四千万歩の男』
第27回谷崎潤一郎賞(平成3年/1991年)『シャンハイムーン』
第47回菊池寛賞(平成11年/1999年)
第9回イーハトーブ賞(平成11年/1999年)
朝日賞(平成12年/2000年)「知的かつ民衆的な現代史を総合する創作活動」
第3回織部賞(平成13年/2001年)
第6回鶴屋南北戯曲賞(平成15年/2003年)『太鼓たたいて笛ふいて』《戯曲》
第44回毎日芸術賞(平成15年/2003年)『太鼓たたいて笛吹いて』
文化功労者(平成16年/2004年)
直木賞候補歴 第67回受賞 「手鎖心中」(『別冊文藝春秋』119号[昭和47年/1972年3月])
サイト内リンク 直木賞受賞作全作読破への道Part3
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

直木賞 88 昭和57年/1982年下半期   一覧へ
選評の概要 掠奪されつつ 総行数67 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
赤瀬川隼 33 「文章は平明な上に心象を捕まえる力が強く、しかも一人よがりの飾りもなく、一等賞だと思います。」「作者の世代にとって野球と平等主義とは一対をなすものであったにちがいなく、たとえ片腕を失おうとも、このゲームの善き平等主義をどこかで支えようという意地は失っていないぞ、と低い声でであるが、たしかにうたっているところに、さわやかな感動をおぼえました。」
  「かねてから、「娯楽小説の大切な部分が、他から掠奪されつづけている」という感想を抱いています。」「いずれにせよ言葉、文、文章が大事。」
選評出典:『オール讀物』昭和58年/1983年4月号
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直木賞 89 昭和58年/1983年上半期   一覧へ
選評の概要 粒ぞろい 総行数58 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
連城三紀彦 20 「もっとも気に入った」「作者の作風の変化は、わたしには好ましくおもわれた。」「この作品では、トリックは低みから、武骨で(原文傍点)善良な老女の人柄から発せられている。このトリックの仕掛け方がじつにトリッキイであって、作品は厚みをもった。」
北方謙三 20 「もっとも気に入った」「平明で速度感のある文体のせいで、彼(引用者注:主人公)の感慨には読者を吸い寄せる力がある。ただ結末が悲劇で終るのは「切ない」気もするが、とにかくこの作者の才能には敬意をもつ。」
胡桃沢耕史 21 「主人公がいくら単純でも無邪気でもかまわないが、それを見つめている作者に、主人公を戦場へ引きずり出した国家や、主人公にこれほどの苦しみを強いる戦争に対する勘考がほとんどない。このことにかすかに不審の念をいだいた。ただしこの気持は、作者の物語づくりにかける執念に圧倒されて、ときおりどこかへ消え去ってしまうのであるが。」
山口洋子 11 「むやみにうまい。女主人公をみつめる作者の目は、鋭さとあたたかさの両極を持ち合せており、うまさはそこから発しているようである。」
選評出典:『オール讀物』昭和58年/1983年10月号
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直木賞 90 昭和58年/1983年下半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数90 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
高橋治 13 「物語はパターン通りに進行するが、それが読む者には非常に快いのである。パターン通り、定石通りの物語が、言葉を信じさえすれば(原文傍点)、骨太な神話になることを作者はよく知っていた。」「今回はこれだと思いながら、わたしは会場へ向ったのだった。」
神吉拓郎 15 「そういう日常(引用者注:よく吟味された日常)の積み重ねによって培われた趣味が、これらの数篇を作者に書かせたのである。ただし十七篇全部を見わたすと凸凹ありすぎる。たとえば「警戒水位」(凸)と「季節労働者」(凹)とが同じ作者によるものとは、ほとんど信じがたい。」
選評出典:『オール讀物』昭和59年/1984年4月号
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直木賞 91 昭和59年/1984年上半期   一覧へ
選評の概要 達意の文章を 総行数73 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
連城三紀彦 11 「まさにそのような文章(引用者注:伝達力があって、表現そのものとしても魅力がある文章)で書かれています。しかも物語は、人間心理への深い洞察に支えられていて、新鮮です。」
難波利三 15 「素朴すぎるほど素朴な文章で、癖のないのが癖、とでもいったような不思議な味わいがあります。」「どうしてその芸が観客の拍手を得ることができたのか、小説の読者にはよくわからないところに強い不満をおぼえました。けれどもいくつかの感動的な人生断片が最後にその不満を退けてしまいました。」
山口洋子 12 「伝達と表現という二つの文章条件を満足させています。」「作者の目が神の目に近づきすぎ、すべてが綺麗に割り切れすぎているところにかすかな異和感をおぼえました。しかし作者は頭抜けて巧者です。」
選評出典:『オール讀物』昭和59年/1984年10月号
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直木賞 92 昭和59年/1984年下半期   一覧へ
選評の概要 選評 総行数65 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
赤瀬川隼 46 「審判たちはそのへんのスター選手など及びもつかない起伏に富んだ人生経験を持っているが、その人生経験がゲームの展開へ微妙な影を落すことを、作者はきびきびした文体でみごとに表現している。」「野球という国民的ゲームを新しい視座から見ようとする冒険がある。」「内容、型式、文体、三拍子そろった傑作である。」
選評出典:『オール讀物』昭和60年/1985年4月号
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直木賞 93 昭和60年/1985年上半期   一覧へ
選評の概要 小説づくりの巧みさ 総行数80 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
山口洋子 20 「「老梅」は完璧すぎて作者の仕掛けたことが逆にかえってあらわになってしまった。「演歌の虫」は捨身の力作で欠点も多いかわりに、美点もまた多い。」「この賞の性格として「作家賞」というものが許されるのであれば、山口洋子さんがその筆頭であるだろうと思った。」
  「今回はこれはと思う作品がなかった。」
選評出典:『オール讀物』昭和60年/1985年10月号
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直木賞 94 昭和60年/1985年下半期   一覧へ
選評の概要 上質な微苦笑 総行数70 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
森田誠吾 17 「各所にいささか傷はあるものの、これは名作である。どんな端役にも人間の血が色濃く、あたたかく流れている。構成もすこぶる知的である。この構成法がひとつの作品を人情物語にも、諧謔小説にも、また推理小説にもした。これは稀有のことである。」
落合恵子 12 「はじめて候補にのぼった時分とくらべて、失礼だが大変な腕の上げようだと舌を巻いた。もっとも技術が洗練されるにつれて登場人物たちが小綺麗に、まとまりよく仕上ってしまうという危険もないではない。しかし筆者はこの作品に九十点はさしあげたい。」
林真理子 12 「じつに巧者である。けれどもどちらの作品でも、女主人公は世故くて薄汚い。」「ただし四期連続して強力な候補作を書きつづけるという力量は上々吉であって、これには素直に脱帽すべきだろう。」
選評出典:『オール讀物』昭和61年/1986年4月号
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直木賞 95 昭和61年/1986年上半期   一覧へ
選評の概要 田之助の扱いの妙 総行数60 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
皆川博子 52 「作者の最近の仕事ぶりは丁寧で細心、じつに用意周到である。」「たとえば一代の人気役者で、脱疽で両手両足を切断することになるあの沢村田之助の使い方(原文傍点)ひとつを見てもよくわかる。」「いまだに筆者は三作(引用者注:「恋紅」「忍火山恋唄」「百舌の叫ぶ夜」)に甲乙をつけられないでいる。」
逢坂剛 29 「気合いの入った剛直な出来栄えで、結末の、関係者が一堂に会しての謎解き場面には胸が躍った。」「いまだに筆者は三作(引用者注:「恋紅」「忍火山恋唄」「百舌の叫ぶ夜」)に甲乙をつけられないでいる。」
泡坂妻夫 29 「新内を扱いながら、じつは作品全体が新内そのもののように仕上ったという巧緻をきわめた作品である。」「いまだに筆者は三作(引用者注:「恋紅」「忍火山恋唄」「百舌の叫ぶ夜」)に甲乙をつけられないでいる。」
選評出典:『オール讀物』昭和61年/1986年10月号
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直木賞 96 昭和61年/1986年下半期   一覧へ
選評の概要 一頭地抜けた三作 総行数70 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
常盤新平 28 「一見、素気ない作品のように見えるが、各所に仕組まれた小説的仕掛けは特筆に値いする。」「登場人物たちを描出する手際もあざやかだ。たとえば父親。ここ十年来の日本の小説にあらわれた父親像の、これは白眉である。」
逢坂剛 23 「日本編におけるユーモアは稀代のものすごさ、これにはただただ舌を巻くしかない。」「スペイン編では、作品という名の小宇宙を統べるルールが崩れて惨々たる展開になるが、それでもまだたっぷりお釣りがくる。」
  「三作授賞(引用者注:「遠いアメリカ」「カディスの赤い星」「ダウンタウン・ヒーローズ」)ということでもいいと思って選考会に出かけたのである。」
選評出典:『オール讀物』昭和62年/1987年4月号
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直木賞 97 昭和62年/1987年上半期   一覧へ
選評の概要 小説の伝統を生かした二作 総行数79 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
白石一郎 36 「こういう仕立ての大小説の場合、主人公の魅力もさることながら脇役たちがおもしろくなければどうにもならない。しかしこの作品には小金吾という千両役者がいた。評者は、じつをいえばこの小金吾に一票を投じたのである。」
山田詠美 58 「悪文も徹底すればいつしか詩を孕み、機智の稔りをもたらし、そして揺ぎない個性と化す。その典型的な例(引用者中略)である。」「物語の部分のコード進行はびっくりするほど古風で正統的であり、むかし読んだ「セブンティーン」誌掲載の好短編を思い出したりした。」
  「(引用者注:受賞の二作は)両極端とも思えるほど様子のちがう作品である。」「だがその二作品が同時に受賞するところに直木賞のすばらしい間口の広さがある。」
選評出典:『オール讀物』昭和62年/1987年10月号
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直木賞 98 昭和62年/1987年下半期   一覧へ
選評の概要 謎の解明が生む感動について 総行数169 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
阿部牧郎 29 「(引用者注:「それぞれの終楽章」「オールド・ルーキー」「幽霊記」のうち)どれが受賞しても妥当であると考えた。」「思いもかけない強い感動があった。高校時代の親友の謎めいた急死が、《人々によって自分は影響をあたえられ、つくりあげられた。(引用者中略)自分はこれらの人々の人生を文字にする仕事をはじめなければならない。彼らを生かすことで自分も生きる。》という発見によって解明されるとは、なんと意外で、快いことだろう。」
長尾宇迦 10 「(引用者注:「それぞれの終楽章」「オールド・ルーキー」「幽霊記」のうち)どれが受賞しても妥当であると考えた。」「熱気ある筆はときどき筆者をして、「これこそ小説だ」と叫ばしめた。」
赤瀬川隼 12 「(引用者注:「それぞれの終楽章」「オールド・ルーキー」「幽霊記」のうち)どれが受賞しても妥当であると考えた。」「低くて謙虚な姿勢から諧謔をまじえて実人生をとらえる作風はかねてから傾倒するところ」
選評出典:『オール讀物』昭和63年/1988年4月号
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直木賞 99 昭和63年/1988年上半期   一覧へ
選評の概要 読み手のよろこび 総行数137 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
西木正明 27 「私は推す作品を、景山、西木、小松の三作品に決めていた。」「小説といえど社会の函数であるとする作者の覚悟に心を打たれた。」「とくに『端島の女』の仕掛けはみごと! のひとことに尽きる。」「詩情もあり、この作家はやがて現代日本の叙事詩を書くかもしれない。」
景山民夫 47 「私は推す作品を、景山、西木、小松の三作品に決めていた。」「もっとも感心した」「文体の変化と呼応して、物語の質がまた変る。」「チャランポランに書かれているように見えて、じつは細心の計算がなされているようである。」「くり返しになるが、私は景山氏の、のびのびとした素質のよさに、ほんとうに感心してしまった。」
小松重男 20 「私は推す作品を、景山、西木、小松の三作品に決めていた。」「コツコツ働くものは装置をもった人間どもに結局は敗れるが、しかしそれでもコツコツ働くしかないという庶民の歌には泣かされた。」「私はとても好きだ。」「「話が古い」という評言もあり、その意味もわかるが、なんだか惜しい。」
選評出典:『オール讀物』昭和63年/1988年10月号
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直木賞 100 昭和63年/1988年下半期   一覧へ
選評の概要 七つの冒険 総行数96 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
藤堂志津子 38 「小説としてどうかということになれば、(引用者中略)ひとつもふたつも抜き出ていたように思われる。」「人物たちの関係の微妙な反響の仕合い、その関係の移り渡りの鮮やかさはどうであろう。」「さらに云えば、この小説には物語を完成させることをすくなからず拒否しているところがある。」「作者のその姿勢に寄り添うことができれば、これはじつに上等な小説として読める。」
杉本章子 32 「小説としてどうかということになれば、(引用者中略)ひとつもふたつも抜き出ていたように思われる。」「すこぶる気持のよい作品である。最後の頁を読み終えたときの至福感、これをなににたとえようか。」「これほど励まされた小説は近ごろ稀である。」
選評出典:『オール讀物』平成1年/1989年3月号
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直木賞 101 平成1年/1989年上半期   一覧へ
選評の概要 二つの奇蹟 総行数81 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
笹倉明 29 「物語になりそうもない小事件の背景を捜査して骨太の物語をつくりあげた」「たしかにこの作者の文章は型どおりである。」「われわれ日本人の深層に根深くひそむアジア蔑視をなんとしてでもえぐり出そうという作者の意思力が、型どおりの感動をすべて黄金に変えてしまったのだ。」
ねじめ正一 23 「日常生活がドラマそのものだということを発見した」「作者の使いこなす小説言語のみごとさがすべての欠点を覆いかくしてしまった。正確でありながら柔軟、厳密でありながら自在、指示機能や記述機能を十全に果しながら、どの文のなかでも言葉は生き生きと跳ねている。」
  「使い古された表現にたよって云えば、今期の候補作は「粒揃い」であったと思う。」
選評出典:『オール讀物』平成1年/1989年9月号
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直木賞 102 平成1年/1989年下半期   一覧へ
選評の概要 一燃料補給員の弁 総行数117 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
星川清司 26 「短い枚数で三つの人生を描きつくすという困難な事業が、静かに(原文傍点)成就しているところ、上々吉である。」「三つの文体が、書き手によって選ばれたのではなく、題材そのものがそれらの文体で書くように要求しているかの如くに見えるところ、結局は作者がそれを書くのにちがいないが、しかし題材から自然にその文体が選ばれたように見せる工夫――そこに唸ったのである。」
原ォ 17 「いくら瀕死の状態にあるとはいえ、母がわが子の《細い首に両手をかけて……》(二七一ページ)楽にしてやるかどうか、これは大いに議論の分れるところだろう。しかしわたしは、そこまでのすばらしい出来栄えを買った。文章がいい。ユーモアの感覚がいい。」「たくさんの長所と大きな欠陥とを秤にかけて、長所の方を慶賀すべきだろうと考えたのである。」
選評出典:『オール讀物』平成2年/1990年3月号
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直木賞 103 平成2年/1990年上半期   一覧へ
選評の概要 読者の存在 総行数112 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
樋口有介 22 「今回、もっとも堪能した」「風俗の活写、青春群像の彫琢、みんなうまく行っている。」「だが、この作品はじつは推理小説のスタイルで書かれており、そうなると、たとえば睡眠薬の錠数といったことが問題にならざるを得ない。どう勘定しても数が合わぬのである。そこで推薦の辞も自然弱くなる。この作品と心中してもいいと思っていただけにとても残念である。」
泡坂妻夫 10 「名人芸の所産である。名人芸だけに、たまに凡百の読者を置き去りにして独走するところがある。そこに微かな不安もなくはなく、また、作者の恋愛観にも多少の不満はある。がしかし圧倒的な名人芸がそういった不安や不満を押し流してしまった。」
選評出典:『オール讀物』平成2年/1990年9月号
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直木賞 104 平成2年/1990年下半期   一覧へ
選評の概要 おもしろく、かつ深く 総行数72 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
古川薫 33 「藤原義江が人生の転機にさしかかるたびに現われる善意の人びとを入念に描くことで、作者は「人が人を創る」という人生の真実の一つを読者に分かち与えることにみごとに成功した。」「また、読後の読者は「人生とはものさびしいものだ」という感想を抱かれるかもしれない。この一種の哀感は、作者の年輪が自然に紡ぎ出したものにちがいない。」
宮城谷昌光 18 「構想は中国古代に材を仰いですこぶる広大、文章は格調高く、かつ融通無碍、しかもそのおもしろさは彼の三国志をさえ凌ぐかとおもわれ、「これは大変な書き手が現われたものだ」と度胆を抜かれた。」「最後まで、この作品と「漂泊者のアリア」(古川薫)との二作受賞にこだわらざるを得なかった。」
  「「読んでいるあいだはとてもたのしく、そのなかからこれはという一作にしぼるのは、かなりむずかしかった」というのが、評者の率直な感想である。」
選評出典:『オール讀物』平成3年/1991年3月号
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直木賞 105 平成3年/1991年上半期   一覧へ
選評の概要 行儀のよさ、わるさ 総行数117 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
宮城谷昌光 18 「ちょっと押しつけがましい文明批評や人物批評、それから、むやみに雑知識をひけらかすところなど、作者の筆はずいぶん行儀が悪いが、しかし、おおもとにある情熱が純なので、その行儀の悪さがみごとに愛敬のよさに転化している。この情熱の強さと熱さと量とに脱帽する。」
芦原すなお 33 「前半がすばらしい。」「さまざまな登場人物たちを一筆でさっと印象的に描いてしまうところにも才能を感じた。ところが、物語が終わりに近づくにつれて、すべての回転が弱まってくる。」「だが、作者は、後半のこの大失点を補って余りある大量の得点を、すでに前半で挙げていた。それほど、この作品の前半はすばらしい。」
選評出典:『オール讀物』平成3年/1991年9月号
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直木賞 106 平成3年/1991年下半期   一覧へ
選評の概要 粒よりの力作揃い 総行数110 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
高橋義夫 19 「平凡な非凡さで光る。」「いやなやつのよさ、いいやつのよわさ、作者は登場人物ひとりひとりのいろんな面に描写の光を当てる。その方法が人生の深さと重さとを摘出させるわけで、評者は、作者の長年の努力がここに見事に結実したことを喜ぶ。」
高橋克彦 21 「物凄い秀作があった。「ねじれた記憶」がそれで、深夜、ひとり個室で合わせ鏡の中の自分の姿を見たときのような怖ろしさを味わった。」「小説の題材も形式もすべて書きつくされたという噂さえあるのに、これはまったく新手の物語構造である。」
  「今回の候補作はどれもみな読み応えがあった。」
選評出典:『オール讀物』平成4年/1992年3月号
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直木賞 107 平成4年/1992年上半期   一覧へ
選評の概要 言葉と企み 総行数131 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
伊集院静 30 「多言を要すまい。とてもよくできている。」「作者の駆使する言葉は、その一つ一つがいい意味で情緒に濡れていて読む側の心を動かす。」「つつましくキラリと光るものを持ち、かつ巧みに企まれた小傑作が七つも収められているのだから、これは立派な一冊と言わねばならない。」
選評出典:『オール讀物』平成4年/1992年9月号
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直木賞 108 平成4年/1992年下半期   一覧へ
選評の概要 練達の作 総行数164 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
出久根達郎 41 「文章にやや臭み(「いかにも玄人の、プロならではの」という言い方も出来るが)はあるものの、単に意味を伝達するだけではない徳、つまり作者の駆使する言葉そのものがおもしろさと美しさを備えており、かつ的確(とくに、主人公が彫物をする場面)でもある。」「読者はとても気分よく巻を閉じることができるわけで、すべてをひっくるめて作者はまことに練達である。」
宮部みゆき 47 「大いに感心し、選考という立場を忘れて夢中で読んだ(文章がいいから読者の邪魔をしない)。」「じつによく出来た風俗小説として読んだ。たとえばバルザックのようなという形容句を呈しても褒め過ぎにはならないだろう。持てる力と才能を振り絞って「現在そのもの」に挑戦し、立派に成功をおさめたその驚くべき力業に何度でも最敬礼する。」
選評出典:『オール讀物』平成5年/1993年3月号
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直木賞 109 平成5年/1993年上半期   一覧へ
選評の概要 圧倒的な膂力 総行数101 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
高村薫 24 「圧倒的な膂力の持主である。それ以外に評言の用意がない。」「この作品で作者は、真知子という善悪をはるかに超えた「人生の泥と涙にまみれて人を愛する女」を創造し、読者との関係をしっかりと付けた。彼女の愛は、推理小説だの警察小説だのといった狭い枠を越えて、はるか普遍の愛にまで達している。」
中島らも 18 「作者の才筆は今回も読者を堪能させてくれる。」「その手腕に喝采を惜しむものではないが、今回は物語の勘どころに破綻があったようだ。」「それでもこの作品に合格点をつけたのはおもしろさでは際立っていたからであるが、やはり支持する声は少なかった。」
北原亞以子 16 「彼女たち(引用者注:登場人物たち)の自立が、常に自分より劣った男性を踏み台にして成し遂げられるところに軽い不満を抱いていたが、選考者の皆さんの熱い支持の言葉に耳を傾けているうちに、その不満はきれいに消えた。読み直せば、爽やかさがゆっくりと立ち上ってくるような佳品揃い、結末も定型を外していて気品がある。」
選評出典:『オール讀物』平成5年/1993年9月号
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直木賞 110 平成5年/1993年下半期   一覧へ
選評の概要 高い水準 総行数132 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
大沢在昌 26 「物語の展開は快調、とにかくおもしろい。舌を巻くばかりの筆力である。」「登場人物たちの織り出す人生の織物は厚くて豪奢である。もちろん欠点はある。たとえば今回の悪玉には「悪の哲学」がない。あるとしても弱い。」「現在感覚に溢れて生き生きとした作品だ。今回は水準が高かったが、その高い水準をこの作品はさらに頭ひとつ抜いている。」
内海隆一郎 19 「過去の重い時間を引き摺りながら、現在、出来うる限りの努力をし、未来に一条の希望の光を見ようとする人たちが大勢、登場する。」「さらにもう一つ、作者はそれらの人びとに「心のやさしさ」を与えている。ここがいわば議論の分れ目で、だから印象が淡い、美談仕立てだという意見があり、だから気持がいいという意見も生まれる。今回の評者は後者の立場、しかし力が及ばなかった。」
佐藤雅美 13 「なによりもその着眼で光っている。」「物語そのものは常套で、また会話と地の文の関係が手拍子で進行する個所も多く、ハテと思うところは少くなかったけれども、そういった疵をすべて着眼のすばらしさが消した。勉強になる小説だ。」
選評出典:『オール讀物』平成6年/1994年3月号
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直木賞 111 平成6年/1994年上半期   一覧へ
選評の概要 俊英、勢揃い 総行数175 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
中村彰彦 52 「六作中、もっとも感心した」「たとえ会津物に抵抗がある読者でもここまで巧みに仕組まれれば文句のつけようがあるまい。」「なによりもめざましいのは、氏が会津という固有の土地を掘っているうちに日本人の普遍的な行動原理に突き当たったこと。」
久世光彦 18 「文章のすばらしさについてはすでに定評がある。」「大正期に生まれて昭和初期に都市大衆のものとなった「文化」生活の微細な陰影、それを文章としてここまでしっかりと取り出した氏の力量はだれもが認めるところであろう。この一点だけでも充分、受賞に価すると考えたのだが……。」
海老沢泰久 21 「二千語か三千語程度の平易な言葉だけで人生の真実を描き出そうとする氏の文体改革の熱意に深い敬意を抱いている。」「しかし登場人物たち、とくに女性に対する作者の甘い媚びに抵抗がある。もちろんこれは趣味の問題であって、評者の女性観の方がかえって歪んでいるのかもしれないが。」
  「今回の予選通過作品を見て、「俊英たちが今ここに勢揃いしている」という戦慄にも似た思いを抱き、すこぶる緊張した。」
選評出典:『オール讀物』平成6年/1994年9月号
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直木賞 112 平成6年/1994年下半期   一覧へ
選評の概要 名作あり 総行数100 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
志水辰夫 29 「「赤いバス」は掛け値なしの名作、新作にしてすでに古典であると云ってもいい。」「この短編集の主調音を、たとえば「さまざまな死」と捉えることができようが、残念なことにその後は同工異曲がつづく。しかし一編でもこのような名作があるなら受賞してもおかしくないと考えたが、強い支持が得られなかった。」
選評出典:『オール讀物』平成7年/1995年3月号
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直木賞 113 平成7年/1995年上半期   一覧へ
選評の概要 野球小説の白眉 総行数144 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
赤瀬川隼 28 「氏のすぐれた資質がよくあらわれている。すなわち、行儀よく均整のとれた物語をつくる技量、それを支える良質の文章。中でも「陽炎球場」は、氏のもう一つの長所である無垢で軽やかな幻想性を散りばめながらひときわまぶしく光っている。(引用者中略)これは名作だ。」
梁石日 25 「大村収容所送りになる金を命がけで待つ女、初子がすばらしい。」「読者は、漢語を数多く駆使した独特の文体に最初のうちはてこずるが、先へ進むにつれて、そのごつごつした文体が金と初子の運命を描くのに最適であったことを理解する。」「『白球残映』とともに受賞に値すると考えて選考の席に臨んだ」
選評出典:『オール讀物』平成7年/1995年9月号
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直木賞 114 平成7年/1995年下半期   一覧へ
選評の概要 文章を思案すると 総行数164 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
小池真理子 35 「文章力において(引用者中略)最高の達成をみている」「死者が語るという工夫は巧者なものであった。」「読み終わったとき、読者に『恋』という題名が、ちがった意味に見えてくる。凝縮度の高い華麗な文体で語られた不思議な恋の始まりと行く末、読んだかいがあった。」
藤原伊織 45 「文章力において(引用者中略)最高の達成をみている」「活発な精神の往復運動が独特の、得難いヒューモアを生み出している。話は深刻なのに、作品はどこを切り取っても質のいい諧謔で満たされているのだ。」「結尾の、関係者一同が寄り合ってすべてが解決するというご都合主義も、「謎解き」がこの作品の題目の一つであることを思えば、読者は喜んでこれを許すにちがいない。」
選評出典:『オール讀物』平成8年/1996年3月号
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直木賞 115 平成8年/1996年上半期   一覧へ
選評の概要 二作受賞の夢 総行数98 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
乃南アサ 64 「(引用者注:「蒼穹の昴」との)二作受賞を心から願っていた。」「たしかに話の作り方では成功したとは言いかねるが、主役と狂言回しとをかねた二人組の警官の人間創出に、高い水準でみごとに成功している。」
浅田次郎 56 「(引用者注:「凍える牙」との)二作受賞を心から願っていた。」「李春雲と玲玲の兄妹がとくに生き生きと跳ねていて、たしかにここには「人間」がいた。」「ここで説かれている「浅田版清朝史」のおもしろさは格別であり、こんな大作を書き下ろしで書いてしまった作者の逞しい膂力にも脱帽した。」
選評出典:『オール讀物』平成8年/1996年9月号
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直木賞 116 平成8年/1996年下半期   一覧へ
選評の概要 てるという妖しい女 総行数121 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
坂東眞砂子 32 「御都合主義が目につく第三部と大きな欠点があるのに読了後、思わず物語の余韻に耳を澄ませてしまうのは、厚塗りの文章に導かれながら悲痛この上ない人間たちの営みをたしかに見たからにちがいない。とりわけ鍵蔵の妻てる(じつは山妣の娘)に感心した。」
  「なによりもまず評者は、最近の新鋭たちの奔馬空を行くが如き旺盛な筆力に、満腔の敬意を表するものである。」
選評出典:『オール讀物』平成9年/1997年3月号
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直木賞 117 平成9年/1997年上半期   一覧へ
選評の概要 粒選りの中の粒選り 総行数146 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
篠田節子 35 「粒選りの中でも、さらに高い質を誇っていた。」「なにより感心するのは、現代女性が自分の人生をどう選ぶのか、あるいは選んでしまうのかを、人生の関頭に立つその姿を、もっと云えば、彼女たちの人生の大切な瞬間を、生き生きとしたリズムを内蔵する文章と弾みに弾む会話と軽やかなユーモアをもって描き出したことで、そこにこの作品の栄光がある。」
浅田次郎 27 「粒選りの中でも、さらに高い質を誇っていた。」「八つの短編が収められているが、うち四つは大傑作であり、のこる四つは大愚作である。大傑作群に共通しているのは、「死者が顕われて生者に語りかける」という趣向で、この趣向で書くときの作者の力量は空恐ろしいほどだ。たとえば「角筈にて」を読まれよ。(引用者中略)この一編で、大愚作群の欠損は充分に埋められたと信じる。」
  「今回は粒選りが揃った。」
選評出典:『オール讀物』平成9年/1997年9月号
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直木賞 118 平成9年/1997年下半期   一覧へ
選評の概要 度がすぎれば毒 総行数176 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
桐野夏生 55 「今回、評者がもっとも高い評点をつけた」「冒頭の弁当工場の夜勤の光景から第一の死体解体のあたりまでは快調そのものの運びで、まったく完璧である。」「クライマックスは、作者の意図は充分に尊重しながらも、一読者としては、「話をややこしくしすぎて、最後が絵空事になってしまったのでは……。惜しい」と呟やかざるを得なかった。」「評者は最後までこの作品を推したが、しかし最後の最後に折れてしまった」
  「最近の新鋭たちは謎を作りすぎていないか。」「物語を複雑にしすぎているように見える。もう一つ云えば、物語をできるだけややこしく作ろうとする癖がある。」
選評出典:『オール讀物』平成10年/1998年3月号
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直木賞 119 平成10年/1998年上半期   一覧へ
選評の概要 秀作を得てよろこぶ 総行数153 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
車谷長吉 33 「(引用者注:「血と骨」を)凌駕する秀作」「小説は、ことばで人間を、そしてその人間と他の人間との関係を映し出す仕事だが、その完璧な見本がここにある。」「心中未遂は、いったん「死」を通って「生」へ再生する儀式である。その儀式を終えたアヤちゃんが、「たとえそこが地獄でも生きねばならぬ」と思い定める結末に、人間という存在に寄せる作者の深い愛を読んで、思わず涙がこぼれた。」
梁石日 20 「リチャード三世とリア王を合わせたような神話的人物を創造し得た傑作である。」「瑕は多いのだが、それでもとにかく、金俊平という途方もない巨人をみごとに出現させ、十二分に生きさせ、そして完膚なきまでに老いぼれさせたところは、一つの文学的偉業であった」
選評出典:『オール讀物』平成10年/1998年9月号
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直木賞 120 平成10年/1998年下半期   一覧へ
選評の概要 巨きな作品 総行数124 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
宮部みゆき 35 「バブル期の日本人のいくつかの典型を、もっと言えば、「世間が怖い、隣人が怖い」とおびえる日本人の現在を真正面から書き切った秀作である。」「つねに進んで現在と取り組もうという気丈な作家魂と、新工夫を怠たらぬ精進と、作者得意の定番の三つが一つになって、ここに巨きな作品が生まれたのである。」
選評出典:『オール讀物』平成11年/1999年3月号
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直木賞 121 平成11年/1999年上半期   一覧へ
選評の概要 「王妃の離婚」を推す 総行数159 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
佐藤賢一 49 「わたしは、「王妃の離婚」(佐藤賢一)の作者の、すべてを知的な諧謔で処理しようという姿勢を支持するものの一人である。」「おもしろくて、痛快で、おまけに文学的な香気と情感も豊か。この作品を推すことに、わたしはいささかもためらわなかった。」
桐野夏生 32 「作者はついに読者に幼女失踪の真相を明らかにしようとしない。その意図はどうであれ、作者は読者を欺いている。……たしかにそう思わないわけでもないが、わたしは、作者の人間の死を徹頭徹尾モノとして扱う態度に心を動かされた。」「これはやはり一個の確固たる作品である。」
選評出典:『オール讀物』平成11年/1999年9月号
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直木賞 122 平成11年/1999年下半期   一覧へ
選評の概要 小説の古さと新しさ 総行数181 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言