直木賞のすべて
直木賞のすべて

選評の概要
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五木寛之
Itsuki Hiroyuki
生没年月日【注】 昭和7年/1932年9月30日〜
在任期間 第79回〜(通算30年・60回)
在任年齢 45歳9ヶ月〜
経歴 福岡県生まれ。早稲田大学文学部中退。
受賞歴 第6回小説現代新人賞(昭和41年/1966年)「さらば モスクワ愚連隊」
第10回吉川英治文学賞(昭和51年/1976年)『青春の門 筑豊篇』
全日本文具協会ベスト・オフィス・ユーザー賞(平成3年/1991年)
龍谷特別賞(平成7年/1995年)
第28回新風賞(平成5年/1993年)『生きるヒント』
第33回新風賞(平成10年/1998年)『大河の一滴』
第50回菊池寛賞(平成14年/2002年)
第38回仏教伝導文化賞B項(平成16年/2004年)
処女作 「さらば モスクワ愚連隊」(『小説現代』昭和41年/1966年6月号)
個人全集 『五木寛之小説全集』全36巻・補1巻(昭和55年/1980年8月〜昭和57年/1982年7月・講談社刊)
直木賞候補歴 第55回候補 「さらば モスクワ愚連隊」(『小説現代』昭和41年/1966年6月号)
第56回受賞 「蒼ざめた馬を見よ」(『別冊文藝春秋』98号[昭和41年/1966年12月])
第56回候補 「GIブルース」(『オール讀物』昭和41年/1966年11月号)
サイト内リンク 直木賞受賞作全作読破への道Part3
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下記の選評の概要には、評価として◎か○をつけたもの(見方・注意点を参照)、または受賞作に対するもののみ抜粋しました。さらにくわしい情報は、各回の「この回の全概要」をクリックしてご覧ください。

直木賞 79 昭和53年/1978年上半期   一覧へ
選評の概要 プロの資質を 総行数60 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
色川武大 8 「私の中では、色川武大、小林信彦、深田祐介、津本陽、の四氏が残った。」「私は阿佐田哲也、仮の名を色川武大と考えて一票を投じた。」
津本陽 6 「私の中では、色川武大、小林信彦、深田祐介、津本陽、の四氏が残った。」
  「この賞の選考委員の末席に連なることをお引き受けした時、私は二つの考えを述べた。一つは、直木賞作品は、芥川賞の作品とくっきりと異った質のものでありたいという考え方である。もう一つは、(引用者中略)その作家に真のプロフェッショナルの資質があるかどうかという点を見たいという考えである。」
選評出典:『オール讀物』昭和53年/1978年10月号
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直木賞 80 昭和53年/1978年下半期   一覧へ
選評の概要 問われるのは…… 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
虫明亜呂無 12 「興味を持った。この短篇集の中では、候補になった作品よりも、巻末に収録されている〈ペケレットの夏〉のほうが、私は好きだ。虫明さんは若い作家ではないが、小説には新しいところがある。単なるモダニズムの作風と誤解されかねないところがあって、その辺がむずかしいのかもしれない。」
宮尾登美子 0  
有明夏夫 0  
  「それぞれに一家をなす作風の持主揃いであることに感心した。」「自然、小説づくり(原文傍点)の腕以外の部分での作者の目が問われることになってくる。或はまた、選者の好みの問題になってくるのも仕方がない。」
選評出典:『オール讀物』昭和54年/1979年4月号
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直木賞 81 昭和54年/1979年上半期   一覧へ
選評の概要 本格派二人の登場 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
田中小実昌 20 「マスコミの表面で異色作家ふうの扱いを受けることが少くないようだが、本来おそろしく姿勢の正しいオーソドックスな小説を書く人だ。」「私は受賞作(引用者中略)にも感心したけれども、これらの作品と一緒に「香具師の旅」という本におさめられている「母娘流れ唄」という短篇がとても好きだった。」
阿刀田高 18 「受賞と決まった陰には、「つまり、これはエスプリの小説なんだよな」という、今日出海さんの短いひとことが大きかったと思う。」「文壇的感覚からすると異色作のように見られるのかもしれないが、今はこういった作品が主流といっていい時代なのではなかろうか。」「受賞に不足はない。」
  「間口がべらぼうに広い、というのが小説というジャンルの面白いところなのだから、今後もますます多様な作品が登場してくることだろう。」「しかし、今回、眉村卓さんの「消滅の光輪」のような超大型小説(変な表現だが)が候補にならなかったあたり、まだまだ選ぶ側の視野が限られているような気がしないでもない。」
選評出典:『オール讀物』昭和54年/1979年10月号
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直木賞 82 昭和54年/1979年下半期   一覧へ
選評の概要 直木賞の現実 総行数60 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
つかこうへい 4 「最終的に私は、つかこうへい氏の作品を受賞作に推したが、各委員の賛意を得ることができなかった。」
  「直木賞がジャーナリズムの興味をひくために、芸能界に関係のある知名人を候補に集めたというような見方も、一部にはあるらしいが、そんなことはどうでもいいことだ。」「今後とも主催者側のますます大胆溌剌たる遺賢の発掘を望む。」「また訳知り顔の解説家の中には、直木賞の決定に主催団体およぶ文藝春秋社の意向が大きく反映するかのごとき説を述べられたりする向きもあるが、これも全くのナンセンスである。」「そんな無言の誘導や圧力を感じたら、私なぞ即座に選考委員をやめさせて頂く。」
選評出典:『オール讀物』昭和55年/1980年4月号
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直木賞 83 昭和55年/1980年上半期   一覧へ
選評の概要 “さらに厳しく” 総行数47 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
向田邦子 18 「力量十分の作家である。」「熱狂的にこれを支持する声も多く、両氏の受賞は自然な流れの結果であったと思う。」
志茂田景樹 18 「力量十分の作家である。」「どの選考委員も、その実力を認めておられたし、(引用者中略)、両氏の受賞は自然な流れの結果であったと思う。」
  「かつてのように、受賞、即、多作、という図式は、そろそろ崩れかけているのではあるまいか。またその必要もないだろう。」「選考の対象となる作品を、もっと広く、大胆に取りあげる必要がありはしないか。」「まだまだ、と、いまさら、の二つの枠に押されて、惜しい作品や作家がこの賞の横をかすめて流れ去るのを見ていると、どうも落ち着かないところがある。」
選評出典:『オール讀物』昭和55年/1980年10月号
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直木賞 84 昭和55年/1980年下半期   一覧へ
選評の概要 迷いながら 総行数57 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
中村正軌 26 「日本人が一人も登場しない日本語の小説という意味で、特異な作品だった。」「欧米型フィクションの形式をふまえながら、土台のところに日本人の心情が色濃くにじみ出ている所に私は興味を抱かせられた。職業作家としての将来への期待、という一点への気がかりが私にあったため、無条件でこれを推すことにためらったことを付記しておきたい。」
  「直木賞という賞がどういう賞であるのか、少くとも自分の内でははっきりさせなければならないと思いながら、結論が出ないままに今日にいたっている。」
選評出典:『オール讀物』昭和56年/1981年4月号
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直木賞 85 昭和56年/1981年上半期   一覧へ
選評の概要 「この一作」の場で 総行数49 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
森田誠吾 3 「私は(引用者中略)強く推し、」
神吉拓郎 3 「私は(引用者中略)「ブラックバス」を強く推し、」
山下惣一 4 「(引用者注:「曲亭馬琴遺稿」「ブラックバス」の)つぎに山下惣一氏の「減反神社」など一連の農村を背景にした作品を支持した。」
青島幸男 41 「今回はほぼ満票に近いかたちで青島氏が選ばれることになった」「文筆の道ただ一つに夢を託する者たちには、小説という世界はもはや遠いエスタブリッシュメントになってしまったのだろうか。(引用者中略)そんな感慨をおさえきれず、臨席の水上勉氏に、「もう中退生や落伍者の時代じゃなくなったんですね」ともらした」
選評出典:『オール讀物』昭和56年/1981年10月号
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直木賞 86 昭和56年/1981年下半期   一覧へ
選評の概要 つか氏を推す 総行数81 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
つかこうへい 37 「つか氏の作品は、私たちの無意識の世界の深いところに鋭く触れるものがある。」「私はこの物語りを遠い祭ばやしを聞くような気分で楽しみながら一気に読み通し、やがて数日たってからずしんと来るものを感じた。」「面白おかしく書きとばせば、それがおのずからなる批評の色合いをおびるという痛快な結果をもたらすので、そういう無意識の狩人を天才と呼んで不自然なわけがない。」
村松友視 20 「秀才の苦心作といった趣きだ。」「〈泪橋〉が〈蒲田行進曲〉より小説としていささかも劣るわけではない。私はこの作品の背景をなしている一帯に長く住んでいたことがあるためか、ことに興味ぶかく読んだ。」
光岡明 10 「池波正太郎氏に強く推された。私は池波さんの真情あふるる推挙ぶりに感動し、最初は〈蒲田行進曲〉と〈泪橋〉の二作授賞を主張しながら、最後に変節した。池波さんの批評眼を私は信用しているし、そういう一途な推されかたをする作家には必ず何かがあると思えたからである。」
選評出典:『オール讀物』昭和57年/1982年4月号
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直木賞 87 昭和57年/1982年上半期   一覧へ
選評の概要 村松氏を推す遠因 総行数49 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
村松友視 15 「一作受賞の場合は、と断って私が推した」「私はこの作家と、その作風が好きだし、この手の小説こそ実は小説の本道だろうとひそかに思ってきた。」「前に神吉拓郎氏が受賞をのがした時の残念さを含めて、強く支持したのだ。(引用者中略)私は村松さんの作風に、どこか神吉さんと一脈通ずるものを感じていたのである。」
深田祐介 17 「なかにはこの作品は認めないが、この作家は認める、という微妙な発言などもあったとはいえ、深田氏の受賞に反対する選者はなかった。」「私個人としては、「日本悪妻に乾杯」の爽やかさ、視点こそちがえ、「革命商人」の重量感のほうが今回の候補作より印象に残っている。」
選評出典:『オール讀物』昭和57年/1982年10月号
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直木賞 88 昭和57年/1982年下半期   一覧へ
選評の概要 日和見的選考の弁 総行数49 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
  「つか氏や、村松氏の際のようにきっぱり一人に賭けて推すほどの情熱はなかったために、うーん、と腕組みしながら成り行きを見守るしかなかった。」
選評出典:『オール讀物』昭和58年/1983年4月号
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直木賞 89 昭和58年/1983年上半期   一覧へ
選評の概要 北方謙三氏を推す 総行数53 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
北方謙三 15 「私は受賞者を北方謙三氏にしぼって推し続けたのだが、大多数の選考委員の賛同をうるにはいたらなかった。」「私はこの人の作家としての資質を高く評価している。」「たとえば野球の選手について「球筋が良い」という表現があるが、北方氏には作家としての球筋の良さがある。」
胡桃沢耕史 0 「紙数がつきたので別な場所で感想を述べたい。」
選評出典:『オール讀物』昭和58年/1983年10月号
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直木賞 90 昭和58年/1983年下半期   一覧へ
選評の概要 それぞれに魅力あり 総行数88 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
神吉拓郎 34 「二作(引用者注:「私生活」と「友よ、静かに瞑れ」)を受賞作として推したいと考えて選考会にのぞんだ。」「これはきわどい小説である。前作の「ブラックバス」よりも気難しくなく(原文傍点)なった部分だけ俗に近づいており、そのきわどい警戒水位のすれすれで踏みこたえたところが、この作家の手腕だろう。」
北方謙三 11 「二作(引用者注:「私生活」と「友よ、静かに瞑れ」)を受賞作として推したいと考えて選考会にのぞんだ。」「まだ充分に余力のある人だし、有無を言わさぬ作品をひっさげて再挑戦するほうが御本人も納得がいくだろう。」
高橋治 34 「前に候補になった「地雷」とは、がらりと変った作風の力作である。」「人間の業の象徴としての怪魚であるから、原寸大で目に見えてしまうより、遂に得体の知れない幻の生きものとして海中にひそませておきたい思いもあった。そこを描き切れば、この小説はひとつの神話的な世界にまで高まったかもしれない。」
選評出典:『オール讀物』昭和59年/1984年4月号
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直木賞 91 昭和59年/1984年上半期   一覧へ
選評の概要 薄暮の時代を映す二作 総行数55 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
連城三紀彦 28 「まず誰が見ても異存のないところだろう。」「造花の美が時には現実の花よりリアリティを感じさせることがあるという、小説ならではのたのしみ(原文傍点)を充分にあじあわせてくれた佳作となった。」
難波利三 15 「ノスタルジーの時代に浮上する必然性をもった小説だろう。」「特色は、作者の視点がここに描かれた作中人物たちのそれと、ほとんど重なっている所にある。美也子という若い娘の登場する場面が、ことに印象が鮮かに感じられた。」
  「今回は病気のため選考の席につらなることができなかった。」
選評出典:『オール讀物』昭和59年/1984年10月号
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直木賞 92 昭和59年/1984年下半期   一覧へ
選評の概要 理不尽な作業 総行数52 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
  「或る選者が積極的に推す作品が、他の委員から全く黙殺されたり、正反対の評価がくだされたりする場に立ち合っていると、小説の値打ちなんて結局は好みの問題にすぎないような気もしてくるのだ。」「他人の書くものに点数をつけるという作業の理不尽さを痛感させられた一夜だった。」
選評出典:『オール讀物』昭和60年/1985年4月号
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直木賞 93 昭和60年/1985年上半期   一覧へ
選評の概要 新受賞者の多作に期待 総行数63 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
山口洋子 10 「最後に決をとる際に、私は山口洋子さん、林真理子さん、二氏の受賞を提案した。」「これからの山口さんの仕事に期待したい。私個人としては、力の限り多作されんことを望んでいる。」
林真理子 3 「最後に決をとる際に、私は山口洋子さん、林真理子さん、二氏の受賞を提案した。」
選評出典:『オール讀物』昭和60年/1985年10月号
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直木賞 94 昭和60年/1985年下半期   一覧へ
選評の概要 隠された凄さ 総行数69 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
森田誠吾 16 「林真理子さんと、森田誠吾さんのお二人を推した。」「後味がいい、爽やかな作品だ、と。非常に好評だった。しかし、私はこの作家の物語づくりの鮮やかな才能に敬服しながら、一種異様な後味のわるさもおぼえている。」「その得体のしれない部分に惹かれて一票を投じたというのが本音かもしれない。」
林真理子 15 「林真理子さんと、森田誠吾さんのお二人を推した。」「男性に愛されたいと願いつつ、男の敵になってしまう。」「私を含めて男たちはどこか無気味な脅威を林さんの資質にかぎとっているのだろう。」
  「私は候補作をその作家の隠された鉱脈の一部として読む。どんなに完成度の高い作品であっても、その人が今後それをしのぐ豊かな仕事を見せてくれそうだという予感がなければ推さない。」
選評出典:『オール讀物』昭和61年/1986年4月号
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直木賞 95 昭和61年/1986年上半期   一覧へ
選評の概要 「恋紅」を推す 総行数47 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
皆川博子 23 「最も印象にのこった。一見、古風な物語りのようでいて、かならずしもそうではない。」「もし受賞作を選ぶとすればこの作品だろうと考えながら選考の席にのぞんだ。」「幕末から明治という、それだけでも難しそうな時代を背景に、ゆうという女性の前半生を様々な群像とともに描いてみせた作者の力量は相当のものである。」
泡坂妻夫 12 「魅力のある小説だった。あえて、ミステリ−に仕立てあげずとも、近頃めずらしい情感のある佳作として、大人が読むに耐える小説の一つになったに違いない。」「ひさびさに小説を読むたのしさをあじわうことができた。」
選評出典:『オール讀物』昭和61年/1986年10月号
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直木賞 96 昭和61年/1986年下半期   一覧へ
選評の概要 実作者の及び腰 総行数83 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
逢坂剛 8 「〈カディスの赤い星〉の逢坂氏の筆力と、落合氏の作家的力量を合わせて二作受賞というところだろうか、とも考えていた。」
常盤新平 3  
  「今回はどの作品が受賞しても、また受賞作なしに決定しても、反対はしないつもりで選考の席にのぞんだ。」
選評出典:『オール讀物』昭和62年/1987年4月号
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直木賞 97 昭和62年/1987年上半期   一覧へ
選評の概要 作品と作家の両面から 総行数150 (1行=14字)
候補 評価 行数 評言
白石一郎 13 「大きな存在感をもって迫ってきた作家」「お二人(引用者注:山田詠美と白石一郎)が図抜けていると感じた」「直木賞候補八回という実績は、今後ともそのような作家は二度と現れることがないと思われる。」
山田詠美 43 「ひときわ強い印象を受けた作品」「お二人(引用者注:山田詠美と白石一郎)が図抜けていると感じた」「〈ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー〉と〈ベッドタイムアイズ〉を、ほとんど同時といっていい数年の間に書き分けられる山田氏の才能も空前のものだ。」「林芙美子と同様、向日性のいささか古風なヒューマニストである。あえていうならば〈黒いひまわり〉とでも呼ぶべきその資質に、私は文句なしに共感した。」
高橋義夫 22 「骨太な歴史小説として堂々たる作品であることに驚いた。」「横浜の元同心が主人公で、ふと〈ジャッカルの日〉などを連想しながら一気に読んだ。この長篇が受賞をいっしたのは、ただ他に山田、白石両氏の存在があったからに過ぎないだろう。高橋氏の受賞を強く推す声もあったのは当然である。」
選評出典:『オール讀物』昭和62年/1987年10月号
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直木賞 98 昭和62年/1987年下半期   一覧へ
選評の概要 何か、を考える 総行数93 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
阿部牧郎 9 「どの候補作が受賞してもおかしくないではないか、という意見が出てくるにちがいない。私はその通りだと思う。だが、阿部牧郎氏の「それぞれの終楽章」の受賞は、すべての選者の賛意を集めるなにか(原文傍点)を持っていた。それが何かを、私はいま考えているところだ。」
西木正明 8 「これが受賞作となっても異論はないと思っていた、とだけ言っておこう。小説をつくろう(原文傍点)とするこの作家の意欲を、高く評価して今後を見守りたい。」
  「直木賞という賞の肌合いというか、性格というか、そういったものが少し変ってきたようだな、と、いう感じがした。」「無名の新人がいきなり登場して、劇的な長打をかっとばすといった舞台では、なくなってきたような雰囲気なのである。」
選評出典:『オール讀物』昭和63年/1988年4月号
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直木賞 99 昭和63年/1988年上半期   一覧へ
選評の概要 「遠い海から──」を推す 総行数143 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
景山民夫 12 「強く推した。この作品に対して、賛否がまっぷたつに分かれたところに、新作家登場のエネルギーを感じたからだ。」
西木正明 10 「私はいまひとつ物足りなさを感じて、強く推さなかった。これも前回の「ユーコン・ジャック」のほうに魅力をおぼえるせいである。」
  「候補作品として二作を列挙する主催者側の意図が、いつも作家にとってマイナスの作用をおよぼしているような気がする。」「「無名作家」もしくは「無名に近い新人作家」という、菊池寛の直木賞創設の文章に私は今もこだわっている。」
選評出典:『オール讀物』昭和63年/1988年10月号
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直木賞 100 昭和63年/1988年下半期   一覧へ
選評の概要 毒にも薬にもなる二作 総行数103 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
杉本章子 28 「端正な文章といい、緻密な構成といい、文句のつけようのない佳作だと思う。くわえて人間を見る目の清涼さ、読み終えたあとの爽やかさなど、いろんな意味で得難い資質を感じさせるところがあった。」「受賞が満場一致ですんなり決まった」
藤堂志津子 27 「杉本氏の受賞が満場一致ですんなり決まったあと、ふと一瞬の空白ののちに藤堂志津子さんの「熟れてゆく夏」が浮上してきたのは、ある意味では当然のことだったとも思われる。「東京新大橋雨中図」の清澄な世界を照らし返すためにも、藤堂氏の「毒」のある作品が必要だ、と感じられたのだ。」「その毒には舌をくすぐる愉楽の味も希薄なのだが、それでもなおこの作家が独自の世界をもつ書き手であることを信じさせる力がある。」
  「最近、小説がなんだかつまらなくなってきたような気がする。ひと口で言ってしまえば、毒にも、薬にもならぬような作品が多すぎるのだ。」
選評出典:『オール讀物』平成1年/1989年3月号
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直木賞 101 平成1年/1989年上半期   一覧へ
選評の概要 好対照の二作品 総行数81 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
笹倉明 54 「笹倉明さんの小説には、いつも、小説の枠におさまりきれないところがある。一歩ふみはずせば〈大説〉と化しそうな危うさをはらんでおり、そこがまた魅力でもあると思う。」「雑な文章は作品の興趣をそぐことはなはだしい。しかし、アジアと日本人、そして被差別者がさらに弱い者への差別者となってゆく無残な現実がしっかりと見すえられている〈遠い国からの殺人者〉を、今回の受賞作として推すことにためらいはなかった。」
ねじめ正一 28 「最近これほどの文章つかい(原文傍点)にお目にかかった記憶はない。」「詩と小説の世界をいさぎよいまでに峻別して、舞踏でなく歩行の文体に徹した姿勢に共感をおぼえる。」「かつをぶしを削る、それだけの動作を描写して人を感動させるというのは、なみの才能ではない。」
選評出典:『オール讀物』平成1年/1989年9月号
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直木賞 102 平成1年/1989年下半期   一覧へ
選評の概要 円熟と未完の魅力 総行数148 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
星川清司 12 「安定した筆力と円熟した作風をもつ堂々たる大人の作家である。権八という醜男が幼い小伝に、うなぎの串焼きを口うつしのように噛んで食べさせる描写など、僧衣の袖口にちらと鎧の小手を見せられたような気にさせられたものだった。」
原ォ 30 「未完の大器である。なによりもこの国におけるハードボイルド的作風の確立という、至難の世界にターゲットをしぼった姿勢に若々しさがある。」「ハードボイルドとは、非情ではなく抑制された多情であり、粗暴の辛さではなく感傷の苦さであることを思えば、〈私が殺した少女〉の主人公の行動規範は、モラルではなく情感であるべきではないだろうか。」
  「(引用者注:受賞作が)二作でもいっこうにかまわないが、私個人の考えでは徹夜ででも討論を重ねて一作にしぼったほうがいいような気がする。」
選評出典:『オール讀物』平成2年/1990年3月号
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直木賞 103 平成2年/1990年上半期   一覧へ
選評の概要 新作家への声援 総行数85 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
泡坂妻夫 31 「直木賞を新人賞と考えている私の目には、泡坂さんはすでに直木賞を超えた堂々たる既成作家として映っていたので、選考会にのぞんで少々とまどうところがあったのも事実である。」「驚くほど簡単に泡坂さんの受賞がきまったのは、当然の結果だろうと思う。他の候補作との差は、歴然たるものがあった。」
高橋義夫 15 「(引用者注:『風少女』と)『北緯50度に消ゆ』の二作が受賞作に選ばれてもいいと思っていた。」「作家としての卓抜な構築力が感じられる。その筆力はただごとではない。いずれ私たちを瞠目させる作品を書く人だろう。」
樋口有介 20 「『風少女』のような作風は、とかくこの国の文壇では軽視されがちな傾向がある。(引用者中略)しかし、私は『風少女』の文体が好きだった。これと『北緯50度に消ゆ』の二作が受賞作に選ばれてもいいと思っていた。」「樋口さんはミステリーにこだわるのをやめたらどうだろう。そうすればもっと自由な、あたらしい小説が書けるのではあるまいか。」
  「今回の選考会ほどすんなりというか、あっさり受賞作がきまった例を私は知らない。」
選評出典:『オール讀物』平成2年/1990年9月号
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直木賞 104 平成2年/1990年下半期   一覧へ
選評の概要 古川薫氏の実績に脱帽 総行数71 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
酒見賢一 9 「すでに一家をなした感のある堂々たる作風で、これが受賞作として推されたとしても異存はなかっただろう。登場後みじかい間に、ここまで完熟する才能には恐るべきものがある。」
東郷隆 7 「「水阿弥陀仏」が奇妙に印象に残った。ふと魯迅の「故事新編」の作風を連想したのは、この作家の才能にただならぬものを感じたからである。」
古川薫 23 「今回の候補作のなかでは、(引用者中略)最も安定した作家的力量を発揮されていた。」「ただ、直木賞はあくまで新人賞であるという私の固定観念が、この作品を無条件で推すことをためらわせるところがあったのも事実である。」「多少の躊躇はあったが、全選考委員が一致しての評価であれば、異論のあろうはずがない。」
選評出典:『オール讀物』平成3年/1991年3月号
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直木賞 105 平成3年/1991年上半期   一覧へ
選評の概要 実力二作家の登場 総行数111 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
芦原すなお 90 「一読おもわず破顔一笑、といった好感のもてる少年小説で、しかも周到な方法論に支えられた佳作である。」「この作者の最大の美点は、上機嫌なユーモアの感覚だろう。」「芦原氏のユーモアは地方の少年を描きながら、妙に都会的だ。そんな外部の視点を体得していればこそ方言を魅力的に使うことができたのではあるまいか。」
宮城谷昌光 21 「すでに堂々たる作家である。独得の世界を描いて一家を成した感のある氏に、あえて妄言を書きつらねる勇気は私にはない。」
選評出典:『オール讀物』平成3年/1991年9月号
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直木賞 106 平成3年/1991年下半期   一覧へ
選評の概要 一作を選ぶ激論も 総行数92 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
高橋義夫 29 「小説としての結構がもっともよくととのっていた」「読んでいて素直にたのしむことができた。主人公の祝靱負の描きかたにふくらみがある。下級官吏の十兵衛にも人間的な魅力が感じられるし、狼狩りの絵巻物もなかなかの壮観だ。」
高橋克彦 18 「すでに独自の作風を確立している小説家である。そういう作家が受賞するためには、一種、新しい境地を切りひらく野心的な作品が現れなければならない。その困難を見事にクリアした」「モダンな描写の底に、どこか縄文的な粘りが感じられるのが、この作家の資質をこえた才能だろう。」
小嵐九八郎 11 「いっぷう変った全共闘家庭小説だが、両親や周囲の人物の描きかたに卓抜な才能が光っている。平成版の「坊っちゃん」とも読め、私はこの作品が受賞二作の内に入ってもいいな、と思った。」
  「両高橋氏の受賞をよろこぶ反面、どちらか一篇にしぼる激論もたたかわせてみたかったと思う気持ちもあった。」
選評出典:『オール讀物』平成4年/1992年3月号
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直木賞 107 平成4年/1992年上半期   一覧へ
選評の概要 伊集院氏を推す 総行数104 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
伊集院静 26 「それぞれの委員が、この作品集の中で気に入った一篇をあげるのが、ほとんどちがった作品であることも興味ぶかかった。」「この作品集では、すでに伊集院静の世界、という独自の世界がはっきりできあがってしまっていることが感じられる。」「しかし、「受け月」には、まだどこか不安定なところがあって、私はそこに作者の今後の可能性を見たいと考えた。」
  「この数回の候補作品のなかでも、今回はかなり水準の高いほうではないかと考えて選考の席にのぞんだのだが、なぜかそれと反対の感想をもらす委員が少なくなかったのは意外だった。」
選評出典:『オール讀物』平成4年/1992年9月号
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直木賞 108 平成4年/1992年下半期   一覧へ
選評の概要 余裕の受賞 総行数51 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
出久根達郎 29 「余裕の受賞という感じで今回の選考会は終った。」「なによりも文章が練れているというか、こなれた筆である。」「この作品のなによりの成功は、物語りの舞台に佃島という場所を選んだことだ。(引用者中略)このあたりには、まだまだ沢山の物語りが埋まっていそうである。」
東郷隆 12 「惹かれるものがあった。山田風太郎山脈、隆慶一郎連山の系譜につらなる作家として、期待できそうな気がする。」「いつ受賞してもおかしくない才能だと確信している。」
選評出典:『オール讀物』平成5年/1993年3月号
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直木賞 109 平成5年/1993年上半期   一覧へ
選評の概要 北原さんを推す 総行数92 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
北原亞以子 24 「この題名がいかにも古い、という意見も出たが、私は逆に北原亞以子の世界にふさわしい題だと思った。」「川口松太郎さんの初期の名作を思わせる芸道小説の新しい展開がここにあると思った。」「〈まんがら茂平次〉で一家を成した作家だが、まだまだ大きく化ける可能性を秘めた才能である。」
高村薫 19 「今回の候補作家のなかでもっとも筆力のあるのが高村さんだろう。私が〈マークスの山〉を受賞作として一本で推さなかったのは、犯罪の動機に納得がいかなかったのと、警察内部の人間関係にあまり興味がなかったせいである。事件の背後にある人間の意識の深淵への関心が、この作家の本領なのかもしれない。」
選評出典:『オール讀物』平成5年/1993年9月号
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直木賞 110 平成5年/1993年下半期   一覧へ
選評の概要 大沢在昌さんを推す 総行数118 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
大沢在昌 49 「文句タラタラで読んだが、それでも抜群におもしろかった。決して「文句なしの」おもしろさではない。そこにこの作家の力があると思った。」「総じてこの小説には、タフなジャケットの下から甘さが見え隠れするが、それを排除してしまうと、批評家にはほめられても、売れないだろう。ロックの感覚を生かした歌謡曲、というあたりが、この作品の取り柄なのである。」「大沢さんの一篇を受賞作として推した」
小嵐九八郎 26 「「鉄塔の泣く街」が私は大好きで、たちまち小嵐さんのファンになってしまった。だが、なぜかその後、どうも会心の作がでてこない。」「こんどの「おらホの選挙」も、小嵐節はたしかにきこえるのだが、いまひとつ乗りがなく、笑いも中途半端にすぼんでしまう。」「この国の作家としては卓抜な批評性をそなえた異才なのだから、もうすこし気合いを入れて力投してほしい。」
佐藤雅美 4 「一家を成した作家である。(引用者注:「新宿鮫 無間人形」との)二作受賞に反対する理由はなかった。」
選評出典:『オール讀物』平成6年/1994年3月号
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直木賞 111 平成6年/1994年上半期   一覧へ
選評の概要 複雑な感慨 総行数146 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
東郷隆 11 「小説の運命に果敢に挑戦しようという野心を感じた」「この二作(引用者注:「蛇鏡」と「終りみだれぬ」)のうちのどちらかが受賞してもおかしくないと思ったのだが、少数意見であったようだ。」
坂東眞砂子 13 「小説の運命に果敢に挑戦しようという野心を感じた」「この二作(引用者注:「蛇鏡」と「終りみだれぬ」)のうちのどちらかが受賞してもおかしくないと思ったのだが、少数意見であったようだ。」
海老沢泰久 39 「これらの諸作品がすべて「オール讀物」という読物雑誌に発表されていることに私は感嘆した。表題作の『帰郷』をはじめ、いずれもチェホフの短篇を連想させる作風だったからだ。」「十九世紀の小説を思わせる作品が読物雑誌に載り、それが直木賞の候補として挙げられるということは、とりもなおさず小説が老成への道をあゆみつつある何よりの証拠だ」
中村彰彦 14 「私も気分よく読んだが、その自分の感覚にどこか素直になれないかすかな軋みをおぼえたことも事実である。小説としては、いささかひよわな面があるとも思った。」
選評出典:『オール讀物』平成6年/1994年9月号
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直木賞 112 平成6年/1994年下半期   一覧へ
選評の概要 ひとつの節目として 総行数72 (1行=13字)
候補 評価 行数 評言
  「私にはなんとなく小説の世界そのものにパワーが失われている、という気がしてならないのだ。」「これまでの仕事の実績と将来への可能性を加味しての授賞、という考えかたもないではない。しかし、合わせて二作授賞という案と同じように、それにもどこか不確かなところが感じられて、結局、見送られることとなった。」
選評出典:『オール讀物』平成7年/1995年3月号
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直木賞 113 平成7年/1995年上半期   一覧へ
選評の概要 こころ残り 総行数99 (1行=1